2019年09月


箸休め的な、やや薄味の記事です。
有我悟さんの100の質問への回答を、そのまま載せています。
質問はこちらから借用しています。
https://tantramachine.hatenablog.com/entry/20190904/1567599483

この場を借りて、感謝を申し上げます。
また、本ブログの他記事と異なり、筆者の主観や感情面についての記述が多めです。

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Q1 ボドゲ歴は何年ですか?
3~4年です。

Q2 初めて遊んだボードゲームは何ですか?
カルカソンヌですね。
とても衝撃的でした。
遊んだのは友人のあまみちくんとおやすみくん。おやすみくんはイントリーゲを一緒にプレイした友人です。
あまりに面白くて夜通しやっていました。

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Carcassonne(2000) by K.Wrede

少し余談ですが、卓上ゲームという広い範疇でいうなら、小学校中学年に始めた将棋が最初でもあります。
当時の担任の先生が、ある日中古の将棋盤を10面くらい持ってきました。
「これ教室に置いとくわ。
雨の日はこれで遊んでええよ、ルールはわかる子が教えたってな。
あと、晴れてたら外で遊ぶこと」
と。
筆者は、今も昔も屋外球技は得意としておらず、同級生の足を引っ張ることが多かったです。
さらに今思うと、チームでの競技もやや肌に合わなかったのかもしれません。
将棋はそれとは逆で個人戦ですね。また、何より同級生よりも若干速く上達したのも大きかったのでしょう。強くなるのが嬉しくて、とても楽しくプレイしていました。雨の日が嬉しかった。
親に将棋盤が欲しいというと、すぐにダイエーまで車を走らせて与えてくれました。
「いつもテレビゲームや漫画を所望するときはまったく良い顔をしないのに
なんで優遇されるんだろう」

と当時は不思議に感じていました。ただ、実力は早い段階で頭打ちとなり、クラスで2位くらいの実力になるのがやっとでした。

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Q3 誰とボードゲームを遊ぶ事が多いですか?
知り合いや友人ですね。ボードゲーム以外では会わない方が多いです。

Q4 どこでボードゲームを遊ぶことが多いですか?
ボードゲームカフェですね。たまに友人のお宅にお邪魔することもあります。

Q5 どれくらいの頻度でボードゲームで遊びますか?
デジタルのものや、記事作成、自作ゲームの作業などを合わせると、ほぼ毎日何かしらのかたちで触っています。
実際に卓を囲む頻度は、仕事の忙しさによってまちまちです。

Q6 ボードゲームはいくつくらい持っていますか?
20個くらいですね。

Q7 あなたのベストボードゲームは?
M.ゲルツのインペリアルですね。
素晴らしいんですよ、本当に。すごい。
初回プレイ時には、「なんなんだろう、このゲームは。どうなっているんだろう」というような、脳を直接ハックされたような衝撃がありました。
テーマ、メカニクス、アートワーク、すべてを好いています。
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Imperial(2006) by M.Gertds

Q8 好きなゲームデザイナーは誰?
最近はS.ルチアーニがすごく好きです。ルチアーニの代表作に、グランドオーストリアホテルとバラージがあるんですが、いずれも面白すぎるんですよね。なんであんなの作れるんでしょうね。
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Barrage by S.Luciani


Q9 嫌いな(苦手な)ゲームデザイナーは?
「自分が気持ち良いバランスとちょっとずれてるなあ」と感じるゲームはけっこう多いです。
ここ最近、一定以上ゲームを触るようになってきてから「残念ながら、自分の好みはあまり幅広いわけではない」ことに気づきました。

たとえば、同一デザイナーの複数の作品が合わないと感じるときがあります。
いくつか挙げるとすれば、ルディガー・ドーンの「イスタンブール」や「ゴア」、Stedingの「ハンザテウトニカ」、「故宮」。
これらはまぎれもない名作です。
ただ、筆者の好みよりもちょっと終了が早いんですよ。
しっかりエンジンを組みたいと思っていると、あっという間にゲームが終わってしまう。
もうちょっと長く箱庭でエンジンを組みたいのに、せわしなく勝利点行動をやっていかないとならない。急がないと、何もなせないまま負けてしまうんですよね。
ちょっとそわそわ感、ハラハラ感が強くて、あまりしっくりきません。
ただ、これは本当に些細な、味付けの好みのようなものだと感じます。

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Hansa Teutonica(2009) by A.Steding

Q10 好きなメカニクスは?
アクション数が不定のゲームが好きです。
工夫次第で手数が多くできるゲームですね。
ガイアやテラフォみたいに、アクションポイント制(お金)でもいいです。
インペリアルや18XXのように、株式でアクションの支配権を奪い合うのも最高です。
イタリア系ゲームによくみられる、工夫次第でボーナスアクションが増えるのもたまらない。
そして、なんといっても増員があるワカプレ。これ以上の喜びはありません。


Q11 苦手/嫌いなメカニクスは?
ゲームの集中が途切れてしまうと良くないよなあ、と最近感じます。
少し表現が難しいんですが、ボードゲームって向かい合ってやる以上、セッション的というか、一回性の楽しさをみんなで作っていくような部分があると思うんです。
たとえば、はじめて箱を開けて、プレイヤー全員が初プレイの第1ゲーム目ってすごく特別なものだったりしますし。
良いセッションを安定して作れるといいのですが、ゲームによっては安定感が低いものもあります。
安定度が低い場合、プレイヤー全体を仲立ちするもの、ゲームをゲームたらしめている紐帯のようなものが、揺らぐような感覚を覚えます。
そういうゲームはいくらか評価が落ちます。
具体体には、
・公開情報が多すぎる=見通しが良すぎる。
・不確定要素が多すぎる=予測が意味をなさない。

どちらに行き過ぎても良いセッションは成立させづらい。この中間くらいが良いです。
見えている情報が多すぎると、巧拙の差がもろに出ます。誰かが大勝する一方的なゲームになりやすく、終盤の集中が損なわれます。
かといって、運要素やランダム性が強すぎるとプレイヤーの集中が維持できません。「運ゲーだから何やっても同じでは」と投げやりな手が増えてしまいます。

Q12 好きなボードゲームのテーマ/モチーフ/世界観は?
歴史は総じて好きですね。
「ググると豊富な裏設定が見つかるのに、ゲームのなかではさらっとしか説明していない」というのはとても粋だと感じます。裏地の美学ですね。

Q13 嫌いな/避けてしまうボードゲームのテーマ/モチーフ/世界観は?
萌え絵はあまり選ばない傾向にあるかもしれません。一緒に遊ぶ人の趣味も影響しています。アニメは頻繁に見るし、総じて好きなのですが、「別にボードゲームのアートワークにしなくてもいいのでは」と思ってしまう部分があります。

Q14 人気あるけど好きじゃないゲームはありますか?
グレートウエスタントレイルなんかでしょうか。
あれ、筆者の理解を超えているんですよ。脳が受け付けない。
まったく勝てる気配がなく、つらいですね。開始時に「こうやろう」っていう方針もほぼ立てられず、手なりになってしまう。上手く回せず、「これは負けるべくして打ってるなあ」と感じながら、当然のように敗戦を迎える。玉音。
安定して高得点を取る人がどう考えているのか、知りたいと強く感じます。指導碁みたいなものも見てみたい

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Q15 お世辞にも面白いとは言えない/あからさまな欠点がある/万人受けするとは言えないけど、好きなゲームありますか?
思いつかないですね。
ただ、
・イントリーゲ
・フェレータ
・さまよえるオランダ人
なんかは、まあかなりの欠陥を持ったゲームだと感じます。
インタラクションがとても強いので、
・信頼関係のある友人
・長いプレイ時間

の両方を必要とします。コストの重い、とても贅沢なゲームです。
立卓の条件が厳しいのに、しかも同じ面子で何回も遊べるような強度や安定感がない
ただそれだけに独特の魅力を持っていて、たまに無性にやりたくなります。
このゲームでしか味わえない独特の感覚というものが間違いなくあるんですよ。現われては消えていく、印象の薄い新作群とは一線を画すような、そういう魅力があります。
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Intrigue(1994) by S.Dorra

Q16 好きだけど持ってないゲームありますか?
オーディンの祝祭ですね。限界を超えた重さなので、購入をためらっています。
よく卓を作る友人のリミットが2時間半程度なので、3人3時間級のオーディンはちょっと回るか微妙なラインです。
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A Feast for Odin(2016) by U.Rosenberg

Q17 好きじゃないけど持っているゲームありますか?
不要と判断した時点で売るので、あまりないです。
強いて挙げるなら、スクエア・オン・セールクアックサルバーがそうかもしれません。
買ったはいいものの自分ではほぼやらないので、よく遊ばせていただいているカフェに半分寄贈して、遊んでもらっています。どちらも手軽な中量級なので、それなりに頻繁に回っているようです。

Q18 好きなアートワークのボードゲームは?
ヨーロッパの地図ですね。
地政学、たまらないです。
ディプロマシーっぽい地図があるだけで評価1.5倍になってしまいます。
クルセイダーズとかコンコルディアとかも、地図に偏執的な愛着を感じます。
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Crusaders:Thy Will Be Done(2018) by S.Jaffee

Q19 ボードゲームのアートワークやコンポーネントをどの程度重視していますか?
ふだん意識していませんが、コンポーネントは重要視しているかもしれません。
たとえばローゼンベルクの重ゲーだとル・アーブルカヴェルナがありますね。どっちもとても好きなのですが、筆者はカヴェルナばかりやります。
両作品はシステムがまるっきり異なりますが、コンポーネントも真逆です。ル・アーブルはリソースが紙タイルですが、カヴェルナは木ゴマです。やっぱり木ゴマの良さは特別です。こうしたコンポーネントの部分が、リプレイ性にいくらか影響している可能性はあります。
あとはホームステッダーズなんかは、タイルの厚みがたまらないんですよね。遊びたいバイアスがかかるのか、重さのわりに頻繁に選んでいる印象を持ちます。

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Homesteaders(2009) by A.Rockwell

Q20 オサレな見た目のボードゲームは好きですか?
おそらくは。ダサいよりはいいんじゃないかしら

Q21 お気に入りのボドゲグッズ、教えてください。
こだわるときりがないので、ずっと敬遠していたのですが、最近メタルコインカード立てを買いました。革命的に素晴らしいですね。とても心地よく使っています。

Q22 TRPGゲーマーですか? もしくは経験者ですか?
CoCはPLだけ数回やりました。暗い世界観がとても好きです。

Q23 TCGゲーマーですか? もしくは経験者ですか? 
遊戯王カード、ポケモンカード、デジモンカードは直撃世代だったこともあり、子どものころに一通り触りました。
遊戯王は今思えば、番外編のカプセルモンスターズの方が好きでした。カプモン、あまりメジャーじゃないかもしれませんが、遊戯王のモンスターで遊ぶチェスみたいなゲームがあったんです。また、とてもマイナーですが、同じく遊戯王派生の、ダイスでダンジョンを作って遊ぶDDM(ダンジョン・ダイス・モンスターズ)もとても好きでした。スピンオフとは思えないくらいちゃんとしたゲームなんですよ。

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Q24 ソシャゲをプレイしますか?
デジタルカードゲームの、ドラゴンクエストライバルズをやっています。
プレイはあまりせず、課金もほぼしないですが、季節ごとに行われる日本大会(勇者杯)を見るのを楽しみにしています。

Q25 アニメやマンガ、コンシューマーゲームなどを好みますか?
アニメはよく見ますね。

Q26 ぶっちゃけオタクですか?
定義によりますね。
好きなものは満足するまで掘り下げたいです。反対に、どうでもいいと感じるものに使うリソースは極力減らしたいと感じています。

Q27 同人ゲーム買いますか?
・試遊する
・詳細なインストを受ける
どちらかをやって、買いたいと思えば買っています。ゲームマーケットのお客さんとしては、時間単価が低く金払いが悪い、なかなか質の低い客だと感じます。

Q28 国産ゲーム買いますか?
上記と同じです。ただ、改めて考えると、海外ゲームの買う基準も同じで、プレイせずに買うことはほぼないです。
ただいくらか例外はあり、横濱紳商伝なんかは、遊ばずに前評判だけで買いました。

Q29 KickStarterでKickします/しましたか?
本を一度けりましたが、相当ずさんな内容で、悲しい思いをしました。
キックや同人はデザイナー以外に複数のチェック機構を持たないので、質が担保されないのは構造的に仕方ないのだと感じます。
商業出版であればパブリッシャー、ディベロッパーの手が入るので、ハズレを掴むリスクは少ないですね。

Q30 米アマゾン、独アマゾンを使ってボードゲームを輸入したことがありますか?
ないです。たまにカートに入れては、送料の高さから思いとどまる、というのを繰り返しています。

Q31 ゲームマーケットに行ったことはありますか?
あります。ここ4,5回は欠かさず行っているような気がします。

Q32 ボドゲカフェに行きますか? 行く人はお気に入りのお店ありますか?
頻繁にいきます。よく行かせてもらっている店は何店かあります。

Q33 ゲーム会に参加するならオープン派、クローズ派?
オープン会にはあまり参加しないです。
・2時間級のゲームを
・自分と同程度の思考速度の方たちと
・できるだけたくさん遊ぶ

のが筆者にとって最大の幸福なのですが、そういった自分本位な願いはオープン会にあまり持ち込めません。
幸い現状、セミクローズでの会で、上記の筆者のニーズを満たすことができています。

Q34 実は本名を知らないけどよく遊ぶボドゲ友達がいますか?
一緒にプレイする友人のほとんどはHNしか知らないですね。個人的な心情として、戸籍上の名前に大して興味がなかったりもします。

Q35 ボドゲのジャケ買いします/したことありますか?
ないと思います。

Q36 初心者相手のツカミに絶対ウケる! キラーコンテンツ的なボドゲはこれ、というものはありますか?
ビブリオスをとてもよく用います。
ビブリオスはすごい。外さない名作ですね。
重すぎず、軽すぎず。本当に良いゲームなんですよ。
「この人どういう人かな、今後重いのやれそうかな」と試金石のように出すことが多いです。
もしビブリオスを無理なく楽しめる方であれば、中量級以上を誘っても大丈夫だろう、と判断しています。
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Biblios(2007) by S.Finn

Q37 ボドゲ未経験の初心者(ゲームを普段遊ばない人)にボドゲを遊んで貰うなら、どういうラインナップで攻めますか?
難しいですね。アプリのワードウルフボブジテンあたりなどでしょうか
ただ「ゲームを普段遊ばない人とボードゲームをして遊ぼう」という発想にあまりならないかもしれません。ほかのことをするかも

Q38 ボドゲ未経験の初心者(ボドゲ以外のゲームは遊ぶ人)にボドゲを遊んで貰うなら、どういうラインナップで攻めますか?
ゲームをそれなりに遊ぶ方になら、スプレンダーあたりを出してみるかもしれません。
シンプルな拡大再生産がイージーな快感を与えてくれます。常習性が高いです。また、適当に手加減しても発覚しづらいのも長所だと感じます。

Q39 どういうルートでボードゲームを購入する事が多いですか?
遊びたいときに定価で買うことが多いです。

Q40 中古ゲームの購入に抵抗はありますか?
中身を見ずに買うのはやや抵抗があります。

Q41 遊ばないゲームを手放したことがありますか?
20個以上持ちたくないので、しょっちゅう手放します。

Q42 スリーブ入れる派? 入れない派?
入れることが多いです。

Q43 アメ(リカン)トラ(ッシュ)派? ユーロ派?
テーマ先行か、メカニクス先行か、ということかしら。アメトラもいいですが、ユーロの文脈を引き継いだゲームを好む傾向にあります。
戦争ゲームでいうと、アメゲー俺つえーゲーのエクリプスよりも、ワレスによる、胃が痛くなるようなストラグルオブエンパイアの方がやや好みです。
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Struggle of Empires(2004) by M.Wallace

Q44 日本以外のアジアのボードゲームに関心ありますか? 買ったり遊んだりしていますか?
中国のものだと、最近は平遥が話題だし面白そうですよね。未プレイです。
国ごとの特徴というものがもしあるなら、特徴や、そうした特徴が生じる要因を言語化したい欲求が強くあります。
その他でいうと、ポンジスキームはとても良かったです。あとは、Moideasの東印度公司、第九番交響曲、箱庭鉄道をプレイしましたが、どれもあまりしっくりこなかったです。1,2回遊ぶ分にはとても良い佳作ですが、スマッシュヒットではない。5回以上遊ぶのはちょっときついかな、というような

Q45 レガシー系ゲームで遊んだことはありますか? また、レガシー系ゲームは好きですか?
サイズ:フェンリス襲来フルーツジュースは遊びました。面白いですね。
しかし、よく考えると、コンポーネントを破り捨てたりするゲームじゃないので、これらはキャンペーン系に入るのかもしれませんね。

Q46 人狼やごいたなど(あくまでも例です)の、チーム戦のゲームは好きですか?
卓によります。知り合いとふざけながらやるのはとても好きですが、真剣に勝ちを追求するのはちょっときついと感じます。

Q47 一対多、一対一の陣営非対称ゲームは好きですか?
一対一なら、ワレスの数エーカーの雪とかですかね。たまらなく好きですね。
一対多はというと、凶星のデストラップとかハコオンナとかでしょうか。あまり遊ばないので、評価が難しいです。
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A Few Acers of Snow(2011) by M.Wallace

Q48 マーダーミステリーを遊んだことはありますか?
ないです。ぜひ遊びたいですね。

Q49 謎解きや脱出ゲームを遊びますか?
多少は遊びますし、わりと好きです。
ただ「好みのどストライクではない、どうしてだろう」とぼんやりと感じていました。
これに掘り下げて考えたことを、少し長くなるが以下に記載しますね。

どのタイプの脱出ゲームも、基本的に他プレイヤーときちんと情報共有するのがゲームの肝となります。

・時間の縛りがあるなかで
・大きく声を出して
・他人と情報を共有する

これができれば、驚異的に頭がキレるわけでなくても、脱出成功率は高まります。
上記3要素がこのゲームの難しいところでもあり、最大の魅力でもあります。日常でこんな風に切迫した状況で他人と協力することはまずないため、非日常的な喜びを与えてくれます。

ただ、この3つの特徴は、正直言って自分にとってしっくりきません。得意としないですし、どちらかというと好かない。
・時間制限のなかで他者と混在し合う
・自分の手番が明白に可視化されていて、行動が保障されている

の二択なら、後者を強く好みます。
抽象的な言い方をするなら、ルールやゲームの枠組みに守られている感覚を好む、と換言できるのかもしれません。

また、こうやって特徴を抽出するなかで気づきましたが、脱出ゲームのデザイナーが作ろうとしている状況は、救急の現場の再現なのだと感じます。
リアルタイムで、声を出して、全員で情報共有する。
救急や救命の場面で強く求められる適性です。
心療内科でも救急対応はなくはないですが、全体的に時間がゆっくり流れます。
そのあたりが肌に合っているのも科を選ぶ理由だったのかもなあ、とぼんやりと考えました。

あとは、少し抽象的な話になってしまうのですが、もう少しだけ記述します。
「作者が用意した謎を、プレイヤーが解く」という構造を謎解きゲームは持っています。
謎を解くんだから、それはそうなんですが。
「解かれるであろうと想定された謎」というのが、ちょっとしっくりきません。
どこか「既定路線、予定調和では」と感じてしまう部分があります。
ゲームだとわかりにくいので、漫画や映画だとするなら、1周目の視聴では見つからないようなものが何周も触れると見つかるような感じ。細部まで作り込まれた作品に強い敬意と愛着を持ちます。

最後に、医療職の人間は「謎は二重構造を持っているもの」と想定するように訓練を受けているかもしれません。

・最初から患者が自覚している謎=主訴=その人が困っているみかけの症状
・受診時には患者も想定していない謎=専門家が診たり、検査したりするなかで発見されるもの

精神科の場合は、後者の想定されていない謎がなかなか多様で、飽きにくいです。そこに面白さややりがいを感じることがしばしばあります。


Q50 萌え絵のボードゲームは持ってますか? 萌えっぽい絵のボードゲームを購入するのに抵抗はありますか?
持っていないです。抵抗はないですが、自分は売り手が想定した購買層ではないという感覚をたびたび持ちます。
萌え絵をアートワークにする場合、筆者が作り手であれば以下のような購買層を想定します。
「ゲーム全般、アニメ、漫画に親しんでいる10~30代層に
30分級で、ルールは複雑すぎず
1500~3000円で」

商品として売るのであれば、どの層にリーチしたいかを普通考えます。アニメ絵である、という最大の長所が活かせるのは、おそらく上記のような購買層です。
上とは異なり、自分は顧客として以下のニーズを持っています。
「4000円以上してもいいから、2時間級で、10回以上遊べるゲームが欲しい」
というような。ここのズレを強く感じますね。
ゆえに、余談ですが、「アニメ絵の2時間クラスのガチ経済ゲーム」とかが万一出たら、たぶん興味半分で買ってしまうと思います。

Q51 海外のボードゲームによくある「エセジャパン」的な世界観のゲームをどう思いますか?
いいと思います。

Q52 BGGのアカウントを持っていますか? 普段からBGGを見て/利用していますか?
持っており、頻繁に見ます。
好きなゲームについては、深いレビューがないか探しますが、自分の需要に合致した記事はそこまで多くない印象を持ちます。当たり障りのなく、穏当に褒める記事が大半で、目を惹くようなものは多くない。筆者の主観ですが、プライベートサイトの方が関心に合うレビューやインタビューが多く見つかります。

Q53 ボドゲーマのアカウントを持っていますか? 普段からボドゲーマを見て/利用していますか?
持っていません。レビューを買う際の参考にさせてもらうことがあります。

Q54 ゲムマ以外のボドゲフリマなどの即売会イベントに参加した事がありますか?
関西のボードゲームフリーマーケットは、ここ2年ほど参加しています。

Q55 プレイヤーのマイ担当カラーを決めていますか? 決めている人は何色ですか?
選べるならを取ります。

Q56 トリックテイキングは好きですか? 好きな人はメイフォローとマストフォローどちらが好きですか?
スカルキングインフェルノはとても好きです。選択肢の多さを好むので、たぶんメイフォローの方が好きです。

Q57 トランプゲームで遊びますか?
ポーカーは遊びでやります。

Q58 ワードゲームは好きですか? また、得意ですか?
ボブジテンインサイダーはとても好きです。
ワードバスケットワードスナイパーなどのしりとり系はあまり好まないです。

Q59 大喜利ゲームは好きですか?
卓によります。ドロッセルマイヤーさんのなぞなぞ気分がとても好きです。
キャット&チョコレートは好きではないですが、私の世界の見方は好きです。後者は、もしスベってもさらし者になり得ないのが、とても素敵だと感じます。

Q60 協力ゲームは好きですか?
情報が完全に共有できないタイプなら楽しめます。

時間をかければ情報を共有できてしまうゲーム、たとえばパンデミックやスコットランドヤードについては、以下のような所感を持ちます。

・やるからには勝ちを追求したい
・勝ちを目指すためには、情報を統合していちばん上手な1人が意思決定を行うのがベスト
・でも奉行になりたくない
・かと言って奉行をやられて思考停止になるのもつまらない
・誰も奉行をやらずになあなあで手を抜くのもつらい
こういう気持ちを抱きます。
まったくの余談ですが、奉行問題は英語でアルファプレイヤープロブレムと言い、国外でも避けるべき事態だと捉えられています。

奉行問題が起きない協力ゲームだと、まず思いつくのは秘匿性のあるものですね。
ごいたや人狼はわりと好きです。

あるいは、リアルタイムという縛りで奉行問題を解決している作品も、良いものだと感じます。
・パンデミック:迅速対応
・VOLT
・マジックメイズ
なんかですね。
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Pandemic:Rapid Response(2019) by K.Klenko

Q61 バランスゲームは好きですか?
誘われればやります。

Q62 紙ペンゲームは好きですか?
誘われればやります。
設計的にどうしてもインタラクションが少なくなってしまうので、やや物足りなく感じることが多いです。

Q63 ダイスゲームは好きですか?
定義によりますね。
ここでは、中量級以上でダイスを導入した作品だと想定します。
ダイスをうまく使った作品、たとえば
・ブルゴーニュの城
・マルコポーロの旅路
・グランドオーストリアホテル
なんかはただただ見事だと感じます。雑な物言いですが、イタリア人はダイスの扱いがとても見事だと感じます。
反対に、
・ブラックアウト香港
・ダイナソーアイランド
・アナクロニー
あたりのダイスの導入のされ方は、なんというか、少しまとまりが悪く感じます。
丁寧でない感じというか。
「その部分をダイスにする必然性、ほんまにあったんか」みたいな。
特にアナクロニーに関しては、ダイスを使うアクションがアクションスペースのひとつにあるので、行くかどうかプレイヤーは選べます。
ダイス要素がある資源を取りに行ってもいいし、そこを無視してもOK。
ダイスのバラつきについて、プレイヤーはさまざまに評価します
たいてい、衝動的なプレイヤーは過度に期待します
反対に、まったく信用せず、執拗にリスクを取ろうとしないプレイヤーもいます
プレイヤー間で価値観が統一されることは少ない。
そういったメカニクスを、使うかどうか選べるようにしてしまうのは、イマイチです。
それよりは、選択の余地を与えない方がおそらく収まりが良い。

とはいえ、筆者はダイスについては確たる考えを現状持てていません。
ダイスは荒馬であり、カードとは異なり、プレイヤーの思考スペースをかなり食います
ダイス要素を少しでも入れるか入れないかで、ゲームのプレイ感がまるっきり変わってしまうようなパワーを持っています。
そうした激しいものをゲームに導入した上で、プレイヤー間のインタラクションもしっかり残す、というのは、かなりの芸当です。
たとえば、筆者の知る限りローゼンベルクもフリーゼもダイスを使った代表作を持ちません。
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アナクロニー、ダイスコンポーネント

Q64 ゲームにおける運要素の比率はどれくらいがベストだと思いますか?
自分が遊ぶなら、麻雀くらいの運要素を好みます。
数値化が可能なのかは不明ですが、実力:運=6:4とかでしょうか。
たとえばグランドオーストリアホテルなんかは最高のバランスだと感じます。

重めの戦略ゲームなんですが、
・ダイスのかたより
・ゲストカードのめくれ
といったけっこうな運要素があります。
かと言って単なる運ゲーではなく、リスクをコントロールする様々な手段があります。上達すればするほど、様々な対策を取って、運に振り回されないように工夫できるようになります。
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グランドオーストリアホテル ダイスコンポーネント

Q65 アプリ連動型のボードゲームは遊びますか? また、これらをアナログゲームだと言えると思いますか?
アンロックなどであれば、遊びします。アナログゲームの定義については、論争を呼びがちなわりに、筆者にとって有益な議論とならないので、発言しません。

Q66 軽ゲー派? 重ゲー派? 中量級?
2~4時間級が好きです。

Q67 2時間以上の重量級ゲームでよく遊びますか?
もしすべて自分の思い通りになるのなら、休日は朝10時くらいから終電まで、2時間級以上だけを遊び続けたいです。

Q68 あなたのスマホ/タブレット/PCにはボドゲアプリがインストールされていますか?
AI戦で、Steamのテラフォーミングマーズと、iOSのアグリコラをよくプレイします。

Q69 有名/定番タイトルなのに、遊んだことがないゲームはありますか?
ディプロマシーアクワイア。いつかやっておきたいですね。

Q70 日本語版を是非出して欲しいと思うゲームはありますか?
思いつかないです。

Q71 海外ゲームのゲームメーカーによる邦訳の誤訳が気になる/許せない方ですか? また、メーカーのエラッタページはチェックしますか?

難しいところですね。
センシティブな話題となりますが、アークライト社について本節では触れます。
ここでは同社の経営をボードゲームにたとえます。
同社は短期的には以下のアクションをやっています。

・とにかく多く日本語化の翻訳権を取る(契約タイルを多く取る)
・需要がホットなうちに訳して売る(需要ゲージが高いうちに、多く売る)

短期的なものよりも、もっと中長期的にみると、同社はゲームマーケットを継続して開催しています。出典があいまいですが、ゲムマの開催自体では、たしかあまり大きな収益が得られない。
収益が出ない活動を行うのには、収益以外の理由が普通はあります。

・ボードゲームの市場そのものを拡大したい
・拡大した市場でリーディングカンパニーとなりたい

この2つの意図が背景にあると筆者は推測します。
本節では、上の2つの目的を果たすことが、ゲームで例えたときの同社の勝利条件だと仮定して、議論を進めます。

上記のように考えた根拠として、以下に、同社の会社概要から引用します。
――――
当社ではカードゲームやボードゲームなどの商品を「人と人が出会い良好なコミュニケーションを形成するツールとしてのゲーム」として捉え、単なる商品の売上・利益を追求するのではなく、あくまで「ヒューマンコミュニケーションの拡大」による業績の拡大を目指し、それによって自社のみならず社会への利益貢献を果たしたいと考えております。
――――

かなり議論の下準備が長引きましたが、上のようにとらえると、エラッタの多さの理解はしやすくなります。
単に、

・出版数が多く
・出版までの期間が早い

からエラッタが出ます。
自社ワーカーの許容レベルを超えて、契約タイルを多く取り、早く達成させようとしています。
キャパを超えれば質が落ちる。
質が落ちれば、少なくないコアユーザーからの批判は高まる。
批判を無視し続ければ、信用度トラックが下がっていく。

自然な流れです。

かなり伝わりにくいうえに雑なたとえですが、ワレスのオートモービルでいうと「質が低くてもいいから、大衆向けのTフォードを大量生産して、営業攻勢をしかけて売り切る」みたいな、フォード社のような運営だと感じます。
「エラッタが多少増えても、とにかく多く早く出す」
というのは、理にかなっています。同社の中長期的な2つの目標を満たすためには、ある程度的確な企業行動です。ユーザー視点でどう感じるかは別にして、合理性はあります。


ただ、同社は最近いくつか上の方針と異なるアクションも行っています。
・よりユーザーの声を聞くようにするというアナウンス
・新規採用の募集


これらについては不明瞭なものの、

・自社ワーカーのキャパの底上げに使えるリソースが用意できた(内部留保が作れた?)
・信用度トラックの低下が無視できないレベルにあると判断しテコ入れを行った

というような背景がある可能性があります。ここから先は根拠となる情報があまりに乏しく、憶測の域を出ません。
何にせよ、ゲーム方針をいくらか転換したことを感じさせられます。



最後に、筆者の心情として、エラッタは好きではありません。
ただし「ボードゲームの市場全体が、健全な速度で拡大する」というのはとても喜ばしいと感じます。バブルはNGですが、堅調な市場の拡大は正義です。
市場がでかくなれば、やれることも増えます。
専業デザイナーも増えてくるかもしれない。
ゲムマのサークルの販売個数が増えれば、原価率を下げられて、同人活動がより易しくなるかもしれない。
業界全体の利益につながります。


Q72 海外と日本版でアートワークなどが変わるのは気になる/許せませんか?
売りたい層を想定してアートワークを変更するのは、適切な判断だと感じます。
また、SNEなどの企業の場合は「自社デザイナーに仕事を与え続けねばならない」という内向きのニーズもあるのだと感じます。それも、そういうものだからしょうがないと感じます。
心情としては、海外版のままのアートワークを好ましく感じることが多いです。

Q73 同じ内容のゲームでも、アートワークが変わっ(て、それが好みの絵だっ)たら買いますか?
黒ブラスなんかは最高ですね。
旧版も良かったけれど、新版の最高にイカしたアートワークになったからこそ購買欲がわいちゃいます。
かっこよすぎます。
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Q74 リメイク前のゲームを持っていても、リメイクされたらリメイク版も買いますか?
好みで、かつ頻繁にプレイできる見込みがあるならば、買う可能性があります。
たとえば電力会社は買いませんでした。
レーベンヘルツは新旧買っていますね。


Q75 海外の未翻訳ゲームを自力で翻訳して遊んだことがありますか?
ないです。

Q76 レビューや意見、ゲームの考察などで参考にしているボードゲーム関係の個人はいますか?
N2さん、北条投了さんには、制作をはじめ、さまざまなことについてたくさん教わっています。とても尊敬しています。
「最新の重ゲーどれ買うべき」的な話題だと、友人の神宮寺さんとミキさんの考えを参考にすることが多いです。
その他、挙げるとキリがないですが、参考にさせてもらっている方や、リスペクトしている方はとても多いです。


Q77 ここで(この)ゲームをやってみたいという場所、ありますか?(実現可能性はおいとく)
クニツィアの家でポーカーやってみたいですね。

Q78 この人にボードゲームのマンガを描いて欲しいというマンガ家がいますか?
福本信行さんですかね。

Q79 ボードゲーム関連の動画を見ますか? お気に入りの動画があったら教えてください
Shut up and Shit downシリーズは、英語の勉強がてらたまに観ます。


Q80 ボドゲのポッドキャストを聞きますか? お気に入りがあれば教えてください
jun1sさんのものは何度も聴いていました。
男性のゆっくりした低い声で、とても好きですね。意味内容も素晴らしいです。

Q81 この人とボードゲームを遊んでみたい、この人にボードゲームを遊んで欲しいという人は?(故人、非実在人物、ゲーム業界の人でなくても可)
ヒトラー、スターリンとTriumph & Tragedyしたいですね。枢軸、列強、共産に分かれて戦うウォーゲームです。ヒトラーがイタリアをあっさり切り捨てるさまが見たいです。
あとアカギや福本作品の登場人物と、ライアーゲームの登場人物らでディプロマシーしてるのを横で見たいですね。

tt5

Q82 「おじさんがパッケージのボドゲは面白い」という法則を知っていますか? また、真実だと思いますか?
おっさんといえばクレメンス・フランツとかでしょうか。
彼はある程度重く、込み入ったメカニクスのゲームのアートワークをよく担当していると感じます。受注している仕事の量がおかしいですよね、どうなってるんでしょう。
彼が描いているゲームはよく購入する傾向にあります。ただ、クレメンス・フランツが描いていることが購入の決め手になることはあまりないです。結果であって原因ではない

Q83 好きな(これくらいの規模で遊びたい、という)プレイ人数は
3人でしょうか。

Q84 お泊まりボドゲ会を開催したり、参加したことはありますか?
夜は寝ないとなので、あまりないです。

Q85 ぶっちゃけ、クニツィアディレンマって言う? 言わない?
色と数字があるカードゲームをやると、クニツィアっぽい、ないしはシャハトっぽいと感じるときはあります。抽象的だから反論が難しく、マウントめいた言明なので、友人以外に対して口に出して言うことはないですが。

Q86 リボーク、ミゼール、ディール、ラフ、ディスカード、全部分かる? 普段から使う?
わからないです。トリテの用語なのかしら

Q87 上家、下家、対面、先ヅモ、ベタオリ、全部分かる? 普段から使う?
これは麻雀の用語ですね。友人とのプレイでは使います。

Q88 ゲーム中に交渉要素のないゲームで、口プロレス(はったりを仕掛けたり相手を誘導するような発言)はする方ですか?
難しい質問ですね。
実力が拮抗している相手と戦っていて、本当に勝ちたい場合は、やはりあらゆる最善を尽くします。
自分の内政がうまくいっていないようにウソをつくこともあります。自分が有利になるように、他者のアクションを誘導しようと試みることはあります。


Q89 同席相手がプレイングに悩んでいる際に、求められていなくてもアドバイスしてしまう方ですか?
相手によりますね。
初対面の場合、少し水を向けてみて、要らなさそうなら黙るようにはしています。
・ことばでの聴覚情報
・ボード上の視覚情報

これらをいっしょくたに受信すると、混乱してしまうプレイヤーはけっこう多いと感じます。
アドバイスがノイズとなって、余計混乱してしまうパターンもあると思います。

Q90 ボードゲームを遊ぶ時、ハウスルールを導入したことがありますか?
合意が取れれば頻繁に導入します。
ルールを変えた際にゲームがどのように機能するのか、あるいは機能しなくなるのか。
また、なぜ機能する/しないのか
こういった事象に強い興味があるので、親しい友人には無理を言って、完成されているゲームでも、ルールをいじることがあります。

Q91 ゲームの拡張は買う方ですか? 買った拡張を入れて遊ぶ頻度はどれくらいですか?
拡張は、
①バランスを整える
②リプレイ回数を増やす
③選択肢を増やして、キツさを緩和する
の3方面に大別できますね。

①バランスを整える

GWTの北方拡張、ワイナリーの四季のラインガウ拡張
どちらも基本のみだといくらか瑕疵があります。カウボーイが強すぎる、カード効果が強すぎる。それが拡張によって良いバランスになります。

②リプレイ性を上げる
(A)部族拡張
カヴェルナ、マルコポーロの旅路

スタート時に選ぶ氏族を増やす。
これはたまらないですね。氏族を数個増やすだけで、氏族同士の組み合わせのヴァリエーションが一気に増えるので、リプレイ性が格段に上がります。

(B)マップ拡張

コンコルディア、電力会社

マップ拡張が出るゲームは、基本版の時点である程度完結しているのが特徴的です。
基本骨格が完全にバランスが取れている分、その部分はいじったり足したりできないので、外部的なマップをいじってリプレイ性を上げています。
con corcica
コンコルディア、コルシカ島拡張

③キツさの緩和

マルコポーロの旅路、ロレンツォ・イル・マニーフィコ

ワーカープレイスメントですね。
ワカプレは拡張が入るとアクションスペースが増えて、ゲームが柔らかくなります。どちらも基本のみだとかなりキツく、正直筆者の好みに合いませんが、拡張を入れると好みに近づきます。


Q92 赤ポーン(ドイツゲーム大賞受賞作)のゲームは何作くらい遊んでいますか? あなたにとって赤ポーンは意味があるモノですか?
遊ぶ機会があれば積極的に遊びます。
最新のSdJは流行とこれからの潮流を見るうえでとても大事だと思うので、軽視してはいけないと考えています。ただ、自分の好みよりもとても軽いのがなんとも言えないところです。
KdJも自分の好みより若干軽いことが多いので「買う際の参考になるわけではないなあ」とよく感じます。

Q93 ゲームマーケット大賞の受賞作を何作くらい遊んでいますか? あなたにとってゲームマーケット大賞は意味があるモノですか?
遊ぶ機会があれば積極的に遊びます。天下鳴動、先日遊びましたがめちゃくちゃ良かったです。

Q94 どれくらい積みゲーしてますか?
遊びたくなったら買い、遊ばなくなったら売るので、積まないことが多いです。

Q95 仲の良い知り合いに頼まれても絶対やらないレベルのNfMゲームありますか?
今のところはないですね。
・おばけキャッチ
・ウボンゴ
・ワードバスケット

なんかの反射神経、早押しものはあまり好かないです。どうしても気分が乗らないときは、抜けて外で見ることもあります。

Q96 同じゲームを何度も遊ぶ方?
気に入ったゲームは買って何回も遊びますね。

Q97 入手が難しいが欲しいゲームありますか?
・国富論
・Captains of Industry
・コンテナ
・1830

あたりですね。
強く購買欲をそそられます。
ゲルツのインペリアルに脳を打たれた初期衝動から、同じような重めの経済ゲームに対して、過度な憧れと期待を持ちやすい傾向にあります。
値段が高く、何回も回すのは現実的でなさそうというのが理由で、購入に至っていません。
coi
Captains of Industry(2015) by M.Keller

Q98 長考する方ですか? 他人の長考は気になりますか?

定義によります。

Q99 ボードゲーム以外の趣味は何ですか?
読書会を主宰して、かれこれ5年経ちます。
精神医学や哲学についての本を、半年に1冊くらいのペースで、レジュメを切っています。あとは、ノンフィクションの本を読むのがとても好きですね。

Q100 最後に、あなたにとってのボードゲームは、何ですか?
人生をボードゲームに近似できるようになり、思い悩むことが減りましたね。
ボードゲームは人生ではありませんが、人生はそれぞれのプレイヤーが別々のルールで遊ぶボードゲームと想定してOKだと感じます。

自分のゲームは、リソース管理を中心にしています。
ゲームは80年程度のラウンドを繰り返します。
勝利点=幸福と感じることをたくさん集めるのが自分のゲームの目的です。
リソースは
・時間
・体力
・お金
・他者からの信用

といった、いくつかのパラメータがあります。
適宜労働してお金と信用を稼ぎ、休息をとって体力を維持し、生活を継続させ、お金や体力といったリソースをこつこつ貯めて、余らせます。
余ったリソースは勝利点行動(楽しみのための余暇)に使ってもいいですし、リソース収入を増やすための投資(自己研鑽、収入を増やすためのバイト、株式投資)をしてもいい。
あとは、たまにバッドイベントのカードがめくられて、理不尽にリソースを奪われます。
そういうときのために、ある程度マージンを多めに持ちたい。健康度を高めに維持したり、他者との関係を良好に保つと、そういった際のダメージを軽減できます。

筆者はおおむねそういうゲームをやっています。
すごく重要なのが、ゲームのルールはいちようではない、という点です。
個々人によってまったく千差万別です。

個々人の利益を追求するのではなく、協力ゲームをやっているプレイヤーもいます。
もしくは、親のやっていたゲームをコンティニュー=引き継いで、自分の思うような内政ができないプレイヤーもいます。
個人の生活の幸福度ではなく、仕事の出世トラックに高い勝利点に設定しているプレイヤーもいるでしょう。
そもそも、自分のゲームのルールを明晰に自覚していないプレイヤーも一定数いるかもしれません。


子どもは、なかなか狭い世界にいるので、「だいたいの人間が同じようなルールのなかで生きているのだろう」と錯覚してしまいがちです。
筆者の場合は
・進学校に行く
・できるだけ良い大学に行く
・良い就職をする
・お金を稼いで出世する
という太い一本道がある。言い換えると、その一本道しかないと、非言語的に教えこまれていたように感じます。
そうとも限らない、と気づいたのは、成人して以降でした。


仕事においても、人生のありようをボードゲームに近似するようになってから、見立てと対応がいくらか早く、精確になったように感じます。
もしルールの理解が不明瞭なのであれば、まずどういうルールで生きているのかをまず明らかにする。
そのあとで、そのゲームに起きている問題を取り除き、より高い勝利点を取るために有効なアクション、切り捨ててもいい無駄なアクションを検討する。




―――
後記:
いつもこういうインタビュー記事の和訳をしているので、自分が回答する立場になるのは新鮮で、ちょっと楽しかったです。なんだか偉くなった気分になれますね。

付記:
同じく回答しているブログが以下にあります。(適宜追加する可能性あり)
ご興味あれば読まれることを勧めます。

https://hirobodo.hatenablog.com/entry/question100-2019
ケニーのマンガのヒロさんによるもの。
テンポが良く、構成力も高く、読み手へのサービスもしっかりあり、文才を感じさせられます。

https://www.unibodo.com/entry/2019/09/12/223507

ゆにさん(なかとーさん)によるもの。
これも書き手の価値観が簡明に描かれていて、読みやすく、興味深かったです。高い行動力とエネルギーが記事からにじみ出ています。



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フィスターの3作品についての連続記事

最終回はブラックアウト香港(BOHK)について

bohk1


Designer Alexander Pfister
Artist Chris Quilliams
Publisher eggertspiele + 7 more
bohk2


Case3: Blackout Hongkong
(1)作品紹介
(2)テーマ
(3)インタビュー
(4)メカニクス
(5)最後に――3作品を俯瞰して&最新作マラカイボについて





(1)作品紹介
概要:香港での停電からの復旧やレスキューを行う、リソース管理とデッキ構築ゲーム
人数:1~4人、3人ベスト
時間:初回=説明30分、プレイ人数×40分程度
重さ:モンバサ、GWTよりは少し軽い
言語依存:ほぼない
入手状況:日本語版出版のアナウンスは出ている、2019/9現在入手したいなら原語版を米アマゾンで買うしかないと思われる

大まかな魅力:

良くも悪くもとてもソロ感が強い
いかに手札をコントロールするか
リソースを効率的に運用するか
そういったリソース管理のパズルを楽しめるプレイヤーには、BOHKはもってこいだ
手元のパズル要素は悩ましいが、ちょっとした陣取りやカードの早取りなど、ある程度のインタラクションもある
とてもよくまとまっている良作
ただし、筆者にとってこの手のバランスのリソース管理ゲームは好みのど真ん中である
評価が甘くなっている可能性が高いので、そのあたりも差し引いて本記事を読まれた方が良いかもしれない
その他目立った欠点として、GWTと比較して、勝利点の経路があまり多くない
現状の拡張なしの状態だと「5回程度は全然楽しんで遊べるが、10回以上は少し見通しが良くなりすぎるかも」というような印象を持つ

bg_blackout_01


(2)テーマ

モンバサやGWTと異なり、歴史的な出来事がテーマではない
香港でかなり大規模な停電が起こった
今後数週間は復旧のめどが立たない
政府はあなた方を派遣し、状況を解決するために動き出した
復旧に最も寄与したプレイヤーが勝利する
史実ではないので、これ以上語るべき言葉を持たない

bo taiwan
参考:停電下の台湾


※追記
1971/8/16に台風が原因で香港大停電が起こっている
リンクはこちら
ゆえに、史実に基づいていないという記載を行ったが、誤記の可能性がある
ただし、もし裏設定があったとしても、BOHKはモンバサやGWTと違って、実際の地名がほぼほぼ出てこない
テーマ性はあまり感じさせないディベロップだと言える


(3)インタビュー

文字ベースのものは2019/9現在見当たらない
今回は、以下リンクの動画から紹介する
Gaming Rules! Podblast Episode 7 - Alexander Pfister: Great Western Trail, Port Royal, Blackout

筆者が面白いと感じた箇所がいくらかあったので、以下に箇条書きで記す
なお、BOHKパブリッシュ直後の録音で、基本的に作品紹介に終始しており、内容は少し薄い


①GWT

(GWTやモンバサのバランスがとてもよく、戦略の幅が広いというコメントを受けて)
バランス調整については、エッガートシュピールのエディターに大きな助力を受けた、とても感謝している

②BOHKのテーマ

・香港のテーマはパブリッシャーのオファーで決まった
・フィスターとしては、どうしても香港にしなければ、という理由はない
・今回は特にテーマについてリクエストしなかった
(口調としては「エッガート側から要請があったテーマだから応じたが、別にイヤではない」くらいな印象)


③BOHKのプレイ感

・モンバサとはとても似ているが、かなり違う
・特にカードを捨て札列から回収するときのルールの変化が大きい

④パブリッシュの間隔

・重ゲーはだいたい年1回くらいのペースで出そうと思っている
・また、それ以上のペースで出すとみんな消化できないだろう


⑤2019年新作のマラカイボ/Maracaibo

(2018年時点の情報であり、誤記含む可能性がある)

17世紀のカリブ海が舞台
・船を改良し、商品を積む
・ゲーム中にストーリークエストが存在する
・ゲームのなかで発展し、展開に応じてゲームボードが変化していく
・終了時、ゲームの終わりには、新しいタイルがめくられ、古い都市は衰退する
・1ゲーム目が終わるときに、ストーリーでいうところの第1章が終わる
・プレイヤーたちはやめてもいいし、第2,3章のゲームに進むかを選べる
・2019夏~の出版を予定している

600px-Venezuela_relief_location_map
マラカイボ湖の位置、ウィキペディアより
ベネズエラ最大の湖で、海とつながっている
このゲームの時代の16~17世紀ごろには海賊などがいたのかもしれないが、調べてもあまり出てこず
むしろ「20世紀になって海底油田が発掘されてから発展した」という記述がよく見つかる
余談だが、英語発音だとマラケイボゥ、という感じに近い、通ぶりたい方は参考にされてください


(4)メカニクス
最後に、メカニクスについていくらか掘り下げる
モンバサに似た部分があるので、モンバサを下敷きに考察を深める
「フィスターはモンバサを作った経験から何を学び、ブラックアウト香港に何を活かそうとしたのか」を見ていく



考察を、
①資源とカード全体の設計
②カードルールの細かい変更点

の前後半に分ける


①資源とカード全体の設計

資源には下級資源上級資源がある
カードにも基本カードスペシャリストカードがあり、それぞれが対応している

下級資源が6種ある
・水
・本
・救急箱
・米
・工具
・ガソリン

これらはほぼ等価だ
すべて基本カードの赤・青・黄の基本アクションで取ってこれる
どの資源がどの色のアクションに対応するかはランダムで、毎ラウンドダイスで決められる

使い道は以下の2つだ
①カードを買うための支払い
変換アクションを行って上級資源に換える


上級資源はさまざまある
・万能資源のバッテリー
・資源変換に有用な輸送トラック
・探索アクションに用いるWi-Fi


など
多岐にわたる
基本的には
下級資源=エンジンを組むために必要
上級資源=勝利点を得ていくために必要

と思って良い

下級資源→上級資源に変換するためには以下の2方法がある
①紫のスペシャリストカードを使う
チェックマークアクションを行う

チェックマークアクションはBOHKの最大の魅力のひとつだ
モンバサとBOHKとをわかつ最大のポイントと言って良い
これは毎ラウンド得られる収入のようなもの
自分がやれるチェックマークアクションを増せば、単純な拡大再生産となる
数を増やして資源を回すと最高に気持ち良い

チェックマークアクションで下級資源を上級資源に変換する
変換して得た利益で勝利点を得たりカード購入を行って、エンジンを強化していく
こうしたパズルを組み上げていく気持ちよさがこのゲームの根底にある



②カードルールの細かい変更点

BOHKはおおむねモンバサと似ているのだが、2点重要な変更がなされている


1点目:資源の持ち越しが可能となった

モンバサでは、そのターンに出したカードのみを資源として適用した
お金しか持ち越せなかった
さらに、同種の資源を複数枚出さないとカード購入のときに意味がない
なので、カードの管理をミスると「永久にカードが買えず、全然強化できない」ということがまあまあ多発した(特に初回プレイなど)

反対に、BOHKでは、カード購入のために使う資源は何ラウンドでも場に置いておくことができる

場に残る情報は増えるが、資源の管理はとてもラクになった
多くのプレイヤーはBOHKのルールの方がストレスを感じにくいと思われる


2点目:カード予約→達成 の2段階方式となった

資源を払ってカードを買う形式のゲームの場合、

場に置いてあるカードを直接買う=直接方式
いったん予約して手元に移してから買う=予約方式


という2種類の方式がある
上記のように、直接方式予約方式とここでは呼び分ける
直接方式はスプレンダーカヴェルナなど
予約方式はブラックアウト香港以外だと、マルコポーロの旅路グランドオーストリアホテルクランズオブカレドニアなど

2015-11-21_104117
グランドオーストリアホテル(予約方式)の共有ボード
中央下部にゲストカードが並び、各プレイヤーは思い思いのカードを予約→達成していく


興味ない人は読み飛ばしてほしいが、以下ではゲームデザインにおける2つの方式の特徴の違いについて記す

直接方式のゲームは、取り合いのインタラクションがまあまあキツい
熟練したプレイヤー同士だと、
「相手が何を狙っているのか、今何を買えるのか」
を厳しくチェックし合う
重要なカードの場合、相手が買える状態(レディ)になった瞬間に、手を歪めてでも買いに走ることも多い


予約方式では、プレイヤーは一定守られている
一度予約スロットに置いたカードは他プレイヤーに奪われることはないので、自分の内政を優先して、好みのタイミングで購入することができる

直接方式予約方式は大差ないと思われるかもしれないが、上で挙げたようになかなかプレイ感が異なる

さらに直接/予約方式の違いを列記すると、

支払うリソースの数:

直接方式=少なめ、単純

予約方式=多め

【例】クランズオブカレドニアの契約タイル
一度予約してから資源を用意するまでに、1ラウンドくらいかかることが多い
重いコストのゲームは用意に手間がかかる
他プレイヤーに阻まれてしまうとげんなりするので、デザイナーは予約方式を採用し、プレイヤーの計画を破綻させないように工夫している
BOHKも支払うコストはまあまあ重い


カードの種類:

直接方式=ユニークで強力
【例】カヴェルナの勝利点系の部屋タイル
どれもとても強力だ
これがもし予約可能となると、先に予約したもの勝ちになってしまって、プレイ感はけっこう損なわれると思われる

予約方式=均等なバランス
たとえばグランドオーストリアの客カードでは、ある程度の強弱はあるものの、「どのゲームでも場に出た瞬間に予約したい」と思えるくらい決定的に強いカードはほぼない
だからこそ、先手番の人に良さそうなカードを予約されたとしても、「まあ、次のカードがめくれるし良いか」と気軽に構えることができる
BOHKのカードもユニークカードは存在せず、コストー効果のバランスがだいたい取れている


いくらか脱線したが、BOHKは予約方式であり、かつ予約方式の長所が活きるコスト感でカードが作られている
モンバサと比べると作りが丁寧で、筆者は好感を持っている



(5)最後に――3作品を俯瞰して

重ゲー3作品の比較検討は、数か月前にローゼンベルクについて行った
今回は2回目
フィスターはローゼンベルクとは似ても似つかない作風だが、設計のありようの変化にはどことなく共通点があると感じた
そのあたりを、うまく言語化できるか不明だが、最後に記述し連続記事を終える



アグリコラ(2007)→カヴェルナ(2013)→オーディンの祝祭(2016)と時代を経るにつれて、
・キツいインタラクションが減り
・手元のパズル要素が楽しく、小気味よいものとなり
・全体的に楽しいものになっていく

前作の魅力を残したまま、課題点がクリアされ、全体的に洗練されていく
ローゼンベルクにおけるオーディンは一つの完成形で、重ゲーの極致と言える
重ゲー路線の進化、その系統樹の最終形
筆者はオーディンの、その冗談みたいに重く、立方体に近いデカさの箱を持つと、何とも言えぬ感慨を覚える
進化の終着駅のような、そういうものに触れたような
affo
オーディンの箱
尋常でなく大きい

フィスターのBOHKはここまでの怪作ではない
かなりの良作だが、とてもきれいにまとまっているただ
BOHKの諸要素に、モンバサやGWTで培ったノウハウのようなものを感じる

モンバサのカードメカニクスの部分を再利用し、その面白さを最大限に活かしている
モンバサの株の複雑なインタラクションをそぎ落として、かわりに拡大再生産のエンジン構築を基調に据えた




最後に、モンバサには、明らかにフィスターのデザイナーとしての初期衝動が詰まっている
何せ14歳のころのアイディアを、20年以上経ってから結実させたのだ
愛着がないわけがない

訳す側としても、フィスターがモンバサについて語る場面では、ゲルツがインペリアルについて語るときのようなワクワクを感じた

また、マラカイボについても、インタビューを聴いた感じだと「フィスターも17世紀カリブ海というテーマへの愛着を持ってそう」という印象を覚える
プレイできる日を心待ちにしている


maracaibo




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gwt1


フィスターの作品についての連続記事
第2回はグレートウエスタントレイル(GWT)について


Case2:Great Western Trail
(
1)作品紹介
(2)テーマ
(3)インタビュー
(4)考察――キツい基本版、自由度を広げる北方拡張


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Designer Alexander Pfister
Artist Alexander Pfister, Andreas Resch
Publisher eggertspiele + 16 more


(1)作品紹介
概要:19世紀のアメリカ中西部を舞台にしたデッキ構築ゲーム
人数:2~4人、3人ベスト
時間:初回=説明40分、プレイ2時間半程度
重さ:初回プレイはとても重く感じるが、一度プレイすれば見通しは良い
言語依存:ほぼない
入手状況:アークライトからの日本語版が十分に流通している(2019/8現在)


(2)テーマ

グレートウエスタントレイルを直訳すると、偉大な西部の道のり
アメリカのロングドライブ、もしくはキャトルドライブという言葉をご存じだろうか
筆者はこの記事を作成するまで聞いたこともなかった

ロングドライブ
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Cattle drive

この写真の感じで、数百頭の牛をカウボーイたちが輸送していた


スクリーンショット 2019-08-30 16.18.22

キャトルドライブとは、上図のテキサスを出発して、牛の群れを率いながらカンザスを目指した長い道程のこと(南北の緑ルート)

カンザスで大陸横断鉄道に牛を積み込んで、西のサンフランシスコ方面へ出荷し、お金を稼いだ(東西の赤―青のルート)
帰りは牛がいないから、ゲーム的には一瞬で帰れる


大雑把な説明は上記だが、以下でもう少しテーマを掘り下げる

きっかけはゴールドラッシュだった

1848年、当時何もない僻地だったカリフォルニア州でが産出された
30万もの人間が押し寄せ、最終的に今の日本円で数兆円規模の金が採掘された
200人だったサンフランシスコの村落は、ゴールドラッシュの5年後には36000人にまで規模を拡大した
インフラは追いつかず、特に食料の枯渇が深刻だった

440px-SanFranciscoharbor1851c_sharp
サンフランシスコの港を埋める大量の船
船が渋滞している


一方、テキサスでは途方もない数の牛が余っていた

いきさつとは以下だ
①スペイン人が食用牛を連れてきてテキサスで飼っていた
②テキサスは領土をめぐる戦争で1848年にメキシコからアメリカに支配権が移った
③スペイン人は追い出されたが、連れていけない牛たちが取り残された
④アメリカ人は牛を食べる習慣がなかったので、ほったらかしにした
⑤牛たちがテキサスで大繁殖した(数百万頭規模)


アメリカ人は食べる習慣こそなかったものの、食えること自体は知っていたし、西側のサンフランシスコの食糧難も知っていた
また、東部でも高い牛肉の需要はあった
テキサスでは牛は金にならないが、出荷したら金になる
だいたいテキサスの相場の20倍で売れた
サンフランシスコでも、あるいは東海岸でもどこでもいいが、とにかく需要があるところに運ぼう
ということで、テキサスの男たちは、馬に乗って、余った大量の牛たちを運んだ
目的地は、北へ2000キロ、大陸横断鉄道の主要駅があるカンザスシティ
オクラホマの険しい山
牛泥棒
好戦的なインディアン

こういった様々な困難が彼らを阻んだ
プレイヤーはこの馬に乗った男たちとなり、テキサスからカンザスシティへの険しい行程を進む
cattledrive01


(3)インタビュー

https://theplayersaid.com/2016/12/08/interview-with-alexander-pfister-designer-of-great-western-trail-by-stronghold-games/
上記リンクの記事をもとに再構成した
※すでに和訳公開などがある可能性があり、その場合は大変申し訳なく感じる(検索した限り見当たらなかった)
※意訳、改変行っている(本記事の目的と関わりがない部分をかなりカット行っている)



①GWTのインスピレーションを与えてくれたものはありますか
また、テーマ/メカニクスのどちらが先行ですか
メカニクス先行だ、いつもそう、モンバサのときもそう

GWTで最初に考えたのは、建物タイルだった
全プレイヤーが同じルートを通る
そこに自分用の建物タイルを建設すると、インタラクションが生じる
それが始まりだった
カウボーイのテーマは後乗せだ
そのあたりの時代のアメリカ、というので行こうとは思っていたから、
・油田の採掘
・ゴールドラッシュの金鉱掘り

とか他のテーマもいろいろ考えていた
最終的に、西部のカウボーイが一番しっくりきた

カンザスシティまで、牛飼いたちは何度も何度も同じルートを通って、牛を運び、お金を稼ぐ
このゲームでは、なんどもふりだしに戻っては決算ができるあがりマスを目指して旅を行う
このあたりのテーマとメカニクスの連関がとても良いと感じたんだ
cedgm22xpdr8duuh08dh



②GWTはさまざまなメカニクスのサラダです
そのなかで、主となっているものはありますか?
また、採用はされなかったが試作段階では存在していたメカニクスみたいなものはありますか


さっきもいったように、全プレイヤーが同じルートを通る
建物タイルで止まることで固有のアクションを実行する
これがアクションのコアとなるメカニクスだ
変則的なロンデルだね
ロンデルとは、
・一方通行の道で、止まったマスでアクションする
・1~3歩など、歩数を自分で選べる
出目を自由に決められるすごろくのようなものだ

GWTではロンデルとは異なり、プレイヤーが建設を行うことで構造に関与できる
建設によってマップを書き換えることができるんだ
また、一部分岐路もある
変則ロンデルと言って良い
ロンデルのゲームは好きなんだ
というのも、
「あと1~3マス動ける
ってことは次のターンできるのは3択
となると、あれかこれくらいか」

っていう風に、選択肢が適度に狭まるから

この部分のメカニクスを固定して、GWTの設計が始まった



アクションのコアの部分を固定したのちには、種類を決めていった
GWTではワーカーを雇うことで、特定のアクションを特化し、強化することができる


プレイヤーは各方面に強化をし、得意なアクションを伸ばしていく
ワーカーはカウボーイ、機関車技師、大工の3種類がある

カウボーイを増やすと、牛購入アクションが強化できる
牛を買うと、毎ラウンドの決算での収入がどんどん上がる

機関車技師を増やすと鉄道アクションを強化
鉄道を進めると様々な恩恵を得られる

大工は建設アクションを強化してくれる
大工によって建物を建てると、自分だけが使える強力なアクションマスを増やせる


③GWTの目指しているものはなんですか?
つまり、プレイヤーにどういった体験をさせたいのですか?


・プレイヤーが長期的な視野でプランを立てられること
・ダウンタイムが長くならず、テンポよくゲームが展開すること

この2点を目指した

ボードゲームにおいて、プレイヤーは未来に対して計画を持つ
GWTだと、
・早く決算マス(双六のあがりマス)に行きたい
・強力なアクションを打ちたい


のように
そしてモンバサのインタビューでも話したが、僕は同時解決のメカニクスが好きだ
ダウンタイムが減るからね
GWTは手番制のゲームだが、ダウンタイムはあまり長くない
さっき言ったように、毎ターンの選択肢が3択くらいしかなく、やるべきこと/やりたいことがクリアだからだ

さらに、他プレイヤーの直前の干渉によって、予定していたアクションを潰されるということもほぼ起きない
もちろん、長い目で見るとワーカーの取り合いや建物タイルの建設などのインタラクションは大きい
ただ「直前のアクションによって計画が丸つぶれになる」ということはまずない
だから、相手の手番で前もって計画し、自分のターンが来たらすぐに実行できる

長期的な戦略性が高く、選択肢も多い
しかし、1ターンごとの選択肢は多すぎない

このゲームではそれを目指して実現することができた


④制作に要した期間は?
テストプレイヤーのインプットをどのくらい入れました?
変更の具体例など



初期のマップがこれだ
first-version-of-the-game-board
開発初期のマップ
アメリカ大陸の形をしている
分岐路があったり、白い四角のマスがある
どことなくGWT感がなくはないが、下書き感が強すぎて、ちょっと判読が難しい


GWTは2011年から着手し始めて、2016年にリリースすることができた
なので、5年がかりになる
最初は建物にワーカーを配置して活性化するルールだった
今のように個人ボードにワーカーのタイルを置くのではなく、盤面にワーカーコマを置いていた
またワーカーは最初は3種でなく、1種類だった
あとは決算の方式も違った
「全員がゴールマスに着くのを待って、また振り出しから始める」というルールだった
なので、ダラダラたくさんアクションをする方が、いくつか余分にアクションができ、有利だった
このルールを捨てて、全プレイヤーのアクション回数を公平にしたのは重要な変化だったと感じる

決算まで待つ方式でもゲームとしては機能した
ただ、「このままだとどこかで頭打ちになってしまう」というような、そういう直感があった

あとは、決算時にディスクを配置できるが、「各都市に配置できるディスクはひとり1個まで
としたルールも重要であったと感じる
・デッキの持っている最大パワーを活かしたい
・無駄に手数を割いてまで手札を整えたくない
・ディスク配置の縛りもキツい

という三重の苦労をプレイヤーは解決することになる
デッキのパズル要素をとても面白いものにできている



⑤初期デッキについて、どのように捉えたらいいですか

牛14枚のカードが初期デッキだ
1パワー5枚、と2パワーが3種3枚ずついる
3パワー以上の牛は、市場でしか買えない
そのためにはカウボーイを増やしたい

初期デッキはとても弱い
手札が理想的にバラけた場合でも、決算で得られるのは2-2-2-1の7金が最大収入だ
あとは、手札を破棄するアクションも用意はしている
価値の低い初期デッキを適宜捨て札にしていく戦法も取ることができる



⑥カンザスシティまでの道のりはどういった意図で設計しましたか


4人戦の場合、最初は1ターンに4移動力まで持っている
ゲーム中に最大7移動力まで増やせる
2ルートに分岐するポイントが6か所ある

交差点は地理的にとても大事なので、各交差点には、必ず中立の建物を置くようにした
1プレイヤーが占有できてしまうと、有利すぎるからだ
中立の建物は全プレイヤーが利用できる

分岐路では、各プレイヤーが希望のルートを選ぶ
たいていの場合、片方のルートは災害タイル=プレイヤーを邪魔するものが配置されている
落石や洪水といった災害を踏んで、乗り越えるたびにプレイヤーは1~2金を失う
だからゲーム開始時は皆舗装されたルートを通る
ただ、他プレイヤーが舗装ルートに妨害系の建物を建てているときがある
この場合は、相手に1~2金を払わないといけなくなる
また、災害タイルはどかすことができる
どかすにはお金が必要だが、終了時の勝利点をいくらかもたらしてくれる
もしたくさんの災害が片方のルートにあるなら、もう一方のルートに妨害系の建物を仕掛けると、お金を儲けられるかもしれない
そういう風に、このゲームでは選択肢が多く設けられている

gwt2



⑦建物タイルについて、もう少し詳しくお聞かせ願えますか

建物タイルは、自分の希望のアクションを、希望する位置に建てることができる
たとえばカウボーイ特化で行く場合は、ふりだしにできるだけ近いマスに、自分用の牛購入タイルを建てると良いかもしれない
お金を持っているうちに牛を買えると良い
また、単純に、中立タイルだけを使うとしたら、すべてのアクションは1回ずつしか打てない
だから、もし機関車技師で特化している場合は、線路アクションができるマスを建設すると良いかもしれない
1決算までに2回以上列車を進められて、ゲームを有利に運ぶことができる
さらに、どの建物タイルも中立のアクションよりも少し強力なので、そこにもメリットがある

⑧デッキと、牛カードのセットコレクションについてお話願えますか

とても重要なことだが、デッキ構築は、GWTのメイン要素ではない
あくまで諸要素のうちのひとつ、小さな一部分だ
もしプレイヤーが重点を置いて、
・初期デッキの圧縮
・カウボーイの雇用
・牛の大量購入

で、デッキ強化をバンバンやるなら、それに見合うだけの点数とお金をもたらしてくれる
ただ、これはあくまで特化できるルートのひとつだ

たとえば収入を得たいのなら、牛で行くのではなく、証明書を集めてもいい
証明書は使い捨てだが、決算時の収入を底上げしてくれる
建物のなかには、毎ラウンド証明書をもたらしてくれるものもある
また、駅舎ルートで行くなら永久証明書も得られる
永久証明書を得るのは容易ではないが、使ってもなくならないのでとても強力だ

highland-cow-and-calf
ウェストハイランド種の牛
ゲーム中の4パワーの茶色のカード


⑨ってことは、牛なしでも勝てるってことですか
どうやってですか

できる
このゲームには3つのメイン戦略がある

・カウボーイ&牛
・技師&列車
・大工&建物


1種類のワーカーを増やすと、1アクションあたりのパワーが強化され、効率が良くなる
ただ、「完全に1種だけで特化する」というのは現実的ではない

たとえばカウボーイで行くにしても、補助的な建物を建てた方が動きやすいだろう
さらに、いくらかでも列車を進めておかないと、収入時に支払うお金もえらいことになって、全然儲からない
テーマ的には以下のようになっている
牛をテキサス→カンザスにまず陸路で運ぶ
そのあとに、カンザスからは鉄道で各地へ輸送し、お金を稼ぐ
プレイヤーは鉄道に投資することによって、牛の輸送コストを下げられ、それによって決算時に高い収益を得られる

⑩インディアンのテント/Tipiの意味合いはどう捉えたらいいでしょう
プレイヤーにどういった利益を与えてくれますか


インディアンタイルや災害タイルは、目的カードの条件を満たすのが主な役割だ

インディアンのティッピータイルを取る=インディアンと交易している
というフレーバーだ
インディアンのタイルが場に多く出ているほど、インディアンの集落がプレイヤーたちの近くにまで来ている、ということを表す
なので、交易によるお金の損失が出ず、逆に利益が出ることもある
たくさんのプレイヤーがインディアンタイルを取ると、インディアンの集落は遠くまで下がっていく
こうなると逆に交易コストは上がり、損失が出ることになる

USA-AN-INDIAN-CAMP-TEEPEES-Engraving
インディアンのキャンプ
プレイヤーはインディアンのタイルを取る際、-7~+10金のお金を得る


⑪ワーカーのコストがなかなか高いですが、「何から買う、どのように買う」といった戦略はありますか

ワーカーは5,6人目が4勝利点ずつもたらしてくれる
また、特定の人数を雇ったときにボーナスアクションをもたらしてくれる
機関車技師において、ボーナスアクションはとても重要になってくる
が、技師以外でもこういったボーナスアクションはとても大事だ
駅舎に労働者を配置してしまうと、せっかくの労働者を減らしてしまうのはつらい、とためらうプレイヤーもいるかもしれないが、思い切って配置してしまうと良い
そうやって労働者の切り捨てによってボーナスアクションを複数回行うと、勝利に近づくことができるだろう


⑫個人ボードの視認性について工夫した点など
言語依存を極力排した
手番の進行をサマライズしたものを上部に配置した
中央の広いスペースにワーカータイルを置く
左部分にはディスクを置いてあり、解放すると特殊アクションが打てるようになる
ディスクは特殊アクションだけでなく、移動力や、手札上限の解放をもたらしてくれるものもある
移動力と手札上限はこのゲームにおいてとても重要だ
IMG_0701


⑬中立の建物タイルは、推奨配置とランダム配置があります
どのようにゲームが変わりますか


初回は推奨配置が望ましい
2回目以降では、中立の建物タイルをランダム配置しても良い
また、3回目以降では、建物タイルのA面B面も混ぜて遊ぶのも良いだろう
ただ、全プレイヤーの組み合わせを同じにするのがとても大事だ
そこの初期条件が違うと、全然ゲームが成立しなくなってしまうから





(4)考察 キツい基本版、自由度を広げる拡張

最後に、拡張によって得られるプレイ感の変化について記述し本記事を終える
GWTは、現在「北部への道/Rails to the North」が存在する
結論として、「基本版のキツさと自由度の低さが、拡張によってかなり改善され、良いものになった」と筆者は感じる


pic4039881


以下に所感を箇条書きする

基本版:

建物で相手をジャマするのも、されるのもあまり楽しくない
基本版だけだとカウボーイがとても強いため、後手番に回った人がカウボーイが取れず、仕方なく建物路線を選ぶことも多い

北方拡張:

選択肢が増える
路線ごとのバランスも良くなる
全体的にとてもプレイ感が改善される



建物を建てることで、プレイヤーたちは余計にお金と移動力を支払う必要が出てくる
特に序盤はこの1,2金の支払いがとてもキツい
そのせいで計算が狂い、1労働者、1牛が思うように買えない、ということも多い

ただ、このキツさはテーマの再現の上では有用であるとも感じる
テキサス→カンザスの道はとても険しい
オクラホマの山を越え、橋のかかっていない河川を渡河し、ときには賊やインディアンと戦う必要まである
その道程は2000キロにも及ぶ

WichitaMountains
オクラホマの山々

これだけハードなテーマなのだから、イージーに拡大再生産させるのではなく、いくらか思うようにならないシビアな要素を加えるのは、テーマ再現を優先する観点からは理にかなっている


ただ「建物の建設が純粋に相手の妨害にしかならない」というのは正直あまり好みではない

たとえば、前述のモンバサとはまったく逆
モンバサでは株で強く相手とインタラクトする
ざっくり序盤は相乗り、終盤は殴り合い
「相手がこう出るから、自分はこう動く」
という非言語的な対話のようなものがある
それがとても楽しい

あるいは、GWTとはまったく毛色が異なるが、ケイラス/マグナカルタというゲームがある
ワーカープレイスメントで、一本道にアクションスペースを建設していく
一本道は全プレイヤーが共用で使用する
ケイラスでは他プレイヤーが建てたアクションスペースを使うことができるし、使ってもらうと土地の持ち主も少し利益を得られる
世界を改善することで相互利益が生じる、自由主義経済のようなゲームだ

GWTの建設は、残念ながらそういった豊かな対話は起きづらい
お互いの動きを見て戦略を練り、ぶつけ合う、というようなこともまずない

ただしGWTはとても要素が多いゲームだ
ゲーム自体としてはモンバサよりもやや軽いが、勝利点の経路ごとにゲーム内ミニゲームがあると言って良く、全体としての複雑さは引けを取らない
だから、他プレイヤーとのインタラクションを一定減らすことは必須だ
たとえば、「他プレイヤーの建物も利用できる」とか、そういった要素を足すだけでもプレイヤーは大きく戸惑うと思われる(小さな改変でも各アクションの選択肢を大きく増やしかねない)
建設での他者とのやりとりを極力シンプル化するのは、設計のありようとしては適切だと感じている

――――


次回記事ではブラックアウト香港を取り上げる
そこではよりインタラクション要素がGWTとは別方向で簡素化され、かわりに手元でのパズルの面白さがブーストされている

bohk




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アレクサンダー・フィスターは腕の良いゲームデザイナー
軽いものから重いものまで作っている

今回の連続記事では、

・モンバサ
・グレートウエスタントレイル
・ブラックアウト香港

これら重量級3作品を取り上げ、考察を深める

pic4887376


【目的】

ここ数か月で、上記3作品を数回ずつプレイし、どれも面白かった
「フィスター、やるなあ、好きだな、超面白いな」と漠然と感じたが、具体的に自分が何を面白がっているのかがいまいち見えてこなかった
今回の連続記事のなかで
・フィスターの手癖や設計思想
・3作品に通底する面白さのコア
・3作品それぞれで異なるデザイナーの狙い、意図

こういったものを探していく

なお、Pfisterをプフィシュター表記しているサイトがあるが、本連続記事ではフィスターと記す
フィスターの方が発音に忠実なため


【記事の構成】

1記事1作品を取り上げる



各記事は以下のように構成される
(1)未プレイ者向けの作品紹介
(2)テーマについての記述
(3)フィスターへのインタビュー
(4)メカニクスについての掘り下げ





――――――
Case1:Mombasa
(1)作品紹介
(2)テーマ
(3)インタビュー
(4)考察―ブラックアウト香港、グレートウエスタントレイルとの比較




mombasa1


Mombasa(2015)

Designer Alexander Pfister
Artist Klemens Franz, Andreas Resch
Publisher eggertspiele + 13 more



(1)作品紹介

概要:アフリカを舞台にしたデッキ構築ゲーム
人数:2~4人、4人ベスト
時間:初回=説明35分、プレイ2時間半程度
重さ:ガイアプロジェクトよりはやや軽く、サイズやテラフォよりは重い
言語依存:ほぼない
入手状況:アークライトからの日本語版が十分に流通している(2019/8現在)

mombasa2



おおまかな特色:
・とても重いが、それに見合うだけの面白さもある
株のインタラクションが最大の特徴
対人攻撃要素がとても大きい
・株要素はあるが、複雑な計算はなく、ルールはわりとシンプル

・株の相乗りや交渉を楽しめるプレイヤーに強く勧められる

・アクションはカードで決定し、自分の手持ちカードはゲーム中に強化していける
・カードをめぐるルールはブラックアウト香港とほぼ同じ

・モンバサの方がカード管理自体は易しい

・カード管理のルールも株のルールも単独で見るとそこまで重くはないが、合体させた全体でみると、3作品中もっとも複雑



(2)テーマ


舞台は19世紀、植民地主義の風吹き荒れるアフリカ大陸

作品名の’’モンバサ’’とはアフリカ、ケニア最大の港湾都市

スクリーンショット 2019-08-27 15.25.4922

写真のピンの位置にある


プレイヤーはヨーロッパの金持ちとなり、同大陸の権益を奪い合う

19世紀~20世紀にかけてアフリカでは、史実でも各国によって奪い合いが生じていた
列強の盟主大英帝国は、当時以下のような思惑を持っていた


大英帝国
「南のケープタウン(今の南アフリカ共和国の首都)が取れた
北のカイロ(エジプト)の支配もある程度固まった
ケープタウン―カイロをつなぎたいなあ
南北アフリカの長いルートを自国資本の
鉄道でつなぎたい
さらにカイロ―カルカッタの東西のルートも鉄道でつなごう
鉄道インフラは、一度作ってしまえば永久に富が入ってくる
このCapetown, Cairo, Carcataの3C政策によって、大英帝国は未来永劫栄え続ける」


スクリーンショット 2019-08-29 14.17.37
The Cape to Cairo Railway Dream
この手の話題に興味がある場合は’’セシル・ローズの夢’’でググっても良いかもしれない

ただ、アフリカの権益は他の列強も狙っていた
英国に次いでパワーがあったのがフランス

フランス
「西のサン・ルイと、東のジブチからアフリカに入るルートが構築できた
大英帝国は南北だが、うちは東西をつなぎたい

スクリーンショット 2019-08-29 14.16.00
上図はテーマ説明のための模式図であり、いくらか誤りがある
モンバサや現ケニア領は旧英国領なので、ジブチと記載するのが適切
またモンバサと表記した位置も大きく北にズレている


こうなると真っ向からの英仏戦争が起きてしまう
ただ、英仏の両国は建国以来、世界中で小競り合いをやってきていて、手慣れている
何より、もしここでの対立にリソースを割きすぎると、英仏以外の列強に隙を見せてしまいかねない

軍事・非軍事的な衝突、交渉の末、ある程度の妥協、手打ちとなった

ここから先は余談
英国はアフリカ大陸についてはフランスと妥協を得たのだが、東西のカイロ―カルカッタの支配についてはそうもいかなかった
中東~東ユーラシア地域にはロシア・ドイツが手を伸ばしていたので

特に大英帝国―ロシア帝国の争いは苛烈だった
1900年ごろ、2国は特にアフガニスタンを激しく取り合った


大英帝国
「我が国も相当パワーがあるが、ロシア帝国とは正直パワーは五分、互角
ロシアが西側のアフガニスタンに全力を割くのだけは避けたい
東からも押さえてほしい
東=大日本帝国
日本…あまり強い国ではないが、対ロシアの共闘のコマとしては適格だろう
共闘を申し出よう」

大日本帝国

「英国&日本 vs ロシア か
形としては悪くない

日本は現状、列強のなかでも最弱の位置にある
ここで最強クラスの英国と対等な攻守同盟条約を結べるというのは、好機ととらえたほうが良いだろう
乗らない手はない」
→日英同盟締結、日露戦争へ


余談が過ぎるのでこのへんで終わるが、とにかくこの作品は、このあたりの時代をテーマにしている

---

ここまでは史実の話で、再びゲームに話題を移す
モンバサにおいて重要なのだが、プレイヤーは国家そのものになるわけではない

多くの列強は、自国の企業を優遇して、半国有企業をアフリカ大陸に送り込んだ
ケープタウンを統べたセシル・ローズに対しても、英国のロスチャイルド家の多額の融資を行っている
暗黒大陸占領の尖兵として、イギリスが半分公認したかたちで送り込んでいる


プレイヤーはこの企業に対して融資を行う
いわば国際投資家となる



ゲーム開始時に、将来的にアフリカを強く支配してくれそうな、有望な4つの会社が用意されている
・カイロ
・モンバサ
・ケープタウン
・サン・ルイ


東西南北に4社ある
mombasa2
マップの東西南北にたくさんコマが置かれている
各社の本社となる

プレイヤーはこれらの企業に自由に投資し、植民地支配の権益を享受する
金を儲けて、勝利点を稼ぎ、勝利を目指す

imperial2
ゲルツのインペリアル(2006)
国際投資家となり、各国に融資を行い、植民地支配などを行うゲーム
モンバサとテーマ的によく似ており、両作品は筆者の好みのど真ん中にある



(3)インタビュー

ゴブリン・マニフィコ賞受賞に際しての10のインタビューの翻訳
https://boardgamegeek.com/thread/1573807/goblin-magnifico-2016-alexander-pfister-interview
上記記事を翻訳した

※意訳・改変行っている
※下記リンクからもいくらか引っ張ってきて、つなげて構成している
https://theplayersaid.com/2016/12/08/interview-with-alexander-pfister-designer-of-great-western-trail-by-stronghold-games/



①あなた自身について話してもらえますか

1971/10/18生まれ、40代、既婚
2009年生まれの長女がいる
ウィーン在住
兼業
本業はファイナンシャルプランナーをしている

子どものころからゲームはプレイしてきたし、デザインしてきた
プレイするなら90分級が好みだ
多少運要素があるとなおよい
幸運にも、現在こういった中量~重量級を頻繁にプレイできるゲームクラブを持てている
一番好みのゲームは
・1830
・アクワイア

こういった古い経済ゲーム

②モンバサの元となったアイディアや、制作背景について伺えますか

モンバサのもとになったのは、12歳のころにデザインしたアフリカを舞台にしたゲームだ
プレイヤーは
・プランテーションの農場を買う
・商品を生産する
・都市で売る

といったアクションを行う
売った都市に対して影響を与えられる
自分の影響下にある都市で軍隊を編成する
都市同士で戦闘をやる
これがモンバサの原案となっている
ずっと忘れていたが、10年前にふと思い出して、そこから手を加えていった


③ご自身のゲームで気に入っているものはありますか

自分のゲームでよくプレイするのは、ポートロイヤル
もっとも気に入っているし、とてもよく売れた
ポートロイヤルは早く、ちょうど良い軽さのゲームだ
程よく悩ましい選択肢があり、感情を動かしてくれる
p1
ポートロイヤル
筆者未プレイ
紹介やコンポーネントを見るに、名作軽~中量級の匂いがしますね



④偉大なゲームを作るのに何が必要ですか
デザインにおいてお気に入りのパートはありますか?
あるいは、もっとも難しいパートなど

いちばん最初のステップはとても楽しい
良いアイディアを思いついたとき
ただ、それをコンピュータ上で実装していく第2ステップは正直あまり好きじゃない
大量の時間を費やして、カード、ボード、その他を洗練させていく
しかも正解というものがないんだ
そうやって手をかけて作った試作キットでテストを行うが、最初のテストはだいたい散々だ
バランスがとても悪いか、コアメカニクスが脆弱か
「これはどこまで行っても並みにしかならない」というのが見通せてしまうこともある
そうなると、虚無感だね
こんなもののためにこれだけの時間を費やして、テストキットを作ってしまったのかと
この時点で「このメカニクスはかなり良い」と思えるものでないと、だいたいものにはならない


⑤モンバサの最も独創的なシステムはカードが循環するシステムです
ゲームの作り始めからすでにこのアイディアはあったんですか

自分はメカニクス先行のデザインをすることが多いが、モンバサに関しては、どちらかというとテーマ先行
まず、
・プランテーション農場を買う
・持っているプランテーション農場を利用して商品を大量に生産する
・次の生産の準備をする

という動きになる
毎ターン連続で同じ農場を使えないようにしたかった

モンバサのカードサイクルシステムだと、
・買ったカード(新しく得たプランテーション農場)は次のターンから使える
・使ったカードは捨て札列に行くので、毎ターン連続では使えない

という風になる

訳注:
このテーマ的な要望に応えるためには、ドミニオン方式のメカニクスでも一応機能はする
買ったターンには使えず、捨て札置き場に行ってしまい、リシャッフルの段階で手札に返ってくるので


⑥カードを場にプレイするのがコアにあるゲーム(Card Driven)は好きですか?
コンコルディアや、ルイス&クラーク探検隊など


そういうことは考えたことがなかったな
そうだな、たぶんイエスだ
カードはとても好きだよ
カードというのは、良いイラストを載せるのに十分な余白を与えてくれる
手札はプレイヤーに秘匿情報を与えてくれる
また手札はいくつかの選択肢をまとめて与えてくれるが、枚数は限定されていて、多すぎない
とても好きだね


⑦直接的なインタラクションについては好きですか?
モンバサはけっこうハードなインタラクションがあります
たとえば2パワーを消費すれば、敵対する会社のコマを吹き飛ばして、自分の選んだ会社のコマを置きなおすことができます


直接的なインタラクションについては、大ファンってわけじゃない
ただ、だからこそ僕にとっては重要だし、慎重に扱うべきだと考えている
モンバサのインタラクションはプレイヤー間では起きていない
あくまで会社間での戦争
相手プレイヤーの手札を破壊することはない
勝利点やお金を奪うことも絶対に起こらない
プレイヤーは後方で守られていて、殴り合いの前面には立たない
フロントに立つのは4企業だ
ただし、最後の1,2ラウンドでは、株券の保有状況はかなりクリアに見えてしまっている
だから、
「あの企業を殴る≒あのプレイヤーを殴る」

となってしまうことはある

さらに付け加えるが、モンバサでは株券を多く持つ以外にも戦術がある
ダイヤモンドトラックや本トラックなど、いくつかの勝利点の経路を用意してある
他のプレイスタイルを選べるなかで選ぶわけだから、もし殴り合いになっても、理不尽感はあまり大きくないと考えている
mombasa3
個人ボード
左側にダイヤモンドのトラックが、右側に本のトラックがある


⑧他のプレイスタイルというと、株券以外の勝利点化手段として
・ダイヤモンド
・本

があります
ただ、これらは他の諸要素とコネクションが弱いという指摘があります
特に本のトラックはそこだけのミニゲームとして完結してしまっているのではないか、と

そういうような、ゲーム内ミニゲームを持つようなゲームは好みですか?
(ヴィニョスや、フェルトのボラボラなど)


ダイヤモンドと本は「アクションスロットを解放する」という明白な役割を持っている
モンバサは最初は1ラウンド3枚カードが使えるが、スロットを解放すると最大5枚まで使えるようになる
「できるだけ早く4アクション目を持ちたい」というのは、モンバサにおいて、序盤にほぼ全プレイヤーが持つ小目標だ

もちろんダイヤモンドも本も3アクションのまま最後まで行ってもちゃんとかたちにはなる
その場合は強いカードを買い続けて、常に1アクションあたりのパワーを高めると良いかもしれない
アクション数が増えるというのはとても楽しく、気持ちが良く、ゲームを豊かにしてくれている
そういう意味合いもあって、やや他の要素と結びつきが弱いとしても、2つのトラックを設けた


⑨ゲーム設計の好みやクセ、工夫などはあるか
テーマかメカニクスの片方のウエイトが大きい方が好きとか
お気に入りのゲームメカニクスがあるとか


そういうものは特にない
・ダウンタイムが少なく
・全プレイヤーがゲームにかかわっていると思える

というようなゲームが好みだ

モンバサのアクションプロットは同時に行うので、ダウンタイムは他のゲームと比べてかなり少ない
僕のゲームでは同時解決を採用したものはかなり多い

ゲーム制作ではだいたいの場合、メカニクスから作っていく
適度に選択肢があり、プレイヤーに良い体験を与えてくれそうだ、と思えるものができたら、そこに合うテーマを探して、肉付けしていく


⑩最後に、今や普及しつつあるキックスターターやクラウドファンディングといったデバイスについてどう思いますか?
ボードゲームビジネスの将来の姿か、あるいは人気のあるエディターは生き残るでしょうか
プフィシュターが将来的にキックを用いるということはありそうですか

旧来のパブリッシャーからの出版も、新しい形の両方が続いていくだろう
片方が消え去るということはないと思う
キックのゲームはいくつかやったが、改善の余地があるものもいくつかある

mombasa4
写真はこちらから



(5)考察―ブラックアウト香港、グレートウエスタントレイルとの比較
1記事目の締めとして、ここでは他作品と比較してのモンバサの特徴を掘り下げる

株のメカニクスがもっとも特徴的なので、その部分を焦点化する


①モンバサの株ルール
株式について、拙記事の「レビュー:ヌースフィヨルド」から以下に引用を行う

株式の定義は、株式会社の構成員の特権のこと
株主は資金を支払い、権利を買う
株券発行者は、権利を売って資金を得る
この権利について、筆者は以下の3要素に分解して理解している

(1)アクション権の移譲 (アクションの権利,株式会社の経営決定に口をはさむ)
(2)配当金の分配 (配当を得る権利)
(3)市場価格の上下 (権利を売買する権利)


上記に照らし合わせると、配当金の分配のみがないが、それ以外の要素はある

プレイヤーは探検カードを場に出すことで株にまつわるアクションを打てる
探検カードは1~3ポイントあり、そのポイント分だけ好きな1企業のコマを盤面に置くことができる
探検を行って盤面に置いていくが、置いたコマ数がほぼゲーム終了時の株価となる
また、たくさん探検を行うと、プレイヤーの持ち株も増える
平たく言うと、1つの探検アクションによって、株価と持ち株の両方が増える
手数を割いて投資を行うほど、その企業への影響力と、その企業が盤面に対して持つ影響力の両方が増える
1つのアクションで株価も持ち株数も増えるのは、とてもシンプル


やや余談だが、この株での勝利点のウエイトはとても大きい
得点の感覚として、トップ目の会社の株価は10前後
持ち株数は5~7くらい
なので、うまくいけばかけ算で60~80点くらい入る

このゲームでは、
・株
・ダイヤモンド
・本
・手持ちカード
の4つしか得点手段がないのだが、株以外の3つはせいぜい40~50点ずつ程度のパワーしか持っていない
いくら内政やデッキの管理がうまく言っても、株で勝利点を稼がないと、このゲームでは勝ちにくい

②相乗りと共闘
株で稼ぐためにはどうしたらいいか
ガンガン探検アクションをやっていく必要がある

ただ、このアクションはあまりコスパがよろしくない
プレイヤーは探検アクション以外にも、
・新カードを買ってデッキを強化する
・ダイヤか本トラックを進めて4アクション目を早く解放する

も並行して目指さないといけない
これらをやらずに序盤から株だけにかまけてしまうと、エンジン構築がおろそかになりすぎて、終盤必ず失速する
探検アクションは、全部ひとりでやろうとするとキャパオーバーとなる
手数が足りない
だから、株をめぐっては相乗りが頻発する

「あなたもカイロの持ち株を増やしてますよね
私もカイロ推しなんです
だから、カイロの探検アクションを2人で協力してやりませんか
カイロを我々の共同出資会社として伸ばしましょう
2人で手分けしてやれば半分の労力で最強の会社に育てられます」


そういう胡散臭いやりとりを楽しむことができる
このへんの株のインタラクションがモンバサの持ち味であり、好みの分かれるところだと感じる

株のインタラクション、とても面白いのだが、以下の欠点を持っている

・4人戦以外はイマイチ
モンバサは4人ベスト
3人だと2対1の状況が生まれてしまいやすい
3人でもかなり面白いゲームになるのだが、モンバサの最大の魅力が味わえるのは恐らく4人だ
2人でもプレイ可だが、2人だと株をめぐった交渉がそもそも起こらない
ただ、デッキやリソース管理の面白さは2~3人戦でも全く損なわれないし、ダウンタイムはますます減るので、2人戦もおそらくアリ
人数が減るほど株要素が薄れ、他の要素の存在感が増すようなつくりだと感じる

・同じくらいの習熟度でないと、あまり楽しめない
このゲームは
・手元のデッキ管理
・盤面の株をめぐる交渉
の2要素を混ぜている
2要素ともちゃんと重めなので、合体するととても重くなる

初見同士、もしくはわかっている者同士でやるなら楽しいが、そうでない場合はお互いがあまり幸せになれないかもしれない


―――――――



いったんここで記事を切る
モンバサを2015年に仕上げた彼は、翌2016年‘’グレートウエスタントレイル’’を出版した
グレートウエスタントレイルも、モンバサと似た
・デッキ構築
・アクション数の拡大
・分岐した勝利点の経路

を持ちながら、まったく別の魅力を持っている
次回記事で詳しく掘り下げていく


gwt1





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