「レイルロード・レボリューション」を代表作に持つイタリア人デザイナー、マルコ・カネッタとステファニア・ニッコリーニ夫妻へのインタビュー和訳
(1)基本情報
(1)基本情報
人数:2-4人,ベスト3人
時間:45-90分(初回素読みインスト2人戦で60分程度)
重さ:3.24(参考値:テラフォーミングマーズ=3.24)
要素:特殊ワーカー、ワーカービルディング、ルート構築、鉄道、電信、19世紀アメリカ、西部開拓
ランク:783位(2020/10現在)
言語依存:なし
流通:和訳付き原語版および拡張(2019年)が駿河屋で販売
カネッタ&ニッコリーニはイタリア人の夫妻のデザイナー
著者近影(BGGページより)
必ず連名で出している
ポートフォリオは以下
2009年:African Park 14500位
2012年:The Doge Ship 8000位
2014年:春秋戦国 507位
2016年:レイルロード・レボリューション 782位
2016年:ライン川:リバートレード 8500位
春秋戦国(2014)
出版元のWhat's Your Game?はイタリアの中規模パブリッシャー
社員は4人で、社長のマリアーノ・イアネッリが社の頭脳
イアネッリはアートディレクターを兼任しており、レイルロードはじめ、春秋戦国、マデイラなどのアートワークを担当
代表作は、
・ヴィニョス旧版(2010)
・マデイラ(2013)
・ニッポン:明治維新(2015)
・シニョーリエ(2015)
など
イアネッリ近影(BGGページより)
(2)インタビュー
(1)基本情報
(2)インタビュー
①レイルロードのコンセプト
②誰向けのゲームか
③デザインを始めるまで
④プロセス
⑤テーマ/メカニクス
⑥レイルロードの裏話
⑦生活
⑧今後作りたいもの
(3)考察:基本&拡張の分析
①レボリューション(基本)の構造解析
④プロセス
⑤テーマ/メカニクス
⑥レイルロードの裏話
⑦生活
⑧今後作りたいもの
(3)考察:基本&拡張の分析
①レボリューション(基本)の構造解析
・自由なデッキ構築
・イージーなプレイ感
・イージーなプレイ感
・インタラクションはあっさり
・電信強い問題
②基本版のゲームバランスは悪いだろうか?
③エボリューション(拡張)の目指したもの
④自分だったらどうしたか
(4)総評
③エボリューション(拡張)の目指したもの
④自分だったらどうしたか
(4)総評
Railroad Revolution (2016)
Designer Marco Canetta, Stefania Niccolini
Artist Mariano Iannelli
Publisher What's Your Game? + 3 more
(1)基本情報
人数:2-4人,ベスト3人
時間:45-90分(初回素読みインスト2人戦で60分程度)
重さ:3.24(参考値:テラフォーミングマーズ=3.24)
要素:特殊ワーカー、ワーカービルディング、ルート構築、鉄道、電信、19世紀アメリカ、西部開拓
ランク:783位(2020/10現在)
言語依存:なし
流通:和訳付き原語版および拡張(2019年)が駿河屋で販売
カネッタ&ニッコリーニはイタリア人の夫妻のデザイナー
著者近影(BGGページより)
必ず連名で出している
ポートフォリオは以下
2009年:African Park 14500位
2012年:The Doge Ship 8000位
2014年:春秋戦国 507位
2016年:レイルロード・レボリューション 782位
2016年:ライン川:リバートレード 8500位
2018年:The Long Road 10000位
2019年:Pirates Under Fire 8500位
2019年:レイルロード・エボリューション(拡張)
2019年:Pirates Under Fire 8500位
2019年:レイルロード・エボリューション(拡張)
春秋戦国(2014)
出版元のWhat's Your Game?はイタリアの中規模パブリッシャー
社員は4人で、社長のマリアーノ・イアネッリが社の頭脳
イアネッリはアートディレクターを兼任しており、レイルロードはじめ、春秋戦国、マデイラなどのアートワークを担当
代表作は、
・ヴィニョス旧版(2010)
・マデイラ(2013)
・ニッポン:明治維新(2015)
・シニョーリエ(2015)
など
イアネッリ近影(BGGページより)
(2)インタビュー
参考文献:
①Eric Dean(2018).For The Love of Board Games,P26-32
②https://jogoeu.wordpress.com/2016/10/12/mini-interview-marco-canneta/
※①と②の内容を抜粋し、統合・再構成した
※インタビュイーの発言はすべて夫のマルコ・カネッタとした
※問題が生じたら本記事を削除する可能性がある
―――――
①レイルロード・レボリューションのコンセプトを簡単に教えてください。
19世紀アメリカが舞台
アメリカ全土に鉄道網をつくるのがゲームの目的だ
・駅を建てる
・電信局を開く
・鉄道を敷く
・有力者と取引する
・マイルストーンを達成する
・会社の業績トラックを進める
と
要素がたくさんあるゲームだ
でも、そんなに複雑じゃない
実行可能なアクションは原則4種類だ
4種のなかから、好きなアクションを毎手番1つ選んで実行する
・駅を建てる
・鉄道を敷く
・電信局を開く
・資産売却してお金に換える
の4アクションだ
このゲームのキモは色付きの特殊ワーカーだ
普通のワーカーだと上の4アクションを普通にやる
でも、特殊ワーカーを配置するとボーナスがついてくる
建設コストがタダになったり、追加のフリーアクションができたり
ゲーム開始時は能力ナシの無色ワーカーしか持っていない
・自分の戦略に合わせた特殊ワーカーをゲットしたい
・能力ナシの初期ワーカーは破棄して圧縮したい
とプレイヤーはハンドマネジメントへの欲求を持つ
②レイルロードはどのようなプレイヤーに好まれると思いますか?
まず、僕たちのもう1つの代表作の「春秋戦国」よりははるかにカンタンだ
プレイ時間も短い
要素は多いけど、ルールが直感的に分かりやすく、インストも容易だ
ただ、勝とうとするとそう簡単じゃない
コンボを作ってしっかり計画を立てないと高得点は取れないようになっている
ゲーマーズゲームだけど、カジュアルゲーマーでも楽しめる
これが本作の長所だよ
③ゲームデザインを始めるまでの経緯を教えてください。
2人とも、子どものころからゲームになじみがあった
イタリアの国柄もあるんだと思うんだけど、特にトランプカードゲームは家族としょっちゅうプレイしていた
ブリスコラ(1800)とか、伝統トランプゲームの地盤がイタリアにはあるんだ
あとは80年代に良くプレイされていたゲーム、
・モノポリー(1933)
・クルード(1949)
・リスク(1959)
なども好んでプレイしていた
90年代に結婚し、娘のアレッサンドラが誕生
近所にゲームストアがあった
そこで現代ボードゲームに出会った
・カタンの開拓者(1995)
・傭兵隊長(1995)
・セレニッシマ(1996)
・ハンニバル:ローマvsカルタゴ(1996)
・レーベンヘルツ(1997)
・ティカル(1999)
・カルカソンヌ(2000)
など90-2000年代前半は、たくさんのボードゲームを自宅でプレイした
「アレッサンドラには子ども用のハイチェアに座っててもらって、大人たちが一緒のテーブルでプレイ」
というのがお決まりだった
彼女はおとなしい子だった
使っていないゲームのコンポーネントを与えておくと、1人で遊んで騒がずにいてくれた
Serenissima(1996, D.Ehrhard et al)
このころからたまに、遊んだゲームのルールを自分たちで改変していた
最初は小さなヴァリアントルールだった
いつだったか、買ったゲームがどうしようもなくつまらなかったことがあったんだ
「さすがに2回目をやる気になれない
なら、自分たちで変えちゃう方がいい」
そう考えて、いくつかのメカニクスを丸ごと変えてしまった
それがきっかけで、本格的に自分自身のゲームをデザインするようになった
「この出来ならパブリッシャーに持ち込める」
と勇気が持てるようになるまで何年もかかった
持ちこんだが、複数の出版社で拒絶された
2008年
失敗が続いて、もう本当にあきらめようとしていた
「これでダメだったら最後にしよう」
と覚悟を決めて、あるコンベンションに向かった
そこで試作品をいくつかのパブリッシャーに持ち込んだんだ
3個持ちこんだうち、2つが出版されることになった
この成功体験のおかげで今がある
熱意を持ってゲームデザインがやれているよ
④どのようにデザインが始まるのでしょうか?
プロセスについて伺えますか?
始まりはふとしたタイミングだ
子どもの何気ない一言とか
デザインプロセスは、反復としか言いようがないね
・アイディアを詰めて
・ゲーム素材を描いて
・印刷
・切り貼り
・テスト
で、ゴミ箱に捨てて、最初に戻る
ゲームデザインは夫妻でやっているんだけど、最大の利点として、2人でいる時間を長く取れる点が挙げられる
デメリットは、プレイスタイルが大きく異なること
僕は攻撃的で短期的な戦術を考えるのが得意だ
インタラクション強めなハードコアなやつが好みだ
お互いに意地悪できるゲームこそ最高だ
反対に、妻のステファニアは平和主義者だ
プランを練って、長期的なスパンで実現させる
他者に干渉されず、箱庭を作るゲームが好みだ
ゲームデザインは意志決定の連続だが、ここまでタイプが違うと意志統一が難しい
意見が合わない場面も多いよ
どうしても合わないときは、娘と息子に最終的な判断をゆだねるようにしている
⑤テーマとメカニクス、どちらから作ることが多いですか?
特に決めていない
「このコマが使いたい!」って感じで、コンポーネントから始まることもある
ドキュメンタリー映画とかもきっかけになる
歴史的な出来事から発想をふくらませることもある
個人的な体験でもいい
どこからでもゲームデザインは始まる
1つ例示するなら、僕たちのライン川:リバートレード(2016)は個人的な体験から来ている
バケーションでドイツに行って、ライン川の流域を自転車で旅行したんだ
Rhein: River Trade(2016)
ライン川中流,ドイツ
あと、何年かやった結論だけど、僕たちの場合はテーマから作る方が性に合っているみたいだ
システムから作ると途中でボツになりやすい
歩留まりが悪いんだ
テーマから組み上げる場合、たいていプレイ可能なところまでは持っていける
たぶん、最終的なゴールがイメージしやすいからだと思う
「こういう体験をプレイヤーにさせたい」という狙いがよりクリアになる
たぶん僕たちのゲームの好みも影響している
普段、アブストラクトゲーム、ノンテーマなゲームはほとんどプレイしないんだ
テーマがちゃんとある作品が好きだ
⑥レイルロード・レボリューションの制作についてお話を伺えますか?
完成版は鉄道テーマなんだけど、最初の原案はまるっきり別モノだった
最初のテーマは、息子のIacopoの一言だった
「パパの仕事をゲームにしたやつをやってみたい」
っていう
レイルロードの一番最初のテーマは電信/telecommunicationsだったんだよ
僕(夫のマルコ)の本業はエンジニアだ
当時は、ケータイ電話の通信オペレーションのコンサルタント業務をやっていた
「基地局の発した電磁波が近隣住民の健康に影響を及ぼしていないか評価する」
っていうのが仕事だった
息子が言い出すまで、まさかこの仕事をゲーム化するなんて思ってもなかった
「まあやってみるか」とテストキットを組んだ
原案のタイトルは「ワイヤレス」だった
経済系のゲームで、
・マップの位置関係の把握
・高度な暗算
を同時にやらせる
けっこう負荷のかかるハードなゲームだった
いちおうゲームのかたちはしていたが、煩雑だった
テーマは斬新で面白かったんだけど、だからこそ難しさもあった
「いったんテーマを変えるべき」と判断し、当初のテーマの「通信ネットワーク」は凍結し、完成版と同じ鉄道や電信にスイッチした
ただね、これはこれで問題があった
鉄道テーマは使い古されているんだ
このありふれたテーマをどう活かすか?
電信だけでなく、駅やレールなど、「鉄道ゲームといえばこれ」という要素群もきちんと組み込む必要がある
おなじみの道具も用いながら、オリジナルな新しいゲームとして作り上げる
大きなチャレンジだった
まずは歴史の本を当たったよ
アメリカの鉄道史を調べた
何かアイディアやインスピレーションが得られないかと思って
ここで、ゲームで使える要素をいくつも手に入れられた
設計の最大のブレイクスルーはカラーワーカーだった
このアイディアを思いつくまで、ずっと「ゴア」の個人ボードを流用したものでテストプレイしていた
「ゴアのメカニクスはしっくり来ない
テストプレイ自体は可能だが、最終形がイマイチ見えない
製品化するにはもう一段階進化が必要だ」
こういった重圧があった
そのときにカラーワーカーを個人ボードに配置してアクションするメカニクスを思いついたんだ
Goa(R.Dorn, 2004)
⑦ゲームデザイン以外の生活について伺ってもいいですか?
僕(夫のマルコ)はエンジニアリング用の小さい事務所を持っている
さっきの話だとコンサル業をやっていたけど、今は機能安全の業務を行っている
妻のステファニアは経済学の学位持ちで、会計処理の仕事をしている
ただ、これは正直世を忍ぶ仮の姿だよ
日々の料金支払いとか、食費のためにやっている
僕たちがいちばん好きなのはゲームデザインであり、小説の執筆なんだ
妻のステファニアは兼業の小説家だ
既に2冊小説を出版している
Don't Leave me, Edward(Stefania Niccolini)
ゲームデザインを始めてからは、他の趣味に使える時間はだんだん減っている
僕は創作以外にもいくつか趣味があった
たとえばギター、映画、マンガ
マンガはフランスとベルギーのものが好きだ
自転車に乗るのも好きだ
妻のステファニアは読書が趣味だ
⑧最後に、作ってみたいテーマは?
タイムトラベルモノをちょっとやってみたい
試作品は作ったことあるんだけど、あまりにアブストラクトだったからお蔵入りになってるんだ
(3)考察/基本と拡張の読み解き
レイルロード・レボリューションの基本版/拡張版についていくらか掘り下げる
[1]レボリューション(基本版)の構造解析
①自由なデッキ構築
エンジンビルドの楽しさが最大の魅力
ゲーム開始時は、能力ナシの無色ワーカーが4体しかいない
何ワーカーいようが1手番に1アクションしかできない
だから増員はあまり意味がない
・能力ナシワーカーを破棄
・特殊ワーカーを雇用
して、ワーカーを少数精鋭だけでそろえると、1アクションあたりの打点がどんどん高まる
成長の楽しさをシンプルに感じさせてくれる
②イージーなプレイ感
かなり易しく、丸く作っている印象を持つ
デッドエンド(行き止まり、詰み)を徹底的に回避している
③インタラクションはあっさり
初心者には易しいが、ゲーマーにとってはちょっとソロ感が強すぎるゲームかもしれない
マップ上のボーナスの早取りが一応あるが、自分の手を歪めて取りに行くまでの重要さはない
④電信強い問題
レイルロードの基本版は、特定の戦略が強い
「電信局の開設」というアクションがちょっと強すぎるのだ
・序盤は電信で足場作り
・中盤からいくつかの勝利点ルートに分岐
という流れをたいていの場合取ることになる
電信アクションはノーコストで、
・能力ナシワーカーを1体破棄
・お金+株券を獲得
ができる
株券はお金としても、別の用途でも使える強いリソース
ドミニオンに雑に例えると、電信は礼拝堂に2金がついてくる、みたいな
分かりやすい強さがある
なお、電信が強すぎる件については、@jun1sさんによる以下のページが良くまとまっている
レイルロード・レボリューションの電信戦略と緩和ヴァリアントの紹介
https://sites.google.com/site/jun1sboardgames/blog/railroad-revelution-variants
本記事を書く上でも参考にさせていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
[2]基本のゲームバランスは悪いだろうか?
「電信アクションがとても強力」という特徴は、レイルロードのプレイ感を悪くしているだろうか?
レイルロード基本版はバランスが悪いのだろうか?
結論から記すと、筆者にとってあまり問題だと感じない
「バランスが悪い」という単語は抽象度が高い
思考の道具に適さない
もっと具体的な水準に落とし込む必要がある
・理不尽な体験
・単調なゲーム展開
このいずれかを受け取ったとき、プレイヤーはそのゲームをバランスが悪いと解釈する
レイルロードについては、これらの欠点はほぼないと言って良いと思われる
・体験は理不尽?
電信アクションをやっていく必要があるが、各プレイヤーのアクションは守られており、やりたいだけやれる
早取りのボーナスの奪い合いはあるものの、理不尽なプレイ感は生じない
・ゲーム展開は単調?
・序盤の電信ボーナスで何が取れるか
・開始時のマイルストーンは達成しやすいか
これらによって、中盤から自然とルートが分岐していく
ルートは、
・電信をフル完走
・途中で電信を切り上げて、マイルストーンカードでの加点を狙う
電信とマイルストーンの2ルートがある
マルコ・ポーロの旅路の「契約か旅か」くらいの、ちょうどいい複雑さがある
The Voyages of Marco Polo (2015)
[3]エボリューション(拡張)の目指したもの拡張のレイルロード・エボリューションは2019年、基本の3年後に発売された
個人ボードとコマだけ残して、ボードやタイルをほぼ全とっかえする大工事をやっている
基本版のバランスに問題を感じたプレイヤーへの解答だと筆者は理解する
拡張、バランスは調整されているのだが、筆者は基本版の方が好みだ
細かいルールは記さないが、拡張では以下の修正を行っている
・電信点を取りにくく
・マイルストーンの素点をもっと高く
・第3要素に、プレイヤーごとに異なる勝利点タイルを導入
バランスは良くなった
第3要素は、各プレイヤーごとに異なる特化ルート、指針みたいなものを与えてくれる
やらせたいことは明白なのだが
ちょっとプレイ感がもっさりしている
要素が増えすぎて、ゲームの焦点がボケてしまった感がある
レイルロード基本版は、元々かなりソロ感が強いゲームだった
が、シンプルだったからこそ、若干の駆け引き感も感じられた
「あの人アレやってる、じゃあ自分はこれでいこう」
「あいつあそこ行きたそう、なら先に行ってボーナス奪おう」
的な
拡張は要素が増えすぎたせいか、相手を見る余裕がない
「あっちはあっちで何かやってるな…何が狙いかわからん
っていうか、そもそも自分が何をすべきかさえよくわかんないぞ」
と
リソースパズルの負荷がちょっと重たくなりすぎた感がある
あまり良い例が思いつかないが、レイルロード拡張入りは、アンダーウォーターシティーズのプレイ感にちょっと似ている
パズル自体はとても楽しいのだが、お互いを見る余裕がないし、見るメリットもそんなにない
[4]自分だったらどうしたか
前提として、レイルロード拡張はゲームバランスが良く、優れている
それはそれとして、もし自分だったら基本版のどこに手を加えるか
基本版、おおむね良いゲームなのだが、改善可能な点が2か所あると感じる
(A)序盤の電信アクションが過度に強く、プレイヤーに一本道感を与えてしまう
(B)現金トークンを多く取れすぎてしまう
(A)序盤の電信アクションが過度に強く、プレイヤーに一本道感を与えてしまう
エボリューションでは共有ボードを差し替えて電信アクションをナーフした
本節では個人ボードでのワカプレのルールに手を加える
現行のワカプレのルールは、
・ワーカー1体を4アクションのうち好きな場所に配置してアクション
・手元のワーカーが尽きたらノーコストで回収
と
1回プレイすると分かるのだが、ちょっと縛りが弱すぎる
なんでも自由にできすぎてしまうのだ
・制限して、適度に抜け道を作る
・ゲーム開始時のルールはキツくして、能力強化などで途中からズルさせてあげる
制限と解放のメリハリが快楽を生む
うまく調整されたゲームをプレイすると、プレイヤーは楽しい体験が得られる
具体案としては、
①同じアクションを連発できない
②同じアクションを連発できるが、すでにいるワーカー分だけ余分にお金を払う
③他プレイヤーのアクションも参照させる
ざっくり3案ある
①同じアクションを連発できない
シンプルな解決
サイズ:大鎌戦役がこの方式を取っている
レイルロード基本版の目指す「子どもとも遊べるイージーな中量級」から大きく外れないと思われる
抜け道として、同じアクションを連発できる特殊ワーカーを作ってもいい
②同アクション連発する場合、すでにいる基本ワーカー分だけお金を払う
そこそこ複雑
自分の好みにいちばん合った改変と思われる
アクションを連発したいならカネを積む必要がある
このルールだと基本ワーカーの圧縮が大正義すぎるので、ワーカーの圧縮/獲得条件を大幅にいじる必要がある
③他プレイヤーのアクションも参照させる
他プレイヤーの基本ワーカーが存在すると多くコストがかかるとか
ここまで変えてしまうとまったくの別ゲーになってしまう
あまり良いものにならないと思われる
(B)現金トークンを多く取れすぎてしまう
このゲームではお金がちょっと多く取れすぎてしまう
電信アクションでお金がゲットできるのだが、連発する関係でトークンが手元でじゃらつきすぎる
最低単位は50ドルで、1000ドルもあればしばらく遊んで暮らせるのだが
調子に乗って電信を連打しつづけるとすぐに3000ドルくらい儲かってしまう
電信で手に入る株券トークンが「集めれば集めるほど収入が増える」要素※を持つのも相まって、プレイヤーは、
「電信連打しつづけてもっとお金を稼ぎたい」
と思ってしまう
※後記
筆者のルール誤読あり。電信のオレンジボーナスを「手持ち株券数×100ドル」と読み違えていた。本来は「その手番で獲得した株券数×100ドル」。
プレイヤーが喜ぶからといって、資源を与えすぎると問題が生じる
ロクなことにならない
まずありがたみがなくなる
具体的には、一度に10-15個以上のトークンを渡さない方が無難だ
コンコルディアの倉庫は12スロット
センチュリーやスプレンダーの上限も10個
カタンはのカードは7枚
プレイヤーには処理できる限界がある
それを超えると、リソースに対しての喜び/関心は目減りする
「ムダなく使い切らないともったいない
むしろめんどくさい、わずらわしい
あってもなくてもどうでもいい」
と
逆に負債のように感じ始める
「年収800万が幸福度の上限値」とするダニエル・カーネマン仮説を思わせる
1つ例示すると、テラフォーミングマーズも同じ危険性を持つゲームだ
「資源取れすぎて意味なくない?」と緊張の糸が切れるタイミングが生じかねない
具体的には、
・政府介入ルールナシ
・標準プロジェクトに消極的なテーブル
・2-3人の少人数戦
これらの悪条件がそろった場合、普通8Rくらいで終わるゲームが、15R経っても終わらなくなる
作り手は、
「ゲームが停滞しちゃった場合、いちばん収入基盤が弱いプレイヤーが必ずいるはず
その人が早めに終了トリガーを引きに行ってください
たぶん早く勝利点化した方が一番順位が良くなるので」
と意図しているが
不慣れなプレイヤーにはその判断がつかないことが多い
話を戻して、レイルロードの具体的な改変案
現金が取れすぎる最大の要因は株券トークンにあるのだが
株券のルール自体はなくさない方がいい
とてもユニークで、レイルロードの魅力の一端を担っているからだ
ただし、「株券と現金が同じ紙チップ」というのはやや混乱の元となっており、改善可能だと捉える
ゲームバランスでなく、UIの調整
たとえばだが、
・現金はこれまでどおり厚紙チップで
・株券をトラック方式=木ゴマのスライドで管理
と切り離すことができる
他作品だが、ヴィニョス2010年版の銀行への投資トラックのような感じ
現金トークンと別で銀行への投資トラックが存在し、銀行への融資が多いほどラウンド収入が増える
またコマの位置を下げると、フリーアクションで現金化もできる
Vinhos(V.Lacerda,2010)の融資トラック
これと同じように、株券トラックを進めていると電信アクションで得られる現金が増える
コマの位置をフリーアクションで下げて、現金にしたり、株券がコストのタイルを達成できる
ただ、レイルロードはテラフォと同じで、プレイ回数を重ねると現金が余りにくくなる
終了トリガーをプレイヤーが引くゲームなので、
「あんまり金稼ぎにほうけていると、相手プレイヤーに建物を建て切られて終わっちゃうかも
カネが使い切れないと手損すぎる
適当なところで勝利点化しないと」
と
多少の緊張感が生じる
(4)総評
拡張が必須なゲームではない
GWTの北方とかUWCの発見拡張みたいに、
「拡張あっての決定版、絶対入れた方がいい」
というものではないと評価する
基本版はなんだかんだ言って楽しい
自由でイージーな拡大再生産ゲームだ
基本ワーカーのクビを切ってデッキを圧縮し、特殊ワーカーを迎え入れて強化する
拡大再生産の王道を味わわせてくれる
コメント
コメント一覧 (2)
ただ、何かルールを勘違いされている気がします。
『電信で手に入る株券トークンが「集めれば集めるほど収入が増える」要素を持つのも相まって~~』と書かれていますが、特にそんな要素はないはずです。
憶測ですが、電信のオレンジ駒ボーナスで、持っている株券x$100受け取っていませんか? この部分はアイコンが不親切でそう扱いそうになりますが、ルール上は「たった今手に入れた株券 x$100 (先着ボーナスの追加株券含む)」です。
(Gain $100 for each Telegraph Share you just took, including ~~)
takewatch
がしました