レイルウェイズ・オブ・ニッポン(2018)は、ワレスによる蒸気の時代(2002)のセルフアレンジ
プレイし、蒸気とは違った魅力を持つ良作だと感じたので記事化する
――――
(1)基本情報
(2)長短所
①ゆるいファミリーゲーム
②3人=ベスト、4人=ちょっと長い、2人=世界が広い
③終了トリガーがちょっと遠い
④インタラクションはそれなり
(3)考察-蒸気の時代との比較検討
①負ければゲームオーバーの競り
②黙ってる人間が勝つ
③複雑なタイルコスト
(4)おまけ―全マップ総覧
①アメリカ東海岸(2005)
②ヨーロッパ(2008)
③メキシコ(2009)
④アメリカ西海岸(2010)
⑤スルータイム(2011)
⑥イギリス(2013)
⑦アメリカ北部&カナダ(2018)
⑧南極大陸(2018)
⑨ポルトガル(2019)
(5)総評
人数:2-4人、ベスト4人
時間:90-120分
複雑性:2.38 (参考値:カタン=2.31,ウイングスパン=2.41)
ランク: 3000位 (2021/12/21)
要素:鉄道敷設、ネットワーク構築、ピック&デリバリー、ユニークカード
言語依存:中程度(ほぼ公開情報のみ,サマリなどで対応可能)
流通:アークライトより日本語版
本作を含めた全拡張セットをキックスターターで販売、約1200万円集めている(プロジェクトページ)
プレイし、蒸気とは違った魅力を持つ良作だと感じたので記事化する
――――
(1)基本情報
(2)長短所
①ゆるいファミリーゲーム
②3人=ベスト、4人=ちょっと長い、2人=世界が広い
③終了トリガーがちょっと遠い
④インタラクションはそれなり
(3)考察-蒸気の時代との比較検討
①負ければゲームオーバーの競り
②黙ってる人間が勝つ
③複雑なタイルコスト
(4)おまけ―全マップ総覧
①アメリカ東海岸(2005)
②ヨーロッパ(2008)
③メキシコ(2009)
④アメリカ西海岸(2010)
⑤スルータイム(2011)
⑥イギリス(2013)
⑦アメリカ北部&カナダ(2018)
⑧南極大陸(2018)
⑨ポルトガル(2019)
(5)総評
Railways of Nippon (2018)
Designer Glenn Drover, Hisashi Hayashi, Martin Wallace
Designer Glenn Drover, Hisashi Hayashi, Martin Wallace
Artist -
Publisher Eagle-Gryphon Games
(1)基本情報人数:2-4人、ベスト4人
時間:90-120分
複雑性:2.38 (参考値:カタン=2.31,ウイングスパン=2.41)
ランク: 3000位 (2021/12/21)
要素:鉄道敷設、ネットワーク構築、ピック&デリバリー、ユニークカード
言語依存:中程度(ほぼ公開情報のみ,サマリなどで対応可能)
流通:アークライトより日本語版
本作を含めた全拡張セットをキックスターターで販売、約1200万円集めている(プロジェクトページ)
デザイナー:
メインデザイナーはマーティン・ワレス
歴史学をバックボーンに持つイギリス人の専業デザイナー
Wallace=ワレス/ウォレスはwelsh=ウェルシュ、ウェールズの,よそ者の から転じた姓
「ウェールズ人」という語がよそ者の意を持つ理由は、征服者のアングロサクソン人から見たため
アングロサクソン人は5世紀ごろに今のドイツからグレートブリテン島に渡り、彼らから見た現地人をウェールズと呼んだ
Wallace氏がウェールズ人を人種的ルーツとして持つかは不明だが、長年拠点としていたマンチェスターはウェールズ地方から電車で1時間くらいの距離にある
マップデザインは林尚志氏、代表作は横濱紳商伝(2016)、ユグドラサス(2020)
歴史学をバックボーンに持つイギリス人の専業デザイナー
Wallace=ワレス/ウォレスはwelsh=ウェルシュ、ウェールズの,よそ者の から転じた姓
「ウェールズ人」という語がよそ者の意を持つ理由は、征服者のアングロサクソン人から見たため
アングロサクソン人は5世紀ごろに今のドイツからグレートブリテン島に渡り、彼らから見た現地人をウェールズと呼んだ
Wallace氏がウェールズ人を人種的ルーツとして持つかは不明だが、長年拠点としていたマンチェスターはウェールズ地方から電車で1時間くらいの距離にある
マップデザインは林尚志氏、代表作は横濱紳商伝(2016)、ユグドラサス(2020)
とても腕が良く、今回のマップをちょうど良い広さで遊びやすく作られている
3人目としてグレン・ドロヴァー氏も名を連ねている
イーグリ・グリフォンの創業者で、レイルウェイズシリーズの全作品やエイジオブエンパイアIIIのクレジットにも名がある
Age of Empires III: The Age of Discovery (2007)
3人目としてグレン・ドロヴァー氏も名を連ねている
イーグリ・グリフォンの創業者で、レイルウェイズシリーズの全作品やエイジオブエンパイアIIIのクレジットにも名がある
Age of Empires III: The Age of Discovery (2007)
本作の位置づけ:
ワレス
「蒸気の時代(2002)発売!」
グレン・ドロヴァー
「蒸気最高!!
もう少し軽くし、コアゲーマー以外でも遊べるようにしてぜひイーグリからも出しましょう」
ワレス
「イーグリからレイルロード・タイクーン(2005)発売!
Age of Steamをよりカンタンでテンポよいバージョンに落とし込む。
これが本作の狙いだ。
線路の建設に重点を置いて、他の要素はできるだけ省いた。
オークションは単純化し、ほぼ取り去った。
特殊アクションも廃止した。
株はラウンド開始時に発行するんじゃなくて、いつでもオートで発行できる。
オリジナルの『Age of Steam』をより単純化し、幅広い層向けにデザインしたんだ」
~数年後~
ワレス
「ライセンス関係で揉めてレイルロード・タイクーンがゲームタイトルに使えなくなった…
なのでレイルウェイズ・オブ・ザ・ワールド(2009)発売!
細かいルール変更はしたが、ベースはレイルロードタイクーンだ。
北米&メキシコマップを皮切りに、各国の地図を制作!
そしてレイルウェイズ・オブ・ニッポン(2018)発売!
今回は独立拡張で、ザ・ワールドを持っていなくても遊べるぞ」
余談だが、Steam(2009)も上のエピソードと似た感じで、蒸気の時代の版権で揉めたから作り直したとどこかで読んだ記憶がある
Steam(2009)
参考記事:
Ender's Comprehensive Pictorial Review: A new base game for Railways of the World, and the ideal medium weight train game | BoardGameGeek
(2)長短所
①ゆるいファミリーゲーム
かなり軽い
重厚なアートと鉄道テーマであり、白ブラス、バラージ、蒸気の時代なんかをイメージしがちだが
チケライとかウイングスパンくらいの、肩の力を抜いてゆるく楽しめる良作だ
②3人=ベスト、4人=ちょっと長い、2人=世界が広い
3人が最も好みだ
テンポが良く、のびのびやりたいことがやれ、終了トリガーも遠すぎない
4人はマップの広さ的にはおそらくベスト人数
ほぼ必ず誰かとぶつかり合いが生じ、楽しい
ちょっとゲームが間延びする場合があるため、終了トリガーを適当に削ってもいいかもしれない
2人だとやや盤面が広い
電力会社のように、ゲーム開始時に中国地方や東北地方を封鎖などし、マップを狭くしてもいいかもしれない
③終了トリガーがちょっと遠すぎる
前項でもちょっと記したが、本作は終了トリガー制
各都市にキューブを配置したあとは、蒸気の時代のように毎ラウンドの補充がない
規定数の都市からキューブがなくなったら終了となる
トリガーまで律儀にプレイすると、4人戦で180分くらいかかってしまう
序盤で大勢が決する軽めなゲームであり、45-90分くらいで終わって良いと思われる
筆者らの卓だと蒸気の時代方式で、3人戦=12ラウンド、4人戦=10ラウンドなど、開始時に合意を取って固定ラウンド化している
桃鉄の年数を最初に話し合って決める感じに近い
④インタラクションはそれなり
細かい話は後述するが、蒸気と比べるととても緩い
ワレスの3-4人ゲームで相手との絡み度合を比較すると、
蒸気の時代=10
ストラグル・オブ・エンパイア=9
黒ブラス=8
白ブラス=7
オートモービル=5
本作=4
ティナーズトレイル=3
ロンドン=1
くらい
例によってあまり意味のない主観レーティングだが
口数少なく勝利を追求するストラテジーゲームよりも、日本マップのフレーバーをダシにワイワイ雑談しつつ楽しむファミリーゲーム寄り
(3)考察-蒸気の時代との比較検討
蒸気、機会を見つけてはリプレイしているが、好みからかなり外れている
・勝敗をほぼ決める最序盤の競り
・黙ってる奴が勝ちやすい設計
・タイルコストの分かりづらさ
上記3点が特に合わないのだが、本作はとても自分好みにチューンされている
それぞれ見ていく
①競りの簡略化
最初からほんの少しだけ脱線するが
ボードゲームには人生観が出る
プレイにおいてもデザインにおいてもそうだ
筆者は、
・自分の長所を探して
・手数を使って磨き上げ成長し
・他者とうまく住み分けて成功する
ようなストーリーが心底好きだ
自作には必ず住み分けと成長要素が含まれている
プレイする方でも、白ブラス、オーディン、バラージ、なんでもいいが、この2要素が組み込まれているゲームをリプレイする傾向にある
前置きが長くなったが、蒸気は住み分けと真逆の世界を持っている
他者との競合を避け、1,2ラウンド目の競りで安くオリるとそのまま負ける
工夫や妥協の余地はない
きちんと意地を張ってある程度の額を積まないと勝てない
安くオリるとスタートダッシュに失敗し、緩慢に死んでいく
かと言って高く突っ張った挙句競り負けると、その瞬間に脱落する
最初の競りを制したプレイヤーがそのまま逃げ切る場合が多い
最初の競りのウエイトが最も大きいこと自体はOKだと捉えている
「最初の数手番で大勢が決まってあとは答え合わせ」式の構造は、重ゲーには割と多い
バラージの国家と重役競りやアグリコラのドラフトなど
バラージやアグリコラだと、うまく噛み合わずに早い段階で敗色濃厚となっても、
「今回はしゃあない、自分のせいだ
捨てゲーせずに、せめて何か学んで持って帰ろう」
であきらめがつく
蒸気があまり良くないのは、沈んだときに生じる感情が、「あいつに殴られたから脱落した」となるところにある
よほど人間ができていないかぎり特定の一個人にヘイトが向いてしまう
こうした感情が生じ得る機構はあまり今風でない
運よく脱落させた側に回ったセッションも自分は十分に楽しみ切れない
地蔵化したプレイヤーを120分間同卓させ続けるのはちょっと苦行すぎる
本作でも競り自体は残っているが、
・スタプレのみが競りの対象、2番手以降は時計回りで決まる(蒸気はすべての手番を競る)
・競り落とした人以外は支払いゼロ(蒸気は4人戦だと3人は何らかの支払いアリ)
と、蒸気と比較にならないくらい軽い
ルールだけ見ると、
「スタプレだけ決めてあとは時計回りって逆に大丈夫か…?
古い時代のワカプレの、2番手がめちゃ有利になる問題が生じるのでは?」
と心配になるが
新たに追加されたカード要素のおかげで、理不尽感はほぼ生じない
ゲーム開始時に、「最初に商品を輸送すると追加で収入値+1」のマイルストーンカードが用意されている
細かい話は省くが、スタプレを取ると絶対にこのマイルストーンが達成できる
他者が収入値+1止まりなところを、自分だけ+2収入でゲームを始められる
しかも最も強力な路線の敷設権までついてくる
2番手も強力な路線を選べてラッキーだが、初手の爆アドと比べると目立たない
カードは2ラウンド目以降も1枚ずつ新たにめくられ、競りにちょっとしたスパイスを与え続けてくれる
2ラウンド目以降のカードはマイルストーンでなくアクション系
マイルストーン式の自動達成でなく、1手使って場から取る必要がある
ハズレもあるが、ちゃんと使えれば5-10金儲かったり、1.5手程度の圧縮になったり、永続能力を得られたりと
かなり強力だ
カードは毎ラウンド1枚しかめくられないので、2ラウンド目以降の競りは、
「自分と噛み合うカードが売り場にあるなら初手を取りたい、そうでないならオリればOK」
くらいの単純な思考で挑める
カードの価値は見積もりやすいので、「どれだけ高くてもX金」と競りの上限も可視化される
蒸気のような意地の張り合いもない
ロクなカードがめくれず陣取りが平和に進んでしまうと、「数ラウンドにわたって全員0金でオリ続ける」みたいな事故も生じることもある
黙ってる方が勝ちやすい
蒸気の競り、一言もしゃべらず5借金くらいして、無言でレイズアップしてくる相手がいちばんやりづらいし、たぶん一番強い
さっきの意地の張り合いvs住み分けの話を再度出すが
意地の張り合い系のゲームはしゃべらない方が勝ちやすい
蒸気以外だとテキサスホールデム、ブラフ、麻雀なんかもそう
「ポーカーフェイスだとポーカー強いよね」くらいの意味しかなく、トートロジーだが
住み分けのゲームは反対だ
ある程度しゃべることで勝利に近づく
白ブラスなんかが顕著だ
第1ラウンドに、
「今回は窯元やってみたいし、そっち向きなカードも引けている、私と競合しないでください」
「こっちは鉄鉱さえやりきれれば産業はなんでもいいです」
みたいな
最低限の事前会話をやっておくことで、無益な衝突や潰し合いを回避できる
開始時や終了後に自然と会話が促進されるゲームであり、とても自分の好みに合っている
タイルコストの簡略化
蒸気、複線化や交差、中立都市との接続時のコストがあまりわかりやすくない
鉄道タイルの種類も多く、「やりたいことを実現するのに必要なタイルはそもそもプールにあるか」も明白ではない
特殊な動きをする前にはリファレンスやプールの確認が必須だが、「あいつなんか悪いことしようとしてる」と警戒されないようにこっそり見る必要がある
本作は地形タイルでのコストで統一し、鉄道タイル数も減らしており、とても易しい
(4)おまけ―全マップ総覧
ニッポン以外の9マップについておおまかな所見をメモしておく
本作のコンポーネントを用いればどのマップでも4人戦までは遊べる
ワレス
「蒸気の時代(2002)発売!」
グレン・ドロヴァー
「蒸気最高!!
もう少し軽くし、コアゲーマー以外でも遊べるようにしてぜひイーグリからも出しましょう」
ワレス
「イーグリからレイルロード・タイクーン(2005)発売!
Age of Steamをよりカンタンでテンポよいバージョンに落とし込む。
これが本作の狙いだ。
線路の建設に重点を置いて、他の要素はできるだけ省いた。
オークションは単純化し、ほぼ取り去った。
特殊アクションも廃止した。
株はラウンド開始時に発行するんじゃなくて、いつでもオートで発行できる。
オリジナルの『Age of Steam』をより単純化し、幅広い層向けにデザインしたんだ」
~数年後~
ワレス
「ライセンス関係で揉めてレイルロード・タイクーンがゲームタイトルに使えなくなった…
なのでレイルウェイズ・オブ・ザ・ワールド(2009)発売!
細かいルール変更はしたが、ベースはレイルロードタイクーンだ。
北米&メキシコマップを皮切りに、各国の地図を制作!
そしてレイルウェイズ・オブ・ニッポン(2018)発売!
今回は独立拡張で、ザ・ワールドを持っていなくても遊べるぞ」
余談だが、Steam(2009)も上のエピソードと似た感じで、蒸気の時代の版権で揉めたから作り直したとどこかで読んだ記憶がある
Steam(2009)
参考記事:
Ender's Comprehensive Pictorial Review: A new base game for Railways of the World, and the ideal medium weight train game | BoardGameGeek
(2)長短所
①ゆるいファミリーゲーム
かなり軽い
重厚なアートと鉄道テーマであり、白ブラス、バラージ、蒸気の時代なんかをイメージしがちだが
チケライとかウイングスパンくらいの、肩の力を抜いてゆるく楽しめる良作だ
②3人=ベスト、4人=ちょっと長い、2人=世界が広い
3人が最も好みだ
テンポが良く、のびのびやりたいことがやれ、終了トリガーも遠すぎない
4人はマップの広さ的にはおそらくベスト人数
ほぼ必ず誰かとぶつかり合いが生じ、楽しい
ちょっとゲームが間延びする場合があるため、終了トリガーを適当に削ってもいいかもしれない
2人だとやや盤面が広い
電力会社のように、ゲーム開始時に中国地方や東北地方を封鎖などし、マップを狭くしてもいいかもしれない
③終了トリガーがちょっと遠すぎる
前項でもちょっと記したが、本作は終了トリガー制
各都市にキューブを配置したあとは、蒸気の時代のように毎ラウンドの補充がない
規定数の都市からキューブがなくなったら終了となる
トリガーまで律儀にプレイすると、4人戦で180分くらいかかってしまう
序盤で大勢が決する軽めなゲームであり、45-90分くらいで終わって良いと思われる
筆者らの卓だと蒸気の時代方式で、3人戦=12ラウンド、4人戦=10ラウンドなど、開始時に合意を取って固定ラウンド化している
桃鉄の年数を最初に話し合って決める感じに近い
④インタラクションはそれなり
細かい話は後述するが、蒸気と比べるととても緩い
ワレスの3-4人ゲームで相手との絡み度合を比較すると、
蒸気の時代=10
ストラグル・オブ・エンパイア=9
黒ブラス=8
白ブラス=7
オートモービル=5
本作=4
ティナーズトレイル=3
ロンドン=1
くらい
例によってあまり意味のない主観レーティングだが
口数少なく勝利を追求するストラテジーゲームよりも、日本マップのフレーバーをダシにワイワイ雑談しつつ楽しむファミリーゲーム寄り
(3)考察-蒸気の時代との比較検討
蒸気、機会を見つけてはリプレイしているが、好みからかなり外れている
・勝敗をほぼ決める最序盤の競り
・黙ってる奴が勝ちやすい設計
・タイルコストの分かりづらさ
上記3点が特に合わないのだが、本作はとても自分好みにチューンされている
それぞれ見ていく
①競りの簡略化
最初からほんの少しだけ脱線するが
ボードゲームには人生観が出る
プレイにおいてもデザインにおいてもそうだ
筆者は、
・自分の長所を探して
・手数を使って磨き上げ成長し
・他者とうまく住み分けて成功する
ようなストーリーが心底好きだ
自作には必ず住み分けと成長要素が含まれている
プレイする方でも、白ブラス、オーディン、バラージ、なんでもいいが、この2要素が組み込まれているゲームをリプレイする傾向にある
前置きが長くなったが、蒸気は住み分けと真逆の世界を持っている
他者との競合を避け、1,2ラウンド目の競りで安くオリるとそのまま負ける
工夫や妥協の余地はない
きちんと意地を張ってある程度の額を積まないと勝てない
安くオリるとスタートダッシュに失敗し、緩慢に死んでいく
かと言って高く突っ張った挙句競り負けると、その瞬間に脱落する
最初の競りを制したプレイヤーがそのまま逃げ切る場合が多い
最初の競りのウエイトが最も大きいこと自体はOKだと捉えている
「最初の数手番で大勢が決まってあとは答え合わせ」式の構造は、重ゲーには割と多い
バラージの国家と重役競りやアグリコラのドラフトなど
バラージやアグリコラだと、うまく噛み合わずに早い段階で敗色濃厚となっても、
「今回はしゃあない、自分のせいだ
捨てゲーせずに、せめて何か学んで持って帰ろう」
であきらめがつく
蒸気があまり良くないのは、沈んだときに生じる感情が、「あいつに殴られたから脱落した」となるところにある
よほど人間ができていないかぎり特定の一個人にヘイトが向いてしまう
こうした感情が生じ得る機構はあまり今風でない
運よく脱落させた側に回ったセッションも自分は十分に楽しみ切れない
地蔵化したプレイヤーを120分間同卓させ続けるのはちょっと苦行すぎる
本作でも競り自体は残っているが、
・スタプレのみが競りの対象、2番手以降は時計回りで決まる(蒸気はすべての手番を競る)
・競り落とした人以外は支払いゼロ(蒸気は4人戦だと3人は何らかの支払いアリ)
と、蒸気と比較にならないくらい軽い
ルールだけ見ると、
「スタプレだけ決めてあとは時計回りって逆に大丈夫か…?
古い時代のワカプレの、2番手がめちゃ有利になる問題が生じるのでは?」
と心配になるが
新たに追加されたカード要素のおかげで、理不尽感はほぼ生じない
ゲーム開始時に、「最初に商品を輸送すると追加で収入値+1」のマイルストーンカードが用意されている
細かい話は省くが、スタプレを取ると絶対にこのマイルストーンが達成できる
他者が収入値+1止まりなところを、自分だけ+2収入でゲームを始められる
しかも最も強力な路線の敷設権までついてくる
2番手も強力な路線を選べてラッキーだが、初手の爆アドと比べると目立たない
カードは2ラウンド目以降も1枚ずつ新たにめくられ、競りにちょっとしたスパイスを与え続けてくれる
2ラウンド目以降のカードはマイルストーンでなくアクション系
マイルストーン式の自動達成でなく、1手使って場から取る必要がある
ハズレもあるが、ちゃんと使えれば5-10金儲かったり、1.5手程度の圧縮になったり、永続能力を得られたりと
かなり強力だ
カードは毎ラウンド1枚しかめくられないので、2ラウンド目以降の競りは、
「自分と噛み合うカードが売り場にあるなら初手を取りたい、そうでないならオリればOK」
くらいの単純な思考で挑める
カードの価値は見積もりやすいので、「どれだけ高くてもX金」と競りの上限も可視化される
蒸気のような意地の張り合いもない
ロクなカードがめくれず陣取りが平和に進んでしまうと、「数ラウンドにわたって全員0金でオリ続ける」みたいな事故も生じることもある
黙ってる方が勝ちやすい
蒸気の競り、一言もしゃべらず5借金くらいして、無言でレイズアップしてくる相手がいちばんやりづらいし、たぶん一番強い
さっきの意地の張り合いvs住み分けの話を再度出すが
意地の張り合い系のゲームはしゃべらない方が勝ちやすい
蒸気以外だとテキサスホールデム、ブラフ、麻雀なんかもそう
「ポーカーフェイスだとポーカー強いよね」くらいの意味しかなく、トートロジーだが
住み分けのゲームは反対だ
ある程度しゃべることで勝利に近づく
白ブラスなんかが顕著だ
第1ラウンドに、
「今回は窯元やってみたいし、そっち向きなカードも引けている、私と競合しないでください」
「こっちは鉄鉱さえやりきれれば産業はなんでもいいです」
みたいな
最低限の事前会話をやっておくことで、無益な衝突や潰し合いを回避できる
開始時や終了後に自然と会話が促進されるゲームであり、とても自分の好みに合っている
タイルコストの簡略化
蒸気、複線化や交差、中立都市との接続時のコストがあまりわかりやすくない
鉄道タイルの種類も多く、「やりたいことを実現するのに必要なタイルはそもそもプールにあるか」も明白ではない
特殊な動きをする前にはリファレンスやプールの確認が必須だが、「あいつなんか悪いことしようとしてる」と警戒されないようにこっそり見る必要がある
本作は地形タイルでのコストで統一し、鉄道タイル数も減らしており、とても易しい
(4)おまけ―全マップ総覧
ニッポン以外の9マップについておおまかな所見をメモしておく
本作のコンポーネントを用いればどのマップでも4人戦までは遊べる
①アメリカ東海岸(2005)
原点、長く愛されている
マップは広大で5-6人向け
北東部沿岸にうまみのある路線が集中、ハードな競りを楽しみたいプレイヤーに最適
②ヨーロッパ(2008)
アルプス山脈をまたいでの接続が不可避
山岳によって敷設コストが上がりやすい
3-4人向け、タフなゲームが楽しめる
③メキシコ(2009)
マップが手狭なため2-3人向け
過半数のヘックスがシエラ・マドレ山脈に覆われている
序盤からガンガン借金が迫られるハードな展開に
④アメリカ西海岸(2010)
5-6人向け
一極集中型の東海岸と比べ、主要都市はまばらに点在
広々楽しめる
⑤スルータイム(2011)
レイルウェイズファンのチャーリー・ビンク氏による拡張、3-4人向け
石器時代から未来まで8時代をまたにかける
写真は4人戦終了時、5つのミニマップで蒸気を5面打ちする感じか、危険な香り
⑥イギリス(2013)
各都市同士が1-2ヘックスで接続でき、敷設コストが安い
ニッポンマップと似た易しい作り
4-5人向け、初心者でも遊びやすい
⑦アメリカ北部&カナダ(2018)
3-4人向け
・中央に東西に走るスノーライン=もしまたぎたいならバカ高い追加コストが必要、うまく避けるテクニックが求められる
・フェリーカード=北部の海洋ヘックスに敷設できる
・鉱山カード=史実で鉱山があった都市に再度キューブを湧かせられる
など、種々の特殊要素で楽しませてくれる
⑧南極大陸(2018)
ニッポンのキックプロジェクトのストレッチゴール
都市がない更地だが、2つのシナリオに合わせてランダムで研究所や都市を配置する
⑨ポルトガル(2019)
2-3人向け
ポルトガル人ラセルダの手からなる
アゾレス諸島、マデイラ諸島への海洋ルートなど、オリジナル要素がみられる
※各マップの所見は以下リンクを基に記載
Ender's Comprehensive Pictorial Review: A new base game for Railways of the World, and the ideal medium weight train game | BoardGameGeek
各都市同士が1-2ヘックスで接続でき、敷設コストが安い
ニッポンマップと似た易しい作り
4-5人向け、初心者でも遊びやすい
⑦アメリカ北部&カナダ(2018)
3-4人向け
・中央に東西に走るスノーライン=もしまたぎたいならバカ高い追加コストが必要、うまく避けるテクニックが求められる
・フェリーカード=北部の海洋ヘックスに敷設できる
・鉱山カード=史実で鉱山があった都市に再度キューブを湧かせられる
など、種々の特殊要素で楽しませてくれる
⑧南極大陸(2018)
ニッポンのキックプロジェクトのストレッチゴール
都市がない更地だが、2つのシナリオに合わせてランダムで研究所や都市を配置する
⑨ポルトガル(2019)
2-3人向け
ポルトガル人ラセルダの手からなる
アゾレス諸島、マデイラ諸島への海洋ルートなど、オリジナル要素がみられる
※各マップの所見は以下リンクを基に記載
Ender's Comprehensive Pictorial Review: A new base game for Railways of the World, and the ideal medium weight train game | BoardGameGeek
Ender's Comprehensive Pictorial Review: The Railways of the World franchise heads to Antarctica | BoardGameGeek
Ender's Comprehensive Pictorial Review: Railways of the World heads to Portugal with Vital Lacerda | BoardGameGeek
(5)総評
蒸気とは全く別ゲーの、ゆるくワイワイ楽しめるファミリーゲームだ
遊ぶ人を選ぶほどの激しさは削りつつ、
・鉄道を延ばし、各都市のニーズに応えて収入に換える爽快感
・うまみのある地域をめぐる他企業との競争
これら蒸気のオリジナルな魅力はそのまま残してある
シンプル化した分、いっそう良さが引き立っている
遊ぶ人を選ぶほどの激しさは削りつつ、
・鉄道を延ばし、各都市のニーズに応えて収入に換える爽快感
・うまみのある地域をめぐる他企業との競争
これら蒸気のオリジナルな魅力はそのまま残してある
シンプル化した分、いっそう良さが引き立っている