ニダヴェリアは遊びやすい45分級の佳作
変則オークション、カードドラフト、ユニークカード、エンジン強化といったゲーマー好みの実装
それでいてカタンクラスの軽さで、ゲームに不慣れな方とでも遊べる
プレイし、魅力を感じたので記事化する
なお、本記事はニュースサイトGigazine(ギガジン)の2020年の年末年始プレゼント企画で抽選でいただいたものをプレイし、作成しています
この場を借りて感謝申し上げます
参考:邪竜討伐のための最強師団編成を目指してドワーフ戦士を集めるボードゲーム「ニダヴェリア」プレイレポート
(1)基本情報
(2)テーマ
(3)メカニクス
①テンポの良さ
②タテに伸ばす/ヨコに広げる
③コインの強化
④人数によって変わる相場観
⑤リプレイ性はそこそこ
⑥カラーごとの差が少し弱い
(4)考察:バッティング抜きヴァリアント
Nidavellir (2020)
Designer Serge Laget
(1)基本情報
人数:2ー5人、ベスト3,4人
時間:45分
複雑性:2.20 (参考値:PARKS=2.18 セブンワンダーズ=2.33)
ランク:900位(2021/2時点)
要素:オークション、カードドラフト、同時プロット(バッティング)、セットコレクション、北欧神話、ドワーフ
言語依存:なし
ニダヴェリアは北欧神話の言葉でドワーフの住みかを指す
直訳すると新月の大地、暗い土地、くらいの意
ドラゴンクエストとロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)を足した感じのファンタジーRPGだ
舞台はドワーフの王国、魔王的な邪竜が来てしまった
国王はプレイヤー(勇者ドワーフ)に、
「カネは出すから、仲間ドワーフを集めて征伐に出てくれ」
と依頼
ドラクエでいうルイーダの酒場、指輪の踊る仔馬亭みたいな、冒険者がたむろしている空間がゲームの舞台
酒場の看板のもとに冒険者が集う
ロード・オブ・ザ・リングの踊る仔馬亭(Prancing Pony Brewery)を模した木製マグ
アートワークのそこかしこでトールキン世界や北欧神話のモチーフが用いられている
筆者も指輪ファンだが、この手のテーマが好きな人間にはしっかり刺さると思われる
プレイヤーは有望な戦士となり、酒場をはしごして冒険者を勧誘する
最も戦力(合計勝利点)の高いチームを作ったプレイヤーはゲームに勝利し、晴れて邪竜討伐の旅に出ることができる
(3)メカニクス
①テンポの良さ
3人戦でインストなし30分くらいで終わる
同時プロットがテンポ感を生んでいる
3人戦だと場には3列3枚の9枚が並び、各列について、全プレイヤー同時にコインを裏向きにプロットする
簡略化したニギり競り的な
セットしたコインの数字が高いプレイヤーから順にその列のカードを取っていく
この解決はとにかく早い
各カードの情報量が少なく、枚数が多いわけでもないので、
「もし1位が取れたらこのカードが欲しい、それがムリならあれかな」
くらいに、あらかじめ目星をつけることができ、それが解決の早さを生んでいる
手番中にボーナスカードの獲得や、コイン強化も行われるため、多少はもたつくが、テンポの良さはかなり重視して作られている印象を持つ
②タテに伸ばす/ヨコに広げる
ニダヴェリアは5色のカードを集めるゲームだ
各色で性格差があるが、どれも特化させて枚数を重ねると点が伸びる
ざっくり5色中1-2色を厚く伸ばせると最も効率が良い
各カードがテキストや固有能力を持つなら、「特化したら強い」だけでもドラフトはちゃんと盛り上がる
MtGやテラフォなんかはまさにそうだ
しかし、ニダヴェリアのカードはとてもシンプルだ
タグと勝利点しか情報がない
シンプルなカードを使って楽しませるために、ニダヴェリアでは特化以外のルートを用意している
それが「ヨコに広げる」だ
5色のタグが1セット揃うたびに、英雄カードをタダで1枚がもらえる
英雄カードは、コモン1.5-2枚程度のパワーがある
英雄カードは有限で、しかも強弱差がハッキリしているので、欲しいものをめぐっての早取りがなかなか激しい
「互いが違うカラーで染めているなら、英雄カードも住み分けができるのでは?」
とも思えるのだが
実際プレイすると、
「2セット目を1ターンでも早く作りたい
だから、特化しているわけではないカラーの英雄を取る」
的な奪い合いがそれなりに発生する
このタテ/ヨコのジレンマの面白さは、宝石の煌き(2014)に少し似ている
スプレンダーのカードも、本作同様カラーと勝利点しか要素がない
カードの集め方として、タテに伸ばす特化戦術とヨコに広げる水平戦術がある
タテルートは理想的に動ければ得点効率が最も高い
しかし、カードのめくれ運や他プレイヤーの妨害に影響されやすく、安定性をやや欠く
ヨコに伸ばすルートは勝利点効率はイマイチ
しかしニダヴェリアの英雄カードのように、貴族タイルがタダで取れる利点がある
貴族タイルの噛み合い次第で、タテルートをしのぐ速度が出ることがある
Splendor(2014)
③コインの強化
ニダヴェリアはあまり拡大再生産要素のないゲームだが、コイン周りのみ明白な成長要素がある
各人は5枚のコインを持っており、3列のカードに対してベットする
0のコインでベットすると、残った2枚のコインを足し算して強化できる
たとえば4と2のコインを使わずに残していると、4のコインを破棄して4+2=6のコインを新しくゲットできる
たとえが古いが、ドラクエモンスターズの配合によく似ている
親モンスター同士をミックスさせてタマゴの+値を高める的な
育ったコインは次ラウンドからほしいカードを取るために使える
もしめぼしいカードがないなら、もっと倉庫で寝かせて強化してもいい
コインとオークション周りのプレイ感はクニツィアのラー(1999)にも少し似ている
ラーは3-5枚のコインで行う変則オークション
競りに勝つと場のタイルがもらえる
さらに共通の場のコイントークンと使ったコインとを交換し、裏返して使用不能にする
交換して得たコインは次ラウンドに使うことになる
ラーのオークションでは、
「今出てるタイルが欲しい
10の強コインをここで切ろうかな
でも今場にあるのは2の弱いコイン、取りたくない
次ラウンドかなり動きづらくなる」
「今出ているタイルは大してほしくないけど
13のコイン、ゲーム中最強のコインが今場に落ちている
弱いコインを捨てて取るのはアリかも、次ラウンドかなり動きやすくなる」
こういう思惑が交差する
Ra(1999)
ニダヴェリアでも、
「欲しいカードを取りに急ぐと、コインの成長が遅れる
かと言ってコインの成長にかまけていると残りモノのカードしか回ってこない
得点レースに出遅れてしまう」
このあたりの感覚は少し似ている
少し長くなるが、コイン周りはニダヴェリアのいちばんの魅力なので、もう少しだけ掘り下げる
中量級以上のゲームを組む場合、拡大再生産要素をどこで実装するかやや難しい
成長はほぼ万人に好かれるので、拡大要素は入れ得なのだが、入れる場所を間違えたり、入れすぎると弊害が生じる
ゲームがダラダラ続いたり、先に走った人、上手くやった人がそのまま勝つだけのクソゲーになってしまったりしかねない
ニダヴェリアのコインの成長は、競りで少し有利になるだけだ
取れるカード枚数が増えたり、アクションが強化されたり、収入が得られるわけではない
しかも他プレイヤーもだいたい同じ速度でコインを強化するので、システム面だけ抜き出すと、ほぼプレイヤーは強化されていないに等しい
強化が穏当なおかげで、ゲーム終盤もタイトなプレイ感が維持されている
とても主語が大きく、根拠を欠く比喩的な表現になるが
人体は種々の刺激に原始的な快感を見出す
ボードゲームは、
・見た目による視覚的刺激
・ゲーム中のスピード変化による加速度的な刺激
五感+平衡覚のなかでもこれら2つの感覚に訴えかけるのが得意だ
大きくて分厚いコイントークン、リッチなコイン立てで視覚的に強く刺激して、自コイン成長の快感を演出する
その分、正味の拡大再生産要素は抑えて、加速度的な刺激はあえて与えない、ゲームのテンポをタイトに維持するために
巧妙で美しい実装だと評価する
④人数によって変わる相場観
5人戦以外では総カード数固定
人数が少ないほどカードがたくさん取れて自由度が高い
狩人なんかは枚数を取ると伸びるカラーなので、3人戦の方が4人戦より打点が高い
反対に剣士や探検家は固定点なので、多人数戦でも安定して価値がある
プレイ人数によってカードの価値基準や戦術の有利不利が変わるのはとても楽しい
⑤リプレイ性はそこそこ
人数によるプレイ感の違いも相まって、3,4回は楽しく遊べる
10回遊ぶとちょっと底が見えるかもしれない
取れたボーナスの英雄カードで戦略を変えていくのだが、拡張を入れないかぎり毎ゲーム固定なので、そのあたりが弱い
拡張やプロモカードが原語版では制作/販売されており、BGGでの評価も高いので、混ぜるとより長く楽しめると思われる
Thingvellir(2020)
⑥カラーごとの差が希薄
5色あり、
・多人数戦でも価値が下がらない=レッド、ブルー
・1色で特化したい=オレンジ、グリーン、パープル
に大別される
後者のカラーがあまり個性的でない
複雑さの匙加減は難しいが、もう少しカラー間の差を持たせたつくりだと、より筆者の好みに近づく
個人ボードの得点早見表
グリーンはN²、パープルはΣ(N+2)で、5枚目から得点が逆転する
数学的な難しさのわりに、面白さにあまり寄与していない印象がある
(3)考察:ヴァリアントルール
ニダヴェリア、面白いゲームだが
前項でも少し触れたが、カードがやはりシンプルすぎて、ゲーム終盤の競りがちょっとマンネリ化、流れ作業化してしまう
また、ただの筆者のわがままだが、同時にカードを伏せて解決する、バッティング、同時プロット要素がかなり好きではない
「できるだけシンプルさを保ったままこのあたりを改善できないか」と何回かハウスルールを試して、ある程度まともなヴァリアントが定まったので、最後に共有し、考察に代える
同時プロットなしヴァリアント、3人戦用
【方法】
(変更点青字で記載)
スタートプレイヤーマーカーを用意し、適当に決定
スタプレから順に、3,2,1の宝石トークンを取る(先手不利なため)
オリジナルルールだと手持ちのコインは秘匿情報だったが、完全公開情報に変える
オリジナルルールだと場に3列×3枚並べていたのを、3列×4枚並べる(4人戦のセットアップと同じ)
いちばん上の列について、スタートプレイヤーから順にコイン1枚をオモテ向きで配置する
オリジナルルールと同じく1位、2位、3位の順でカード1枚を獲得
最後に残った1枚を1位が獲得
1位が次のスタプレマーカーを獲得(1位は不利な先手番に)
【プレイ感】
場の情報量が増え、ダウンタイムが少し延びてしまうのが唯一の欠点
1ゲーム30分だったのが45-60分くらいにまで延びる
トップを取ればカード2枚取れることから、競りが白熱するのが最大の利点
相手プレイヤーとの駆け引き感がきちんと生じる
基本ゲームだとオマケ感が強かった同値処理用の宝石トークンもかなり重要度が増す
また、1ラウンドに使うカード枚数を少し増やした兼ね合いで2ラウンドほど短縮され、若干のテンポの改善に寄与している
変則オークション、カードドラフト、ユニークカード、エンジン強化といったゲーマー好みの実装
それでいてカタンクラスの軽さで、ゲームに不慣れな方とでも遊べる
プレイし、魅力を感じたので記事化する
なお、本記事はニュースサイトGigazine(ギガジン)の2020年の年末年始プレゼント企画で抽選でいただいたものをプレイし、作成しています
この場を借りて感謝申し上げます
参考:邪竜討伐のための最強師団編成を目指してドワーフ戦士を集めるボードゲーム「ニダヴェリア」プレイレポート
(1)基本情報
(2)テーマ
(3)メカニクス
①テンポの良さ
②タテに伸ばす/ヨコに広げる
③コインの強化
④人数によって変わる相場観
⑤リプレイ性はそこそこ
⑥カラーごとの差が少し弱い
(4)考察:バッティング抜きヴァリアント
Nidavellir (2020)
Designer Serge Laget
Artist Jean-Marie Minguez
Publisher GRRRE Games
(1)基本情報
人数:2ー5人、ベスト3,4人
時間:45分
複雑性:2.20 (参考値:PARKS=2.18 セブンワンダーズ=2.33)
ランク:900位(2021/2時点)
要素:オークション、カードドラフト、同時プロット(バッティング)、セットコレクション、北欧神話、ドワーフ
言語依存:なし
流通:日本語版がすごろくやから出ており、定価で入手可能
デザイナー素描:
セルジェ・ラジェ/Serge Laget
フランス語圏の兼業デザイナーで、年齢は50代前後
若い教員を指導する学校の先生とのこと
本作以外の代表作は以下
1995年:修道院の謎/Mystery of the Abbey(1300位)
2003年:我らが海/Mare Nostrum(1500位)
Mare Nostrum(2003)
(2)テーマデザイナー素描:
セルジェ・ラジェ/Serge Laget
フランス語圏の兼業デザイナーで、年齢は50代前後
若い教員を指導する学校の先生とのこと
本作以外の代表作は以下
1995年:修道院の謎/Mystery of the Abbey(1300位)
2003年:我らが海/Mare Nostrum(1500位)
2005年:キャメロットを覆う影/Shadows over Camelot(400位)
2009年:アド・アストラ/Ad Astra(1200位)
2009年:アド・アストラ/Ad Astra(1200位)
Mare Nostrum(2003)
ニダヴェリアは北欧神話の言葉でドワーフの住みかを指す
直訳すると新月の大地、暗い土地、くらいの意
ドラゴンクエストとロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)を足した感じのファンタジーRPGだ
舞台はドワーフの王国、魔王的な邪竜が来てしまった
国王はプレイヤー(勇者ドワーフ)に、
「カネは出すから、仲間ドワーフを集めて征伐に出てくれ」
と依頼
ドラクエでいうルイーダの酒場、指輪の踊る仔馬亭みたいな、冒険者がたむろしている空間がゲームの舞台
酒場の看板のもとに冒険者が集う
ロード・オブ・ザ・リングの踊る仔馬亭(Prancing Pony Brewery)を模した木製マグ
アートワークのそこかしこでトールキン世界や北欧神話のモチーフが用いられている
筆者も指輪ファンだが、この手のテーマが好きな人間にはしっかり刺さると思われる
プレイヤーは有望な戦士となり、酒場をはしごして冒険者を勧誘する
最も戦力(合計勝利点)の高いチームを作ったプレイヤーはゲームに勝利し、晴れて邪竜討伐の旅に出ることができる
(3)メカニクス
①テンポの良さ
3人戦でインストなし30分くらいで終わる
同時プロットがテンポ感を生んでいる
3人戦だと場には3列3枚の9枚が並び、各列について、全プレイヤー同時にコインを裏向きにプロットする
簡略化したニギり競り的な
セットしたコインの数字が高いプレイヤーから順にその列のカードを取っていく
この解決はとにかく早い
各カードの情報量が少なく、枚数が多いわけでもないので、
「もし1位が取れたらこのカードが欲しい、それがムリならあれかな」
くらいに、あらかじめ目星をつけることができ、それが解決の早さを生んでいる
手番中にボーナスカードの獲得や、コイン強化も行われるため、多少はもたつくが、テンポの良さはかなり重視して作られている印象を持つ
②タテに伸ばす/ヨコに広げる
ニダヴェリアは5色のカードを集めるゲームだ
各色で性格差があるが、どれも特化させて枚数を重ねると点が伸びる
ざっくり5色中1-2色を厚く伸ばせると最も効率が良い
各カードがテキストや固有能力を持つなら、「特化したら強い」だけでもドラフトはちゃんと盛り上がる
MtGやテラフォなんかはまさにそうだ
しかし、ニダヴェリアのカードはとてもシンプルだ
タグと勝利点しか情報がない
シンプルなカードを使って楽しませるために、ニダヴェリアでは特化以外のルートを用意している
それが「ヨコに広げる」だ
5色のタグが1セット揃うたびに、英雄カードをタダで1枚がもらえる
英雄カードは、コモン1.5-2枚程度のパワーがある
英雄カードは有限で、しかも強弱差がハッキリしているので、欲しいものをめぐっての早取りがなかなか激しい
「互いが違うカラーで染めているなら、英雄カードも住み分けができるのでは?」
とも思えるのだが
実際プレイすると、
「2セット目を1ターンでも早く作りたい
だから、特化しているわけではないカラーの英雄を取る」
的な奪い合いがそれなりに発生する
このタテ/ヨコのジレンマの面白さは、宝石の煌き(2014)に少し似ている
スプレンダーのカードも、本作同様カラーと勝利点しか要素がない
カードの集め方として、タテに伸ばす特化戦術とヨコに広げる水平戦術がある
タテルートは理想的に動ければ得点効率が最も高い
しかし、カードのめくれ運や他プレイヤーの妨害に影響されやすく、安定性をやや欠く
ヨコに伸ばすルートは勝利点効率はイマイチ
しかしニダヴェリアの英雄カードのように、貴族タイルがタダで取れる利点がある
貴族タイルの噛み合い次第で、タテルートをしのぐ速度が出ることがある
Splendor(2014)
③コインの強化
ニダヴェリアはあまり拡大再生産要素のないゲームだが、コイン周りのみ明白な成長要素がある
各人は5枚のコインを持っており、3列のカードに対してベットする
0のコインでベットすると、残った2枚のコインを足し算して強化できる
たとえば4と2のコインを使わずに残していると、4のコインを破棄して4+2=6のコインを新しくゲットできる
たとえが古いが、ドラクエモンスターズの配合によく似ている
親モンスター同士をミックスさせてタマゴの+値を高める的な
育ったコインは次ラウンドからほしいカードを取るために使える
もしめぼしいカードがないなら、もっと倉庫で寝かせて強化してもいい
コインとオークション周りのプレイ感はクニツィアのラー(1999)にも少し似ている
ラーは3-5枚のコインで行う変則オークション
競りに勝つと場のタイルがもらえる
さらに共通の場のコイントークンと使ったコインとを交換し、裏返して使用不能にする
交換して得たコインは次ラウンドに使うことになる
ラーのオークションでは、
「今出てるタイルが欲しい
10の強コインをここで切ろうかな
でも今場にあるのは2の弱いコイン、取りたくない
次ラウンドかなり動きづらくなる」
「今出ているタイルは大してほしくないけど
13のコイン、ゲーム中最強のコインが今場に落ちている
弱いコインを捨てて取るのはアリかも、次ラウンドかなり動きやすくなる」
こういう思惑が交差する
Ra(1999)
ニダヴェリアでも、
「欲しいカードを取りに急ぐと、コインの成長が遅れる
かと言ってコインの成長にかまけていると残りモノのカードしか回ってこない
得点レースに出遅れてしまう」
このあたりの感覚は少し似ている
少し長くなるが、コイン周りはニダヴェリアのいちばんの魅力なので、もう少しだけ掘り下げる
中量級以上のゲームを組む場合、拡大再生産要素をどこで実装するかやや難しい
成長はほぼ万人に好かれるので、拡大要素は入れ得なのだが、入れる場所を間違えたり、入れすぎると弊害が生じる
ゲームがダラダラ続いたり、先に走った人、上手くやった人がそのまま勝つだけのクソゲーになってしまったりしかねない
ニダヴェリアのコインの成長は、競りで少し有利になるだけだ
取れるカード枚数が増えたり、アクションが強化されたり、収入が得られるわけではない
しかも他プレイヤーもだいたい同じ速度でコインを強化するので、システム面だけ抜き出すと、ほぼプレイヤーは強化されていないに等しい
強化が穏当なおかげで、ゲーム終盤もタイトなプレイ感が維持されている
とても主語が大きく、根拠を欠く比喩的な表現になるが
人体は種々の刺激に原始的な快感を見出す
ボードゲームは、
・見た目による視覚的刺激
・ゲーム中のスピード変化による加速度的な刺激
五感+平衡覚のなかでもこれら2つの感覚に訴えかけるのが得意だ
大きくて分厚いコイントークン、リッチなコイン立てで視覚的に強く刺激して、自コイン成長の快感を演出する
その分、正味の拡大再生産要素は抑えて、加速度的な刺激はあえて与えない、ゲームのテンポをタイトに維持するために
巧妙で美しい実装だと評価する
④人数によって変わる相場観
5人戦以外では総カード数固定
人数が少ないほどカードがたくさん取れて自由度が高い
狩人なんかは枚数を取ると伸びるカラーなので、3人戦の方が4人戦より打点が高い
反対に剣士や探検家は固定点なので、多人数戦でも安定して価値がある
プレイ人数によってカードの価値基準や戦術の有利不利が変わるのはとても楽しい
⑤リプレイ性はそこそこ
人数によるプレイ感の違いも相まって、3,4回は楽しく遊べる
10回遊ぶとちょっと底が見えるかもしれない
取れたボーナスの英雄カードで戦略を変えていくのだが、拡張を入れないかぎり毎ゲーム固定なので、そのあたりが弱い
拡張やプロモカードが原語版では制作/販売されており、BGGでの評価も高いので、混ぜるとより長く楽しめると思われる
Thingvellir(2020)
⑥カラーごとの差が希薄
5色あり、
・多人数戦でも価値が下がらない=レッド、ブルー
・1色で特化したい=オレンジ、グリーン、パープル
に大別される
後者のカラーがあまり個性的でない
複雑さの匙加減は難しいが、もう少しカラー間の差を持たせたつくりだと、より筆者の好みに近づく
個人ボードの得点早見表
グリーンはN²、パープルはΣ(N+2)で、5枚目から得点が逆転する
数学的な難しさのわりに、面白さにあまり寄与していない印象がある
(3)考察:ヴァリアントルール
ニダヴェリア、面白いゲームだが
前項でも少し触れたが、カードがやはりシンプルすぎて、ゲーム終盤の競りがちょっとマンネリ化、流れ作業化してしまう
また、ただの筆者のわがままだが、同時にカードを伏せて解決する、バッティング、同時プロット要素がかなり好きではない
「できるだけシンプルさを保ったままこのあたりを改善できないか」と何回かハウスルールを試して、ある程度まともなヴァリアントが定まったので、最後に共有し、考察に代える
同時プロットなしヴァリアント、3人戦用
【方法】
(変更点青字で記載)
スタートプレイヤーマーカーを用意し、適当に決定
スタプレから順に、3,2,1の宝石トークンを取る(先手不利なため)
オリジナルルールだと手持ちのコインは秘匿情報だったが、完全公開情報に変える
オリジナルルールだと場に3列×3枚並べていたのを、3列×4枚並べる(4人戦のセットアップと同じ)
いちばん上の列について、スタートプレイヤーから順にコイン1枚をオモテ向きで配置する
オリジナルルールと同じく1位、2位、3位の順でカード1枚を獲得
最後に残った1枚を1位が獲得
1位が次のスタプレマーカーを獲得(1位は不利な先手番に)
【プレイ感】
場の情報量が増え、ダウンタイムが少し延びてしまうのが唯一の欠点
1ゲーム30分だったのが45-60分くらいにまで延びる
トップを取ればカード2枚取れることから、競りが白熱するのが最大の利点
相手プレイヤーとの駆け引き感がきちんと生じる
基本ゲームだとオマケ感が強かった同値処理用の宝石トークンもかなり重要度が増す
また、1ラウンドに使うカード枚数を少し増やした兼ね合いで2ラウンドほど短縮され、若干のテンポの改善に寄与している