美しいソロゲーム
2019年のKdJ(ゲーマーズゲーム大賞)
・美しいコンポーネント
・「野鳥観察」というユニークなテーマ
・カードコンボの楽しさ
この3点が最大の魅力だ
・「野鳥観察」というユニークなテーマ
・カードコンボの楽しさ
この3点が最大の魅力だ
インタラクションがまったくない点が筆者にとっては少し物寂しいが、合う人にはとても合うと思われる
プレイさせていただき、おおまかな感想を得たので、備忘録がてら記載する
同卓させていただいたロニーさん、ミキさん、きすけさんらにはこの場を借りて感謝申し上げます
(1)おおまかなプレイ感
(2)コンポーネント
(3)プレイ人数、時間、流通
(4)教育的な価値
(5)他者の不在
(6)タブロービルディングというメカニクス
(7)カード運の強さについて
(8)カードデザイン
(2)コンポーネント
(3)プレイ人数、時間、流通
(4)教育的な価値
(5)他者の不在
(6)タブロービルディングというメカニクス
(7)カード運の強さについて
(8)カードデザイン
Wingspan(2019)
Designer Elizabeth Hargrave
Designer Elizabeth Hargrave
Artist Ana Maria Martinez Jaramillo, Natalia Rojas, Beth Sobel
Publisher Stonemaier Games + 14 more
(1)おおまかなプレイ感
テーマありきで設計された、美しいゲームだ
プレイヤーは野鳥愛好家となり、自分の庭(個人ボード)に鳥を招き入れる
個人ボードは3エリアに分かれていて、それぞれが資源獲得、産卵、カードドローアクションに対応している
どれか1つに特化して、1つのエリアに野鳥を多く迎え入れると、アクションが強化できる
相手プレイヤーは野鳥愛好家仲間なので、基本的にはわきあいあいとプレイすることになる
「あなたの庭園良いですねえ、鳥がいっぱいいて」
「いや、あなたの方こそ、鳥たちがたくさん産卵していて、豊かな庭じゃないですか」
と
縁側のじいさんになって茶飲み話でもしているようなプレイ感だ
プレイヤーたちは徳の高い愛好家なので、けっして相手の庭をぶっ壊したり、相手の鳥を奪ってきたりはできない
ドン引きされちゃうからね
このへんはテラフォーミングマーズと大きく異なる
テラフォでは相手の緑地に隕石を落としたり、鳥類をけしかけてハゲ山にしたりできるので
そういう野蛮なことをしたいかどうかで、好みは分かれると思う
あと、カードの引き運によってかなり左右されてしまう
最序盤に最も輝くのは、同じ色で、低コストで、資源系を生産してくれるカードだ
最悪なのが、色がバラバラで、高コストで、資源やドローがつかないカード
良いカードを最初にたくさん引き込めると、そのプレイヤーは勝手に走り始める
相手を止める手段は一切ないゲームなので、最初で差がつくと物悲しい1時間になりかねない
ゆえに、もし経験者同士で同意が取れるなら、ドラフトするなり、最初に見れる枚数を2~3枚増やすなりしても良いと思われる
本作のようなカード主体のゲーム構造の特徴については、記事後半で改めて考察を加える
(2)コンポーネント
総じて出来が良く、かわいらしい
150枚以上の個別イラストの鳥カード
鳥の卵トークン
鳥の巣箱型ダイスタワー
ダイスタワーは紙製だが、けっこういい感じであった
(3)プレイ人数、時間、流通
1~5人、ベスト3人
プレイ人数×20~30分程度 インスト15分
2019/10現在日本語版が流通している
(4)教育的な価値
鳥カードはそれぞれがフレーバーテキストを持っており、またカード効果とある程度連動している
(1)おおまかなプレイ感
テーマありきで設計された、美しいゲームだ
プレイヤーは野鳥愛好家となり、自分の庭(個人ボード)に鳥を招き入れる
個人ボードは3エリアに分かれていて、それぞれが資源獲得、産卵、カードドローアクションに対応している
どれか1つに特化して、1つのエリアに野鳥を多く迎え入れると、アクションが強化できる
相手プレイヤーは野鳥愛好家仲間なので、基本的にはわきあいあいとプレイすることになる
「あなたの庭園良いですねえ、鳥がいっぱいいて」
「いや、あなたの方こそ、鳥たちがたくさん産卵していて、豊かな庭じゃないですか」
と
縁側のじいさんになって茶飲み話でもしているようなプレイ感だ
プレイヤーたちは徳の高い愛好家なので、けっして相手の庭をぶっ壊したり、相手の鳥を奪ってきたりはできない
ドン引きされちゃうからね
このへんはテラフォーミングマーズと大きく異なる
テラフォでは相手の緑地に隕石を落としたり、鳥類をけしかけてハゲ山にしたりできるので
そういう野蛮なことをしたいかどうかで、好みは分かれると思う
あと、カードの引き運によってかなり左右されてしまう
最序盤に最も輝くのは、同じ色で、低コストで、資源系を生産してくれるカードだ
最悪なのが、色がバラバラで、高コストで、資源やドローがつかないカード
良いカードを最初にたくさん引き込めると、そのプレイヤーは勝手に走り始める
相手を止める手段は一切ないゲームなので、最初で差がつくと物悲しい1時間になりかねない
ゆえに、もし経験者同士で同意が取れるなら、ドラフトするなり、最初に見れる枚数を2~3枚増やすなりしても良いと思われる
本作のようなカード主体のゲーム構造の特徴については、記事後半で改めて考察を加える
(2)コンポーネント
総じて出来が良く、かわいらしい
150枚以上の個別イラストの鳥カード
鳥の卵トークン
鳥の巣箱型ダイスタワー
ダイスタワーは紙製だが、けっこういい感じであった
(3)プレイ人数、時間、流通
1~5人、ベスト3人
プレイ人数×20~30分程度 インスト15分
2019/10現在日本語版が流通している
(4)教育的な価値
鳥カードはそれぞれがフレーバーテキストを持っており、またカード効果とある程度連動している
たとえば、他の巣に卵を混ぜるカッコウは、起動させると他の鳥カードで産卵させることができる
肉食の鳥は起動させるたびに、狩りを行う
自分より翼幅(よくふく、ウイングスパン)の小さい鳥を捕食するたびに勝利点を得られる
また、鳥によって食べるもの(召喚コスト)も異なり、これも現実世界と連動している
このあたりも本作の魅力だ
なお、デザイナーのエリザベス・ハーグレイヴも、インタビューのなかでこだわりについて語っている
以下にインタビューの日本語記事がある
また、鳥によって食べるもの(召喚コスト)も異なり、これも現実世界と連動している
このあたりも本作の魅力だ
なお、デザイナーのエリザベス・ハーグレイヴも、インタビューのなかでこだわりについて語っている
以下にインタビューの日本語記事がある
https://newspicks.com/news/3747185/body/
(5)他者の不在
インタラクションが皆無だ
相手が何をしていても、ルール上、ほぼ一切自分と関わりがない
対岸の火事だ
逆に、自分の一手が相手に影響を及ぼすこともない
個人的な心情として、とても寂しく、物足りなさを感じる
相手が何をしていても、ルール上、ほぼ一切自分と関わりがない
対岸の火事だ
逆に、自分の一手が相手に影響を及ぼすこともない
個人的な心情として、とても寂しく、物足りなさを感じる
ウイングスパンはお情け程度のインタラクションを用意してくれてはいる
・ダイス資源
・ダイス資源
・鳥カード
・ラウンドごとの共通目的
・相手のアクションによって起動する特殊カード
ただ、これらはおまけ程度であり、微々たるものだ・相手のアクションによって起動する特殊カード
このゲームの最大の魅力は
・個別カードをいじってコンボを決める楽しさ
・コンポーネントやテーマの美しさ
の2点だろう
なので、どちらかというと、けっこうデジタルに向いているゲームだと思われる
ドミニオンやテラフォはカードコンボ系のゲームで、ソロ要素がけっこう強いが、筆者はデジタル版はわりと好きで、よく触っている
ウイングスパンが今後SteamやiOSでリリースされて、しかも1ゲーム20分程度でさくさく回せる感じなら、自分は好んでプレイすると思われる
・個別カードをいじってコンボを決める楽しさ
・コンポーネントやテーマの美しさ
の2点だろう
なので、どちらかというと、けっこうデジタルに向いているゲームだと思われる
ドミニオンやテラフォはカードコンボ系のゲームで、ソロ要素がけっこう強いが、筆者はデジタル版はわりと好きで、よく触っている
ウイングスパンが今後SteamやiOSでリリースされて、しかも1ゲーム20分程度でさくさく回せる感じなら、自分は好んでプレイすると思われる
(6)タブロービルディングというメカニクス
個人ボードのメカニクスはタブロービルディングの一種だと理解する
筆者の知るゲームのなかだと、DEUS(Dujardin,2014)に良く似ている
デウスは5+1種のカードがあり、カードを出すたびに同種の全カードが順番に起動する
アクションが強化されていって楽しいのだが、カードを出す枚数に制限がある
「せっかく強化したパレットが、ゲーム終盤ではまったく使えず役立たずになる」ということがわりとあり、筆者や同卓者はやや不満に感じていた
強化したからにはたくさん使いたいと感じてしまう
ウイングスパンではアクション数の制限はない
そのかわりに、カードを出すためのコストをだんだん重くすることで、うまい具合に調整している
まとめると、ウイングスパンの個人ボードの作りは、あまり目新しさはないものの、とてもきれいでバランスも良い
(7)カード運の強さについて
ユニークカードが多く、カード枚数の多いゲームでは、手札運による偏りはどうしても生じてしまう
プレイヤーに不平等感を与えないように調整しないとならない
本節では
・デウス
・ナショナルエコノミーシリーズ
・ウイングスパン
の3つの設計を例示する
①デウス
デウスの場合、カードの引き直しが非常に簡単だ
1手番放棄するだけで手札を全部リフレッシュして、引き直すことができる
ポケモンカードのオーキド博士みたいな感じ
しかもラウンド数が固定でないので、序盤~中盤にかけては
「クソカードしか来ない、引き直します」
「自分も手札ひどいわ、引き直します笑」
というような流れで、雑に手番を放棄することも少なくない
こういうかたちは、ゲーマーにとってあまりストレスフルではない
バンバンドローしまくって、戦略とシナジーの合うカードを引っ張ってきて、コンボを決められるからだ
デウスはゲーマーの好みにアジャストした、程よい軽さのゲーマーズゲームだ
②ナショナルエコノミーシリーズ
デウスに限らず、カードプールが多いゲームは、ドロー機会を増やし、プレイヤーに多くデッキをめくらせるほど、運要素が緩和される
ナショナルエコノミー/メセナ/グローリーでは、改訂を重ねるにつれ、「4枚カードを引く。2枚手札を捨てる」形式の、デッキをめくる機会を増やすカードが増やされてきた
4人戦のグローリーだと、共有デッキが必ず1.5~2回程度リシャッフルされる
「無印は序盤にドローソースが来ないと全然開発できないのがツラいが、そこに魅力を感じる人もいる
メセナ/グローリーは手札が回るようになったので、バランスとしては良くなっている」
というような評価がよくなされる
③ウイングスパン
ウイングスパンは多くのカードを見ることができないようになっている
引き直しができないし、ドロー枚数も少ない
明らかに意図的にこのように調整している
ドローがキツいと、シナジーの弱い鳥カードでも活かさないといけない
そのため「自分のところに来てくれた鳥は、見捨てずに愛でて、育てて、活かしたい」という愛情深い動きを強いられる
「野鳥観察家となって、鳥たちと愛を育む」というテーマとの噛み合いは良い
また、ドロー機会を絞ることで、非ゲーマーを情報の渦から守ることもできる
ウイングスパンでは、中盤は4~5枚以上の手札と、個人ボード上に5~10枚の鳥カードが並ぶ
この枚数の個別カードをコントロールするのは、不慣れなプレイヤーにはちょっぴり酷だ
処理能力ギリギリ~キャパオーバーとなるプレイヤーも少なくないと思われる
この状況に加え、さらにドロー機会を増やすと、運要素は緩和できてゲーマーの好みには近づくが、ウイングスパンのリーチしたい層のニーズからは離れていくだろう
(8)カードデザイン
最後に、いくつかのパブリッシャーのカードデザインについて掘り下げ、記事を終える
ウイングスパンのカードでは、鳥のイラストをめいっぱい大きくし、存在感を高めている
かわりにアイコンでの効果記載を一切やっていない
アイコンがないおかげで画面がごちゃつかず、鳥カードの印象を際立たせられる
反面、効果が遠くから見えづらいというデメリットもある
このデメリットを打ち消すために、ウイングスパンでは「相手の個人ボードを一切見なくてもゲームが成立する」くらいにインタラクションをそぎ落としている
このカードデザインにするのであれば、設計としてアリだと感じる
ただし、共用の場に常に3枚カードが並んでしまうので、それは大変見にくい
ウイングスパンに限らず、ストーンマイヤーのゲームの多くはテキストのみか、テキスト優位だ
・サイズ:大鎌戦役
・ワイナリーの四季
この2作品も同社の代表作だが、いずれも手元に持つミニカードにはアイコンが記されていない
大判のイラストと、細かいテキストのみで構成されている
ワイナリーの四季の訪問客カード
サイズ:大鎌戦役の遭遇カード
フレーバーテキストとイラストが画面の75%以上を占めている
これについては、パブリッシャーの設計思想だろう
上記のやり方によって、アートワークの魅力を最大限に活かすことができる
ちなみにサイズやワイナリーのカードは、プレイヤーが必ず手元に持ち、発動時のみ参照して、すぐ捨て札にする
なので、ウイングスパンの共用の場カードで起きたような、「遠くにあるテキストが小さすぎて読めない」という不具合は発生しないようになっている
逆に、アイコンだけのカードもある
真っ先に想起するのはイタリア系のゲームだ
イタリア系のゲームの多くは、意地でもテキストを配さない
アイコンだけで押し通す
いくつか例示する
グランドオーストリアホテルのスタッフカード
テキストが1文字もない
ロレンツォ・イル・マニーフィコ
これもほぼテキストがない
もう、カードテキストに親でも殺されたんじゃないかと思うくらい
アイコンしかない
イタリア系ゲームのカードは、文字がない分、特に初見プレイではとてもとっつきづらい
しかし、言語依存が一切ないのは長所でもある
・遠目に見たときや反対側から見たときでも効果を判別しやすい
・原語版を日本でもプレイしやすい(シールを貼らなくていい)
というようなメリットがある
なにより、カードが共通の売り場に並ぶゲームなどでは、このようなアイコン表記は必須なのだと思われる
なお、テラフォの場合はイタリア系とストーンマイヤーの折衷タイプだ
アイコンとテキストの併用記載がなされている
テラフォーミングマーズ、層雲遊都(ストラトポリス)
テラフォのカードは正直、ごちゃついていて見づらい
ただ、作り手の気持ちに寄り添うと、
「テキストだけだと絶対分かりづらい
でも、アイコンだけだと、別途冊子を用意する必要がある
カード枚数が膨大すぎて、そんな冊子をプレイヤーに参照させるのは現実的ではない
片方だけだとダメなので、アイコン/テキストの併記という親切設計にせざるを得ない」
というような事情があると思われる
・テキストのみ
・アイコンのみ
・折衷
どの方法が正しいということはないが、用途・目的によってデザインを変える必要があると思われる
追記:BGGの英訳記事
https://boardgamegeek.com/thread/2427392/beautiful-solo-gamereview-japanese-designer