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風来のシレン6(2024)は、ローグライクジャンルのデジタルゲーム、不思議のダンジョン2 風来のシレン(1995)のシリーズ最新作。

読み解くべき価値を感じたため記事化する。
シレンやトルネコなど、不思議のダンジョンシリーズを多少なり触ったことがある人間を読者として想定している。

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不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録(2024,スパイク・チュンソフト)



(1)魅力
 ①シビアな持ち物管理
 ②持ち物の圧迫ストレス→マゼルンとお店による解放
 ③鑑定タスクの消化
 ④食料とレベルのトレードオフ
 ⑤持ち物スロットの疑似的な拡張
 ⑥フロア移動直後の危機
 ⑦死=緊張の最高潮
(2)ボードゲームとの比較検討
 
カタン:建設資源のため込み⇔盗賊のリスク
 ②チケット・トゥ
・ライド:列車カードのため込み⇔他者の先行リスク
 ③
グレートウエスタントレイル:持ち物スロットとしてのウシ、マゼルンとしてのカンザスシティ
(3)私的雑記

(1)魅力
要旨は以下。

持ち物スロット
満腹度ゲージ

所持上限の厳しい上記2リソースを管理しつつ、
レベルアップ
・剣盾の強化
・未識別品の鑑定タスク進行

上記3パラメータを高めていく。
このリソース管理の悩ましさとタスク達成の快感が本作の最大の魅力。

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①シビアな持ち物管理
シリーズ共通して24個しかアイテムを持てない。
武器防具、腕輪、矢といった装備品を除くと正味20個程度。
たった20個の枠に、
食料(飢え死に対策)
巻物(モンスターハウス(大きな危機)対策)
(強い単体(小さな危機)対策)
・合成用の剣盾(+1~3の修正値や有用な特殊効果)
未識別アイテム
など数多の必需品が殺到する。
・キツい縛りのもと何を残すか選ぶ、取捨選択の悩ましさ
・その判断の成否についての素早い結果返し、テンポの良さ

このあたりがシリーズ共通の魅力で、大きな中毒性を生んでいる。

またこれに関連してアイテムドロップ自体のガチャ的な魅力も大きい。
毎フロア5-10個程度落ちており、途切れることなくガチャを引かせてくれる。
麻雀のツモでもFortniteのチェスト(宝箱)でもオートチェスでのリロールでもなんでも良いが、テンポよくガチャを引かせてくれるゲームは熱中を生みやすい。

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Fortnite(2017)


②持ち物の圧迫ストレス→マゼルンとお店による解放
マゼルンお店という2大お楽しみ要素がある。
これらとの遭遇はプレイヤー感情に大きな高揚をもたらす。
マゼルンは
大蝦蟇(オオガマ)の妖怪をモチーフにしたガマガエルのモンスターで、武器や防具を合成してくれる。

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合成によって、
・自身の少しの永続的な強化
・持ち物スロットが1個再利用可能
と一度で2つのメリットが生じる。
単一の工程が複数の意味を持っており、機能美がある。

お店も、
・9個の売り物(比較的高レアリティ)の購入
・未識別品の鑑定
・売る用に取っておいた腕輪や剣盾の換金

と、これもひと粒で2-3度おいしい。
識別と換金により、大量にアイテムスロットを空けることができる。


③鑑定タスクの消化
未識別品の鑑定はダンジョン攻略を通じて適宜進めておかないといけないタスク、宿題
お店を使って一気に片付けることができ、とても気持ち良い。


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お店はレッド、マゼルンはイエローと鮮やかな配色であり、視覚的にもプレイヤーの高揚を高めてくれる。

④食料とレベルのトレードオフ
持ち物スロットと並ぶ2大管理要素が満腹度ゲージ
満腹度はターン経過で減っていく。
1フロアをくまなく探索すると50程度、探索後ターン制限ギリギリまでレベリングするとさらに100程度満腹度を消費する。
満腹度は100までしかスタックされないので、おにぎり(満腹度を50-100個回復する)などの消費アイテムを持つ必要がある。
ここでは満腹度ゲージの外的な延長としてアイテムスロットが費やされている。
満腹度がゼロとなるとApexの安地外やドラクエの毒状態のようなスリップダメージが入り、基本的にゲームオーバーとなる。
特に冒険の最序盤において、
メシの余裕はない…
が、次の階層の安定攻略のためにある程度レベリングもやらねば…」

食料とレベルのシビアなトレードオフが成立する。
食料のドロップ率は、地味ながらデザイン上かなり重要な事項と思われる。
満腹度ゼロでおにぎりや草を求めてダンジョンをさまよう体験は全く楽しくないため、頻発させるべきではない。
あくまで「欲張りすぎた際にまれに発生するペナルティ」くらいにとどめるのが無難と思われる。


ここで少しだけシレン6の話を掘り下げるが、同作は過去作と比べて食料ドロップがかなり甘い
食料だけでなく復活の草(いわゆる残機。飢え死にすると消費され満腹度マックスで蘇生)も手に入りやすい。
食料⇔レベルの経済系が崩壊してしまっている。

またこれに関連して前述のマゼルンが、
・過去作=特定の階層のみ出現
・シレン6=10F以後のほぼ全階層でごく低確率で出現
に変更されている。

これら2点により、
過去作=メシが余裕、マゼルンが出る、合成アイテムがあるときだけ絞って長居メリハリ◎
最新作=いつも制限いっぱいまでレベリング。冗長でテンポ×

となっている。
シレン6、ほぼ文句のつけようのない良作だと評価するが、この仕様から生じる99Fダンジョンの中盤以後の間延び感はかなり良くなく、好みから外れている。

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終盤の稼ぎ作業は眠気を伴う

⑤持ち物スロットの疑似的な拡張
持ち物スロットは絶対に24を越えないが、疑似的な拡張として、
・保存の壺
・最大満腹度の増加
がある。
保存の壺はマイクラでいうチェスト。
壺1つで3-5個のアイテムを保管でき、圧縮となる。
最大満腹度は初期100だが、最大200まで増やせる。
200までいくと食料枠を2-3個分程度減らす余裕が生じる。

⑥フロア移動直後の危機

緊張と緩和が周期的に用意されており、これも中毒性を高めている。
本シリーズは階段を下りた瞬間がいちばん死にやすく、緊張が高まる。
・敵に囲まれている
・モンスターハウスのどまんなか

などの窮地を、貯め込んだ巻物や杖をつぎこんで切り抜ける。
危機を脱すると今度はフロア探索の時間で、緊張から緩和フェイズに移行する。

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⑦死=緊張の最高潮
危機を乗り越えられず死ぬ直前、緊張の極致に達する。
死によって緊張から解放されるわけだが、哀れなプレイヤーはこの救済を受け容れず、再度1Fから長い旅路を始めてしまい、寝不足シレン中毒ループがここに完成する。
・緊張と緩和のサイクル
・緊張の極致で死によってゲームを閉じる

この構造はApex Legends(2019)Fortnite(2017)にかなり近いものがある。
両作とも、
・目ぼしいランドマークに降り立つ
・物資を手早く漁る
・同じ地点に降下した敵と接敵
・最初の交戦に撃ち勝つ

と、ここまでが最初の緊張フェイズだ。
続いて、
・ドロップした物資を漁る
・マップの収縮円を見て、次の目標地点をおおまかに決める
移動する

緩和フェイズが来る。
その後も、
・収縮円の内部をめぐっての交戦(緊張)
・漁り&移動(緩和)

と両フェイズが周期的に繰り返される。
そして途中で死ぬ場合でもビクロイ(1位)を獲れた場合でも、緊張の極致でゲームが閉じる。

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余談だが、同じシューターゲームのスプラトゥーン(2015)はこうした中毒ループ作りの鉄則、王道から大きく外れている。
ガチマッチでもナワバリバトルでも、マッチの最終局面に緊張のピークが来るような作りはしていない。大抵中盤には大勢が決まり、その差はあまり覆らない。
が、スプラにも十分な中毒性がある。
おそらくだが、2時間ごとにルールとマップが変わる点がリプレイ欲求に大きく寄与している。
プレイしながら必要なパーツを集めたり成長していくApexやシレンと違って、スプラは特に強化などなく、開始時に決めたブキとギアで5分間戦い続ける。
複数のマッチを繰り返しつつ「使える構成のうち、この条件下でいちばん勝率を上げられるのはどれか」を探していく。
デュオ・フルパの場合は味方との相性も見ながら決めていく。
この自分たちだけの局所的な最適解を探す試行錯誤が楽しい。
2時間というのがまた絶妙で、おそらく3,4時間だと長すぎるし、30分や60分だと足りない。

(2)ボードゲームとの比較検討

前項と関連づけられそうな作例をいくつか挙げる。

①カタン:建設のために多く持ちたい⇔盗賊のリスク

シレン2(2000)について、
「シレン2のシレン城建設ミニゲームはカタンから影響を受けた」

と制作チームの丸田さんが話されているが、外付けのミニゲームだけでなく、コアのプレイフィール(中核をなすプレイ体験)も両作はわりと近い。

・街道や開拓地を建設する
・他プレイヤーとの交渉材料にする
・4枚→1枚の港交易を行う

あらゆるアクションに資源カードは必要で、あればあるほど良い。
が、手札が8枚以上となると盗賊イベントでロストするリスクが生じる。
8枚以上の手札を抱え、盗賊から逃げ切って自分の手番を迎え、開拓地を建ておおせた際には相当な気持ち良さが生じる。
開拓地はプレイヤーの資源産出力を高めてくれる。シレンにおける合成(プレイヤーの永久的な強化)と同型。

*出典:
小舟の先輩たちのインタビュー - 丸田康司さん - 小舟のインターン - ほぼ日の学生採用企画 (1101.com)
"すごろくや"代表が語る、テレビゲームにはないボードゲームの魅力とは? | Games (redbull.com)

スクリーンショット_27-2-2024_133055_boardgamegeek.com
Catan(1995)


②チケット・トゥ
・ライド:
列車カードのため込み⇔他プレイヤーの先行リスク

線路カードのドロー
目的地カードのガチャ引き
・手札の線路カードのプレイ(線路の敷設)

のどれかを時計回りにやっていく。
詳述は避けるが、これも手札を集めるほど得点効率が向上する。
多く持ちたいが、
・最序盤の重要区間の取り合い
・最終盤の終了トリガーをめぐるレース

これらが資源集めにリスクを課している。

スクリーンショット_27-2-2024_133657_boardgamegeek.com
Ticket to Ride Map Collection 7: Japan & Italy (2019,基本版2004)


③グレートウエスタントレイル:
持ち物スロットとしてのウシ、マゼルンとしてのカンザスシティ

プレイヤーらはすごろく形式でマップを進み、ゴールのカンザスシティを目指す。
その道中で手札のウシカードをきれいに整えていく
ドローポーカーや麻雀の要領で、不要牌を捨ててはツモり、手役を作っていく。
ただ捨てるだけではなく、道中のサブアクションで特定のカラーのウシが必要になる。
よって手札が完成に近づくにつれ、打てるサブアクションにゆとりがなくなっていく

カンザスにゴールすると手役が点数化され、高得点を取れると永続能力がアンロックされる。
手札上限を開放したり、1手番に歩ける歩数を増やせたりする。
この決算が終わると手札はリセットされ、プレイヤーコマは振り出しに戻される。
振り出し→カンザス行を何度もループし、緊張→緩和を繰り返しながら種々の強化をもらってだんだん気持ち良くなっていく」というのがGWTのソロ方面の魅力だ。

この面白さはシレンの99Fダンジョン(裸一貫で1回だけ潜る)よりも、ストーリーダンジョンの周回(繰り返し潜って同じ装備を持ち越し、徐々に強化していく)により近いかもしれない。
なお3-4人の多人数戦より2-3人などの少人数戦の方が、こうした周回的な魅力が際立つ。

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Great Western Trail: Second Edition (2021,初版2016)

(3)私的雑記
一般性の低い自分語りであり、読み飛ばし推奨。

友だちと遊べないゲーム
おそらく初めて自分の意志で選び取ったゲームがシレン/トルネコだった。
小さいころからゲームは好きで、
・スーパーマリオRPG(1996)
ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド(1998)
・ドラゴンクエストモンスターズ2 マルタのふしぎな鍵(2001)
など熱中し、長く遊んだ。
が、今思い返すと、おそらく級友と遊べるのが熱中の最大の要因だった。
学校で話題に挙げて楽しく、友人の家に行って遊んでも楽しく、モンスターを交換したり対戦するのも楽しい。
反対に、シレンやトルネコは周囲の誰も遊んでいなかった
「去年(2000年)に出たNintendo64のシレン2っていうゲームが面白いらしい」と、立ち読みしたVジャンプ(ゲーム紹介雑誌)か何かでたまたま見かけた。
ロクヨンはすでに旬を過ぎた機種(後継機のゲームキューブが2001年に発売)であり、やや迷ったが、どうしても遊んでみたかった。
親に無理を言って市内の中古ゲームショップ(当時は中古個人店の全盛期で、幹線道路には3kmごとに小さな店が建っていた)を回ってもらい、手に入れ、熱中してプレイした。
最終的に、
・風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!(2000)
・風来のシレンGB2 砂漠の魔城(2001)
・トルネコの大冒険2:GBA(2001)
・トルネコの大冒険3(2002)
と4作を狂ったようにプレイした。
友達と遊べるわけでもなく話のネタにもならないのにここまで熱中したゲームは、本作が初めてだった。

ビックリの壺

ゲームについて話すこと、そして話すことで友人が増えたり交友が広がるのは、依然としてとても好きだったし、欲していた。
前述したとおりシレンやトルネコはそういった語りの喜びを与えてくれなかったが、ビックリの壺(ゲーム内に登場するアイテム)という公式のファンブック、今でいう同人誌に近いものがあり、それが需要を満たしてくれていた。

ビックリの壺
風来のシレン公式ファンブック ビックリの壺 | よもやまの壺 (kazenoko27.com)より

シレンにおいて、プレイヤーの感情曲線は死ぬ直前でピークに達する。
死に方は今でいうSNS映えするし、語り草になる。
ビックリの壺には読者投稿型の散り様コーナーが用意されていて、それがとても好きだった。
今でもいくつかのエピソードを暗記しているくらいに繰り返し、好んで読んでいた。

また伊集院光さん(1967-)ピエール瀧さん(1967-)らもシレンのファンを自称し著名人枠で寄稿されていた。
2000年前後はゲームやゲーマーに市民権がない時代だった。
30歳過ぎだった彼らはこの風潮に逆らい、
「ゲームは面白く、基本的に良いものだ。後ろ暗いもの、不健全なものだと決めつけるべきではない。自分たち大人も社会的な責務を果たしながら楽しんでいる」
と言語裡に肯定的なメッセージを発していた。
当時は言語化できなかったが、それが子ども心に嬉しかったのだと今では理解できる。
伊集院さん、瀧さんに対して今でもうっすらと親近感や好意を持っているが、この体験が起源なのだと思われる。

またこれらを承けて生じた「自分もゲームについて何か書きたい、作りたい」という感情、渇きは、消えない火種として残り続け、今の自分を強く形成している。
好きなゲームの魅力について饒舌に、理知的に、かつ熱情を持って語ることは当時の自分にとって何にもましてカッコよいことだったし、今でもそうあり続けている。


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イントリーゲは交渉系のボードゲーム

約5年ぶりにプレイし、とても楽しんだので記事化する
記事作成の目的は自分と友人の経時変化の記録
定点観測的な
年月を経て同ゲームを同メンツで遊ぶことで、感じ方やゲームへの向き合い方の変化を見る
内輪ネタなど極力避けるよう留意したものの、他の記事群とかなり毛色が異なり、あまり読みやすくないと思われる


参考:2018年05月11日 いい大人が『イントリーゲ』で全力交渉(1)(プレイ記)

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(A)基本情報
(B)プレイ記
 (1)第1R
 (2)第2R―殴打されるKomi
 (3)第3R―あまみちの発狂

 (4)第4R―そして覚醒
 (5)第5R―たけ、最後の機会
 (6)第6R
(C)感想戦と考察
 ①1000のスペースの使い道
 ②上手に踊る
 ③イントリーゲ、汚泥の詰まった聖杯
(D)総評


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Intrigue (1994)
Alternate Names Intrige + 2 more
Designer Stefan Dorra
Artist Eckhard Freytag, Clément Masson, Ian Parovel, Renate Seelig, Markus Wagner
Publisher AMIGO, Cranio Creations, F.X. Schmid, Igiari + 3 more

(A)基本情報

人数:3-5人(ベスト5人)
時間:45分 (本セッションは240分)
複雑性:1.94 (参考値:カルカソンヌ=1.90、あやつり人形=2.03)
ランク: 2800位 (2024/1/3)
要素:賄賂、交渉、拘束力のない口約束、ヘイトコントロール、競りのかたちをした何か
言語依存:なし
流通:ジェリージェリーゲームズから日本語版が発売中

デザイナー:
シュテファン・ドラは66歳、男性
言語聴覚士として障害児の支援学校で働いている兼業デザイナー

代表作:

・フォーセール(1997)
・メディナ(2001)
・ペルガモン(2011)

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For Sale (1997)

(B)プレイ記


プレイヤー
たけ:記事作成者
あまみち:他人の悪意に直面することに強い抵抗を持つ。
スプラトゥーンと筋トレの日々は彼に強固な精神的防御結界をもたらしたか?
おやすみ:5年前は好戦的な学生であった。職と家庭を持ち、一定変化したか?
Komi:初プレイ。カタンに出自を持つ。4人の中だと比較的人望が篤い。プレイ記:レーベンヘルツ(新版)(1)にTustとして登場。

たけ
「イントリーゲ、5年ぶりの再戦です!
私、あまみち、おやすみは前回と同じで、そこに3人の共通の友人のKomiちゃんが入ります」

Komi
「よろしく。
俺は初めてやからおおまかなルールを教えてもらえるか?」

たけ
「6ラウンドを時計周りにやるゲームね。
ワーカーが8体いて、自分の手番で相手プレイヤーの個人ボードに2体ずつ配置する。
配置したワーカーが相手手番で雇用してもらえると定期収入が湧くし、他プレイヤーのワーカーに押し出されることもある。
押し出しについては交渉やワイロのやり取りがある。
ワーカーの持ち主(子)と個人ボードの持ち主(親)で話し合って、子が親にいくらかワイロを支払う。
親は子との話し合いを元に、子を雇用する。
このとき、口約束を守る必要はない
なのでたとえば、『10000のマスに入れる』って約束したのを破ってもっと安いマスに入れてもいい。
元々誰かを雇用してるスペースなら、『ワイロをもらって元々いるワーカーを追い出すって話だったけど、それを反故にする』もOK」


Komi
ウソもつける交渉ゲームって感じか」


たけ
「おおむねそうやね。
序盤はウソをつく必要性が薄く、比較的平和。
反面、中盤からはどう転んでもウソをついたり裏切ったりせざるを得なくなり、場は荒れていく。

最初の4ラウンドは2体ずつワーカーを置いて、最後2ラウンドは配置なしで定期収入だけ獲得。全6ラウンドでゲームエンドです。
終了時、持ち金が最多のプレイヤーが勝利。」



手番順はたけ(ブルー)、あまみち(グリーン)、おやすみ(ブラック)、Komi(ブラウン)。


(1)第1ラウンド
たけ(32000)
あまみち(32000)
おやすみ(32000)
Komi(32000)
*()内は所持金。

【1R第1手:たけ】

収入:0
係争:なし


たけ
「最初は収入や交渉がなく、単に2個ワーカーを配置します。

(置ける相手は3人いるけど、どうしようかな。
同じ相手に2ワーカー置くのはバランスが悪いから1人に1体ずつ置くとして…
前ゲームは3人戦だったから2人しか選べず思考停止でやれてたんだけど、3人だとちょっと迷うな。
とりあえず操作しやすそうなあまみちくんのとこに1体は置くか)

あまみちくんのとこに1体置くわね。
自分のすぐ左隣で、時計回りですぐ回ってきて気分的にラクだから」


Komi
「近い方がいいとかあるん?」


たけ
「10000の良いスペースをめぐって他人のワーカーとかち合っちゃうとワイロ額が吊り上がるんよね。
この状況だとあまみちくんの場所でそういうバッティングは起き得ないから、安定っちゃ安定かなって感じやね。
もう1体は…そうやなあ、おやすみにしとくか。
(なんとなく今日のおやすみからは『場を荒らしてやろう、たけを追い込んで刺してやろう』っていう圧を感じんのよな。この感覚が合ってるか確かめたい)

これは特に強い意図はないです」


Komi
「俺のとこには置いてくれんのか?」


たけ
「Komiちゃんのことも大事にしたいけど、ここは前ゲームでひどい争いをしたおやすみくんと親睦を深めるための1手ね」


配置:あまみちに僧侶を、おやすみに医者を配置。


【1R第2手:あまみち】

収入:0
係争:たけ(僧侶)

GD2FtsQbwAAUVwC

たけ
ワイロ12000払うから、10000に置いてほしいわ」


あまみち「え~…」


Komi
「10000の収入のとこに12000で雇ってって言うの、おかしくない?」


あまみち
「いや、それは正しいねん。2回以上起動するかもしれんから。
受けるわ。
で、僕はこのたけのワーカーを自分のボードの1000,3000,6000,10000のスペースのどれかに配置するわけやな。
口約束やから、6000とか3000の場所に置いちゃってもいいと。
でも、いきなりアヤを作るのもあれやしな。
10000に置くわ」

たけ→12000→あまみち
あまみちはたけ(僧侶)を10000に雇用。

配置:薬剤師をおやすみに、医者をKomiに配置。
GD2FtsQbkAAskST

たけ
「ありがとう!」
今10000に置いてもらえて最後までどかされんかったら、最大で5回起動して50000湧くね」
(初手の動きとしては上首尾、理想的でしょう)



【1R第3手:おやすみ】

収入:0
競合:たけ(医者)、あまみち(薬剤師)

GDzJoOLaIAAbVXE

おやすみ
「たけさんとあまみちと両方あるんやな。誰からやるん?」


たけ
「親から時計回りに近い順なので、たけが先、あまみちが後です。
(このゲームの話し合い、見てから動ける後手が強いんだよなあ。
1回だけやる上がり競りみたいなもんだから。
10000のとこに置いてほしいが、後手のあまみちも狙ってくるはず。
ここは競合を避けて6000狙いでいくか)

6000に置いてほしい。ワイロが5000やとちょっと安いか?」


おやすみ
「安い気はする。
でも正直相場は読めてないな」


たけ
「(そうよな…もうちょっとだけ積んでみるか)
7000出すわ」

おやすみ
「OK,それでいったん受けるわ。


たけ→7000→おやすみ


あまみち
「6000のとこに7000か。
『下家の10000のスペースを狙いに行く』っていうのをさっきたけがやってて、たぶんこのゲームの定石っていうか、安定択なんよね。
で、同じ動きで後追いしても、ゲーム巧者のたけに勝てるとは思わんのよね。
住み分けた方が良いっていうか、違ったかたちでの協力関係をおやすみとは結びたいんよ。
10000じゃなくていいから…
たとえば『3000の場所に置いてほしい、ワイロ4000』ってのはどう?」


たけ
「10000のとこ行かへんのかい!!
(俺がわざわざ空けといたった10000のスペース、使えよ!
さらに『異なるかたちでの互恵関係』っていうワードもまあ意味不明だな、フカシか?)

あとおやすみは、『10000のとこに来てほしい』と思ってると思うぞ~!!」
(自分の10000での係争が多く発生するほど得られるワイロは多く、そのためには早く埋めた方が基本的には良いはず)


Komi
「そんな煽るなよ(笑)
煽ったりするよか、単に誰がいくら損してるか計算するだけのゲームちゃうんか?」


たけ
「そういう見方もあるとは思う。
ただ、勘定がよくわからなくなってからこのゲームは化けるんよ」

Komi
「そういうもんか…?」


おやすみ
「たけの言うとおり、1000、3000は今狙うとこではない気がするな。
逆に、たけが取ろうとした6000をお前が狙いに行ってもいいんじゃないか」


あまみち(頭を抱え、歯を食いしばる)
「うう…そうやな、ちょっと待ってくれ。
まだ戦争的な気分になってないねん。
ちょっと、スプラトゥーンをやってるときの気分になるわ。
マンメンミ!!マメミ!
(長い沈黙)
……カンで言うと、おやすみの案に同意やな。
6000のマスに競合した方がいいと思う。
ワイロ8000払うわ」


あまみち→8000→おやすみ
おやすみはあまみち(薬剤師)を6000に雇用、たけ(僧侶)を3000に雇用。
さらに薬剤師をKomiに、医者をたけに配置。

たけ
(あまみち、全然合理的で嫌らしい手打つするじゃん!!!
やりやがったな~!!!!!)


GDzJoOJaUAAL96x

【1R第4手:Komi】

収入:0
係争:あまみち(医者)、おやすみ(薬剤師)

GD2Exrpa8AAJw6k

Komi
「あまみちと話し合いか」

あまみち
(たけと争った1分後におやすみと争う…
この過酷な現実に耐えられない!)

「……マンメンミ!
……ここでビビったらいかんのよな…
ワイロ13000で10000に配置してほしい」

あまみち→13000→コミ


Komi
(これ、やっぱり暗記ゲーやと思うんよな。
なんか熱くなってる人らいるけど、俺は普通にフラットに打っていこう)

「OK。
次おやすみなんやけど、ここでおやすみからも10000の交渉をされると、プレッシャーがかかってしまうわ。プレッシャーをかけられるのはあんま好きじゃない。
被せる交渉をされるとあまり機嫌の良い話にならない気がする」


あまみち
(すげー、交渉巧者っぽい言い回しや。
『プレッシャーをかけてほしくない』、俺も今度から使おう)

コミ
「自分の葛藤をさらしてしまうっていうのは、他人に大きな情報を読まれてしまうわけで、それが目先のワイロよりも長い目で見てマイナスやと思うから、できるだけすんなり決まる話にしてくれ」

おやすみ
「わかったわ。上乗せせずピッタリ払うのでどう?
ワイロ6000で6000に配置してほしい。
(今回はできるだけドライに、冷淡に打っていこう。ワイロは安い方がいいし、収入値と同額だと計算しやすい)

コミ
「全然良い」

おやすみ→6000→Komi
Komiはあまみち(医者)を10000に、おやすみ(薬剤師)を6000に雇用。
さらに学者をたけに、僧侶をおやすみに配置。

GD2ExrlaEAAK4Cf


(2)第2ラウンド―強く殴られるKomi
Komi(51000)
おやすみ(41000)
あまみち(23000)
たけ(13000)

1
6時、9時、12時、3時の順でたけ(青)、あまみち(緑)、おやすみ(黒)、Komi(茶)
(画像は棋譜を元にした再現)


【2R第1手:たけ】

収入:13000
係争:おやすみ(医者)、Komi(学者)

GD2ExrobAAA0mCV


たけ
「おやすみと話したあとにKomi。
前記事の僕だったら、
『おやすみ、14000くれ、そしたら絶対10000に置く!』
つって、5秒後のコミちゃんの交渉で、
『おやすみのアホのコマは10000やなくて6000に置くことにしたわ。
コミちゃんのコマを
10000に置く交渉をやろう』
って言ってたと思うんやけど…」

おやすみ
「そうやな。それやられた記憶あるわ」


たけ
「僕も齢を取ったため、そういう動きはもうちょっとようやらんな。
(自分の変化とは別に、相手が悪いんよな。
今回4人目で入ったコミちゃんが、このゲームをたぶん単なる収支暗記ゲームとしてプレイしようとしている。

そういうまともな人間はたぶんこういう手荒な交渉に強い拒否感を示す)

確定的なことは言えないが、最終的にコミちゃんより多くワイロが置けてたら、おやすみのコマをより高い位置に置くとは思う。
ただ、後手のKomiちゃんは見てから動けるから、1000だけ高くワイロを出す、みたいなことは全然やれるとは思う。」

Komi
(なるほど、その論理は理解できるわ。
たしかにそういう意味では、後手に敵がおる場合の交渉はたしかに不利やな。裏切る云々を抜きにして。)


おやすみ
「うーん…」


たけ
(しかしこの男、一向に具体的な額の提示をしないな……
『具体的な金額の話をするのはみっともない』と教わって育った高貴な出身だったりするのか?
あるいはなんらかの発達特性の影響か?)

「じゃあさ、ワイロ12000で10000に配置でどうかな。お前から12000もらったら、あとから13000積まれようが14000いかれようが、10000に配置するよ。
僕にとって最悪なのは、5000くらいのワイロを支払われてしまって、『3000でも6000でもええわ』って言われてしまうこと。
ちゃんとワイロは欲しい」


おやすみ
「俺はあまみちから12000じゃなくて、13000とか14000取ろうとしてたし、ここは13000払うわ」


おやすみ→13000→たけ

コミ
「で、俺のワイロの番か。
俺は10000のところに被せる気はないんよ。
たけはちょっと色をつけてるけど、俺の考える相場でやってみたい。
さっき俺は6000もらっておやすみのコマを6000のとこに配置したけど、同じようにワイロ6000をたけに払うわ。で、6000に配置してほしい」
(収入と同額のワイロを払うと計算と暗記がめちゃラクになるんよな。
他3人は変に色をつけてやり取りし合ってるけど、俺はできるだけシンプルに動きたい)



たけ
(6000は安いな。8000くらい絞りたかったが…
Komiちゃん相手に俺から角を立てに行く気はないし、従うか)
「OK」

Komi→6000→たけ
たけはおやすみ(医者)を10000に、Komi(学者)を6000に雇用。
さらにあまみちに学者を、Komiに僧侶を配置。

GD2ExrmbYAA-gZ9

【2R第2手:あまみち】

収入:16000
係争:たけ(1000or3000or6000)

GD2FtsRaMAAkJ7m

たけ
(ちょっと足元見るか)
6000に置いてほしい、ワイロ5000でどう?足らんか?」


あまみち
「うーん(苦悶様顔貌)」


たけ
「まずい、あまみちくんは他人の悪意に弱いんやった。
(この頻度で黙り込まれるとこのゲームだけで1日終わりかねんぞ…
円滑に進めるためにも色をつけるか)

6000の位置は、ワイロ5-7000が相場やと思う」


あまみち
「それはそうやな」


たけ
「じゃあまあ7000払うわ」



たけ→7000→あまみち
あまみちはたけ(学者)を6000に雇用。
さらに学者をおやすみに、学者をコミに配置。

GD2FtsPa0AAriat

【2R第3手:おやすみ】

収入:16000
係争:Komi(僧侶)とあまみち(学者)
2

Komi
「おやすみ、10000に配置してほしいわ。
ワイロは、これまで俺は同額の相場を提示してるから同様にワイロ10000で受けてほしい。
ただ、後手にあまみちくんがおって、彼も10000を狙ってくるっていうのは、わかる。
でも1点、おやすみ、お前は俺のスペースのワーカーから10000の収入を得ている。
俺からヘイトが溜まると10000のワーカーをどかされかねない。
さらにいうなら、俺は今いちばん収入値が低い。
だからここの10000は譲ってもらわんと困る」


おやすみ
「論理は明快やな。あとはその気持ちが数字で伝わるかやな」


Komi
(ワイロ10000では通らんか)
「たけが初手でつけた12000の基準に沿って、ここは13000払うわ」


Komi→13000→おやすみ

あまみち
「これなあ…たぶんなあ…
スプラトゥーンの心…
僕がイカちゃんなら、『ワイロ14000か15000払って俺を10000に配置して』って言うねん」


Komi
「それを俺に対してやる?
バチバチになるで」


おやすみ
「ワイロ15000は親としては魅力的。
ただ、もらってしまうと、もう片方を1000に入れる羽目になる。
10000以上払って1000のスペースに入れられた日には、そいつはもうしばらく上がってこれんよ。
そういう目に遭う人間を選びたくない」


たけ
「Komiちゃんがケツを見せたってのはある。
このゲーム、後手が明白に有利であり、先手で高くワイロを積んでしまったコミちゃんの失策ではある。
ケツを見せた人間のケツは叩かなければならない


あまみち
「ケツ?」


おやすみ
隙を見せたってことね」


あまみち
「……14000にするわ」


おやすみ
「ちょっと困るなあ…」

あまみち→14000→おやすみ
おやすみはあまみち(学者)を10000に、Komi(僧侶)を1000に雇用。
さらに医者をKomiに、薬剤師をあまみちに配置

3
このボードからグリーン(あまみち)は16000の収入を得るが、茶(Komi)には1000しか入らない

Komi
「たけ、お前、これはお前が場をいじくったせいで起きたからな!?
覚えとけよ!!」


おやすみ
「これでKomiちゃんはだいぶ厳しくなったか」

Komi
「かなりきついな~…
…でもこれから5回も収入があるわけやろ?
俺はまだ終わってないと思ってる。
最下位筆頭になったわけやし、ここから弱者であることの強みを活かして上がっていくわ。
(収支暗記ゲームとして、完全論理だけでやっていくのはやっぱり無理そうやな。
たけとあまみちは最初から論理ゲームをやる気がなさそうだった。
そのなかでおやすみだけは論理が通じる人間かなって思ってたんやけど…
ワイロ14000をもらう流れを切らなかったおやすみも、今やあちら側よなあ。
信用値が減ったっていうか、俺のおやすみ観を更新していかざるを得ない)




【2R第4手:Komi】

収入:7000
係争:たけ(1000or3000)、あまみち(1000or3000)、おやすみ(10000)

4

Komi
「盛りだくさんやな。とりあえずたけから行こか」

たけ
「1000と3000のスペースが空いてて、そこに自分のワーカーとあまみちの学者がいる。
(3000に行きたかったけど、交渉で後手だし、たぶん俺に対してのヘイトも強そう。
ここはワイロ積むのはリスクしかないな)

ワイロは支払いません


Komi
「はあ?その場合って、俺はこいつを叩き出せるわけ?殺したりとか」


あまみち
「それは無理で、必ずどこかに雇用する必要がある。
この場合1000か3000なんだけど、たぶん1000のとこにお情けで置く感じになる」

Komi
「分かった。
次はあまみちとの交渉か。
(さっきはおやすみを焚きつけた挙句、俺へのワイロは0とかなめとんのか、たけ)

俺がいちばんむかついてんのはおやすみじゃなくて、たけやから」


たけ
「ええ!??」


あまみち
「僕をラジコンにしてワイロ積ませたもんな。人道に対する罪だよそれは」


たけ
「だって楽しかったから…
さらに、『自分が持っている情報やセオリーを中立目線で共有する』っていう正しいことをしたはずだから、俺は…」


あまみち
ワイロ1000で3000に配置してほしい」


Komi
(1000??安すぎるやろ…)

「1000はありえんかな。
あと、今の交渉の直後におやすみが俺にワイロ送るターンが来るやん。
そのとき、10000のマスにおやすみのコマを入れてあまみちのコマをどけるか、っていう選択をすることになる。
その未来の話を今ここでするっていうのはルール上問題はない?
つまり、直近の未来であまみちのコマをキープしておくかわりためのワイロをくれんか?っていう」
(
このゲーム、ちょっとわかってきたわ。
本来たぶん難癖をつけるっていうか、上手に踊るっていうか、無理くりそれっぽい理由をつけてワイロを取りに行くゲームやぞ。
けったいなゲームやな~(笑))


たけ
「!!
まったく問題はない。その後、話し合いに沿って履行されるかは別だけど。
(こいつ、新しいワイロの取得法を創出しやがった!商才の塊じゃん!!)


あまみち
「3000のとこに置くかどうかってだけじゃなく、その次の10000の話も今ここでできてしまうのか。
めちゃくちゃイヤな交渉やな~…」


Komi
「額としては最低10000は欲しい。
相当俺はへこんでるし、そこでようやくスタートラインに立てるレベルや」


あまみち
「いやでも、何にせよ僕とおやすみで10000スペースを取り合うんだけど、ここで払おうが払うまいがたぶん僕のコマは死んでると思ってるんよね」


Komi
「現状おやすみが1位であり、心情としてはあまみちに10000を譲り続けたいと思っている。でもおやすみとも仲良くはしたい」


あまみち
「心情として、本来争点になっていなかったはずの場所が新たに交渉の争点になるのがかなりイヤなんよね。
抵抗感がある、めんどくせえな、という。
あくまで1000と3000どっちに置くかの話でしかなかった」


Komi
「馴染めないのは分かるが、そんなん言ってたら多分今後の展開に一切ついていけんようになるぞ」


あまみち
「ルールのアップデートは本当にめんどくさいし、気が乗らないが…
やるか。どうせ数時間で終わるしな…人生と違って。
でも……(長い沈黙)
やっぱりワイロはゼロで行くわ」


たけ
「えーい!!!!
(後手を取られて不利である以上、ヘタにワイロを積まないのはたぶん最も合理的な選択だ~!)」


Komi
「ウソやろ!??
(『最下位である俺の交渉に乗ってトップ目であるおやすみを叩く』っていう、最低限のお仕事さえやってくれへんのかこいつらは…
カタン打ったことないんか?)


おやすみ
(ゼロはちょっとないなあ、こいつはちょっと話にならん。
ここでは言外に『Komiちゃんの提示した10000の話は蹴るけど、3000のマスには雇用してほしい』って話はしてるわけで、それならゼロじゃなくてワイロ2-4000くらいは積んで筋を通す必要がある。
ここでその必要な工程を踏まないってことは、今後俺やKomiちゃんから同じように法外に安い値付けをされても文句は言えんはずや)


あまみち
「だって未来のこと考えたくないねんもん…」


Komi
「おやすみよ……(ため息をつく)
こいつら、こういうやつらしいぞ」


おやすみ
「我慢して黙ってたけど、相当ヤバいな(笑)」
(たけさんとあまみちのホットラインは今日も好調やな。
まずここを切らんと勝負にすらならん)


Komi
「最後はおやすみと、あまみちを雇用してる10000のスペースについて交渉か。
俺はもう、今ならおやすみからのワイロが0でもお前に10000の場所取らせるぞ。
あまみちへのヘイトだけで取らせられる」


おやすみ
「10000のスペースやし、0ってのは雇ってもらう側もさすがに気分悪い。
ここはワイロ10000払うわ」


おやすみ→10000→Komi
Komiはたけ(僧侶)を1000に、あまみち(学者)を3000に、おやすみ(医者)を10000に雇用。
あまみち(医者)を10000から解雇。
さらに僧侶をたけに、薬剤師をおやすみに配置

5

(3)第3ラウンド―あまみちの発狂

おやすみ(74000)
Komi(49000)
け(38000)
あまみち(32000)
6

【3R第1手:たけ】

収入:22000
係争:Komi(1000or3000)
7

たけ
「係争は、1000と3000のスペースが空いている。
Komiちゃんは3000に置いてほしい感じかな?」

Komi
「そうやな」


たけ
「Komiちゃんはへこんでるけど、無料だとさすがにこちらもキツいため、ワイロ2000くらいは欲しい」


Komi
「OK」

たけ
「配置は…そろそろ他プレイヤーの10000のスペースにケンカ仕掛けなあかん場面よな。
いよいよイントリーゲが始まってしまう。
…2ワーカーとも10000に置くわ。」


Komi→2000→たけ

たけはKomi(僧侶)を3000に雇用。
さらに学者をおやすみ(10000)に、医者をKomi(10000)に配置
8

【3R第2手:あまみち】

収入:17000
係争:おやすみ(1000or3000)

9


あまみち(32000→49000)

あまみち
「係争はおやすみのワーカーのみ。1000と3000が空いててどちらかを埋める感じ。
さっきのたけとだいたい同じやね」


おやすみ
ワイロ1000払うから、3000に置いてくれ」


あまみち
「ええ~…」
(1000は安いなあ)


たけ
(おやすみが前後に揺れていて、ストレスや動揺、自己矛盾への葛藤が見てとれるな。
押せばもうちょっと取れるやろ)

「ここは最低でも2000、ワンチャン3000取れるぞ!
立ち向かえあまみち!」


あまみち
「ああ~……2000くれ」


おやすみ
「そうやって周囲の意見に流されるんかお前は??


あまみち
「ああ~……交渉したくねえ……
みんな1回黙ってくれ」

おやすみ
「そもそも俺が1000渡したときに、お前(物理的に)手をつけたよな?
そのあとでたけがごちゃごちゃ言ってきて2000よこせとか、意味不明やないか?」


あまみち
「ああ~!!!!!!」
(叫びながらワイロ1000をおやすみの前にたたきつける)


おやすみ→1000→あまみち
あまみちはおやすみの薬剤師を3000に配置。

10

おやすみ
「ちょっと1回、進行上の取り決めをしよう。
あまみちが混ざる交渉中には、他プレイヤーは基本的に発言しない
したとしても挙手制にする。
(このままのペースで続けるとダウンタイムが延びてゲームが進行不能になるし、たけ―あまみちのホットラインを切るためにもこうした方が良い)

たけ
「まあ分かった。
でもあれは2000取れる場やったからなあ。
取れるときに取らへん人を黙って見てるのもなかなかラクではないわな。」


あまみち
「それの方がええかもしれん。
誰かの発言が耳に入ると、それを要請や命令としてオートで受け取ってしまって、そこで1回思考がストップするんよね」


たけ
「あまみちくんをみんなで綱引きして引きちぎるのを楽しむゲームでもあるからなあ。
引きちぎれ方で新年の吉凶占いもできる。
まあしゃあない。終盤こうなってしまうのは避けられない」


Komi
「いや、全然引きちぎる気はないよ。
一時的にこういう状況が起きただけやろ」


あまみち
「あああ~!!!!!!!!
(椅子から立ち上がり、床で腕立て伏せを始める)
俺は強くなるんや!」


Komi
「そうや、頑張れ!
腕立てやれ!」


あまみち
「許して!みんな俺を…!俺のこぶしで…
畜生!!もうイヤや……
あいつもあいつもみんな僕が〇したるんや…!!!」
(20回ほどの腕立てを終え、着席する。目に涙を浮かべている)


Komi
「マジ泣きすんなよ(笑)」


あまみち
「昔のトラウマが…許さんからなお前ら」

たけ
(”綱引き”ってワードが良くなかった感じか?
捨て台詞を吐いた僕はとてもお行儀が悪かったし、反省すべきだが…
試しにもっかい言ってみたらどうなるんだろう?)

まあイントリーゲって、人間綱引きやからな」

あまみち
「この世が憎い!許さん、俺がこの世を破壊するんや。
(再度腕立て伏せを開始する)」

たけ
(再現性がある!)

「分かったあまみちくん、とりあえず2体ワーカー置いてくれたらしばらく休めるから。
置いちゃってくれ」


あまみち
「腕立てのおかげで、心拍数が、上がったわ…!
たぶん(心理的負荷に身体的なダメージが伴っていないことによる)心身の不一致が辛いねん。
配置か……もう疲れたわ、ちょっと無理…」


あまみちは僧侶をおやすみ(1000)に、薬剤師をたけ(1000)に配置。

Komi
「おいおい、どっちも1000って。
1000スペースへの配置はマジで捨てみたいやと思うけど、ほんまに大丈夫?
必要なら休めよ。
試合放棄せんといてな」 


あまみち
「いや、大丈夫、考えがあるねん。見といてくれ」


【3R第3手:おやすみ】

収入:29000(102000)
係争:Komi(6000)、たけ(10000)、あまみち(1000)
11

たけ
「収入30000はヤバすぎる!腕立てしとる場合ちゃうぞあまみち」


おやすみ
「係争は全3回。
1回目はKomiの薬剤師。あまみちと6000の場所で競合」

Komi
「俺は本当に収入がないから、置かせてほしい」

おやすみ
「Komiちゃんは最下位やし、ワイロ3000とかでもあまみちをどけてコミちゃんのワーカーを雇用するよ」


Komi
「いや、俺は6000とかが相場やと思うから、ここは6000払うよ」


Komi→6000→おやすみ

おやすみ
「2回目の係争。10000の場所でたけの医者。あまみちと競合」


あまみち
「ここなんやけど、このあとで1000の場所で僕もワイロ渡すチャンスがあるじゃないですか。
その際に、10000のスペースについても後手からワイロを渡せるよ」


Komi
「さっきの謎ムーブはこのためやったんか!」


あまみち
「そう。捨ててたわけじゃなくて、さっきKomiちゃんがやってみた動きを僕もやってみようと思って」

たけ
「それはイヤな1手やな。後手で動かれるっていうのは理解した。
が、俺もこの10000は欲しい。
おやすみは誰へのヘイトとかはなく、単に数字だけで冷淡に場を見たい感じやんな?」


おやすみ
「そうやな。
(実際そうやし、現状のトップ目は僕やから、このまま冷えた値付けで場が進むほど勝利が近づく。)


たけ
「数字だけ、って言われてしまうと、お金を払う気が失せるんですよ。後手を取られているわけなので。
0ベットでもいいんちゃうかとさえ思っている。
ただ、おやすみとてワイロは欲しいわけでしょう?
0はイヤなはず。
よって、なにか俺がワイロを置きたくなるような話をしてもらえませんか?
話によっては12000、13000払う気は全然ある。
でも取れる確証が現状あまりにもないから、払えない」

おやすみ
「相場はわからんな」


たけ
(意地でも自分から数字は出さん感じか。
ここはインドや中東のぼったくりお土産屋とちゃうねんぞ?)

「じゃあ、先手で不利ってことも加味して14000。ワイロ14000で10000の権利を確定。
後手なら12000。
もし受け取ったうえで約束を反故にされるなら、ちょっと精神を保てないと思うから、15分くらい表出て風に当たってくるわ。
(おやすみは頑丈やから、多少芝居がかった脅しをやってもOKやろう)


たけ→14000→あまみち

おやすみ
(こちらからしゃべりたくなかったから黙ってたが、14000は俺目線でも全然妥当やな)
「3回目の係争。あまみちが1000のスペースでKomiちゃんと競合」


あまみち
「僕がどうするかやけど…
たぶんたけに14000のワイロを払わせた時点で、このワーカーは十分に仕事してるんよな。
本来8000-12000くらいが相場だったところが、後手の競合が入ったことで吊り上がってるわけやから。」


コミ
(論理的には正しそうだが、ここで中途半端にオリるのも悪手に見えるな~。
1位のおやすみをさらにアシストする意味不明な仕事になってしまっている)

ってかそもそも、君らおやすみのスペースにワーカー置きすぎやねん。
今度からもっと僕のとこ置いてや」


あまみち
「それは確かにそうなんやけど、Komiちゃんよりはおやすみの方が置きやすいってのがどうしてもあるんよ。
(自分のすぐ下家がおやすみで、最後手で交渉できるってのがやっぱ大きいわ)

ワイロ0にするわ。」


おやすみは、1000にあまみち(学者)、6000にKomi(薬剤師)、10000にたけ(医者)を配置。
Komi(1000)、あまみち(6000)、あまみち(10000)を解雇。
おやすみは僧侶をKomiに、学者をあまみちに配置。

12

【3R第4手:Komi】

第4手番(Komi)

収入:15000
係争:
たけ(10000)、おやすみ(3000)
13

おやすみ
たけに10000の場所で先手で喋らせたあとに、最後手で俺が3000の交渉権を持つ。
もちろん俺は3000の話だけじゃなく、10000の僕のワーカーを蹴り出されへんようにワイロを積むつもり。
さっきのあまみちくんの1000への配置と同じ感じやな。

たけ
(被せられて後手を取らされ続けるの、もういい加減キツいな。
メタ的な信用値も元々全然ないし、ちょっと1位争いからはさすがに脱落かなあ。
せいぜい楽しく踊るか)

「とりあえず、おやすみがダントツトップ目っていう見解はコミちゃんも持ってるよな」


Komi
「そうやな」


たけ
「ってことは、10000の場所はおやすみじゃなくて俺に譲ろうという意志はある?」

Komi
「基本的にはそう」


たけ
「そしたら8000払うわ。」


たけ→8000→Komi


Komi
「たけからは8000もらったけど、おやすみの払い方によってはその約束を反故にできはする


おやすみ
「なるほど。ワイロ相場は8000-12000くらいか」


コミ「そんなところやな」

たけ
(良くない展開やな~。とりあえず大声出して場のリセットを狙うか)

「そんなことするんやったらな、おやすみに対しての私怨として、もっかいKomiの10000のスペースに俺のワーカー置いて追い出しにかかるぞ!!!
逆に、おやすみが10000のスペースで争うのをやめてくれるなら、俺のワーカーはおやすみのスペースに置くわ。
ジャマされない上にワイロももらえる分、これはおやすみにとっても悪い話ではないんじゃないか?」

Komi
「とは言ってるけど、こいつは冷静な男や。
ここで追い出されても、ちゃんと1位を狙って論理的に打つやろ。」


たけ
「感情論で動くよ。
(ここで競り負けたら1位が取れないのは決定的になる。脱落したプレイヤーは論理的な打ち手を演じ続ける責務から解放される)


Komi
ワイロ12000もらったら3000も10000もおやすみのコマだけ雇用するわ」


おやすみ
「受けるわ」


Komi→12000→おやすみ
Komiはおやすみのワーカーを3000,10000に雇用。
さらにたけに医者を、おやすみに学者を配置。

14

たけ
(ひえ~!
いよいよ完全に詰んだな~!)

(4)第4ラウンド―あまみちの覚醒
おやすみ(110000)
Komi(80000)
あまみち(50000)
たけ(30000)
15

【4R第1手:たけ】
収入:29000
係争:あまみち(1000)、Komi(10000)

16

あまみち
「最初は僕で、1000のスペースか。
競合もおらんし、何も支払わんわ」


Komi
「次は10000のスペースで、俺が交渉権を持つ。競合はおやすみ。
現状俺はたぶん3位やねん。
普通の交渉ゲームやと、たけ(暫定2位)としては1位のおやすみを潰したいわけで、俺からいくらかワイロを取って、10000のところに置く。1位を落とす仕事やからな」


たけ
「それはそう。できるだけ多くほしい。
16000くらいほしい」


Komi
「正直0ベットでもここはおやすみをどかして俺を取る場面やと思う」

たけ
「もし0なら俺はおやすみを取るよ。
最低13000やな。12000置かれても、俺はおやすみを取る。
(なめられたら終わりだ。
軽視されないためには、論理的に破綻した手であっても、ときに打たねばならない)


Komi
「それは絶対ない。
………(両者長い沈黙)
ないやろ?
…え、ほんまに言ってる?」


たけ
12000。12000はくれ」


(1分ほどの押し問答)

たけ
11000。」


Komi
「分かった」


Komi→11000→たけ
たけはKomiの医者を10000に雇用。
おやすみの医者(10000)を解雇。
さらに医者と薬剤師をKomiに配置。
17


【4R第2手:あまみち】
収入:2000
係争:おやすみ(6000)
18

たけ(収入2000はネタにできんくらい低いな…)


おやすみ(あまみちは死んだな…)


Komi(強い場所にワーカーを置けてない以上、まあしゃあないわな)


おやすみ
「係争は僕のコマで、6000のスペース。たけと競合。
世界にもう学者はおらんわけで、俺がここを取れるとあと3回収入が湧く。
18000取れる。
ワイロ7000でどうかな。
(あまみちに対しては淡々と安い値付けを通しに行こう)」


あまみち
(もう頭が回らんのよな…
7000では安い気がする…
が、賃上げを要求するのも心がしんどい…)

どうしようかな…
7000か、8000かもらえたらいいな。
どうにかして場を加熱せんと僕には勝ち目がないんやろな」


たけ
(それはそう。これは上手に踊っておひねりをもらうゲーム。
あまみちくんは踊ってワイロを稼ぐしか勝ち筋がない。
コツは二つ。
一つは命を握る相手を楽しませること、もう一つはその人間を納得させる理由を述べること)


あまみち
「(約2分におよぶ沈黙)


Komi
「あまみちへの助言としては、この6000をめぐるやり取りでおやすみからできるだけ多くワイロを取ることじゃないか」


あまみち
(さらに3分の沈黙)
「おやすみとたけが1位を争っていて、Komiちゃんと僕は蚊帳の外だと仮定する。
その場合、この6000のマスをおやすみが取れると18000、たけが取れると12000の収入がほぼ確定で入る。たけの方が1手番少ないから。
この場合、差し引きで、最大値30000までがワイロとして取れる分やと思う」


たけ
(とても良い踊りじゃないか!自力でたどりついたか!!)


あまみち
「0から30000やとしたら、中間は15000なわけで、おやすみのワイロ7000の提示はおかしい」


たけ
「あまみちくんが成長している!俺はそれが嬉しい!」


おやすみ
「15000は取りすぎやろ」
(相場的にはあまみちが正しい。
17000くらいが妥当な気はする。
でもたぶんここは押せば値が下がるな。
俺が不当に儲けたらKomiちゃんとたけからのヘイトも強まるやろうけど、もうええわ。
もう終盤、ヘイトは無視してカネを取っていくフェイズや)


あまみち
「いや、そんなつもりはないよ…
あ、そうですね…じゃあ、10000くらいじゃダメかな」


おやすみ
「10000でも高いと思うけどなあ。
俺、これまでちょっとワイロ出しすぎてたから、ここらでちょっと絞らんといかんのよ、どうしても」


たけ
(目覚めたかと期待したけど…あまみちはやっぱそうやな、ボンクラ、いや、まだまだ成長の余地が大きいな……
おやすみの発言を耳に入れず『15000か0や』って連呼するだけでワイロ15000降ってくる場面なんだが、彼にはその手が打てない。
『新世界より(2008)』における、呪力で味方を撃てない縛りを課せられた新人類を想起させるな。
いや、自分の耳をふさげない呪いって感じかな)


コミ
(あまみち、おやすみに良いように言いくるめられてんな~)


あまみち
8000でいいわ。…クソが」


おやすみ→8000→あまみち

あまみちはおやすみ(学者)を6000に雇用。
たけの(6000)を解雇。
19


たけ
「これはあまみちの明白な悪手やな。
でも、おやすみも成長したんだなって感じたわ。
5年前のお前だったら、たぶん頭に血が昇って、
『たけを潰そう!そのためなら15000、いや16000くらい全然払うわ!!!』
つって札束握らせてたはず。
安定感が出たというか、人格的に円熟したな。
その成長が嬉しい反面、
『とがったナイフのようだった男でさえも、こうやって丸くなっていってしまうんだな』
という悲しみもありますね」


あまみち
「で、配置か…あまり戦いに巻き込まれたくないってのはある」


あまみちは3000をKomiに、医者をたけに配置。


【4R第3手:おやすみ】
収入:19000
係争:Komi(10000)
34

Komi
(絶対におやすみに多くワイロを払いたくない。
いっちょ腹芸カマすか)

「10000に置いてほしいけど、俺のとこにいるおやすみの10000があまみちによって脅かされている。
もし俺が0ベットで俺のコマを雇用してくれるなら、おやすみのコマも同じように雇用するわ」


たけ
「待ておやすみ、それは後から動かれる、すなわちケツを晒すことであり…ここではケツとは…」


おやすみ
「わかってる」
(Komiちゃんは普段そういう裏切りをやる人間ではないんやけど、さっきたけとの約束をためらいもせず反故にしてるから、このゲームではもう信用できんのよな。
たぶん裏切ってくる)


Komi
「ちょっと0はさすがに無理やよな。
払うわ。
6000やとどう?」


たけ
(ひえ~!!そんな鼻くそみたいな額、かえっておやすみを逆上させるだけだぞ!
しかしまあ、1回「タダでくれんか?」って言ってみるマインド、Komiの出身地の河内、南大阪感が感じられてめちゃくちゃいいな。
ここまで振り切った振る舞いができるのは長所だな…ヒモの才能…)

おやすみ
「収入としてはコミちゃんが30000、たけが20000出る場で、差し引きすると50000の差が生まれる場でもある。
ワイロの相場はわからんけど、20000とかじゃないか」


Komi
「いや、6000も払いたくない。
なお6000で交渉するわ。
6000で受けてくれるなら、10000の場所にいるおやすみのコマを守ることも考えられるかなっていう限度額や」


たけ
(交渉を無用に複雑化させようとしてるな。
自分目線だとトップでないKomiちゃんを応援すべきだが、彼は間違いなく直後にこの約束を反故にするわけで、そういった悪趣味なショーはできれば見たくないな)


おやすみ
「未来の話を含めての交渉はやめよう。拘束力がないから。
17000とかの価値はある。ワイロ6000は安すぎる」


(5分にわたる押し問答)

Komi
「わかった。じゃあ10000。
とにかく、ここを取れんと俺の負けが確定するねん」

おやすみ
「10000じゃなんも変わらん。
15000が最低ライン、高くて20000もらえる場やと思ってる。
そのあいだやな」

Komi
「じゃあ15000


おやすみ
「受けるわ」


Komi→15000→おやすみ
おやすみはKomiを10000に雇用。
たけ(10000)を解雇。おやすみは学者をたけに、僧侶をあまみちに配置。


21



【4R第4手:Komi】
収入:35000
係争:たけ(6000,10000)、あまみち(3000)
22

Komi
(収入が取れすぎたな…ちょっと一芝居打つか)

「今回初めてデカい収入が取れた。
でもちょっと焦ってんねん。ここに来てようやくコレやから。
どれだけおやすみとたけと差がついてるんやろうって。
ワンチャン自分がドベかもせえへんって思ってんねん」


たけ
(ワイロを多く取りたいための演技か?
仮に、
・あまみちくんがまだ使い物になる
・これが今日のラストゲーム
だったら、ここで全エナジーをつぎ込んで、15分くらい粘ってワイロを減らす交渉をやるかもしれないが…
が、あまみちくんは死んだ。
しかも時刻はまだ昼過ぎ。
あと1-2ゲームはやりたい。
ほぼ負け確のこのゲームを無理に引き延ばす意味がない)

「分かった。
16000収入の場で、僕が全部取れると32000の収入になる。
32000だから、ワイロの上限は20000とかかな。
僕は12000、コミちゃんが20000の利益を得る」


Komi
「(かなりくれるな。もう少しいけるか)
22000くれんか」


たけ
21000やな」


Komi
「わかった」


たけ→21000→Komi

Komi
「次は3000のスペースについて、あまみちとの交渉。
(6000の収入に対して、2000-4000のベット額で、3-4分による押し問答。
約3時間プレイしており、冗長な議論が常態化、明らかに卓全体に疲れが見えている。)
じゃあ2000でいいよ」

あまみち
ワイロ2000支払うわ」



あまみち→2000→Komi
Komiはたけ(6000,10000)、あまみち(3000)を雇用。
おやすみ(3000,6000,10000)を解雇。
さらにたけに薬剤師(1000)を、おやすみに医者(3000)を配置。

23

おやすみ
(かなりガッツリ俺の収入減ったな。
この瞬間は1位やとは思うけど、逃げ切れるか…?)

(5)第5ラウンド―たけ、最後の機会
おやすみ(136000)
Komi(1120000)
あまみち(58000)
たけ(49000)
31

【5R第1手:たけ】

収入:29000
係争:あまみち(10000)、おやすみ(3000)、Komi(1000)
32

たけ
「係争は3人と生じる。
まずはあまみちと10000の場所について。競合はKomiちゃん」
(この手番をビッグイニングにせんと勝ち目はないな。最後の花火上げたいな)


あまみち
「Komiちゃんを雇用し続けるか、僕を入れるかか。
0ベットでいいやろ。
僕は最下位であり、何があってもここはKomiちゃんを追い出して僕を雇う場面やろ」


Komi
「それを見越して保険で1000に1体置いてる。
この1手のおかげで最後手で交渉権がある」


たけ
(上手いし、俺にとってもありがたいな。同調しよう)
「俺もさすがに0ベットやとKomiちゃんにスペースを渡すとは思う」


あまみち
「変じゃない?
好順位のKomiちゃんを取って僕を追い出す意味がないやろ」

たけ
「少しでもワイロが欲しい。
『ワイロなしでトクしよう』っていう非合理的な動きをお前がやるなら、トップ目のKomiちゃんのアシストをしてお前を蹴落とすような、非合理な1手を持って返礼することになる。
他人をナメてかかるものではないと、痛みを持って学習してもらう必要がある」


おやすみ
「もし俺があまみちなら、収入20000に対してワイロ10000をつけるかな。
たけはあまみちに対してヘイトがなく、コミちゃんに強いヘイトがあるから7-8000でも取れそうやけど、安全を取ってもう少し色をつけるべき」

あまみち
「うう…」


たけ
(無理そうやな…
こいつが大きく値をつけさえすれば、ここからワイロ合戦が始まって、俺にもワンチャントップ目が見えてくるかもしれないが、この感じだとロクな値をつけんぞ。
チャオズは置いていくしかない、この先の戦いにはついてこれそうもない。)


あまみち
「ここで0ベットって言われるのがたけにとって一番めんどくさいはずやし、僕にとっても額を値付けするのがめんどくさい。
だから0にしたいが、めんどくささで行動を決めていいものか迷っている。
ゲーマーとしてどうなん?っていう。
……4000にするわ」


あまみち→4000→たけ

たけ
(鼻くそみたいな額だな。
ワイロ10000以下は0同然』ってあと5回くらい叫んどいた方がよかったか?)

「…じゃあ次はおやすみと交渉。6000の収入で、12000湧く。コミちゃんと競合」

おやすみ
「ここは…ワイロ7000やろ?」

たけ
(こいつは話が早いな。助かる)

「受けるわ」

おやすみ→7000→たけ

たけ
「最後はコミちゃんと交渉。
あまみちから4000とかいうカスみたいな額を渡され、
『10000をキープして』
とかいう依頼があったわけだが…」


Komi
「そんなクソ交渉、受けたんか?」
(タバコ休憩で10分ほど中座していた)

たけ
「まあ破棄するよな(笑)!」


Komi
「わかっとるわ!
こっからや。
おやすみとの交渉も破棄する気あるか?」


たけ
「額次第やな。
あまみちとおやすみのコマを全部除去ると、コミちゃんはこの場から最大17000収入、つまり2回で34000取れる」


Komi
「さっき、たけはほぼ同じ盤面の収入32000に対して俺にワイロ21000払ったわけやろ。
おやすみとあまみちからたけはトータル11000もらってる。
だから10000払ったら差し引きトントンになる。



たけ
(ん~?
その計算はおかしい。
10000は不当に安いな。
ざっと計算した感じ、コミと俺の収支を均一化するにはワイロ15000-16000が適正額)


Komi
(たけの表情が険しいぞ。
なんていうか、ちょっと敵意を感じるな。
これは裏切られるやつか??)

「……ただ、俺はたけに一銭も払わん
たけ目線だと、たぶん俺が1位なんじゃないか?」

たけ
(たぶん俺はKomiちゃんほど厳密な計算はできてない。
また厳密な計算はこのゲームの面白味を削ぐと考えているため、する気もなかった。
よってこいつの真意がなんもわからんな。
たぶん『IQが20違うと会話が通じない』の低い側を自分が今やってるんだろうな。
1位が誰であろうと15000とか十分な金をもらったら、私情でコミちゃんのコマに全部置き換えるつもりだったが…
俺もちょっと疲れたし、説得に必要な言葉が見つからないな)

「じゃあ、ゼロでいいんやな」


Komi
「(俺のコマを)どかせどかせ。
ゼロでいい」


たけはあまみち(1000)、おやすみ(6000)、あまみち(10000)を雇用。
Komi(1000,6000,10000)を解雇。
33


【5R第2手:あまみち】
収入:16000
係争:おやすみ(10000)

41

おやすみ
「20000の収入について、たけと競合。
ワイロ15000払うわ」


あまみち
「(もっとほしいけど…)
「受けます」


おやすみ→15000→あまみち
あまみちはおやすみ(10000)を雇用。
たけ(10000)を解雇

42

おやすみ
(もっと絞れたか?12000くらいで提示しとくんやったな)

【5R第3手:おやすみ】
収入:25000
係争:Komi(3000)

43

Komi
「3000のスペースでたけと競合。
これが本当にラストの競りか。
これってさ、俺がいくらか払った場合と払わんかったかの違いで、おやすみの選択は変わるの?」
(収支記憶ゲームとして理想的に打つ場合、俺の贈賄如何に関わらず、より現金が少なそうな方を雇用する。
ゲーム序盤は俺はそう打っていたし、打てていた。
中盤はともかくとして、情報が整理されたこのシンプルな最終盤ならそれと同じように打てんか?)


おやすみ
「変わるわ。
お前がワイロをくれたらお前を雇用するし、くれへんのなら蹴るよ」


Komi
「そしたら感情論やな」


たけ
「Komiちゃんほど賢い人間はこの世界(テーブル)におらんねん。
感情で動いている」


Komi
「じゃあ、その言葉を信じるしかないか。
ワイロ4000
俺にとっては9000収入、たけにとって6000収入の場や」

おやすみ
「それなら受けるわ」


Komi→4000→おやすみ
おやすみはKomi(3000)を雇用。
たけ(3000)を解雇。

44

【5R第4手:Komi】
収入:22000


(6)第6ラウンド
おやすみ(143000)+25000
Komi(130000)+22000
たけ(110000)+16000
あまみち(85000)+16000
51


おやすみ168000
Komi152000
たけ127000
あまみち101000



(C)感想戦

たけ
「優勝はおやすみ!おめでとう!」


おやすみ
「・僕のところに来てくれるワーカーが多くて、ワイロを取る機会が多かったこと
・こちらが払うワイロを思い通りに減らせたこと
が勝因やと思います。
前回みたいにたけさんと値付けでひどく敵対することもなかったし、総じてやりやすいゲームでした。ありがとう!」

あまみち
「おやすみと反対に、僕のところに来るワーカーは少なかった感じはあるな。
メタ的になっちゃうけど、僕がたけの下家で、交渉の最後手番がたけなんよね。
それを警戒してか、僕のところでの競合がどうしても少なかった印象がある。
楽しいゲームだったが、僕はまだ他人が怖いと実感したなあ。

他人の悪意と直面するのが怖い。
もうちょい筋肉つけたらどうにかなる気がする」


Komi

「ボドゲの中でしか顔を出さんような自己表現ができるの、めちゃ楽しかったわ。
インペリアル2030、フンタに続き、またヤバいゲームを発見してしまった。
トンデモ楽しかったです!」 
Web キャプチャ_16-1-2024_12748_boardgamegeek.com
Junta(1979)

①1000のスペースの使い道


あまみち
「僕の最大の敗因は、収入が高い場所に仕掛けにいくことをためらったことやね。
最終形で1000の場所に3ワーカーくらい置いてるけど、わざわざ狙いに行くような場所じゃない」


たけ
「1000の場所、5年前は存在価値ゼロだったけど、
10000の場所に自分のワーカーがいる
・自ワーカーが今にも追い出されそう
・競合相手より自分が下家(後手を取れる)
の場合、後手でワイロ払う権を取るために使うって動きが今回確立されて、超良かったわね。
何度か効果的に働いていた。
新しい使い道が開拓できた感がある」


②上手に踊る

あまみち
「プレイ後考えたが、『上手に踊っておひねりをもらう』ってくだり、感慨深いんよな。

たけ
「踊り、イントリーゲでワイロのやりとりの際に生じる交渉めいたものを指して形容したわね。

言いくるめ、口プロレス、論理立っていそうだけど、突き詰めると特に意味のないもの」


あまみち
「そう。イントリーゲに限らず、世の中、踊りでできているっていうか、いろんな場面で踊りが生じる。
前提として僕はコミュ障というか社不というか、あまり踊りは得意でないし、好きでもないんよ。
たとえばさ、小中学生の男子が肩パンって言って肩を強く押す遊びあるじゃん」


たけ
「あるわね。あまみちくん嫌いそう。
私もとても好きでなく、そういう田舎のゴミ文化圏から抜け出すために受験をやった人間だが」

あまみち
「そう。嫌いであり僕はやらんけど、人生や社会においては必要で重要なものでもあると、ようやく理解してきたんよ。
そうやって面白く痛がる踊りとか、面白い程度に(ケガさせない程度に)痛めつける踊りとかを学んでいくわけで、それってコミュニケーションなわけで。
マウンティングの文化というか。文化とすら思いたくないし、唾棄すべきものかもしれないけれど、ある種高度に文化的な」

たけ
「本当に嫌いなヤンキーの踊りを目の端に入れ続けてきたあまみちくんの公立中時代が感じられて、良いわね」


あまみち
「あとたとえるとしたら、成犬に育てられなかった子犬。
ペットショップにすぐ引き取られた犬って、親や兄弟と過ごせた犬と違って甘噛みができないっていうじゃないですか。
それも踊りだよね。
形式的で、無意味で、しかし文明や共同体の維持にとって不可欠なもの」


③汚泥の詰まった聖杯


あまみち
「イントリーゲに話を戻すと、自分が育った文化圏、交渉の文化、信用の文化を戦わせるようなゲームやと思う」


たけ
「そういう面はあるわね。
値付けが完全に自由なうえに、約束の履行も義務ではないため、
・ウチではこういう値付けで昔からやってる
・俺はここでのワイロは〇〇が適正やと思う
とか言って矛盾し合う相場観を均していく
この根拠の乏しい口論をやる感じはたしかに、異なる文化圏同士のぶつかり合い感あるわね。
話しながら思い出したが、ヒストリエ(2003)"文化がちがーう!"を、あまみちくんたびたび口走ってたわね。
アレクサンドロス大王の書記官エウメネスが旅先の異民族や蛮族に驚かされるたびに吐くフレーズ」

あまみち
「たしかに今の話全体が、ヒストリエの文脈のもと話してたわ」


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HISTORI
Ē(6)(H.Iwaaki,2010)より、幼少のアレクサンドロス大王と愛馬ブーケファラス

たけ
「論理を抜きにして、なんとなく説得力がありそうだったりそいつのなかで筋が通っていそうな話は聞き入れられやすい。
また真剣っぽく誠実そうな振る舞いが選ばれるためには重要」


あまみち
「本作はよく『ガードレールがない』って形容がされるし、実際そうなんやけど、交渉とワイロの部分に本当になんでも乗るんよ。
器としてなんでも乗せられる」

たけ
「Fate/Zero(2006)の、汚泥の詰まった聖杯的な。万能の願望器」



(D)総評

4-10年後にまたプレイすると思われる

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ワイマールは4人専用の異作
プレイし、言語化する価値を感じたので記事化する


*記事作成にあたって、ミミー氏はぬ氏戸塚中央氏に画像提供、案出し、プレイ等で協力いただきました。この場を借りて感謝申し上げます。



―――

(1)基本情報
(2)テーマ

 ①連戦連勝―ドイツ帝国の成立 1862-1871
 ②vsデンマーク
 ③vsオーストリア
 ④vsフランス
 ⑤ドイツ統一への他列強の反応
 ⑥戦争なき覇権―ビスマルク体制 1871-1890
 ⑦外交的失策の連発―ヴィルヘルム2世の世界政策 1890-1914
 ⑧開戦、敗戦、ワイマール共和国成立 1914-1918
(2)おおまかな長短所
 ①7割がたウォーターゲート&トワイライトストラグル
 ②システム的な洗練度はウォーターゲート>>本作
 ③対応(カウンター呪文)の実装も煩雑
 ④王道重ゲー的な気持ち良さは皆無
 ⑤マルチエンド制は◎
(4)考察:個別カードの読解
 ①市井の力、国会選挙
 ②ローザ・ルクセンブルク/カール・リープクネヒト/極右テロ組織コンスル
 ③ヴェルサイユ条約
 ④エーベルトの死去
 ⑤シュトレーゼマン/DVP(ドイツ人民党)
 ⑥シュトレーゼマンの死去
(5)総評



Web キャプチャ_25-12-2023_21721_boardgamegeek.com


Weimar: The Fight for Democracy (2023)
Alternate Names Weimar: Der Kampf um die Demokratie + 1 more
Designer Matthias Cramer
Artist Christian Opperer
Publisher Spielworxx + 3 more


(1)基本情報
人数:4人
時間:120-360分 (6ラウンド制で1R60分、4-5Rで終わる場合が多い)
複雑性:3.86 (参考値:アークノヴァ=3.74、テラミ革新の時代=4.26)
ランク: 5300位 (2023/12/18)
要素:カードドリブン、綱引き、ダイス判定、ネットワーク構築、ドイツ近代史、ワイマール共和国、ナチズムと共産主義に対する民主主義の戦い、4人専用
言語依存:大(ほぼすべて非公開情報)
流通:ホビージャパンから日本語版が発売、とても質が高い

デザイナー:
マティアス・クラマーは52歳前後の兼業デザイナー
化学業界のITコンプライアンスマネージャーが本業
(マティアス・クラマー/Matthias Cramerインタビュー記事について (kanana82.wixsite.com)より)

代表作:

・グレンモア(2010)
・クラフトワーゲン(2015)
・ウォーターゲート(2019)

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Watergate(2019)

(2)テーマ

本作はワイマール共和国の歴史再現
ワイマール共和国とは、
・1919年にドイツ帝国が滅亡
・1933年にナチス第三帝国が成立

この前後に挟まれて15年弱存在した政体
史実だとあっけなくナチの台頭を許した時代のあだ花のような国家
各党の党首となったプレイヤーたちは共闘してナチを退けつつ、自党へ利益誘導すべく混迷の時代を戦っていく

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いきなりゲーム開始年代まで飛んでもいいのだが、前段階のドイツ帝国が生まれた経緯をまず描く
相当長いため適宜読み飛ばし推奨

要約すると以下

・天才ビスマルクの神外交でプロイセン王国からドイツ帝国に拡大(1860-1890)
・2代目(ヴィルヘルム2世)の失策で外交貯金を切り崩し孤立(1890-1914)
・孤立から脱せず第1次大戦スタート、敗戦(1914-1918)
・敗戦の引責でドイツ帝国は解体縮小、ワイマール共和国創始(1919-)


①連戦連勝―ドイツ帝国の成立 1862-1871
ドイツ地方、今はドイツ連邦とオーストリアから成るが、ドイツ帝国ができるまでは数か国が割拠していた
・プロイセン王国
・オーストリア帝国
・バイエルン王国

など
この数か国をまとめあげドイツ帝国を作った立役者が、プロイセン王国のヴィルヘルム1世(国王)&ビスマルク(首相)のコンビ
ドイツ全土が統一されたのは史上初の快挙
本当に乱暴にたとえると織田や徳川のドイツ版って感じ

ビスマルク
(1815-1898)は、しがない地主貴族の出
強力な後ろ盾はなかったが有能さを武器に出世
ヴィルヘルム1世(当時65歳)に見込まれて、47歳で首相に任命される
任命後の首相演説で、
ビスマルク
「プロイセンに必要なのは投票や多数決といった民主主義的なやり方ではない。
血(軍隊)と鉄(兵器)だけ!!」

とぶち上げる
あまりに議会を軽視しており、議員たちはドン引き
Blut und Eisen(ブルートウントアイゼン、血と鉄)の演説から、鉄血宰相とややマイナスイメージであだ名される

議会との関係は最悪だったが、ビスマルク、外交巧者というか、とにかく他国に難癖をつけて開戦に持ち込むのが上手かった

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Otto Eduard Leopold von Bismarck-Schönhausen(1815-1898)

②vsデンマーク

就任2年後の1864年
ビスマルク(プロイセン)
「おいデンマーク、ウチが目かけてる小国(シュレースヴィヒ=ホルシュタイン公国)を、お前勝手に取ろうとしてるだろ??」

デンマーク
「いや、やってないっすよ」

ビスマルク(プロイセン)
「いややってた。
オーストリアさんも見てましたよね?」

オーストリア
「見てた。
あいつら良くないよな、やっちまおう」


プロイセンオーストリアvsデンマークで開戦、戦勝

③vsオーストリア

ビスマルク
「この2公国をどう割譲するかだけどさ、ウチが欲しいんだけど、いい?
ほら、ちょうどウチと陸続きだしさ、きっとこの国も統治されたがってるよ
(両公国が取れると相当良い位置に軍港が作れるんだよな~!意地でも欲しい)」


オーストリア
「いやいや、ないでしょ(笑)
絶対ダメ、山分け(共同管理)以外ないでしょ
最悪その2つはあげるから、代わりに代償地としてどこか領地分けてよ」


ビスマルク
「それはないな…
ちょっとウチら、話し合いじゃ無理かもな!」

でオーストリアと開戦(1866年,普墺戦争)、戦勝!

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戦争の端緒となったシュレースヴィヒ=ホルシュタイン公国(薄い赤と青の地域)

④vsフランス

ビスマルク
「オーストリア、併合まではいけなかったけど短期決戦で戦勝講和できたぞ~!
これでドイツ北部の覇権は確立されたな
あとは南部なんだけど、フランスの影響下にあって、このままだと統一は無理だな…
一回因縁つけてフランスもボコすか!」

フランスが理不尽な要求を全ドイツに対して叩きつけてきた感じになるよう全力で外交工作
ドイツ諸国の反仏感情を煽りまくる
そのうえで他のドイツ諸国プロイセンvsフランスで開戦!(1870年、普仏戦争)
1871年戦勝!

宿敵フランスを打ち滅ぼした英雄プロイセン、ドイツの盟主プロイセン、という機運のもと、同年ドイツ帝国が成立

⑤ドイツ統一への他列強の反応


フランス
「ドイツなんて、ずーっと諸国で分裂しててくれりゃよかったんだよ
それがビスマルクとかいうカス野郎、ウチをボコった上にアルザス・ロレーヌまで奪っていきやがった
絶対許さん、いつか見とけよ」


オーストリア
「ウチもフランスと同じ敗戦国なんだけど…
国力ではドイツ帝国に大きく劣るし、しかも民族構成がかなり似てる
あちらにはこっちを併合する理由がありすぎる
頼む、殴らないでくれ~!」


イギリス
「”史上初のドイツ全土統一”ってのは、ちょっとさすがに悪目立ちしすぎ
見過ごせないな」

ロシア
「ウチとフランスでドイツを挟む地勢なんだけど、フランスが落とされるとパワーバランス的にかなりきついな
これ以上ドイツが増長するようなら、ちょっと腕ずくでシメるか」


ここまでデカくなると他国から目をつけられる
日清日露で大勝した大日本帝国を思わせる

⑥戦争なき覇権―ビスマルク体制 1871-1890

が、マルチの鬼ビスマルク、ここでも外交能力(ヘイト管理能力)が光る
・本当にもうこれ以上領土拡大する気はない
・他列強の本土だけじゃなくて、アフリカとか新世界方面の植民地も奪いに行かない
と内外にアピール
言葉に偽りなく、実際に失脚する1890年までこの路線で外交を展開

ビスマルク
フランスとの関係性だけは完全に終わっている、修復不可能
全面戦争したし、相当強く殴った(アルザス・ロレーヌ割譲した)からしゃあない
だからあそこだけはずーっと仮想敵国として想定する
軍事力レースの手は緩めないし、国境線から軍隊は引きあげず、警戒の手は緩めない
裏から手を引いてバチバチに内政にも干渉する
でもそれ以外の諸列強(イギリス、ロシア、オーストリア=ハンガリー、イタリア)とは全然話が通じるはず
彼らが対独大連合を組むのだけは絶対阻止したい
対仏大連合を組まれて袋叩きに遭ったナポレオンの轍は踏まない

フランスが落ちた今、ウチ(ドイツ)、イギリス、ロシアの3強
英露の片方とだけ接近するのは避けよう
いい感じでヘイトコントロールして、列強の盟主、3強の一角としてこの有利盤面を維持する」


結果的にこの方向でドイツ帝国は繁栄し、国力を大いに伸ばした
植民地を取りに行かなかった一手は一見悪手にも見えるが、結果的に植民地をめぐるイギリスvsフランスの対立を延長させ、英仏接近が回避できた

Web キャプチャ_26-12-2023_105727_boardgamegeek.com
A Few Acres of Snow (2011)
英仏のケベックでの争い(1754-1763)が描かれる


ヴィルヘルム1世&ビスマルクチームの躍進は1862年から1888年まで続き、この時代の名はビスマルク体制と呼ばれる
が、1888年、ヴィルヘルム1世は91歳で崩御
孫にあたるヴィルヘルム2世が27歳の若さで即位

ヴィルヘルム2世
「おじいちゃんと一緒にやってたビスマルク(73歳)とかいうじいさん、功績はすごいんだけど…
これだけ国力と軍事力があって植民地を一切取ろうとしなかった消極的な姿勢はダメだな
普通にやってたら何個か植民地取れてたでしょ
しかも俺のやりたいようにやらせずに、一生グチグチ言ってくるし、何してるか分からんし
罷免(リストラ)しよ」

とビスマルクを辞職させ、政体を独裁(親政)に移行

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Friedrich Wilhelm Viktor Albert von Preußen(1859-1941)

⑦外交的失策の連発―ヴィルヘルム2世の世界政策 1890-1914

「イギリス、ロシアの両方とつかず離れずをキープせよ。片方とだけ接近するな」
というビスマルクの外交路線をさっそく破棄し、新生ドイツは
イギリスと急接近
イギリスはアフリカを鉄道で南北縦断したいってプラン(ケープ・カイロ計画)を持っていた
敷設計画上にあるドイツ植民地を渡すかわりに別な植民地をもらうという、イギリス有利の交換条約(ヘルゴランド=ザンジバル条約,1890年)

ロシア
「イギリスとウチはアフガニスタンとかをめぐって、もう全力でアジア全域でグレートゲームをやってる真っ最中
ドイツお前、アフリカに鉄道通させるってことはイギリスの兵站を支援してるわけだよ
それがどういうことか分かってるよな?」

とキレてしまう

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Pax Pamir: Second Edition (2019)
アフガニスタンにおける英露の対立が描かれる


交換条約が刺激剤となり、ロシア&フランスが接近、露仏条約(1891年)が締結

しかも戦艦の増産を急ピッチで始めたことで、本命の同盟候補のイギリスからも、
「お前、海軍力でウチと張り合う気か?戦いたいのか?」
と警戒されてしまう

ヴィルヘルム2世(ドイツ)
「海軍力を高めたのはアフリカ植民地を取るのに必須だからであって…
イギリスの海洋覇権をどうこうする気はないです…
なんなら独英同盟結びたいです(1901年)」


イギリス
「うちと結ぶってことは、ロシアと開戦する可能性も全然あります
あなた、本当にやれますか?」

ヴィルヘルム2世(ドイツ)
「いや…うーん…」


態度の決まらないドイツを見限ったイギリスは同盟相手に日本を選択
1902年日英同盟締結、1904年日露戦争開始

またビスマルクじいさん、実はイギリスとフランスの仲が悪くなるようずーっと裏で工作していたのだが、そのあたりの外交工夫が途絶えたせいか英仏も接近、英仏協商(1904年)
さっきの植民地交換条約の英仏版

日露戦争は1905年日本の勝利に終わり、ロシアの地位は相当落ちる
イギリス(列強暫定トップ)
「ロシアが逝った~!!!
ずーっとロシアをライバルとして叩き続けたけど、もう潮時だな
次シバくのはドイツでしょう
今やドイツがウチの覇権のいちばんデカい脅威

ドイツは「列強の全員が敵」という最悪の状態で10年ほど過ごす
孤立無援のまま手数を全部注いで軍拡を押し進めるが…

⑧開戦、敗戦、ワイマール共和国成立 1914-1918

1914年、オーストリア=ハンガリーの皇太子の射殺を機に第一次大戦勃発
開戦後、ヴィルヘルム2世は統治能力を失い、ルーデンドルフ参謀本部次長が実権を握る
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厳しい戦況ながら粘るも、ドイツの旗色は年々悪化
1918年、全リソースをvs英仏国境にぶちこんで、ワンチャン壊滅させ、どうにか有利な講和を引き出せないか賭けに出る(西部大攻勢)
が、押し切れず後退
同年9月、
ルーデンドルフ(政府発表)
「(さすがに敗戦とは言えんしな…)
国民諸君、休戦の方向で考えている」


これによって国民は「あ、これは敗戦が濃厚なやつだ」と察してしまい、民心が離れ革命の機運が高まっていく

同年11月1日、キールの水兵の反乱

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兵士と労働者が兵営を占拠、共産主義的な労兵評議会(レーテ、ロシアにおけるソヴィエト)を設立

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11月7日、ミュンヘンでも評議会が蜂起
バイエルン王(ヴィルヘルム2世の部下的な)が退位

11月9日、これらを承けてベルリンでゼネスト(全職業の労働者によるストライキ)が勃発
要求はヴィルヘルム2世の退位
第一次大戦敗戦についての引責辞任って感じであり、側近らも妥当な要求と判断
退位を呑むよう説得するも、長期独裁に慣れ切ったのかヴィルヘルム2世は「絶対退位しない」の一点張り

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「このままだと国家転覆する」と判断したのか、皇太子のマクシミリアンが独断で父親と自分の退位を宣言
さらに政権与党であったSPD(社会民主党)のシャイデマンが帝政(君主制)から共和制への移行を宣言
この宣言によって成立した国家がワイマール共和国

ここでプレイヤーらが登場する

SPD(社会民主党、左翼連立与党)
Z(中央党、右翼連立与党)
KPD(共産党、極左野党)
DNVP(国家人民党、極右野党)
の4陣営に分かれて戦う

おおまかに、
SPDZ=6ラウンドのあいだ共和国を崩壊させず、維持させたい
KPD=共産主義革命を成立させ、国家転覆したい
DNVP=宿敵フランスやイギリスのご機嫌伺いをやってるような腰抜け政府をクーデターで打倒し、王政復古したい
このあたりを狙っていく 


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(2)おおまかな長短所
①7割がたウォーターゲート&トワイライトストラグル


ルールはシンプル
作者の前作に2人用のウォーターゲート(2019)があるが、これを単純に4人用に拡張した感じ
インストは30-45分、ウォーターゲートかトワイライトストラグルをプレイ済なら20分程度

各陣営は12枚からなる固有のカードデッキを持つ
カードはAPを使って通常アクションをするか、イベントとして解決する
イベントとして解決する場合は一部例外を除いてデッキから除外
固有デッキとは別に2種各5枚の強化セットがある
プレイヤーは望むなら、ラウンド開始時に5枚一気に初期デッキに加えることができる
・都市の制圧
・議会での議論
・新たな勝利点獲得手段

などセットごとに得意不得意があり、どの勝利条件を狙うか定まり始めた中盤(2-3R目)に片方のセットのみ投入される場合が多い

また共通のタイムラインカード(史実のイベントカード)のデッキがある

毎ラウンド固有デッキからカード3枚、タイムラインデッキから2枚引き、計5枚を手番順に1枚ずつプレイ
カードを使い切ったらラウンド終了
たまに5枚でなく6枚引いたり、5枚使い切れない場合もあるが、基本は5手
5手×6ラウンド=30手のゲーム

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Watergate(2019)

②システム的な洗練度はウォーターゲート>>本作

ウォーターゲートだとデッキが何回転もする
・APの低いカードを除外してデッキの出力を高め、対戦相手との綱引きで優位に立つ
・人物カードによる対応(MtGのインスタントの打ち消し呪文)の熱い応酬

など、かなりボードゲームとして面白かったが
本作のデッキは、ただのランダマイザに成り下がってしまっている感が否めない
12枚の固有デッキ
・初期の固有デッキとは別で2つの強化セット(5枚の強カード)を投入する

・固有デッキとは別でタイムラインデッキもある
・1ラウンド3枚引く
・最大6ラウンド(5ラウンド目の途中で終わる場合が多い)

やってみるとわかるが、全然引けなくてデッキが回らない
デッキを整えて出力を上げるような暇があまりない
コントロール感、圧縮できている感はかなり薄い

なお参考までにウォーターゲートは、
20枚の固有デッキ
・途中投入の強化セットやタイムラインデッキはナシ
・毎ラウンド4-5枚引く
・終了トリガー制で、長引くと8-10ラウンド続く


③対応(カウンター呪文)の実装も煩雑

ウォーターゲート同様、相手の手番中に対応系の人物カードを持っていると対応が差しはさめる
前作だと2人戦だったこともあって対応の打ち合いがかなり楽しかったが
本作は4人戦であることが災いしてか、爽快感よりも理不尽感煩雑さが強まっている
2人戦であれば手番プレイヤーが「〇〇打ちます、対応ありますか」と宣言し合うのは全然テンポ感を削がない
4人戦だと確認がかなり手間だし、処理忘れが生じた際の巻き戻しも2人戦と比較にならないくらい難しい
さらにカードでの対応とは別で、リザーブのAPを使ってのリアクションも同じ"対応"と呼ばれており、挙動が微妙に異なるのでそのあたりも煩雑
他3人の手番中に対応を構えておくのもけっこう手間で、忘れやすい


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④王道重ゲー的な気持ち良さは皆無

とても大きな短所として、ゲーム的な面白さが薄い
”ゲーム的”を言い換えると、プレイしていて「か~!気持ち良い~!!」と感じる瞬間がめったにない
他の作例だと、
・テラミスティカ(2012)の、布石をきちんと打って得点化ラウンドで勝利点をガンガン重ねていく爽快感
・テラフォ(2016)の、産出をどんどん高めてカードをバンバン出していく気持ち良さ
・白ブラス(2018)の、自分の都市計画を盤面に反映させていく自己効力感


適度なストレスで負荷をかけつつ、要所要所でこういった気持ち良さを与えてくれるゲームは名作だ
依存性が高く、リプレイされやすく、根強い人気を得やすい

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Brass: Birmingham (2018)

⑤マルチエンド制は◎

「じゃあ何がおもろいねん」って話だが
本作で最も強くリプレイ性を担保しているのは、多岐にわたる終了条件とそれをめぐるリッチな語りだ
勝利条件は以下5パターン

・危機マーカーがボード上に並べ尽くされる国家崩壊エンド
・ナチトラックが進みきってしまうナチス誕生エンド(正史エンド)
・野党(KPD、DNVP)のどちらかがベルリンと他2都市を制圧する国家転覆エンド
・野党(KPD、DNVP)のどちらかが過半数の議席を獲得する極右/極左独裁エンド
・6ラウンド完走しきる通常エンド(Trueエンド)


詳細省略するが、下に行くほど到達が難しい
ウラを返すと、プレイを重ねて卓全体の練度が上がるほど、ゲームを長期化させる技術が上達する
そのあたりに一定のやりごたえはある
本来、ロングゲーム化はプレイヤーをあまり幸福にしないものだが、本作での長期化は、
「史実では時代の激流に揉まれて短命に終わったワイマール共和国が、
・ハイパーインフレ
・暗黒の木曜日から始まる経済大恐慌
・ナチの台頭
・極左/極右勢力どもの反政府活動
これらの辛苦に耐えて生き延びる

であり、歴史好きな人間はこういった歴史改変に喜びを見出すと思われる
いわゆるマルチだが、
ごっこ遊び的な楽しさは他のマルチゲームよりも大きいと言える
ストーリー、ナラティブ、豊かな語りを生んでくれる

特に6ラウンド完走のTrueエンドは、
・シュタインズ・ゲート(2009)のシュタインズ・ゲート世界線
・ひぐらしのなく頃に(2002)の祭囃し編
・絶対当たらないテキ屋のPS5の景品

のように、プレイヤーの心をつかんで離さない

言語化がちょっと難しいが、この感じはトワイライトストラグル(2005)にも近い
トワストは冷戦下でソ連陣営アメリカ陣営に分かれて戦う2人用のカードドリブン
ゲーム序盤のイベントでソ連側がかなり優遇されており、不慣れなうちはソ連の中押し勝ちが多発する
お互いデッキ内容を把握してくると徐々にアメリカでも勝ちが拾えるようになる
分かっている人同士で打つベースゲームは、アメリカが微有利だとされている
自分が上達するにつれて、より感情移入しやすいアメリカ陣営が勝ちやすくなる
という構造は恐らくアメリカ人の大半にとって親しみやすい
彼らのリプレイ欲求を一定向上させ、それがBGGランク向上にも寄与していると思われる

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Twilight Struggle (2005)

(4)考察:個別カードの読解

何枚か印象的なカードをピックアップする

①市井の力、国会選挙


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市井の力:全プレイヤーは、自分の政党基盤がある都市が3-5/6-7/8つ以上なら、1/3/5勝利点を得る。
国会選挙:全プレイヤーは、自分の政党基盤が2つ以上ある各都市から政党基盤1個を議会に移動させる。その後、議員が4-6/7人以上なら1/3勝利点を得る。


地図上の政党基盤(自色のミープル)に応じて全員が勝利点やボーナスを得る4枚
ミープルはボード
左の地図上にいるときは政党基盤と呼ばれ、国会選挙で当選を果たすと議員となり、ボード右の議会ゾーンに移動する

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ボード左に11個の都市が、右上に24個の議席がある

この4枚はタイムラインデッキに残り続けるため、ほぼ毎ラウンドいずれかの効果が解決される
トワイライトストラグルにおける地域決算カードに近い実装
またスタッツは2/2が2枚、3/1が2枚と均(なら)されており、「このゲームの標準出力は2/2か3/1だよ」と言外に語っている



②ローザ・ルクセンブルク/カール・リープクネヒト/極右テロ組織コンスル

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ローザ・ルクセンブルク討論への対応:そのプレイヤーは討論のためにプレイしたカードの大きい値だけを使う。その後、あなたは小さい値を使って、そのプレイヤーが進めなかった任意の論点1つを進める。その後、カード1枚を引く。
カール・リープクネヒト:都市1つでの1アクション(政変、対抗政変、デモ)か対応への対応。ダイスの出目―1。その後、カード1枚を引く。
極右テロ組織「コンスル」:任意の捨て札置き場から政治家カード1枚を探し、ゲームから除外。その後ダイス1個を振り、1-2=このカードをゲームから除外(失敗)。3-4=プレイヤーは危機ロール1回(中成功)。5-6=3/1の数値でアクションか討論を行う(大成功)。


コンスルは、相手3人の墓地を参照して、人物カード1枚をゲームから除外するDNVPのカード
除外対象はどの政党でもいいが、KPDの人物2枚が対象に取られることが多い
というのも、Zは同じ右派で基本的に敵対しない
SPDKPDDNVPにとってどちらも宿敵だが、ゲーム開始時からKPDの評議会(勝利点収入源)が一つ建っており、そのせいでDNVPは毎ラウンド実質2点減点を食らい続ける
このためDNVPはややKPDにヘイトを向けやすい
ルクセンブルクとリープクネヒトは史実でも義勇軍(≒DNVP)に逮捕され、共和国の黎明期、1919年1月15日に命を落とした
特に若くして無残に殺された女傑ルクセンブルクは革命のアイコンとして象徴化されている
コンスルがどちらかを除外すると、その史実再現に喝采を上げてしまう


③ヴェルサイユ条約

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ヴェルサイユ条約:政府のみが2APを支払い、外交アクションとしてこのカードを解決できる。ダイスを振る前に暴力的平和マーカー1個をDRに追加。DNVPの政党基盤を2個追加。DNVPの議員1体を追加。その後、ダイス1個を振る。フランストークンが出ている場合、トークン数分ダイスを増やす。出目4以上で成功。実行者は2勝利点を得る。国家の経済トラック+1。DRから封鎖トークンを除外。政府プレイヤー2名はそれぞれ危機ロール1回。このカードを除外。ラウンド終了時、このカードが除外されず残っているなら、封鎖トークン1個をDRに追加。

政府与党(基本的にSPDとZ)のみが打てるアクションに外交アクションがある
外交カードはヴェルサイユ以外にも5枚あるが、どれもおおまかには、
・ダイスを振る
・成功すると勝利点を得て、危機マーカーを減らす

というような解決がなされる
外交で得られる勝利点は微々たるものに見えるが、与党をいちど触るとこの2-3勝利点の大きさに驚かされる
対立与党に点差をつけられる数少ない貴重な機会

また、外交を放置すると危機マーカーがみるみる溜まって国家崩壊エンドに至ってしまう
よって打つメリットと放置するデメリットがあり、基本的には打たれていく

ヴェルサイユ条約をはじめとして、外交カードの大半(6枚中4枚)が実行すると、ダイスを振る前にDNVPの議席が自動で大きく増える
成功可否に関わらず増える
失敗すると再度打つ必要があり、DNVPの議席がヤバい速度で増えていく
ここだけ抜き取るとかなり理不尽であり、初回プレイだと「黒強すぎじゃん、クソゲーか??」と感じるのだが
この部分のゲームバランスは壊れていないし、また史実を理解するとわりと納得できる
DNVPのプロフィールは、
ドイツ民族推し
・他国との協調拒否
・ユダヤ人忌避
・社会主義、共産主義NO
・旧ドイツ帝国の皇室(≒強いドイツ)の復活を


ステラリスの統治志向の排他、権威、軍国って感じ
たとえばヴェルサイユ条約において、フランスとイギリスはワイマールに対して、到底払い切れない額の賠償金を請求している
ヴェルサイユアクションによって生じるDNVPへの強力なバフは、

・政府の軟弱で弱腰な外交姿勢への民衆の怒り「かつての敵国からの要求を唯々諾々と受け入れるな!」
・結果、他国への敵対感情が高まり
・最終的により強力なリーダーシップを求めてDNVPに票が集まる

という流れを反映している

反対にたとえばローザンヌ会議(ドイツの賠償金を減らすため英仏が開催)への参加は国民感情を刺激しないため、DNVPの議席ボーナスは設定されていない

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なお余談だが、ヴェルサイユ条約を解決しないまま放置する、つまり国民感情に流されて交渉のテーブルに着かないでいると、DR(危機マーカー置き場)に毎ラウンド封鎖マーカーが1個ずつ溜まっていく
7個溜まったら国家崩壊のため、第1ラウンド、遅くとも第2ラウンド中に解決してしまいたい


この封鎖は、史実における第一次大戦中のドイツ封鎖を指している
海軍による大規模な海上封鎖、兵糧攻めで、ドイツへの食料の供給を断った
北海をイギリス海軍が封鎖
またオーストリア経由での輸入も止めるべく南方のアドリア海の封鎖にはフランス海軍があたった

40-70万人がこれを原因とした飢餓と疾病で亡くなったとされる

この封鎖はヴェルサイユ条約締結直後に解かれた
もし締結を遅らせると解除も延期されたはずであり、そうすると共和国内は取返しのつかない水準まで荒廃しうる

ゲームにおいて危機マーカーが7個溜まったら国家崩壊のため、封鎖マーカーをいち早く排除すべく与党プレイヤーは奔走する
この挙動には刻一刻と国内で餓死者が続出するなか外交努力に明け暮れる閣僚の窮状が反映されている



④エーベルトの死去

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フリードリヒ・エーベルトの死去:このカードをプレイしたプレイヤーは追加の3票を持つ。投票において、各プレイヤーは手番順にダイス1個を振る出目+政党基盤数を票数とする。議席を1個減らすことでダイスを振り直しても良い。1回目の投票で上位2人を決める。2回目の投票では下位2人は、上位2人のいずれかの政党を支援(票を追加)して良い。2回目の投票で票数が多い候補者が勝利し、大統領となる。

第2時代のタイムラインカードで、3,4ラウンドに登場する
タイムラインのイベントはトワストと似た処理で強制的に解決されるので、エーベルトの死は基本的に避けられない
フリードリヒ・エーベルト(1871-1925)はワイマール共和国の初代大統領
SPD出身の有能、実直、真面目、信用のある人間で、建国以来ずっと大統領として共和国を引っ張ってきた
ワイマール共和国は今のロシアやドイツ、フランスみたいな感じで、大統領首相が別で独立している
大統領は今のアメリカとかと同じで、国民投票で選ばれる
国民投票=最終的には時の運に左右される水モノ
このフレーバーを意識してか、やや多くダイスを振らせる
インスト込み3時間くらい経ってちょうど眠くなってくるタイミングであり、このジャラジャライベントは眠気覚ましとして有効に機能している
ダイスを振ったあとはその数値をどの政党に割り振るかを決める交渉フェイズがあり、この1枚の解決に10-20分かかることも多い
かなり時間がかかるわりに、
・大統領に誰を選ぶとその結果何が起こるのか
・自分はするのか、トクするのか
・勝利を狙うために誰を勝たせた方がいいのか

が、選挙を行っている段階ではプレイヤーには何も見えない

この感じは、ちょっとフンタ(1979)のクーデターの感じに似ている

フンタ、ある程度は真面目な選挙ゲームなのだが、反大統領派のプレイヤーがクーデターを宣言すると、急にダイスを振りまくる意味不明なミニゲームが始まる
このクーデターのためだけに用意されたマップを使って、60分くらいかけてゲーム内ミニゲームをやる
60分争い、「このラウンドで大統領が退任するかどうか」を決める

何より、大統領が続投/退任させた結果、未来にどう影響するかが、クーデター中プレイヤーには何も見えない

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Junta(1979)
クーデターが宣言されるとボード中央のマップにユニットが突如展開され、ウォーゲームが始まる


絶対に設計の参考にすべきでないゲームだが、フンタを完走した仲間内で語り草になるのはあの無意味なクーデターだ
「クーデター、終わってみれば何の意味もなかったけど、クソ大統領に一矢報いられたし、やってみて面白かったよな」

言語化が難しいが、「渦中にある人間には、選んだ結果が未来にどう結実するか分からない」という性質は歴史そのもの、人生そのものであり、そのあたりの骨太な再現に自分は惹かれているのだと思われる


⑤シュトレーゼマンとDVP(ドイツ人民党)

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グスタフ・シュトレーゼマン:DVPの小政党カードを支配しているプレイヤーが所有する。任意のダイスロールにおいて、ダイスを振り直す。このカードを裏返し、使用不能にする。ラウンド終了時、再度表返す。
DVP(ドイツ人民党):小政党カード。Zが支配しているなら、1-2/3-4/5-6ラウンド終了時、1/2/1議席を得る。


シュトレーゼマン(1875-1929)はめちゃくちゃ有能な外交官、外務大臣
思想的にはZ(中央党)DNVP(国家人民党)のあいだくらいの極右寄りの右派
ZにもDNVPにも入党できずに、DVP(ドイツ人民党)という両党の中間層からなる小政党を指揮する

1923年、ワイマールは危機の年に
フランス
「1919年にヴェルサイユ条約を結んで4年!
ワイマールさん一向に賠償金払わないじゃん!
もう待ってられんわ!
仏独国境のルール炭田を占領して、取れた石炭を賠償金に充てます。
差し押さえだよ!
元々お前らの祖先のビスマルクには国境線のアルザス・ロレーヌを取られてて、頭に来てるんだわ
(ルールとアルザス・ロレーヌは一部重なっている)」

ドイツ
「石炭は国家の血液、それが止まると本当に経済が死んでしまう
払えるものも払えなくなる
本当にやめてほしい」


抵抗むなしく、1923年1月ルール占領

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占領に対する受動的抵抗(スト)が常態化、死んだ経済をどうにか回すために通貨を大量発行
生死の境にある人間にアドレナリンと輸液を全力で入れて救命を試みる感じに近い
結果ハイパーインフレを起こし、教科書でよく見るドイツマルク札で遊ぶ少年らのあの光景も発生

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この段階で同年8月、シュトレーゼマン、能力を買われてか、汚れ仕事を押し付けられてか首相兼外務大臣に就任
絶望的な状況だが、
・フランス、イギリス、アメリカ相手に交渉し、ルールからのフランス撤退と賠償金の減額の譲歩案(ドーズ案)を勝ち取る
レンテンマルクを発行し、インフレを終息(ハイパーインフレーションの終息)


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と神業を発揮
シュトレーゼマン内閣は3か月と短命であったが、その後も外務大臣として逝去する1929年まで6年にわたって続投
・現実主義に根差した交渉能力
・親しみやすく安定的な人格
・フリーメーソン所属の国際的な人脈

これらを武器に卓越した外交能力を発揮

特にアメリカに対して自国を成長市場として売り込み、多額の投資を引き出した
1929年までワイマール共和国も世界情勢もかなり安定していたが、逝去と同月(1929年10月)に発生した世界大恐慌(暗黒の木曜日)から情勢は暗転
アメリカの投資家の余剰資金の運用先としてドイツが魅力的だったわけで、不況になれば真っ先に引き払われる
また恐慌前の開放的な自由貿易路線から一転、ブロック経済(自国の経済圏をガッチリ保護して回復を図る)も逆風に
史実ではこの大恐慌が決定打となり、ワイマールは国際政治から孤立し、ナチスの台頭を許してしまう

こうした史実に沿った能力をシュトレーゼマンはゲーム内で発揮する

まず、DVP(国家人民党)という小政党カードに付随する特殊人物カードという立ち位置
小政党カードはゲーム中2政党の間で所有権が動き、所有者は毎ラウンドちょっとしたボーナスや特殊アクションを得る
DVPカードは最初Zが持っており、DNVPとの間で所有権が行き来する
シュトレーゼマン率いるDVPはちょうどZDNVPの中間的な立ち位置という史実を反映している
そしてシュトレーゼマンの能力もとても良い
1ラウンドに1回だけ使えるダイス振り直しで、多くの場合外交カードの解決や、ハイパーインフレーションの解決といった超重要局面で使うことになる
つまり、このカードが自陣営にいるだけで外交周りの処理力が倍増する
シンプルな効果でフレーバーも感じさせてくれる

⑥シュトレーゼマンの死去
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グスタフ・シュトレーゼマンの死去:シュトレーゼマンカードをゲームから除外。英米・仏・ソ連マーカーのうち1個を除去する。

シュトレーゼマンの死もカード化されている
前述したとおり、シュトレーゼマンの死に伴ってワイマールは外交的強みを失い、孤立を深めていった
史実を反映して外交マーカーを除去する効果がついている
シュトレーゼマンのダイス振り直し効果を失ううえに、外交マーカーが減ることで振れるダイス個数がさらに減り、外交アクションの成功率が如実に下がってしまう



(5)総評

かなり人を選ぶが、この手のテーマがいける人間ならば一度プレイする価値はあると思われる

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Mai 1968は戸塚中央氏と共作の2023年12月新作
学生、機動隊、労働者の3陣営に分かれ1968年のパリでの主導権を争う

ゲームマーケットで販売される、というか筆者が販売するため、おおまかな紹介記事を作成する
できるだけ客観的に記述するよう工夫はしたものの、自作のためひいき目のバイアスがおおきくかかっていると思われる
適当に割り引いて読まれることを勧める



(1)基本情報
(2)テーマ
(3)おおなかなプレイ感
(4)総評

F6nYXNxbIAApIup


(1)基本情報
人数:3人
時間:30分
複雑性:2.0前後(スプレンダー(1.78)とカタン(2.30)のあいだ)
ランク:―(未登録)
要素:陣営非対称、マルチ、陣取り、完全公開情報
言語依存:日本語ルール。ボード上にテキスト情報はなし。ルールは下記リンク。
https://gamemarket.jp/blog/187177
流通:現状2023/12/9のゲームマーケットのみで販売、土曜のみ

デザイナー:
デザイナーは筆者(TakeWatch)と戸塚中央
それぞれの代表作は、Amalfi(2020)Ostia(2022)など
合作は初

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Ostia(2022)

パブリッシャー:

なし(インディーズ出版)

アーティスト:
有我悟(あるがさとる)氏

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有我氏の手からなるメインボード

プレイテスター:

カワイ氏
ほぼ全てのテストを筆者、戸塚氏と同氏の3人で行った
発案から半年弱という短期間で完成できたのは同氏の精力的な助力のおかげであり、この場を借りて深く感謝申し上げます。


(2)テーマ
今から55年前、1968年のパリが舞台
当時の学生運動がどのように発生したか、最初にざっと説明する

まず、日本の終戦は1945年8月だが、フランスの戦勝記念日も同年の5月8日

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パリ凱旋門広場を行進する復員兵,1945年

終戦後フランス兵が復員し、1945-1955年あたりはベビーブームとなり出生率が爆上がりした
これは戦勝国・敗戦国問わず普遍的な傾向で、日本だと団塊の世代、英米ではベビーブーマーと呼ばれる

時代精神的な、世代全体が持つ特徴がある
各国によって微差はあるものの、

・禁止に対しての反対
平和主義
反権力主義
・性的な事柄に対しての開放性

このあたりとされる

ちょっと脱線するが、日本の全共闘世代(団塊のうち1968年時点で18-25歳の大学生や院生だった人)は以下の傾向を持っていた

【教育加熱によるストレス】

戦後の平和・非戦教育が浸透し、血肉となっている
・教育熱が過激化し、現代のような(あるいは現代以上の)受験戦争が発生
・「国民皆受験」とでも言えるような事態に直面した初めての世代
・5%以下だった大学進学率はこの世代だと20%程度にまで急増

【民意を反映しない政権への失望】

アメリカがベトナム戦争を続けることを与党(自民党)が支持する外交姿勢に対して、かなり強い不満を持っている(反戦教育が浸透しているため)
・「不満が反映されないのはクソ、戦後導入された議会制民主主義ってシステム、実は終わってるのでは」と疑念と失望を抱いている(→デモや抗議活動につながっていく)

【親世代とのディスコミュニケーション】

・上記から、漠然とした不満や閉塞感、生きづらさを持っている
・複数の要因によるため、それが具体的に何であるのか言語化しづらい
・この感覚は親世代にはほぼ理解されない(飢餓、貧困、戦争こそが親世代の体験した真の不幸であり、恵まれた子世代の発言はワガママのように映ってしまう)

【楽天性】

・高度経済成長期で、学生アルバイトの賃金が法外に高い(社会をなめたような楽天的な方向に思考が進む)
・ベビーブーマーのため人口が多く、高度成長の上げ潮と相まって「時代は自分たちの後についてくる」というような全能的な世代の空気感がある
 
*参考資料:「1968-若者の叛乱とその背景(小熊,2007)
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機動隊の放水を浴びる東大安田講堂,1969年

このあたりをベースに日本では首都圏で学生運動が展開された

パリではどうだったか以下で見ていくが、日本語文献で読めるものに目を通したにすぎないが、日本の状況とおおまかに近いものがある

【学生の蜂起】

先ほど描いた閉塞的な空気感のなか、特に左傾化した学生が新左翼団体を結成し、1968年5月パリ大学を占拠、バリケードを構築
学生の声を反映しない教授会・大学システムの解体と官僚制の打倒が彼らの要求
他の学生や労働者を扇動、オルグ(組織化)し、各地を占拠


【労働者の呼応】
労働者らは学生の活動を支持する連帯ストライキを実施
が、賃上げと待遇改善が彼らの要望であり、両者は全く一枚岩ではなかった

パリの一部の業種から始まったストライキは、フランス全土の多業態が参加するゼネストにまで発展し、国内産業や交通網は完全に麻痺

【政府の的確な対応】
シャルル・ド・ゴール(共和国大統領)は学生団体に対してはすぐさま機動隊を送り、鎮圧
また、
・労働組合(賃上げしてほしい)

・雇用主連合(賃上げしたくない)

の仲裁に入り、3者協議を実施

最終的に雇用主連合が折れて賃上げは実施、国民感情が大いに改善され、
「もう我々は満足したのに、あの学生らはいつまでやっているのか?」
的な空気感も醸成


「世論を問うなら今だ、今なら新左翼らを選挙でボコれる」と政権側は判断、6月に総選挙を実施
ド・ゴールら与党が大勝利し、学生運動はこれを受けて鎮静化した



このパリにおける五月危機をプレイヤーたちは演じる

UNEF(フランス全国学生連盟、以下学生)
CFDT(フランス民主労働総同盟、以下労働者)

CRS(フランス共和国保安機動隊、以下政府)


の3陣営に分かれる
ゲーム的には勝利点制の陣取りで、カタンとおおまかには近い
いちばん最初に規定勝利点に達した陣営が勝利宣言を行う

ただし3陣営でやれること、やりたいことがまるっきり異なる

UNEF(学生)

・学生を動員(バリケードに新ユニットを生み出す)
・労働者をオルグ(教化、組織化)し自陣営に引き入れる
・地域に学生を大量投下し新しいバリケードを構築

CRS(政府)の監視をかいくぐりつつ道中の労働者を扇動し勢力を拡大、バリケードを増やして勝利点を取っていく


CFDT(労働者)

・仲間の労働者を地方から召集(鉄道駅に新ユニットを生み出す)
・デモ隊を暴徒化させ、機動隊と衝突

数の多さを頼りにパリを労働者一色に染め上げる
暴徒化によって目標勝利点が大きく下げられ(政府が態を深刻視し、労働者の要求を呑みやすくなる)、勝利が一気に近づく


CRS(政府)

・機動隊コマを高速で移動させ、学生を確保し、警察署(自拠点)へ連行
・スタックさせた機動隊をバリケードに突入させ、破壊
・セキュリティ上重要な特別警護地区に機動隊を動員し、治安回復

比較的複雑な陣営
UNEF(学生)ユニットの無力化とバリケード破壊が主たる勝利点獲得手段だが、隙を見て特別警護地区に機動隊コマを送り込むと目標勝利点ラインが大きく下がる


史実だとCRS(政府)CFDT(労働者)のヘイトをそらしながらUNEF(学生)を取り締まり、勝利した
本作は歴史再現系だが「史実に沿ってCRS(政府)が過度に強力」みたいなことはなく、どの陣営も十分に勝利可能性がある

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パリを行進する学生と労働者,1968年5月29日


(3)おおまかなプレイ感

一方向しか殴れないマルチ
UNEF(学生)CFDT(労働者)をノーリスクで殴れるが、CRS(政府)の攻撃に抗う術を持たない
「UNEF(学生)がCRS(政府)に不利」っていうより、攻撃対象にすら取れない感じ
いわばじゃんけんの3すくみで、UNEF(学生)CFDT(労働者)CRS(政府)UNEF(学生)…と相性がループしている

これでゲームが成り立つのか、また面白いかだが
全然成立するし、客観的には不明だが、かなり筆者の好みに合っている
たいていの自作は一度fix(ルールを確定)するとほとんどリプレイしないが、本作は例外的で、完成後もけっこうな回数遊んでいる

(4)総評

評価を下すのはユーザーのため、割愛する


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ディフェンスダービーはいわゆるソシャゲ、デジタルゲーム
ボードゲームっぽい面白さが魅力的だと感じたため記事化する


(1)対談
 ①ボードゲーム的な悪意のやり取り
 ②競りを加熱させる順位ボーナス
 ③オロンゴ(2014)、チューリップバブル(2015)との類似
 ④競りゲーならではの敷居の低さ
 ⑤デザイン空間の広がり
 ⑥Pay to Win(課金ゲー)か?
 ⑦流行りそうか?
(2)考察:やり込んだ先に見えるもの
 ①早く親に、多く親に
 ②第4ウェーブ=最初のデッドライン

 ③2位狙いとトップ狙い
 ④値付けは中ランクでインフレし、高ランクで再度デフレ

 ⑤ミラーマッチの奇妙な共闘関係

 ⑥ワンミスで終わる単独種族マッチ
 ⑦2連続親ライン
 ⑧各展開のモデルケース

(3)総評


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(1)対談

①ボードゲーム的な悪意のやり取り


たけお
「ボードゲームを想起させる面白さが魅力のスマホゲームです!
具体的には2点、
・ユニットを買うフェイズの握り競り(モダンアート(1992)ライジングサン(2018)と同じ)=オークションの面白さ
・タワーディフェンスフェイズの3×3の個人ボードでの、種族と職業の2重パズル(マグノリア(2021)ほぼ同じ)=パズル的面白さ

本記事の対談相手は友人のあまみちくん、自分の旧友で、このゲームを紹介してくれた人でもあるわね。
面白ゲームを教えてくれてありがとう!」

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Magnolia(2021)

あまみち
「とんでもない(笑)。
なんていうか、ちょっと触って、
『このゲームの開発陣に絶対ボードゲームめっちゃ好きな人がいる
『逆に好きじゃないと、こういうルール設計と導線にはならない』
って伝わってきたんよね」

たけお
「教えてもらうまでまったく見聞きしたことがなかったタイトルなんだけど、あまみちくんは本作どこで知ったのかな」

あまみち
「広告で見かけたからやね。
パッと見でオートチェス系に見えて。
『オートチェスってそういえば後続がなかったなあ、ようやく新機軸のやつが出るのかな?』
って調べたら、競り要素とデッキ構築!?
ボードゲームから要素ひっぱってきたのか!!
そういやたけおくん、一時期オートチェス一生やってたはずだし、ちょっと誘って一緒に始めてみるか!
って感じですね」

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Dota Auto Chess(2019)

たけお
「アンテナ高すぎる!

ちょっと座学みたいになるが、ディフェンスダービーは2023年8月3日に発表されたスマートフォン用ゲーム。
出て2か月ちょっとの最新作

開発元はKRAFTON(クラフトン)社。
2007年創立の韓国の会社で、バトロワFPSのPUBG(2017)が代表作。

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Player Unknown's Battlegrounds(2017)

タワーディフェンス×心理戦と頭脳戦 が売り文句のようで、タイトルも、
・タワーディフェンス→ディフェンス
・オークション、ポーカー、心理戦→ギャンブル→競馬→ダービー
って感じの連想で作られている。
ダービーは…あんましゲームと合ってないかもしれない。
D&Dで頭韻を踏みたかったり、キャッチーな語を選ぶ事情があるとは思うが」

あまみち
「タイトルもそうだし、あんま日本で売る気を感じないゲームではあるね(笑)」

たけお
「そうね。調べた感じタイではけっこうちゃんと流行ってるっぽい。

話を戻すと、あまみちくんに勧められて半信半疑でダウンロードし、1時間くらい触って思ったのが、このゲーム、1プレイ10分かからないのに、ちゃんと
ボードゲームの味がする
対戦相手への悪意がちゃんと出せるし、また相手からの悪意も伝わってくる
普通のスマホゲームではあまり見られない特長ね」

あまみち
「たしかに、スプラでもなんでもいいけど、普通の対戦ゲームって、相手とやり取りする段階まで行くのに習熟が必要で、もっと時間がかかるよね」


たけお
「反対にフォールガイズなんかは本作と同じぐらいカジュアルだけど、特定の対戦相手にどうこうできるようなゲーム設計ではないし」

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②競りを加熱させる順位ボーナス
たけお
「手短にルールを記す。
・ゲームは4人固定
・他3人のライフがゼロになったら残った1人の勝利(オートチェスと同じ)

セットアップは、
3×3マスの個人ボードと20金の初期資金配られる
・中央にリーダータイルを固定配置
・リーダーの種族が他プレイヤーと被らなかった場合+1金(単独種族ボーナス、救済措置)
・ランダム引きした2枚のユニットタイルを配置(開始前に用意した8枚のプレイヤーデッキから各人ランダム引き。残った6枚のデッキはまた使う)」

あまみち
「自デッキからのガチャ引きは麻雀でいう配牌なんだけど、ユニットごとの強弱差はけっこうあるため、運要素は強く感じるかな」


たけ
「セットアップが終わったら、
タワーディフェンスフェイズ(半オート)
オークションフェイズ
を、1人の勝ち残りが決まるまで繰り返していく。

あまみち
「流れとしてはほぼ同時解決で、テンポが良いゲームやね」

たけ
「オークションフェイズでは新ユニットが1体競りにかけられる。
ユニットは、手持ち資金が最多のプレイヤー(チップリーダー、親)のデッキリストからランダムに選択される。
新ユニットについて4人同時に10秒以内で非公開に値付け。
最高値の人が落札。お金は銀行へ。
そして2位、3位の額で値付けした者はそれぞれ2金、1金ずつ順位ボーナスがもらえる。これも銀行から」


あまみち
「自分のデッキとまるでシナジーがないユニットでも、2位だと2金もらえるし、最悪競り落としてもダメージを稼ぐ要員になってはくれるから、自然と強気の値付けになるんよね」

たけお
「そうそう。競りを冷やさないための工夫であり、とても機能的。
あといくつかルール補足で、同種ユニットを取れると☆2、もう1体取れると☆3にまで強化できる。☆2でも相当強いし、☆3が作れたらまあ宇宙っていうか、すさまじいことになる」

あまみち
「☆2は☆1の3.5倍くらいの火力で設定されてるね。
☆3だとだいたいその3倍、☆1の11倍くらい」


たけお
「最後に重要な補足で、ユニットはいつでも銀行に1体6金で売却できる。
よって競りの相場は、最低7,8金からですね」


あまみち
「プレイ感としては、全体で1ラウンドに1ユニットずつ場に降ってこない。しかもそれを4人で取り合うから、取れるユニット数はかなり少ないね」

たけお
「ただそれだと厳しすぎるから、5ラウンドに一度ボスフェイズがあり、ボスの直後は毎回ボーナスとして、無料で各自のデッキの残りから1ユニット供給される。さっき開始に2枚引いて残った6枚のデッキからランダム引き」


OIP


③オロンゴ(2014)、チューリップバブル(2015)との類似


たけお
「本作の競りは2位に利益を与える形式の握り競りなんだけど、めちゃくちゃ機能的で素晴らしいわね。
調べたが、ボードゲームの先行事例はあまりない。
クニツィアの
オロンゴ(2014)がかなり近いかも。
土地を握り競りして、トップは3ヘックス、2位は2ヘックス、3位は1ヘックス取れる。で、1位だけお金(巻貝)を支払う
いちばんコスパの良い2位を狙いたい競りゲームね。収入とかはなく、カネを握らなかった際に場のお金を回収できる。
BoardgameMemoさんのレビューがとてもわかりやすく面白いので、良ければご参照ください。
Web キャプチャ_12-10-2023_20533_boardgamegeek.com
Orongo(2014)


あとルールは全然違うが、チューリップバブル(2015)にも質感がかなり近い。
チューリップカードの競りに使う疑似的なワーカーが3体いて、毎ラウンド使う。
でもお金がとにかく足りないゲームで、とても毎ラウンド3枚も買えない。せいぜい1-2枚
だからみんな1-2体ワーカーが余るんだけど、その吐き先として、
ご祝儀ヤクザのミニゲームをやらせている。
ワーカーを置いたあと競りフェイズがある。
「2,4,5,7…」と何巡も上げていって、カードの額面以上で落札されると、買えなかった競り参加者らにご祝儀として、その差分だけ銀行からお金が入る。
たとえば額面4金のチューリップを3人で争って8金で落札された場合、差額の4金を2人で山分けし、1人2金もらえる。

やってみるととてもシンプルで、
『俺はそんなに欲しくないけど、お前はコレ欲しいよな?』
を探すゲームね。
相手の熱量を測って、急所を狙ってタカりに行くというか。

この『自分は欲しくないけど、相手はたぶんほしい』という脳の部分を使わせてくれるのがとにかく楽しいわね。

Web キャプチャ_12-10-2023_20921_boardgamegeek.com
Tulip Bubble(2015)


あまみち
「チューリップバブル!
ずーっと前にやったけど、ルールを再度聞くとディフェンスダービーにかなり近い感じ受けるね。
ちょっと話変わるけど、君、ディフェンスダービーやってるとき相当饒舌にしゃべるようになっててビビったわ(笑)」


たけお
「そうね、独り言が増えるゲームでもある。
『そうだよな、お前、それ欲しかったよな~!!』
とか、
『それ、親の俺は12金の値付け、子のお前が13金で落札するの??
カットする意味、あったかい???
お前は虎の子の13金はたいてなんもシナジーないカスユニットを得て、俺はキー牌を☆2に凸るチャンスを失った。俺とお前で仲良く共倒れってか??』
とか」

あまみち
「このゲームあるあるではあるんだけど、ちゃんとやらない人に対してガチでキレてるときのたけおくんって感じで、ちょっと怖いな(笑)」


④競りゲーならではの敷居の低さ

たけお
「タワーディフェンス部分はほぼ全自動で、

・ユニットの再配置
ウルト(リーダーの必殺技)の発動 以外介入要素がないから、そのあたりもボードゲームっぽさを強めているわね。
オートチェスは完全自動だったけど、それとかなり近い」

あまみち
「アクションゲームのキャラコンみたいなのはほとんどなくて、とっつきやすいわね。
とっつきやすいって言えば、始めたてのころ、相手の値付けを見て相場観が学べるのも長所だと思うわ。
たとえばドラゴンとかすごい強そうだから、始めたてのころ高額を宣言してみたんだけど、全然誰も来ないんだよね(笑)。
で、自分で使ってみるとたしかにイマイチパッとしない。
『あ、このゲームではドラゴン弱いのね』ってわかる。
始めたての不慣れなうちも、『あのユニット、みんなほしがってるっぽいし買うか』で雑に学んでいける」

たけお
「自然な学習の導線があるって感じいいわね。
最新の対戦ゲームって、とりあえずYouTubeでTier表見て勉強してからじゃないと、みたいな敷居の高さがあるけど、本作はやりながらトライアル&エラーで上達していける」



⑤デザイン空間の広がり


たけお
「今は物理/魔法、ヒューマン/ビースト/スピリットの2ジョブ3種族だけ。ユニット数は30種ちょっと。全ユニット1ジョブ1種族のみ。
競りとセットコレクション系のゲームとしては最小構成っていうか、全然増やす余地がある。
3ジョブ4種族くらいまではすぐ拡大しそう。
先行作のオートチェスだと複合タイプ(人狼だとビーストとヒューマンの二重属性)が多くいて、彼らがシナジーパズルをより面白くしている。
複合タイプはシナジー作りに長ける反面単体性能は低めで、そこでバランスを取っている。
ディフェンスダービーにも2職業とか2種族を持つユニットを入れるだけの広がり、デザイン空間があるわね」

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⑥Pay to Win(課金ゲー)か?

たけお
「結論としては、課金要素は多いが無課金でもあまり問題なく遊べる。
ユニットやリーダーのレベル上限、城のライフアップなどが課金対象。
中国・韓国系の今時のソシャゲの潮流だと思うけど、かなり課金石は配ってくれる」

あまみち
「自分もたけおくんも現状無課金だね。
レベルキャップを一気に開放したい場合とか、あと『あのリーダーで今すぐ遊びたい』って場合は課金する感じかな」


たけお
「そうね。
あと思ったのが、相手側の
レベル(課金ややり込みの度合い)を確認できないんだけど、これクレバーな方法ね。
確認できてしまうと、『相手はレベル40!?うちまだ20だよ…』となる。
で、ここから「よし、いっちょ課金して40まで上げ切るか!」とはならないよね。
細かい話は省くが、凸るには同じユニットを重ねる必要があり、2-3万円くらいいかないと狙った☆4ユニットは作れない。
強敵がこういう廃課金者と分かると、『Pay to Winじゃん、うんちゲーか…?』って萎えてしまう。

本作はステータスをうまく隠しており、負けたら、
『運に恵まれないなかで、競りはまあ善戦できたかな。
あとよくわかんないけど、相手やたら硬かったかも。
最後押し負けたのは課金のせいかな?』
くらいに思える。
勝ったら勝ったで、
「自分うまくない?
対戦相手の城のHP(唯一外から見えるステータス)、自分より高かったし!
たぶん課金勢では?大金星じゃん~!」

と浮かれることができる(実際は運に依る部分が大きいにもかかわらず)。


⑦流行りそうか?
たけお
「けっこう悪くない線いってるとは思うわね。
オークションだから、
『ほしいユニットを競り負けた!
『カネがないせいでナメられ続けて相手に低額で競り落とされ続ける~!』
「どうにか粘ってキャッシュが逆転!今度は自分が勝ち続けるフェイズに移行」
みたいに、メリハリが利いた起伏のあるストーリーや、やったやられた感が用意されている。

あまみち
「ストーリー性があるってのは同意やね。
ある試合でライフ4/1000になって絶対終わったって絶望してたんだけど、自分だけ金が余ってたおかげでソードマン☆3が作れたんよね。
それでそのままノーダメージで大逆転できたんだけど、やっぱりそういう劇的な試合ってずっと忘れないし、
『このゲーム神ゲーじゃん!』ってなったよね。

たけお
「パッと見で何をやってるかも比較的わかりやすいし、少なくともオートチェスやポケモンユナイトよりは配信映えするんじゃないかな。

1ゲーム10分っていう手軽さ、麻雀と同程度の運要素、4人戦って人数もちょうど良い。カジュアルな面白さがある。
欠点は、ビジュアル的には日本の売れ線から外れているところかな…
ポケモンIPがガワに乗っかったら…ハネるんじゃないでしょうか」

あまみち
「身も蓋もないな(笑)。
でもたしかにポケモンとは相性良さそうかもしれんね。
ユニットは三段進化だし、ボード中央にジムトレーナー置けるし」


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(2)考察:やり込んだ先に見えるもの

*この先は未プレイの人の楽しみを削ぐ可能性があり、読み飛ばし推奨。
*自己情報:20時間くらいプレイ、平凡な勝率で現在ゴールドII、使用リーダーはセリア(精霊、魔法)。


①早く親に、多く親に
当初、
『結局10ラウンドくらいのゲーム。
せいぜい2,3回しか競り勝てない。
実はBET額って勝敗に影響しないのでは?
競りの細かい勝敗よりも、課金の度合いや、牌が重なるかの運要素の方が重要そう。
実はボードゲームっぽい雰囲気に踊らされているだけでは?」

と、考えていたが、存外まったくそうでもない。

所持金最多プレイヤーのデッキから引かれたユニットが競りにかけられる」というチップリーダー(親)の得るアドバンテージがとにかく大きい。

親のシステム、最初は単に
競りを加熱させるための、お金を余らせてる人に積極的に使わせるためだけの安易な実装だと思っていたが、全然そんなことはなかった。
もうとにかく、1ラウンドでも早く親になりたい
親番は有効牌をツモるチャンスで、競り落とせるとデッキが大幅に強化できるから。
さらに、もし妨害にあってカットされたとしても大して問題ない。たいていの場合親を連チャンできるから。
妨害を受けると自分もデメリットをこうむるが、不要なユニットを買った相手には終盤まで走る足が残っていない。残り2人も親手番が本来より1ラウンド遅れて来るため、やはり成長が鈍化する。

②第4ウェーブ=最初のデッドライン

最初のボス(第4ウェーブ)までに3回の競りがあり、ここまでで落札ゼロだとボスはまず倒せない。倒せずとも即脱落はしないが、大量のライフ喪失(1000ライフ中300-700)が生じ、かなり厳しい。
「最初の3回の競りは死に物狂いでBETしてね。最初のボスで4人のうち1人は出遅れて最下位候補になるよ」というデザイン。

③2位狙いとトップ狙い

値付けは2パターンある。
2位狙い(2位の2金ボーナス狙い)とトップ狙い
2位狙いはチキンレースで、親と同額をコールしてしまったときがいちばん悲惨。タイだと両プレイヤーが買えてしまう。親は欲しかった牌が取れて大満足だが、2位狙いだったこっちはもうたまったものではない。ラス確定とは言わないが、この時点で1位を狙うのはかなり厳しくなる。


④値付けは中ランクでインフレし、高ランクで再度デフレ

アイアン~ブロンズ帯での第1ラウンドのBET額相場は12金。開始時の22金のだいたい半額。みんなよくわからず手探りで打っている。

シルバー帯で、いちど
13-15金にまで大きくインフレする。
・プレイヤー側のステータス(城のライフ、ユニットの火力)がエネミーより低い
・配置や構成が甘い

ことから、かなり早期に1,2名リタイアし、勝負は12Rくらいで決着する。
短期決戦なので「とりあえず先に取っちゃえ」で値付けが高騰する。

ゴールド帯を抜けると、相場は10-12金くらいまで急激に下がる。
基礎ステータスや配置テクが向上し、ロングゲーム化するからだ。
決着は16Rあたりまでもつれ込む。
競りの回数増加は単純な値付け減少の要因、多くBETするためには小分けに打つしかない。
シルバーまではトップ狙いか2位狙いなのかよくわからない(たぶん自分でもあんまわかっていない)謎ムーブがよく見られたが、大半の動きから意図が読み取れるようになり、理不尽感、運ゲー感がかなり減る。
始めたてとは別種の面白さが味わえるようになる。

⑤ミラーマッチの奇妙な共闘関係

ミラー構成(同種リーダー)のプレイヤーとは疑似的な協力関係が築ける。
本来、子手番では2位を狙うものだが、ミラー相手が親だと1位で競り落としても全然問題がない。だからかなり強い値付けができる。
強気な値付けは2位ボーナスをもたらす。
ミラー相手以外が親の場合でも、最悪競り落としたとしてもミラー相手の親手番があるから、そこでも強く値付けできる。ミラー構成の相方の親番を命綱、アンカー(イカリ)にするようなイメージ。リカバリーが利くという保障は、やはり強気な値付けを生む。


⑥ワンミスで終わる単独種族マッチ


反対にミラー構成のいない単独種族だと、子手番では事故が怖くて、ミラーマッチほど強く張れない。まったくシナジーがないコマを万一取らされてしまうとそれが敗着手となってしまうから。
よって順位ボーナスも取りづらく、かなり不利を背負う。
そうした逆風を加味して単独種族ボーナス(開始時、その種族リーダーが自分だけなら+1金)が用意されている。
この1金も、始めたてのころはお情け程度にしか映らなかったが、実際はかなり大きい。
最初に20金でなく21金でスタートするというのは、第1ラウンド目の親がもらえることを意味する。
少しでも早く親になれるメリットは大きい。

⑦2連続親ライン
中盤以後状況は複雑化するが、値付けの基準線のようなものは状況ごとにある。
ゴールド帯以後(=ある程度打てる者同士だと)だと基準から大きく外れた荒らしのような値付けは姿を消す。
一例だけ挙げると、所持金が35、20、15、9金のとき、35金プレイヤーにとっては12金が1つの基準線となる。
次手番も連続で親になれる確定ラインが12金だからだ。12金で落札すると23金手元に残る。20金プレイヤーが2金ボーナスを取っても22金、確定で親が連チャンできる。
他者も理詰めで計算しているのか経験則的に打っているかは不明だが、値付けは11-13金で収束することが多い。
 
⑧各展開のモデルケース


各プレイヤーの使用するリーダーによって、
・3vs1
・2vs2
・2vs1vs1
・1vs1vs2
・1vs3

の5通りある。

(3vs1は「人間、人間、人間、ビーストで、自分は人間」などのマッチ、という意)

各パターンの戦いやすさ、勝ちやすさを5点満点で評価する。

1vs1vs2 1点

単独種族ボーナスの1金がもらえるが、別プレイヤーももらっているパターン。
第1ラウンドの親が1/2の確率でしか取れないのが本当に厳しい。取れなかった場合、最低でも3位以上の値付けをしてボーナスを取らないと次ラウンドの親も回ってこない。そのまま何も取れず4位コースも。

3vs1 2点

多数派。
あまりやりやすくない。
少数派を早く脱落させるように動きたい。
が、欲しいユニットが被るため競りの相場は上がりやすい
少数派を潰し損ねると、終盤資金面で足元を見られて逆転されることも多々。

2vs2 3点

もっとも公平で、本作の魅力を感じやすいセッティング。
よくある展開として、最初のうちはミラー相手と協力が成立するが、中盤、攻撃的な値付けが生じる。勝負は1手で決まり、出し抜かれたプレイヤーは4位に転落する。ただ出し抜いた側も値付けを高くしすぎると資金面でショートしてしまい、残った3人戦を戦い抜く足を残せないことも。

2vs1vs1 4点

変則的な多数派。
3vs1よりはるかにやりやすい。耐えていると少数派側が勝手に息切れして自滅してくれることが多い印象。


1vs3 5点

少数派。
第1ラウンドの親番のオークションの有利を活かせるかで明暗が分かれる。
相手3人にとって不要なので10-11金や9金など、相場より相当安くコールできる。ここで誰か1人でも同額で落とさせる(ドボンさせられる)とベストで、そいつはそれ以降尻に火がついて、競りの額を高め、場を温めてくれる。ミラー相手2人の資金を削りながら4位に転落する。そういった展開では1位、2位も狙いやすい。
逆に、こういった初手の殺しの低額BETを狙わず素直に自分だけ落札してしまうと3位、4位に終わることも多い。


(3)総評

・スマホゲームに抵抗がない
・タワーディフェンス系、オークション系のゲームが好き
・ゲームデザインのアイディアが欲しい

このあたりの属性を持つ人間には勧められる良作と評価する

Defense_Derby

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