インペリアル2030をここ最近、よく回している
ここ3か月で20戦くらいやっている
COVID-19に伴う自粛の関係で、身内固定の3人戦でしかできないのだが、このゲームに限っては固定メンツだとよく機能する
理解が深まり、メタが回り、深く楽しむことができる
いくら回しても同じ展開とはならないし、今のところ飽きる気配がない
3年前に出会ってから、いまだにマイベストゲームであり続けている

回数を重ねた結果、ノウハウやメタのようなものが蓄積したので、備忘録と思考の整理がてら言語化を行う

ルール記載は行わないので、未プレイの人にはやや読みにくい記事となっている
本記事の「マック・ゲルツ」のタグから、インペリアルのルール紹介の過去記事などに飛べると思われるので、適宜参考にされてもいいかもしれない

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〔1〕総論 
 (1)サイクル
 (2)初動 
  ①スロー:工場建設から
  ②ファスト:輸入から
  ③サクリファイス:投資から
 (3)スイス銀行
〔2〕各論
 (1)推奨ルール  
  ①中国+EU
  ②ロシア+ブラジル
  ③インド+アメリカ
 (2)支配国ドラフト
 (3)自由オークション
〔3〕結語:魅力
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IMPERIAL 2030(2009)
Designer Mac Gerdts
Artist Alexander Jung
Publisher PD-Verlag + 7 more

〔1〕総論 

(1)サイクル
6か国がロンデルを1周するまでの総アクション数を1サイクルと呼ぶ
だいたい1国家あたり3~4アクションなので、20アクションで1サイクル
投資マスをまたぐたびに株券購入チャンスが来る各プレイヤー、1サイクルあたり2回ずつ株券購入できる
(6回の機会を3人で分配するので)

早くて4サイクル、遅くとも5サイクル目にさしかかったあたりで終了トリガーが引かれる
ゲーム全体を通しての株券購入回数は各プレイヤー8-10回程度
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(2)初動

各国の第1アクションは、
・工場建設
・輸入
・投資

の3択
(徴税、移動、生産は現実的な選択肢ではない)
それぞれの選択肢について、よくなされる序盤数手を記載する

①スロー:工場建設から
・工場→生産→移動→生産→移動→徴税
一番安定感のあるスターティングだ
工場から入って6アクション目で徴税する
筆者は、特に強い狙いがない場合は基本的にこのかたちをとる
もし隣国と殺し合いが起きていなければ、徴税で11-12パワー出ている
徴税以降は、4個目の工場建設
その後は5,6エリア支配キープしながら、できるだけ早くロンデルを回す
徴税によってコンスタントに国庫に金が入ってくるはずなので、2サイクル目からは投資アクションで金を抜いていく
国庫もプレイヤーも潤いやすく、資金面で事故りにくい長所を持つ

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②ファスト:輸入から
輸入→移動→工場建設→生産→移動→生産→(移動)→徴税
第7アクションの移動はスキップ可
輸入から入って、7-8アクション目で徴税する
スローが定石なら、ファストはメタ的な速攻にあたる
最初の2アクションだけ①と異なる
この方法の最大のメリットは、第2アクションで3コマを移動させられる点にある
スローだと第3アクションでの移動となるので、1手早く動ける
1手早いおかげで、隣国よりも先に拡大することができる
インペリアルは先攻が絶対的に有利なゲームなので、この1手の差はなかなか大きい
また、徴税までに移動を3回やる場合、最初の徴税から13パワーくらい出る

メリットは多いが、最大のデメリットは国庫に金がたまりにく点だ
推奨ルールだと国庫には11ドル入っていて、2つ工場を作るのには10ドル必要
3ドルを輸入に使ってしまうと、足りなくなってしまう
国庫に金を入れるために、
・自国の株券を買い足す
・他プレイヤーに株券購入を持ちかける

などやる必要がある

③サクリファイス:投資から
筆者の知る限り、投資から入ると勝率がかなり落ちてしまう
・国庫の金が枯れてしまい、工場建設や輸入が打ちづらくなる
・最序盤の盤面の取り合いが1手遅れてしまう

この2点がただただ致命的だ
後述する自由競りのルールならワンチャンありかもしれないが、推奨ルールだと活躍が難しい動きだと思われる



(3)スイス銀行
支配国がゼロになるとプレイヤーはスイス銀行ルールを付与される
自分が株を持っているすべての国に対して、投資アクションマスで強制ストップをかけられる
一度やればわかるが、非常に強力なルール改変能力だ
体感として、スイス行となったプレイヤーの勝率は5割近くあるようにも感じる
とても強力な分、スイスに能動的に行く手段がない

スイス送りにしていいパターン:

原則として、自分の支配国家が3か国以上に増えるときだけだ
3か国ないし4か国支配できるなら、相手にスイス能力を渡しても優位に立てる

スイス送りにしてはダメな場合:
あなたの支配国が2か国にしかならないとき
具体的には、トップが4か国支配していて、あなたとドベが1か国ずつ持っている場合
ドベの国を奪うと2か国支配ができるが、
・4か国支配できているトップ
・スイス能力をゲットしたドベ

に対して、2か国支配のあなたのポジションはかなり悪い
スイスは、体感2.5か国支配くらいのパワーがある

スイスに送られてしまった場合:
筆者の場合はゲームの最終サイクルまでスイスから出ない
ギリギリまで粘るようにしている
3人戦の場合スイスプレイヤーは株券の購入可能枚数が4倍に増える
(1サイクルで普通2枚買える、スイスだと8枚買える)
自分にインヴェスタータイルが回ってくるタイミングでは3回連続で株券が買える
連続購入のタイミングであれば、株券のアップグレードを行うのもアリだ
本来なら株券のアップグレードをしてしまうと、利率の良いタイルをマーケットに流してしまい、それが他プレイヤーの手に渡ってしまう
スイスプレイヤーであればすぐ買い戻せる
アップグレードによるデメリットが実質なくなる

スイスから復帰するタイミングは状況による
1位候補の国を奪ってそのままトップゴール、というのが理想的な筋書きだ
ただ終盤は6か国とも焦っているので、トップゴールに送り込むためにお金を多く払ってロンデルを4マスとか5マス進めないといけない場合もある

2、3ドル程度なら払って問題ないが、8ドル以上などになる場合は、支配権をヘタに奪わない方が賢明な場合もある

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〔2〕各論

3人戦でのルールは、筆者らの場合、以下の3通りから適当に選んでプレイしている
(1)推奨ルール
ルールブックに従って、
 ①中国+EU
 ②ロシア+ブラジル
 ③中国+アメリカ
のどれかを持つ

(2)支配国ドラフト
上の6か国をロチェスタードラフトする

(3)自由オークション
6か国の株券を1回ずつ買う

それぞれの方法の特長、考え方のコツなどを以下に記載する

(1)推奨ルール  
ロシア+ブラジル
アメリカ+インド
中国+EU
のどれかで持つ
各プレイヤーは9ドル+9ドル+2ドル+2ドルの4枚の株券2ドルの手持ち資金でスタート

2030において9ドルというのは結構な大金だ
なので、各プレイヤーは、
「9ドルをつぎ込んでいる自国のどっちかを国力トップ(×5)にしたい」
「伸びなかった国も、×3とか×4くらいまで引き上げたい」

という欲望を持つ
そういうルールデザインになっている
また、他国の乗っ取りは最序盤は起こらない
だいたい第2サイクル以降、ゲーム中盤から生じてくる
乗っ取りには最低12ドルかかるが、序盤はそれだけの大金を作れないからだ

担当国ごとの考え方をおおまかに記載する

 
①中国+EU
  
中国:
最も動かしにくいが、とても重要な国だ
このゲームでは中国・ロシア・インドで絶対にケンカが起こるようにデザインされている
中国・ロシア・インドの未来は、
①中国・ロシアで協力、インドを潰す
②中国・インドと協力、ロシアを潰す
③中国が孤立、ロシア・インドが協力

の3つしかない
(3か国の大同盟も成立しうるが、本記事ではその可能性は無視する)
中国プレイヤーとしては③のシナリオだけは避けたい

ロシアかインドのどちらと組むかだが、筆者の場合はロシアプレイヤー、インドプレイヤーが、
・その国を本気で伸ばしたがっているか
・陣取りが上手いか
を見る
メタ要素だが、
・プレイヤーが
やる気を持っているか
・意志を遂行するだけの
ゲームセンスがあるか
を重視している
より意志と能力が高いプレイヤーの株券を買う
低い側のプレイヤーとは、積極的に敵対はしないように留意しつつ、中盤以降もし隙を見せるようなら、工場を踏んで殺しにかかる

中国はゲーム中唯一、3基の戦車工場を持っている
インペリアルにおいて戦車は発言権だ
版図の切り分け方について、中国は他のどの国よりも強いイニシアチブを持っている

旧版のオーストリア=ハンガリーの役回りだ
もし中国が長く判断保留してしまうと、戦況は複雑になり主導権を失ってしまう
ゆえに、ある程度早くロシアかインドを早めに敵国とみなして、立場を決めてしまった方が場を動かしやすい


EU:
攻守ともに優れた優秀な国だ
・アフリカへのアクセスの良さ=攻撃力
・工場の攻撃されにくさ=防衛力
とても強い国だからこそ、6番目に動くという最大のデメリットも課せられている
ちょうど良く調整されている

動かし方:
EUの初動はファスト、
輸入からの速攻が有効に機能する
北大西洋をロシアやアメリカと取り合うので、早めに動くと機先を制することができる
ただ、スローで入っても大きな問題はない

中国+EUの考え方の1例:
中国は安定して勝たせにくいので、EUを本命気味に持つ
ロシア-中国間は平和路線で行って、北アジアのエリアを多少譲る
ロシアの欲望をユーラシア方面に向けさせることで、EUを動きやすくする


②ロシア+ブラジル
ロシア:
動かしにくく、華がない国だ
旧版インペリアルのロシアとポジションや性格はかなり似ている
旧版でロシアとイギリスがとても強かったせいか、新版ではロシアとアメリカはかなり能力を落とされている


ロシアはユーラシアを中国と取り合う
北大西洋や太平洋から北米を狙うルートもあるが、その場合EUとアメリカと事を構えることになる
北側に押し込められやすい地勢ゆえに、1番手に動けるというメリットを持っている

1位を取りに行けない場合は多いが、どのゲームでも堅調に×3~4を狙えるパワーは持っている

序~中盤に5,6エリアをキープしたら、あとは静かにロンデルを高速で回して支配を維持するだけで×3~4くらいに達する
中国との同盟関係が作れていれば、平和的に素早く国力を上げることができる
日本、韓国、モンゴル、ウクライナ、日本海と、他プレイヤーが干渉しづらいエリアを十分数持っているのが最大の長所だ

ロシアをやるうえで重要なのは、中国との関係決定だ
①中国株を買って友好となるのか
買わずに敵対を貫くのか
の2パターンしかない
中国にちょっかいをかけられるのはロシアとインドだけ
インドは中国攻めに戦力を割くよりも、海軍力を伸ばしてアフリカや外洋を取りに行きたくなりがちだ
ゆえに、本気で中国と戦車バトルをやり合えるのはロシアだけだと思った方がいい

ロシアで中国を叩かないのであれば、中国株を買うと良い
ロシアー中国が平和となると、中国はロシアより早く伸びる可能性が高いからだ
筆者の場合、もしロシアで中国に甘く接するなら、最終的に中国を奪うよう計画する

逆に、中国株に一切手をつけず、圧をかけ続けるのもアリだ
そうなると、モンゴル―カザフスタンあたりの情勢が不安定化する
領土キープのために割く手数が増えるので、ロシア・中国ともにややスローダウンする


ブラジル:
守りが固いが、やや攻め手を欠く
動かしやすいが、地味な展開となりやすい
ブラジルをやる上で唯一のタスクはアメリカと話をつけることだ
ブラジル・アメリカ両方にとって、陸軍侵攻の危険があるのはお互いだけだ
両国ともあまり強い国ではなく、利害も完全に一致しているので、ブラジル―アメリカ協定は問題なく成立するだろう

陣取りに関しては、アフリカ南部に早急に戦車を送りたい
アフリカを2エリアくらい取れるとずいぶんと楽になる
アフリカ、中南米、近海のエリアが取れていれば×3~4に持っていくのは難しくない

ブラジルは
インドを攻撃可能というのも特記すべき特長だ
もし中国とインドが友好になってしまうと、中国の庇護のもとインドが爆伸びしてしまう
そうなったインドを叩けるのはブラジルだけだ

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インドを抑え込むブラジル


ロシア+ブラジルの考え方の1例:
どちらも守りに寄っており、安定感はある
ただ、1位を積極的に取りに行くのに適した国ではない
最初は両国ともスローで、様子見から入る
自国買い足しはあえて行わず、12ドルで乗っ取られる無防備でさらしておく
ただし、他プレイヤーからの乗っ取りに備えてコマを場に出しすぎないようにする
コマを多く出した状態で乗っ取られると、買収者に多くの選択肢を与えてしまうことになるからだ

そうやって放置しておくと、普通はどちらかの国が乗っ取られる
たとえば、中国プレイヤーがロシアを乗っ取ってくれた場合
ロシア―中国間は平和になったと見て良い
なので、中国株を逆に買いながら、ブラジルを使ってインドを叩きに行くなどする
ブラジルでインドを見てあげると、中国を伸ばしやすくなるからだ

こういう風に、
・乗っ取りを誘う
・乗っ取ってきたプレイヤーの意図や利害関係を利用する
・同盟関係を作って動かす

でやっていく



②インド+アメリカ

インド:
最も高リスクで、爆発力がある
動かしていてもっとも楽しいし、華がある国だ

筆者らの卓だと、×5でトップゴールするか、×2などで終わってしまうか、極端な結果となる印象がある

インドは対中国がすべてだ
対中関係がうまくいけばすべてが回る
対中成功パターンは、

①中国プレイヤーにインドを買ってもらう
②ロシア―中国間で戦端が開かれる
③インドが先手を打って中国を陸軍侵攻する
④中国を買収する

の大きく4つある

中国プレイヤーにインドを買ってもらう
相手依存だ
中国側がもし自国買い足しを好む場合、話し合いや交渉の余地はないだろう

ロシア―中国間で戦端が開かれる
ロシア―インドで同盟が成立すると、ロシアと中国がやり合ってくれる可能性が高まる
推奨ルールの場合、インド+アメリカと、ロシア+ブラジルで持っている
ブラジル―アメリカは交渉がまとまりやすいので、その流れでインド―ロシアもまとめやすいかもしれない

インドが先手を打って中国を陸軍侵攻する
確実性が高いが、コストの重い選択だ
かなりのヘイトを買う
インドはこれから先、本国に防衛目的で戦車を駐留させ続けなくてはならない
戦車を生むために生産アクションを余分に踏む必要がある
さらに、戦車が余分にストックするおかげで、国庫に金がたまりにくくなってしまう

中国を買収する
確実性が高い方法だ
あなたが中国のコントロール権を持ってしまえば、話し合いや交渉は今後必要はない
ただ、けっこうな資金を投じることになるので、そういう意味でのリスクは大きい
インドを買い足す余裕はないので、他プレイヤーに
インドを奪われる可能性も高い
さらに、一度買ってしまった
中国をある程度伸ばさないといけない、という新たな責任も発生する


対中国さえ片付けばインドの未来はバラ色だ
・アフリカ
・オーストラリア
・東南アジア
・中東
植民地について、最も多くの選択肢を持っている


アメリカ:
守りは最も固いが、狙えるエリアが少なすぎる
旧版インペリアルのイギリスと同じ海洋国家、シーパワー枠
旧版のイギリスは、
・工場破壊のされにくさ
・マップ全体の植民地の少なさ

がかみ合ってかなり強かったが、2030では大きくナーフされている
今回のアメリカはただただ弱い
6エリアのキープをもし目標とするなら、
・北アメリカの4マス(アラスカ、カナダ、ケベック、メキシコ)
・カリブ海
・太平洋
・アフリカのうちの2マス(北アフリカ、ナイジェリア)
の8エリアくらいしか候補地がない
それらをEU、ブラジルと仁義なく取り合うことになるので、陸軍力の低いアメリカではなかなか荷が重い

アメリカで陣取りを頑張るなら、初動はファストで行くと良い
初手輸入で船船戦車を作る
船船をカリブ海と北大西洋に浮かべる
ブラジルより先にカリブ海を、ロシア・EUより先に北大西洋を押さえることができる
アメリカ以外の国にとっては、海の1,2マスの支配は大して意味がないが、アメリカにとってはとても価値がある
またテクニックとして、最序盤にフィリピンや日本などの孤島エリアを狙いに行くのもいい
孤島に入った戦車をどかすのはかなり労力を食うので、長期支配が見込める

2030を複数回やっていくと、メタゲームにおいてアメリカは、買い手にメタ的に軽んじられる、という長所を帯び始める
9ドルで支配している国のコントロール権を奪うには12ドル払う必要がある
アメリカに12ドルは正直出したくない

筆者にとっては、

・徴税の直前(徴税ボーナスを奪う)
・船や戦車が豊富にある(ブラジルやEUにちょっかいをかける)
という好条件が重なって、ようやく買収候補に入る
買収されにくさから、買い足しせずとも長期間コントロールできたりする
そのあたりにちょっとした強みがある

アメリカは戦車工場が1基しかない関係で、戦車を適宜輸入で買う必要がある
輸入には国庫の金が必要だが、支配エリアが伸びにくいことから、国庫があまり潤わない
国庫に金を入れるコツとして、船コマを早めに対消滅させると良いかもしれない
インペリアル2030において、対消滅は基本的にリスキーだ
多人数マルチだから、対消滅に関与しなかった第3国が相対的に利益を得てしまう
ただ、アメリカに限って言えば、防衛力の高さから、コマをある程度潰しても工場に王手をかけられるリスクがない
なので、早めに仮想敵国を作ってしまって、小さく小競り合いをし、適宜対消滅をやっていくと良いと思われる


アメリカ・インドの動かし方の1例:
インドを本命にしたい
中国方面との関係は慎重に
アメリカは捨て気味に動いて、ブラジルにちょっかいをかけさせる
ブラジルがアメリカとやり合えば、アフリカ方面が手薄になる
インドがアフリカの取り合いを制しやすくなる



(2)支配国ドラフト
ロチェスター(カタン方式)ドラフトで、2か国ずつ取る
推奨ルールと同じように、22ドルを株券に使い、2ドルを初期資金とする
筆者らの独自のハウスルールで、ルールブックに記載されていない
あまりバランスが良くないヴァリアントだと思われる

このヴァリアントだと、
・ロシア+中国
・中国+インド
・アメリカ+ブラジル

など、隣国同士で固め持ちができたプレイヤーが伸びやすい

もし相手に良いかたちで持たれてしまった場合、1人で崩すのはかなり厳しい
他プレイヤーと協調・共闘する必要がある

反対に、うまく固め持ちできたなら、自国の株券を買い足して、防衛的な投資をやると盤石に伸ばしていける
よって、総じて、コントロール権の奪い合いが生じにくい場となる
ただただ殴り合う多人数マルチみたいな状況が生じやすい
筆者は陣取りよりも株券の駆け引きの方が得意なので、このルールでの勝率はかなり低い


(3)自由オークション
陣取りよりも株券要素が強まるルールだ
これはルールブックに記載されているヴァリアントだ

まず、全プレイヤー24ドル持つ
適当に親を決めて、親を時計回りに2回ずつ回す
ロシアから順に、各国につき1回だけ株券を買う権利がある

このルールでは、特殊な意図がない限り、全プレイヤーが2、4,6ドルの利率の良い株券を買いあさることになる
利率の良い株券はほぼほぼ買って損をしないからだ

逆に、9ドルや12ドルの株券はコストパフォーマンスが劣るので、あまり買われない
強く支配できるというメリットがあるが、デメリットもとても大きい

上記の特徴から、どの国も安く支配される
そのため、序盤からアクション権の乗っ取りが生じかねない荒れた場となる

最も留意すべきなのが、自国という概念が推奨ルールよりも希薄となっている点だ
推奨ルールだと、
「9ドル払ってしまっている自国をある程度伸ばさないといけない」

という義務感をプレイヤーは抱いてくれる
9ドルの足かせ、負債はゲームを安定化させる効果を持つ
この負債によって、プレイヤーの基本方針が可視化される
「お前の株券の持ち方からして、こういう意図を普通は持つ、だからこういうことを一緒にやろう」

というような交渉や会話のきっかけがつかみやすくなる

このヴァリアントルールは推奨ルールと比べ、いささか自由度が高すぎる
ゆえに、プレイヤー同士での意図の読み合い・コミュニケーションが困難だ
意図が読めない以上、展開の予想もより困難となる

予想が難しい場では、リスクヘッジ気味にポートフォリオを持つのが無難で強力な選択となる

筆者の考え方:

序盤はあまり何も考えず、利率の高い2,4,6ドルの銘柄を買っていく
マーケットに残っている銘柄は、安いものは思考停止で買ってしまって良いと思われる
ちなみに、もし全員がこの方法を取ると、ゲーム開始時点で6ドル以下の銘柄は全てなくなってしまう

また、推奨ルールよりもひんぱんに投資アクションを踏むよう心掛けている
できるだけ早く手元に15‐20ドルくらいを作るのを目標とする

推奨ルールとこのヴァリアントで、投資アクションの強弱が大きく変わる

推奨ルールでの投資アクションは、序盤にやるのは命取りな、とてもリスクの大きいアクションだ
・その国の拡大が1手遅れる
・国庫から金が抜けて弱体化する
二重の意味で自国を弱くしてしまうからだ

9ドルで買っている場合は、自国がある程度育ってくれないと話にならない
だから投資アクションはプレイヤーにとってリスクが高く映る

このヴァリアントルールだと、支配国を乗っ取られるリスクが高い
よって、自国を伸ばそうとする方がかえってハイリスクな選択となる
確実に資金を得られる投資アクションの方が、相対的にローリスクな選択となる
奇妙な逆転現象が起こっている

15-20ドルを作ってからは中盤だ
そこからは多様な展開が生じる
本命の国を決めて、強く投資する必要がある
状況によってさまざまだし、プレイヤーの数だけ考え方がある
筆者の場合は、基本的に自国の買い足しは狙わず、相手国のコントロール権を奪いに行く
・徴税直前
・コマが多く場に出ている
・国力が相対的に高い(10以上、15以上)
上記の条件を多く満たすほど、乗っ取るメリットが大きくなる

注意点として、あなたが投資アクションを多くやっているなら、他プレイヤーにもある程度キャッシュが入ってしまっている
なので、相手からもまず間違いなく乗っ取りを食らう
そこはもう不可避なものとして覚悟する必要がある
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〔3〕結語:魅力
交渉、陣取り、資金管理
各要素のバランスが良い

このゲームを楽しむうえで、全要素に秀でる必要はない
たとえば筆者は陣取りが大してうまくないが
交渉と資金管理をしっかりやることで勝利に近づくし、快感が得られる
逆に筆者の同卓者は、交渉や相乗りの曖昧なインタラクションは不得意で、殺るか殺られるかのダイレクトな陣取りがとても上手い
そういうタイプだと、自国株を強く買って買収合戦を拒否すれば、単純な陣取りの駆け引きだけを楽しむこともできる

運要素がゼロなのに、実力者が絶対勝つとも限らない
多人数マルチなのに、直接的な殺し合いがない
キングメーカー問題が生じない
イヤな気分にならない
おおまかな定石はあるのに、絶対的な正解はない

本当に美しく、完成度が高い

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