2019年04月

18Lilliput/18リリパット

鬼のようにヘビーな鉄道系ゲーム、18XXシリーズ
これをカード化し、やや軽くした2018年の新作

先日プレイさせてもらい、非常に面白かったのでおおざっぱなレビューをここに記す

【謝辞】
所有者は神宮寺さん
場所は大阪鶴橋のディスカバリーゲームズ
同卓者はあまみちくん、ヨースケさんで4人戦を行った
上記の方々に感謝申し上げます

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18Lilliput (2018)
Designer Leonhard "Lonny" Orgler
Artist Petr Štich
Publisher Enjoy Game, Fox in the Box

【おおまかにどういうゲームか】

①鉄道系の経営ゲーム
プレイ感や基本構造は、完全に18XXシリーズのそれ
18XX(イチハチ)シリーズは鉄道会社の債権を買って大株主となって、鉄道運営を行うゲーム
鉄道を敷設し、駅を建て、機関車を仕入れたり、株券を運用して利鞘を儲けたりと、やれることが非常に多く、複雑なのが特徴
株と盤面の2つのメカニクスで相手と勝負したり、協力関係を築いたりする
プレイ時間が長く、元となった『1830』は6時間級とされている
18リリパットはプレイ時間4時間程度であり、いくらか軽量化されている
重ゲーにある程度耐性があるプレイヤーなら問題なくプレイできる
雑に例えるなら、ガイアプロジェクトよりは少し重く、旧版のシヴィライゼーションボードゲームよりは少し軽い

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プレイ風景
カード化し簡略化したといっても、相当な場所を取る
アグリコラやテラフォくらいの広さを確保した方が無難

これまでの18XXシリーズとの大きな違いは、以下の②と③

②株要素が簡略化されている
同シリーズには「他プレイヤーに株券を過半数買われると経営権ごと相手に奪われる」というエグいルールがある
18リリパットではそのルールは不採用となっている
相手プレイヤーと経営権の奪い合いをするようなシビアなプレイ感はない

またそれと関連して、株価の大きな変動・暴落も起こらない
株要素は相乗りや敵対の駆け引きが楽しい反面、ゲームを過度に複雑化させやすい
ここが簡略化されているおかげで、プレイ感はかなり軽くなっている

③アクションはワーカープレイスメント
ワーカープレイスメントシステムを採用している
シンプルで非常に切れ味が良い
心地よいワープレのキツさがある
8ラウンド2アクションずつ、合計16手しかない
「今いちばん必要なアクションをやるには…
無駄にアクションを使うと絶対後悔するぞ…」
真剣に悩むことができる

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アクションスペース
カードに記されている上下のどちらかのアクションが実行できる
たとえば4人戦の場合だと、10スペースしかアクションはないので、「何やったらいいかわからん」となる心配があまりない

以上2点が主なライト化要素

④陣取りのインタラクションはむちゃくちゃハード

ただそれと反対に盤面の陣取りはとてもハードで複雑だ
・どこに鉄道タイルを置くか
・どのタイミングで駅舎を建設するか
これらは本当に悩ましく、相手とのインタラクションも大きい

他の要素を簡略化したぶん、盤面のシビアさが際立っていて、非常にメリハリが利いている

詳細については記事後半でいくらか掘り下げる
まず前半では未プレイ者向けにゲームの概要を中心に記していく


【筆者の背景など】
18XXシリーズはリリパットが初プレイで、筆者はここ2,3年プレイしたいと考えていた
ゲルツの『インペリアル』がマイベストゲームなのだが、友人に
「インペリアル好きなら、18XXシリーズとディプロマシーがお勧めかも、インペリアルは両ゲームをミックスしたような作品なので」
と勧められたため
インペリアルは、大国の債権を買い付けて、軍事行動を裏から牛耳り、戦争を起こして利益を得るゲーム
18シリーズは今回が初だったが、確かにインペリアル的な株と盤面の二重メカニクスはただただ面白く、自分の感性によくなじんでいると感じた

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インペリアル
拙ブログではないが、「ぼどれぽ。」のインペリアル紹介記事がとてもよかったので、以下にリンクを貼っておく


【魅力】
盤面をめぐっての強烈なインタラクションが最大の魅力だ
・鉄道をどっち方面に伸ばすか
・駅舎をどこに配置するか
・新会社をいつどこに開設するか
全プレイヤーの一手一手が、自分に非常に強い影響を及ぼす
交渉ゲームではないのだが、タイルやコマの配置においては
「そこには置かないでくれ!
や、
「いや、ここは俺と協力しよう」
と交渉じみた会話が起こることが多々ある

また、よく見知った者同士に対しては、
(あの人、この手の重ゲーが上手いんだよな…
気を抜くとどこかで裏切られそう、注意しないと‥‥)
とか、
(この人は対人攻撃はあまりしないタイプなはず
こちらから攻撃せずに、できるかぎりwin-winでやっていきたいな)
などの人読み・メタ読みも生じる
そういった思考もプレイに強く影響する
・強いインタラクション
・鉄道要素
・株要素
どれかしらがしっくり来るプレイヤーには強く勧められる

【テーマ】
プレイヤーたちはガリバー旅行記のガリバーとなる
小人の国に行く
ただの人間なのだが巨人族扱いされる

Lilliput/リリパットは形容詞で、視野の狭い、小人、という意味がある

そこで小人(リリパット)たちの経済活動を手伝ったり、邪魔したりする
小人たちの国は産業革命期まっさかり
蒸気の時代
鉄道があちこちに敷設され、機関車が走っている
プレイヤーは外の世界から持ってきた大資本を持っている
それを頭金にして、小人たちに提案する
「我々の資本金50%、小人政府の出資金50%で、半公営の鉄道会社を作らせてくれないか」
そこからゲームが始まる
あなたの鉄道会社は、
・鉄道の延伸
・新しい駅の開設
・より収益の高い列車の購入
なんかをして収益を上げていく
会社の運営方針は、大株主であるあなたが全て決定する
小人たちに口を挟む権利はない
小さい鉄道タイルを、巨人であるプレイヤーが手でつかんで配置していく

鉄道会社がもたらした利益だが、
約半額は小人の企業の内部留保になる
のこりの半額はプレイヤーのポケットに入る
大株主なので
プレイヤーはさらに自社株券を買い足したり、他プレイヤーの株券を買って配当金を増やしてもいい
また、お金を頑張って貯めて2つ目の新会社を開いても良い
8ラウンドプレイし、もっとも多く現金を稼いだプレイヤーが勝利する
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紙幣のコンポーネント
かなりしっかりしたつくり
ただ、収支の動きが煩雑なため筆者らは扱いやすいポーカーチップを用いた

【おおまかなルール】
ゲームの流れとしては、
・メインアクションフェイズ
・収入フェイズ
に2別される
メインアクションフェイズはワーカープレイスメントのメカニクスが採用されている
ワープレのルールで2アクション行う
カタン方式/スネーク方式で、ABCDDCBAという感じで選択する
人気のアクションはすぐに売りきれてしまう
たとえば駅舎の建設は、全プレイ人数でたった1スペースしかない
だから、毎ラウンド1回しか行われない
こうした希少なアクションをめぐって、激しい取り合いと駆け引きが行われる
ワープレのシビアさ、切れ味の良さが存分に活かされている

【プレイ時間、人数】
時間:インスト1時間、プレイ4時間 (初プレイ4人)
→既プレイ者だけでやれば、3人で2時間くらいか

人数:1~4人
BGG曰くベスト人数は4人
ただ、3人でも十分楽しそうではあるし、2人でもゲームにはなると思う

【どんなプレイヤーに勧められるか】
かなりハードなので、2,3時間の重ゲーならだいたいいける、くらいの人間が適している
2ケタの計算が頻繁に行われるので、筆者らの卓では電卓を用いてダブルチェックを行った
また、盤面で殺し合ったり協力したりと、インタラクションは強いので、オープン会などでやるのはリスキーかも
知り合いでやるのが無難と思われる
すごく雑なたとえだが、
「『電力会社』くらいの収支計算だったら全然面倒じゃない、むしろ楽しい
『カタン』で盗賊コマを使って相手をつぶすのも全然胸が痛まない、むしろ超楽しい」
くらいのゲーマーならまさにうってつけと思われる

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電力会社
会社経営、収支計算、陣取りと、18リリパットと似た要素が多い作品

【プレイ感、細かいルール】
以下にBGGの短い記事を訳す
※意訳・改変行っている
※用語の揺れや誤訳などある可能性がある(怪しい語は極力英語併記している)


―――以下原文―――


3回しかプレイしていない
そのうえでの雑感を記す
いちばんの印象は、対人インタラクションの強さ
プレイヤーの我がめちゃくちゃ前面に出る
もしプレイヤーが意地悪くなれば、お互いがかなりエグいことをやれてしまうゲームだ

以下、トピックごとに手短かに所見を記す

(1)株価の動き
単調だ
株価はまず下がらない
一応、相手の持ち企業の株価を下げようとすることはできる

・相手の会社の株券を買う
・株券を売る
の2アクションと費やせば、一応株価は下がる
ただ、重要な16アクションのうちの2アクションも使う価値はおそらくない
相手が被る不利益より、自分の手損の方が大きいだろう

(2)新会社
とても重要だ
プレイヤーは1個会社を持ってスタートするが、資本金として250$を持てると、新会社を開くことができる
たいていのゲームですぐ買われ切る
全プレイヤーは新会社を1個までしか持てないし、人数分の会社があるので、出遅れてもあまり問題はない
序盤は250ドルを早く貯めるためのレースとなるが、普通はだいたい3~5R目くらいに全プレイヤーの準備が整う
ただ、いつ、どこで2個目の会社を開くか
そのタイミングがカギだ
完全に自由な場所にオープンできるので、どこに開くかがかなり難しい決定となる
全員が2会社を持つ3~4R目からが、リリパットの第2のスタートとも言える

(3)鉄道の時代遅れ化/obsolete train
ゲームが進むと、保有している古い電車が時代遅れ化する
1時代遅れたものは稼ぐ額が半額になる
2時代遅れたものは廃棄処分となる
かなり手痛いが、1830のさび付き/rustingと比較すると、多少は優しいルールだ

(4)タイル配置
タイルを配置して、鉄道を敷設していく
リリパットにおいて最も重要なアクションだ
慎重にルートを構築する必要がある
それは元シリーズと同じだ

(5)駅舎の設営
駅舎を設営すると鉄道の収入を増やすことができる
相手との境界線に駅舎を先んじて置くことは、相手に対する大きな攻撃となる
また防御としても重要な一手だ
タイル配置よりも重要度が高いアクションだ

なぜなら、リリパットでは駅舎を建設できるアクションスペースは1個しかない
1ラウンド1個しか駅舎は建てられないのだ
以下のジョーカーアクションによって例外は生じるが、ゲーム中の制限がとても大きいので、その権利の取り合いはなかなか壮絶なものになる

(6)ジョーカーアクション
ゲーム中1度だけ、ワープレのルールを無視して、相手プレイヤーが行ったアクションを実行できる
この権利はとても大事だ
できるだけここぞというときがくるまで温存したい

(7)3Dと4Dの電車
3D、4Dの電車はそれぞれ倍額の収入をもたらしてくれる
D=ダブルという意味だ
最終盤に金が稼げるかどうかでほぼ勝負が決まるゲームなので、この電車を取れているかどうかは非常に重要だ
生命線といっていい
もし3Dと4Dの車輌をもし保有できると、合計で28Stops分の収入がわく
もしこのかたちが取れれば、序盤の動きがどうであろうと、だいたいそのプレイヤーが勝つ

2個会社を持つことをめぐって、いくつかのテクニックがあるので最後に列記する

・2個目の会社を開く瞬間にストック置き場に古い機関車がある場合、フリーアクションで購入することができる
このとき、列車購入アクションを浮かせることができて効率が良い

・機関車2両購入アクションを行うと、2つの持ち会社のプール金を移し替えることができる
これによって、2会社の資金を合体させて、1会社で高価な車両を買う、ということもできる

―――以上原文―――
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まだ言葉が足りないので、もう1個訳す
 
―――以下原文――
※改変行っている


2連戦を一気に行った
もし飲まず食わずで生きていけるなら3連戦でもやっただろう
それくらい最高の体験だった

タイル数には限りがある
特に収益を出しやすいYタイルは2枚しかないから、すぐに売り切れる
最初の黄色タイルはグリーンに、グリーンはブラウンにアップグレードすることができる
アップグレードによって他プレイヤーのパイに食い込むことがでkる

4人戦の場合、8会社が24の駅舎を持っている
でも「駅を建てるべき場所」は24カ所もない

駅舎についてはとにかくインタラクションが大きい
特に新会社設立のときは本当にどこにでも建設できる
制約がゼロだ
新会社によってそれまでの駅の設営プランは無茶苦茶にされる
ワーカープレイスメントの早取りなので
・誰が、いつ、どこに駅舎を建てるのか
・自分にいつチャンスがまわってくるのか
はやや不明瞭である

ただ、守りに回るよりは、駅舎建設については攻勢に打って出る方が良い
他人より早く、良い場所に駅を建ててしまう方が基本的には動きやすい
そして勝ちやすい

アクションのメカニクスはハードなワーカープレイスメント
そういうのが好きな人にはとてもしっくりくるはず
プレイヤー人数×2+2アクション(4人なら10アクション)しかないなかで、各プレイヤー2アクション行う

1回だけ、相手が置いているスペースでアクションできるカードがある(ジョーカータイル)
のどから手が出るほど使いたい場面が何回かくる
ただ、早く使ってしまうと、あとで泣きを見ることになる

18XXシリーズの他のゲームと要領は似ている
・他プレイヤーの会社の株券を買う
・駅舎を置く
・車輌を買う 
すべては16アクションしかないので、1手番ごとがかなり濃縮されたプレイ感になる

18XXの他シリーズのような、厳密なポートフォリオの運用はない
株価は下がることはなく、基本的には安定して上がり続ける
ただ、
・しっかり上がり続けてくれる株券
・高配当を出し続けてくれる株券
を見極められるかはキーになる

相手の株価を下げたい場合、
・他プレイヤーの株券を買って
・売り戻して株価を下げる
というムーブで、2アクションかかる
16アクションしかないゲームであまり行われることはない
ただし、株券の売却は
「どうしても2個目の会社を買いたい、でも250ドル用意できない!}
というタイミングではよく起こる
相手を邪魔する意図ではなく、自分のために行われる

基本的には株の運用や株価の操作の要素は薄い
むしろ
・2社の鉄道会社をうまくコントロールできるか
が勝敗を握っている
あとは、車輌の買い替えを頻繁に行い、他社の車輌を陳腐化する
という動き
筆者らの卓では積極的に行われなかったが、有力なムーブだ

2人戦でも十分機能するはずだ
というのも、マップはカードタイルを敷いて行うから、必要以上にだだっぴろい盤面でプレイしなくて済む
その人数に応じた広さの世界が作られる
プレイ人数の伸縮性が大きいのは、他の18XXシリーズにはない利点だ
あとはアクションメカニクスもイカしている
人数が減るとアクションの選択肢が減るので、もっとキツさが増す

―――以上原文―――

【考察など】
いくつか短めな考察を加えて記事を終える
(1)重ゲーの「カードゲーム化」について
(2)鉄道ゲームのライト化について 


 
(1)重ゲーの「カードゲーム化」について
18リリパットは18XXシリーズをカード化したもの
重量級タイトルを、コンポーネントをカードにすることによって中量級化する、という試みはよくなされている
自分の理解のために、以下のいくつかのタイトルを比較し、共通の特徴などをまとめておく

・18リリパット(18XX)
・サンファン(プエルトリコ)
・ケイラス マグナカルタ(ケイラス)
・電力会社 カードゲーム
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サンファン

結論から言うと、18リリパットはカードのコンポーネントを用いているが、「カードゲーム化」と呼ぶのはとても不適切である

詳細は今回は取り上げないが、筆者は概ね、
「Aという名作ゲームをカード化しました」という作品群は、以下の3つの特徴を有していると考えている

①カードをシャッフルして山札を作る
②カードをドローして手札を作る
③地図やボードなどのコンポーネントが少ない

リリパットでは③の共有ボードの撤廃しかなされていない
単に鉄道タイルや車両タイルと同じものとして、カードが使用されている
山札もなければ手札もない
いわゆる運要素の付加のためにカードが用いられていない
ただ、物理的にはとても軽い

ボードゲームをやる人ならMtGなり遊戯王なりドミニオンなり、そういったゲームに触れたことがある人間が多い
山札と手札とドローの概念は受け入れられやすいのだろう

機能として、カードはランダマイザとして優れている
ダイスのようにひどく目が偏ることはまれで、理不尽感を覚えることが少ない
「多くドローすればそのうちかならず引ける」という安心感はとてもプレイヤーフレンドリーだ
そしてデッキトップからのドローには魔的な魅力がある

余談だが、名作ゲームをダイスゲーム化した作品というのも多い
これについても、共通項やお決まりのお作法が抽出できそうに見受けられる
・私の村の人生
・ロールフォー・ザ・ギャラクシー
・Nations:The Dice Game
など
これらについてはまたの機会に譲る




(2)鉄道ゲームのライト化について 

18XXシリーズをベースに、要素を削ったりアレンジを加えた、というゲームは多い
ここではリリパットと並べて、
・スティーブンスン・ロケット Stephenson's Rocket
・箱庭鉄道 Mini Rails
の特徴を論じる


18Liliput
アクション選択のジレンマが強い
計算が超複雑で盤面も読みにくく、18XXと重さ自体は大きく変わらない
簡略化されすぎておらず、同シリーズの魅力を十分に味わえる

箱庭鉄道/Mini Rails
極限までシンプル化されて、1時間級のゲームとなっている
・鉄道会社とプレイヤーは別々のもの
・鉄道会社を介して、他プレイヤーとの強いインタラクションがある
上記の18XXシリーズに通底する魅力はちゃんと備えている
基本的には良作だと評価できる
ただ、見通しが良すぎるせいで、最終局面には必ず強いキングメーカー問題が起こってしまう
「お前のあのムーブのせいで負けた」とどうしても感じてしまいやすい
多少ヴァリアントルールを入れてランダム性を少し付与するなりした方が望ましいと感じている
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スティーブンスン・ロケット/Stephenson's Rocket (Knizia,1999)
クニツィアの作った鉄道ゲーム
20年前のものだが、今年リメイクされ日本語版が発売された
構造としてはあきらかに18XXリスペクトだが、株券周りのジレンマがクニツィア的で、非常に面白い
最大の簡略化した点は、お金の計算の部分
収入オンリーで支出はなく、ストレスフリーで大変良い
シンプルだが、収入を得る手段が複数通りあり、プレイヤーの所持金は非公開なため、「あいつが間違いなく1位だろう」とマークされたり、過度なキングメーカー問題が起こることは少ない
本当によくできている
計算要素は簡略化されたが、株要素にはクニツィア流のアレンジがかかってい
株券の枚数で競りを行う
競りのメカニクスのプレイ感は『タージマハル』あたりに似た感じで非常に悩ましい
クニツィアの本領が発揮されている
ただ鉄道ゲームの常で、運要素ゼロのアブストラクト
インタラクションも弱くはないので人を選ぶとは思う
とても面白いゲームだったので、遠からず別個のレビュー記事を挙げると思われる
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前回記事ではカヴェルナとアグリコラの比較を行った
今回記事では、主にオーディンの祝祭を取り上げる

以下では、海外のウェブサイト「Hyper Bole Games」の、
そののち、前回記事も含めて考察を加える



――以下原文――
※和訳・改変・筆者の主観の取り入れ行っている
※元記事作成者の主観については「私」主語を、訳者の主観については「訳者」主語を用いた
※改変については、特にデジタルゲームのBrizzardやOver Watchに関する記述がけっこうな分量あったが、すべて省いている
ご興味ある方は原文を読まれることを勧める


どんな分野でも、一流の作り手は固有のスタイルを持っている
ゲームデザイナーにおいてもそれは同じ
私はウヴェ・ローゼンベルクというデザイナーがとても好きだ
彼は多作でありながら、実にシャープで、いつも新作を待ち望ませてくれる

多作であるというのは、裏返すと「前に作ったものを土台に、焼き直しの作品を作るのが上手」と捉えられなくもない

実際に、彼の作品群を以下のような流れとして追うこともできる

軽~中量級のパズル系:
パッチワーク(2014)→コテージガーデン(2016)→インディアンサマー(2017)

重量級のワーカープレイスメント:
アグリコラ(2007)→カヴェルナ(2013)→オーディンの祝祭(2016)
今回は後者の3作品の変遷について触れる

ただ「前の作品を単なる足場にしてステップアップしている」と捉えるのは間違いだ

ローゼンベルクは、単にゲームをスムーズにするだけでなく、満足度を上げている
新作ほど、面白いものに仕上げてきている


私がアグリコラをプレイしたのは何年も前のことだ
当時、漠然とすごさは認識できたものの、熱中はできなかった
いたずらにアグリコラを批判したいわけではない
当時の自分のキャパを超えた作品だった

数百枚とある個別カードの多さに圧倒された
終了時の得点計算が複雑で、難しく、直感的に理解しがたかった
そして、飯の支払いのキツさも相当なものだった


なお、当時はヘヴィーなユーロゲームになじみがなかったというのも大きかったのだと思う
1時間以上のゲームをほとんどプレイしたことがなかった
そういった時期にアグリコラをやるのは、まだ早かったのだと思う


アグリコラのあとには、数年前にカヴェルナ』をやる機会に恵まれた
この魅力にはすぐに熱中した
それから数年のあいだ、カヴェルナは私にとってベストゲームであり続けた

私にとってのカヴェルナの最大の魅力は、ルールの明快さだった
基本資源以外は、全てが勝利点になりうる
どんな建物タイルを取るかによって、自分のアクションと資源がもたらす勝利点が変化する

また、飯の支払いはアグリコラよりはいくらか楽になったのもありがたかった
支払い方がたくさんある
理解しにくくなったり、過度に複雑にならないのであれば、ストレスを取り除く方法がたくさんあるのは良いことだ

カヴェルナはまさに最高のゲームだった
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そして先週、はじめて『オーディンの祝祭』をプレイした
素晴らしかった
これもベスト3に入るゲームだと直感した
プレイ後、どのような体験が自分にとって刺さったのかをたびたび考えた

オーディンはローゼンベルクにとって、進化の最終形であると考えている

ローゼンベルクのデザインは、アグリコラから、微妙でかつ重要な変化を積み重ね、カヴェルナを生んだ
カヴェルナからさらに進化し、そして、ついにオーディンの祝祭という最高到達点に達したのだ

これには感動を覚える

アグリコラ→カヴェルナ→オーディンにいたるまでには、単にゲームが易しくなっただけではない
考える要素は増し、より面白くなった
そして、どんな要素がプレイヤーを幸福にし、苦悩をもたらすかも丁寧に考え抜かれている


ローゼンベルクは、常に制作のなかで挑戦を続けている
より容易で、アクセスしやすいかたちにゲームを作り変えている
ただ不用意に軽くしているのではなく、深さと戦略性を残している
既存の作品の悪い部分は除外したが、頭を抱えさせるジレンマは残している
こうしたディベロップは本当にハードでスマートな仕事だ

アグリコラ→オーディンにおいて、具体的にどのような変化があるか
これを以下の4点を切り口に見ていく

・ワーカー数のインフレ
・適度なストレス要素
・タイル配置ルールのシンプルさ
・定期収入の快感

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①ワーカー数のインフレ/Worker Inflation
アグリコラ、カヴェルナとオーディンの祝祭のいちばんの違いは、ワーカー数の増加の仕方

アグリコラ/カヴェルナでは、2人からスタートしてだいたい4人まで
多い場合は5,6人くらいまで増員する
オーディンの祝祭は、6人から始まり、自動で増員していく
7人、8人と増え、最終ラウンドでは13人に達する
どんなプレイングをしようが、全プレイヤーは必ず同じタイミングで増員する
オーディンを未プレイの方からすると、
「そんなにワーカー数がいるワープレだと、アクション数が増えすぎて処理が煩雑にならないか?
「選択肢が増えすぎて長考が多発したり、ゲームが崩壊したりしないか

こう思うかもしれない
ただ、そんな心配はいらない
オーディンでは、「配置コストもインフレさせる」というとてもエレガントなメカニクスを採用している
各アクションは、横4列のスペースを持っている
4つのスペースは左から1人、2人、3人、4人と固め置きすることができる
同種のアクションだが、大人数を固め置きするほど、一気に良い効果がもたらされる
デカく投資すればリターンも大きい
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元画像はこちら(音声注意)
たとえば第1Rだと、最初は6人のワーカーがいる
各プレイヤーは
4人、1人、1人の3アクションを行ってラウンド終了
みたいな感じになる
もちろん、1人ワーカーをちびちび使って6アクションするのもOKだ
しかし、アクションスペースを早く取りたい、という奪い合いもよく起こる
それに固め置きの方がコスパが良いことも多い
だから、1ラウンド3~4アクション以上行われることは滅多にない

1ラウンド3~4アクション
これはワーカープレイスメント系ゲームの黄金比というか、いちばんバランスが良い手数なのだろう
2,3アクションしかないとちょっとつまらないし、かといって6アクションも7アクションもあると、情報処理能力的にかなり厳しい
訳注:
将棋などはもっと遠くまで手を読み得る構造だが、商業的に売る重ゲーで可能な読みは、毎ラウンド3,4手程度だ
次のラウンド以降の深読みはやろうと思えばできるが、完全にはできないようにデザインされている
ランダム性や情報秘匿、複数人の読みがたい意図が深読みを阻んでいる
こうした不透明さは、プレイヤーを守る機能も果たしている

オーディンのワーカー数は大幅にインフレしているが、アクション数自体はカヴェルナやアグリコラの終盤とそう大差はない

では、アクション数がアグリコラやカヴェルナと同じであるならば、なぜ13人もワーカーを用意する必要があるのか?

まず挙げられるのは、インフレの快感だと思う
増員は成長だ
成長は快感をもたらす
オーディンではラウンドごとにオートで増員するので、快感が生じる
増員できると、3,4人固め置きの強いアクションも複数回打てるようになってくる
この快感は、週末に物価の安いカナダに買い物に行ったとき、USドルで買い物をしたときみたいな快感がある
訳注:
元記事作成者は五大湖のあたりに在住なのだろうか
日本人からすると、東南アジアなどに旅行に行ったときの感じだろうか
アグリコラと比べて、オーディンはとにかくストレスが少ない

アクションスペースによって消費ワーカー数が異なるのも良い
4人置きで大きく投資してがっつり稼ぐか
それとも1人置きを多用して多方面に稼ぐか
ワーカーが増えるほど、多様な戦略を取れるようになる
ただ、過度な複雑さはない
ワーカーコストが4種と多様だからこそだ
たとえば2,3アクションしたあとに、最後に2ワーカーしか持っていないとする
このとき、3,4ワーカーのスペースはみなくていい
現実的な選択肢は数個に絞られる
もし、全スペースが1ワーカーのアクションだと、ラウンドの終盤でもやれるアクションが多すぎて、かなり見通しが悪いものになるだろう
この変更がもたらしたものが大きい

そもそも、初見殺し、初見にとって難しすぎるのがワープレの難点だった
オーディンも、最初から全アクションスペースが解放されているという難しさはあるので、難点はあるものの、数R回せばかなり見通しの良いゲームだと気づける

なお、見通しの悪さ以外には、例外処理の多さなんかも難点として存在する

基本的に、ルールと戦略を考えるとき、人間は一定量の思考スペースしか有していない
ルールが複雑だったり、例外処理が多いと、そこに割く思考スペースが増える
そのぶんだけ戦略を考える余地は減ってしまう
戦略を自分で考えられないと、ゲームの楽しみがぐっと減ってしまう
ルールの処理が難しくなりすぎると、プレイヤーの集中の糸が切れかねないのだ
いちど集中が切れてしまうと、どれだけ面白い要素を持っているゲームでも、その魅力を十分に味わうことができなくなる
オーディンでは、そのターンに何がやれて、何がやれないのかは明白である
また、後述するが例外処理も少ないし、ルールが占める脳の処理量はかなり少ない
多くのゲームではそうではない
「現実的にはほぼ不可能だが、初見プレイヤーにとってはできそうに見えるアクション」というのがけっこうある
それらが並列に並んでいると、プレイヤーのメモリに負荷をかけてしまう

たとえばアグリコラとかだと、
「改築と種まきのアクションスペースが空いている
でも、いま現実的にやれないね
もしくはやるべきアクションではないね」
というようなことがある
この手のアクションのもつ付帯情報は、慣れている人からするとよくわかるが、ゲームに慣れていないプレイヤーにとって自明ではない

これはローゼンベルクのゲーム以外でもよく見られることだ
現実的でなくても、パッと見でできそうに見えると、不慣れなプレイヤーはそういったアクションまで選択肢に入れてしまい、どんどん長考するようになってしまう

オーディンにおいては、そこにも工夫と改善が入っている
オーディンの、各ラウンドの最初のアクションは非常にホット
4人固め置きが連発するし、選択肢も豊富
全員が深く思考する時間帯で、ある程度の長考も起きやすい
ただ、ラウンドの後半になると、徐々に冷えていく
ワーカー数が減るので、やれることも減る
ゲームテンポがスローダウンして考えやすくなる
こういう起伏のある展開になるようにデザインされている
集中すべき時間帯と、考えることが多くない時間帯が交互に来る
メリハリがある
見事だ


②適度なストレス要素 /Do everything, but with shapes

ネガティブな体験
これはローゼンベルクのゲームにつきものであり、魅力でもあった
数ラウンドごとの飯の支払いのシビアさ
食わせられなかったら家族を物乞いに出さないといけないみじめさ

ストレス要素は、多くのデジタルゲームでは極力排除されているが、ローゼンベルクはあえて残している

これは何のためにあるか
初心者にとって、わかりやすいとりあえずの目標になる
これはシンプルだが重要な利点だ
「そうか、とりあえず、次のラウンドまでに食料を取らないといけないのか」
と意識してプレイすることができる
不慣れなプレイヤーが道に迷わないための指針を与えてくれる
そして「飯の支払い」という小目標を達成すると、ちょっとした達成感がある
オーディンの主なストレス要素は、
・飯の支払い
・個人ボードの未使用スペースの減点(ゲーム終了時)

これら2つだ
後者は以下で詳述するが、どちらもハードすぎず、簡単すぎない
ちょうど良い難しさで、達成できるたびにちょっとした達成感を与えてくれる


③タイル配置ルールのシンプルさ
オーディンはワーカープレイスメントのアクションでタイルを持ってきて、そのタイルを個人ボードに配置して気持ちよくなるゲームだ
タイル配置のルールがとてもシンプルなのが良い
脳のスペースを取らないのだ
ルールは以下の5つ

オレンジの4色のタイルがある
同士は接してはいけない
・青は自由に置いてOK
オレンジはボードには置けず、飯の支払いに使う
オレンジをアップグレードすると同じかたちのになる(下級の食品を加工したり交易して上級の資材に変換する)

ルールはこれだけだ
極めて単純
例外処理もない
「飯としてある程度のタイルは残したい
でも緑や青に変えて個人ボードも埋めたい」
とバランスを取る必要がある
ルール理解に割くメンタルスペースが多くない

そしてタイル配置は楽しい
シンプルな快感がある
このゲームでは、個人ボードの空きスペースの分だけゲーム終了時に減点がある
逆に言うと、タイルを置いた分だけ得点があるのとほぼ同義だ
そんな感じだから、バカでかいタイルを取れたときの快感はなかなかのものとなる
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④定期収入の快感  /Perks along the way
逆に、細かくマスを埋めていくのもオーディンにおいては大事だ
マスを完全に埋めきると定期収入が増えるからだ
このパズルはかなり面白い
きっちり詰めておけたときの快感は相当なものだ
プレイヤーは
・バカでかいタイルを取ったときの快感
・細かくマスを埋めたらもらえる定期収入の喜び
これらを天秤にかけて、パズルに挑むことになる

ピースを回転させたり反転させて、どうにかしてきれいに埋める
という作業の楽しさ
これはデジタルゲームではなく、ボードゲームであること
指を動かしてコンポーネントを触って動かすことで得られる本質的な面白さ
ローゼンベルクは媒体の使い方がめちゃくちゃうまい
彼はプレイヤーに広く参加してほしがっている
タイルやコンポーネント全部をかちゃかちゃやって楽しんでほしがっている
オーデンだけに限らず、アグリコラやカヴェルナでもそうだった
ただ、そのさせ方が洗練されてきている


オーディンでは収入フェイズで、飯の支払いと同時に収入がもらえる
食糧タイルや銀だ

タイルをきれいに配置する楽しさ
きれいに配置したご褒美にボーナスが毎ラウンドもらえる楽しさ
そのボーナスをどういう風に使ってもいい自由度の高さ

こういうちみちみと積み重なる楽しさが、オーディンのコアの魅力だと私は考えている

こういうブーストする楽しさは、オーディン以前のアグリコラやカヴェルナでもあった
カヴェルナで、アクションのアシストをしてくれる建物を建てたときの楽しさとか
探索に出まくって戦利品を稼ぐときの喜び
一応用意されてはいたが、このボーナス感を得られるまでの過程が複雑で、あまり直感的でなかったりした

オーディンの方が
・デカいタイルを置ける
・マスを埋めきった
・定期収入が入る
と、プレイと正の感情がすぐに直結している

ーーー以上原文ーーー



【訳者後記】
これまでの2本の記事は、ローゼンベルクの主要3作品についての比較検討のために訳した
前半は
アグリコラvsカヴェルナ
後半は
アグリコラvsオーディン
というややいびつな構成であったが、3作品の比較を行う土壌はひととおり整ったと思われる
後記では、翻訳記事が触れていない点についていくつか掘り下げを行い、記事を終える

(1)ストレス要素の持つ役割
3作品の持つストレス要素と、それがもたらすメリット
ストレス要素① 個人ボードのマイナス点
メリット:ボードを埋めたときの、マイナス点をつぶした快感

ストレス要素② 飯の支払い
メリット:小目標を達成する快感
    :増員に対する歯止め
この2つのストレス要素があり、それらはメリットも持っている
ストレスは作品を追うごとにソフトになりつつあるが、オーディンでも一定のストレス要素は残されている
飯の支払いのもう1つのメリットに、
・アクションの価値の多様化
をここでは挙げる

ワーカープレイスメントはアクションスペースのドラフトだ
基本的には自分にとって価値の高いアクションから先に選んでいく
構造としてはとてもシンプルだ
もし、飯の支払いというデメリット要素がないと、単に自分が欲しいアクションを順番に取るだけのシングルタスクになってしまう
それでは、プレイや展開にあまり起伏が生まれない
飯の支払いによって、プレイヤーは
・強力なアクションを取りなさい
・いついつまでに、○飯を用意しなさい
というダブルタスクを与えられる
こうした、程よい悩みのためにも、飯の支払いは必要なのだと筆者は考える


(2)アクションスペースと個人ボードのバランス


筆者は、2010年代の重ゲーを
・相手とインタラクションする部分
・自分だけで完結するパズルの部分
の2要素の複合体であると考えている
カヴェルナでは、個人ボードのタイル配置がパズル要素
アクションスペースがインタラクション要素だ

アグリコラ→カヴェルナ→オーディンと経るにつれて、
インタラクションの厳しさ・複雑さは減り、逆にパズル要素が肥大していっている
アグリコラの小さい個人ボードと比べると、カヴェルナ、オーディンと徐々に個人ボードは大きくなっていく
逆に、アクションスペースやカードの非公開情報はどんどん減っていく
アグリコラでは、職業・小進歩カードは秘匿情報として各プレイヤーが持っていたし、最初には弱いアクションしか解放されていなかった
場に見えている情報を減らすことで、アクションスペースの苛烈な取り合いに集中してもらうのが意図であったと考える
カヴェルナでは、アクションスペースの自由度は少し増えた
・増員
・探索
・畑
・家畜
・鉱床
といくつかの分かれ道を作ったことで、他プレイヤーとつぶしあうようなことが減った
その代わりのような形で、カヴェルナでは最初から48枚の全建物タイルが公開されている
アクションの取り合いの脳の負荷は減らしたから、代わりに他の情報を入れてもいいだろう
とそういう判断だと思われる
アグリコラ→カヴェルナにおいて
「アクションスペースの取り合いは少なく
最初から公開されている情報は複雑に」
シンプル化と複雑化を同時に行っている
カヴェルナ→オーディンでも、上と同じような変化が起きている

オーディンでは、増員アクションが廃止されている
これは思い切った英断であると考える
増員をめぐる食料支払いのジレンマや、スタPの駆け引きがかなり排除されている
好き嫌いはあると思うが、オーディンクラスの複雑さを持つゲームに仕上げるなら、増員周りをばっさりカットするのは不可欠だったのだと思う

増員をカットして浮いた容量をどう使ったか
オーディンでは、全アクションスペースが最初から公開されている
全アクションスペースの説明を、初心者は受けることになる
これはなかなかハードだ

上記をサマライズすると、
アグリコラ→カヴェルナ→オーディンと経るにつれて、
「ジレンマやインタラクション、複雑なリソース管理の要素は減り、
かわりにスタート時の公開情報と個人ボードの情報量は増えた」
とまとめられる

あとはこの流れに続いて、第4作をローゼンベルクが作るかだが
この路線でいくと、オーディンよりもさらにパズル要素が増え、インタラクション要素が緩くなる
そうしたものが必ずしも必要だとは、筆者は考えない
そこまで行ってしまうと、パッチワークからなるパズル系ゲームの系譜と交差・合流しかねない
ただローゼンベルクは、タイル配置、ワーカープレイスメント、カードと
1つのメカニクスに深く沈潜して追及するタイプのデザイナーだと筆者は考える
彼が新たに何に興味を持って何を作るかには、とても強い興味を持っている


(3)カヴェルナの「忘れられた部族」拡張について
――部族拡張がもたらすのはアグリコラ化?オーディン化?
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最後に、カヴェルナの部族拡張(The Forgotten Folk)がもたらすプレイ感の変化について簡単に記し、記事を終える

最初に要旨を述べると、拡張によってアグリコラのようなランダム要素が若干追加された
かつオーディンのタイル置きのようなシンプルな快感も感じやすくなっている
総じて良拡張であると筆者は考えている

カヴェルナ拡張では、ドワーフ以外の部族が追加されている
・農場を作れないが洞窟はどんどん掘れるマウンテンドワーフ
・探索能力が高いが、飯をたくさん食べるトロル
など、8部族が追加されている
選ぶ部族によってタイル配置やアクションのルールが大幅に変わる
ざっくり言って「マルコポーロの旅路」のキャラ並みに性格差が大きい
部族に合わせた戦略を取ることをプレイヤーは要求される
ものすごくやれること/やれないことに差が大きいので、ドワーフのみのときよりもプレイ感は少し大味となる
競技的に追及してプレイするプレイヤーからはひょっとしたらあまり好かれないかもしれない
ただ、部族ごとの強弱バランスはある程度取れていると感じる
特化した部分がある分、必ず弱体化した部分もあるので、総合得点では拡張なしのドワーフとあまり変わりない勝利点となることが多い

部族拡張によって、以下2点がもたらされたと考える
・セットアップ時のランダム性の増加
・タイルのはみだし置きが多用される

①セットアップ時のランダム性の増加
どちらかというと、この要素によってカヴェルナはアグリコラのプレイ感に近づく
アグリコラ化と換言してもよいかもしれない
前半記事で触れたが、カヴェルナ拡張なしはスタート時の状況はまったく同じであった
それが部族拡張によってスタート時から多様な広がりを持つようになっている
これについては好みだと思う
筆者は個別能力もりもりの2010年代系重ゲーのありようは、個人的にとても好きだし、性に合っている
建物タイルが差し替えとなることもあいまって、リプレイ性の高さが良い
また、もし大負けしても「キャラの相性もあるから」などとゲームのせいにして、イージーで楽しい気分を保つことができる
ストイックに成長を求めるか、ゆるく楽しく、末永くリプレイするのを好むかは人によるが、筆者は後者寄りの人間だ
部族拡張はそういった人間にとってとても楽しみやすいものとなっている

②タイルのはみだし置きの多用
部族の
・人間
・マウンテンドワーフ
・青白きもの
などが、タイルをはみだし置きする能力を持っている
個人ボードからはみ出して配置すると、2金や2石など、けっこうな資源をその場でもらえて、すごくお得だ
これらの部族を使うときは、序盤のタイル配置からすでにけっこう楽しい
拡張なしのカヴェルナは、
・まずタイル配置をする
・その上に部屋や農場を作る
二重の手間がかかるゲームでけっこう大変だった
タイル配置の快感を得られるタイミングはあまりなかった
部族拡張では、最初のタイル配置の瞬間にちょっとしたボーナスをもらうことができる
これがなかなか楽しい
たとえば人間では、畑タイルを配置しまくっている限り、序盤は飢える心配がまずなく、どんどん食糧を稼ぐことができる
タイルを置くたびに得られる愉しさは、若干無理やりだがオーディン的になった、と形容することもできる

まとめ
カヴェルナ拡張はとてもいいのでぜひ買おうね


【次回など】
18Liliput/18リリパットというゲームをさせてもらって、とても楽しかったのでおおまかなレビューを挙げる可能性がある
18XXシリーズ(鉄道会社運営&株式投資のとても重いゲーム)をカード化・軽量化した2018年の新作

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【記事の要旨】
・先日カヴェルナの基本版と拡張版をプレイし、非常に楽しい体験を得た
・アグリコラとカヴェルナでは、プレイ感が似ている部分と異なる部分があると感じた
・また、カヴェルナの基本版と拡張版もかなりプレイ感が微妙に、大きく異なる
 →このあたりの違いや共通点についての細かい掘り下げを主に行っていく


【記事の構成】
文字数の都合で2記事に分ける
BGGの記事の翻訳などもまじえながら、

(1)カヴェルナとアグリコラの比較
(2)オーディンの祝祭とアグリコラの比較
(3)3作品の比較検討

の3編に分けて論じていく

読者としては「上記3作品のどれかはやったことがあるけど、よく知らない」くらいの方を想定している



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(1)カヴェルナとアグリコラの比較検討

というBGGの記事を翻訳する




―――以下原文―――
※意訳・改変を相当行っている
※筆者の考えについては主語を「筆者」と明記している
アグリコラについての記述を茶字カヴェルナについての記述を青字で統一した

似たゲームで、よく比較されることが多いカヴェルナとアグリコラ
これらを複数の視点で切り分ける
それぞれの部分でどちらが優れているかの私見を記す
基本的には、アグリコラを触ったことがあるプレイヤーを想定して書いている


①セットアップ時のランダム性、リプレイ性

アグリコラ ★★★★★
とても豊か
組み合わせの総数がとても大きい
数百枚のカードから14枚を手札に持つ
全プレイヤー別々のカードを持つ

カヴェルナ ★★☆☆☆
まあまあだ
場に並べられた48枚のタイルがアグリコラのカードに相当するのだが、毎ゲーム開始時の状況は同じだ
リプレイ性の高さでは、アグリコラに今一歩劣る
→『忘れられた部族』拡張によって、セットアップ時のランダム性にブーストがかかる
 ちょっとアグリコラ的な楽しさ・ワクワクが増す

②似たゲーム
アグリコラ:
 ・ドミニオン
 ・レース・フォー・ザ・ギャラクシー
 ・ブリッジ
セットアップ時やゲーム途中のカードドローによって展開が多様に変わっていく
配られたカードや、ゲームごとに異なるセットアップ状況を見て、そのつど戦略を決める

カヴェルナ:
 ・プエルトリコ
 ・電力会社
 ・チェス
運要素はほどほどで、自分の狙った戦略を取ることができる
ゲーム開始時の状況はほぼ均一だが、各プレイヤーの取る戦略によってゲームは幅広く展開していく

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③戦略の多様さ、勝ちの狙い方

アグリコラ ★★★☆☆
ちょっぴり単調

序盤=増員&食料基盤の構築
終盤=マイナス点を潰す

やるべきことは決まっている
あまり幅広い展開にはならない
様々なカードを用いて、アクションスペースを奪い合いながら、
・いかに効率よく増員し
・食料基盤を築くか
を競う

アグリコラの得点手段は減点リストを潰すことにある
家畜や穀物、畑や農場などで持っていないものがあると、その都度―1点される
逆に1個でも持っていたら+1点される
1アクションで1個取れば差し引き2点儲かることになる

アグリコラで勝つためには、
・序盤は手数を増やし、食料基盤を整える
・終盤は余った手数でこうした「1個で2点取る」という行動をちみちみ積み重ねる

そういうプレイングが非常に手堅い
もしマイナス点を全部潰せたら、俗に「君主盤面を達成した」といわれる状態になる
これは大変価値が高い
できるようになるだけで中級者とみなされる

減点要素を潰すのが強いゲームなので、ある程度上手いプレイヤーの対局だと、全プレイヤーの最終盤面がだいたいどれも似通ったものになる
好みもあると思うが、これは私にとってはあまり華がないと感じざるを得ない

カヴェルナ ★★★★★
戦略性は高い
どんなやり方でも点が取れる
アグリコラ形式の「マイナス点のチェックリスト」は一応あるにはある
だか、かなりゆるいものになっている
「マイナス点がゼロの君主盤面」を達成するだけなら、カヴェルナなら終了2,3ラウンド前に達成できる
ただ、そこからの点数のブーストが難しい
工夫と経験と知恵が要る
この「終盤に点数ブーストをかけられるか」のひりつきが、カヴェルナの最大の魅力の一つと言える
さらに、持っている野菜や動物の資源数だけ勝利点が入る
アグリコラだと、羊は5頭以上いるなら、10頭いても20頭いても4点だった
それがカヴェルナだと15頭飼えば15点もらえる
カヴェルナでは
「羊は15頭飼ったが、牛は減点回避のために1頭だけ」
みたいな最終盤面がよく完成する
アグリコラと比べて、勝利点のキャップ解放と、減点方式が緩和されたおかげで上記のような変化が生じた
「どうやって勝利点を稼ぐか」はかなりプレイヤーに裁量の余地があり、そこに強い戦略性を感じることができる

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カヴェルナの最終盤面の一例(人間、98点)
アグリコラの場合は、小麦や野菜を何個持っていても4点止まりだが、カヴェルナでは上限がない
写真では小麦+野菜のセットコレクションで、50点近い得点をたたき出している

④第3の要素、探索

アグリコラ:
序盤のアクションは
・増員
・食料基盤の構築
の2択に集約されていた
増員すれば手数が増やせる
食料基盤を作れば、飯を取るアクションの手数を節約できる
手数のコントロールを行うゲームだった

カヴェルナ:
増員、食料に加えて、探索アクションが追加された
未プレイ者に向けて説明すると、序盤に手数を費やすことで「探索特化用のワーカー」を1~2体作ることができる
そいつを成長させておくと、終盤には1アクションで2~3アクション分くらいの活躍をしてくれるようになる
カヴェルナでは、プレイヤーは
・増員はしたい
・食料基盤も構築したい
・余力があるならワーカーも武装させておきたい

と3つのジレンマ(トリレンマ)を抱えることになる
増員=手数の増加
食料基盤=手数の節約
であるなら、
探索強化=1手ごとのパワーの増加
である
手数の管理以外の第3の要素が入ったことで、プレイヤーは適度に「あれもやりたい、これもやりたい」と悩むことができる
このトリレンマが非常に心地よい

探索可能なワーカーは武装ワーカーと呼ばれる
この武装ワーカーをめぐるルールが、本当によくできている

武装ワーカーは、非武装ワーカーが動いたあとに行動できる
「武装したドワーフは、軽装の者より足が遅いから」というフレーバーである
だから、もしもたくさん増員していると、あなたの武装ワーカーは各ラウンドの最後の方に行動することになる
探索ができるアクションスペースはかなり数が少ないので、そのころには探索が難しくなっているかもしれない

だから、もし武装特化で行くなら、4人も5人も増やす増員戦術で行くのではなく、3人くらいの少数戦術で行く方がいいかもしれない

アグリコラに慣れている人からすると、
「増員をおろそかにしてたった3人で行くなんて、回るわけがない、無謀では」
と思うかもしれない
少なくとも筆者は初回プレイのときはそう思った
探索アクションにきっちり入れさえしたら、少人数武装戦術はけっこうよく回る

そう「武装ワーカーは最後に動く」というのは、ほんとによくできたメカニクスだ
増員も武装も両方の良いとこどりをするのは相当難しい
逆に、相手が両方をやろうとし始めたら、カットするのは簡単だ
先に強力な探索アクションを押さえてしまえばいい

このあたりのパワーバランスの調整が絶妙だ
増員と武装のどちらを優先させるべきかは、プレイ人数や相手の出方によってまちまちだ
このあたりの相手とのインタラクションも素晴らしい

おおまかな指針としては、増員特化でいくときでも、多少の武装は必要だ
武装が完全にゼロだと柔軟な動きができなくなるし、逆に相手が過度に動きやすくなる
1,2人は多少武装させる方が無難だ
探索スペースが良いタイミングで空いているときがたまにあるのが、武装ワーカーが1人でもいれば、そういうときに柔軟に動けるようになる
逆に武装特化戦術でも、初期メンバーの2人だけでは回らない
最低でも、1,2人増やすか、ゴブリン(拡張)を雇用して最低限の手数は用意する必要があるだろう


⑤ストレス要素 (悪戦苦闘/チャレンジする感覚)

アグリコラ ★★★★★
アグリコラはストレスが多い
それが最大の魅力でもあるのだが
飯の支払いコストがとにかく重い
飯を食わせるのは大変で、まるで重い税金を支払っているかのような感覚になる
ローゼンベルクはなぜ飯の支払いをプレイヤーに課すのか
単にマゾいプレイヤーを悦ばせるためにあるわけではない
最大の目的は、トップ目の弱体化
モノポリーなどの経済系のゲームでよくある累進課税
資産が多いほど、定期的に取られる金額も増える

増員していれば多く飯を支払わなければならないが、単なる累進課税とちょっとルールが異なる
食料基盤を発達できているかどうかで、飯の支払いのときに被る実害が大きく変わるのだ
食料基盤がないと、支払う飯を得るために、何アクションも費やす必要がある
逆に、食料基盤がしっかりしていれば、ここで消費する手数を減らすことができる

アグリコラの飯の支払いのシビアさ、キツさはなかなかすごい
初心者に勧めるのが大変ないちばんの理由だ
食料基盤を作るには、畑か牧畜を行う必要があるのだが、
畑のためには
・小麦を取る×2
・畑を耕す
・種を蒔く  
都合3~4アクションかかる

牧畜には
・木を得る
・柵を引く
・動物を得る
でやはり最低でも3アクション
これらを別個にやる必要がある

カヴェルナ:★★★☆☆
アグリコラよりは明らかに緩和されている
アグリコラでは畑と柵のアクションが分かれている上に、それぞれに3~4アクションかかってしまったが、カヴェルナではアクションの圧縮がなされている
ざっくり言って、2~3アクションかければ畑に小麦を蒔き、農場に動物を飼うことができる
感覚として、アグリコラのおよそ倍くらいのスピードで食料基盤をつくることができる
アグリコラに慣れたプレイヤーにとっては、
「最初から鋤の小進歩を持っている上に、ゲームの最後にめくれる『畑を耕す+種まき』のアクションも最初からめくれている」
という
それくらいイージーなゲームになっている
そう、カヴェルナは比較的イージーなゲーム
ストレスを感じにくい
ちゃんと手数を費やせば、中盤には一通りの食料基盤を完成させることができる
アグリコラの場合には、ゲームが終わる直前にしかほとんど完成しないのに
アグリコラでは、増員を優先しすぎた結果、最後の最後まで食料基盤が構築できず、漁や日雇いを駆使して食い凌ぐことになるプレイヤーも少なくない
俗に「チャリンコを漕ぐ(自転車操業プレイ)」と呼ばれる
カヴェルナでは、チャリを漕がずとも5人、6人ワーカーを出しても、基本的に飢え死ぬ心配はない
どちらが好みかは人による
アグリコラの厳しさを好む人もいるだろう
カヴェルナくらい緩いのが好みの人も多いと思う
筆者はカヴェルナくらいがちょうどいいと感じる
ただ、アグリコラとカヴェルナの比較記事だからカヴェルナはやや緩めに感じるが、その他のゲームと比べると、そこまでぬるいゲームではない
(後半記事で取り上げるオーディンの方が、ストレス要素はさらに緩くされている)
高頻度で食料支払いを要求されるので、ストレスがまったくないゲームとはいえない


⑥達成感

・序盤に、自分で思考し、「こうやって勝ちを狙う」と選択する
・中盤で、相手プレイヤーとルートが分岐していく
・そのなかで戦略を再度練っていく
・終盤に、自分の狙いを一気に形にする
こういうふうに流れがコントロールされているゲームでは、プレイヤーは起承転結の展開に感情の流れを乗せることができる
すると、ちゃんと最後にプレイヤーは強い達成感を感じることができる
テーマ性ともつながる概念だ

アグリコラ ★☆☆☆☆
テーマ性自体は高いが、特に初見プレイヤーにとって達成感はやや感じにくい
プレイヤーは中世ヨーロッパの中小農家となる
飢えにおびえながら、自分の家族を食わせて、最後には立派な農場を作り上げる
このテーマの再現性は高い
達成感についてだが、初心者は多くの場合、食料か増員のどちらかをミスる
ミスせずにきれいな盤面を達成できることはまずない
そうなると勝利点は一桁点とか、マイナス点になる
ゲームのルール上それは仕方がないし、特に恥じることもない
ただ、そうなってしまうと、空きスペースが妙に多かったり、動物が少なかったりと、終了時の個人ボードがとても寂しいものになる
中盤あたりで、上手いプレイヤーの個人ボードが着々と整えられていくのを見て、「あ、俺これ絶対勝てないやつだな」と悲しい思いをする初心者のプレイヤーもいると思われる
初心者がやって、勝てなくてもなんとなく満足を得たり、楽しかったと思える
アグリコラはそういったゲームになっていない
このゲームの致命的な、構造的弱点だと筆者は感じている
また、おそらくローゼンベルクもその点については強く内省していると筆者は理解する
後続記事で詳しく触れるが、
アグリコラ→カヴェルナ→オーディン
と回を重ねるにつれて、「なんとなく達成感を得られて、満足」と感じられるような工夫が加えられている

カヴェルナ:★★★★★
達成感を得やすい作りだ
初回プレイヤーでも、中盤から終盤までには食料基盤は完成し、農場と洞窟の未使用スペースはだいたい埋められる
中盤には個人ボードを見て一度うっとりできる
そしてそこから、さらに勝利点をもう一歩、二歩引き上げるためにどうしたらいいかを考えていく
だいたい中盤までに完成したボードには6~70点くらいの価値がある
最後に、それを+3~40点引き上げて、100点前後を目指せるかを競うゲームだ
アグリコラは最後まで苦しさが長く続く
展開としてはやや単調だ
反対にカヴェルナではプレイヤーの得る体験・感覚は少し複雑なものとなる

・序盤は食うために畑を耕し、部屋を増やし、増員し、という苦労がある
・中盤ごろに食えるようになる
このあたりで、初回プレイヤーの目の色が変わる
「食えるようにはなったが…ここから勝利点を伸ばすためにはどうしたらいいんだろう」

・終盤は、部屋や家畜などによるブーストがある

終盤にがっつり稼げるかどうかは状況にもよるが、もし最後の伸びが悪くても、初心者のプレイヤーはわりと大きな満足を得ることができる
さらに、
・建物タイルでブーストがかかっている100点級盤面
・単に完成しているだけの70点級盤面
これらの盤面は、ぱっと見では不慣れなプレイヤーからすると大差ないように見える
初心者が勝てなくとも、上位のプレイヤーと遜色ないような個人ボードを作ることができると言って良い
素晴らしい長所だ
「点数は負けたけど、自分の農場はちゃんと豊かになったし、楽しかったし
重かったけど良いゲームだった」
こういった漠然とした達成感、満足感を感じられる
とても大切なことだ
このあたりについては、カヴェルナの方がアグリコラよりも親切で優れていると感じる

最後に:
アグリコラは好きで、飽きるまで膨大な数プレイした
今はカヴェルナの方が正直好みだが、プレイ回数だけでいうとアグリコラには全然かなわない
だからこそ、まだ飽きるに至っていない
ただ、アグリコラとカヴェルナは明らかに別の魅力を持っている
もしアグリコラに飽きてしまったプレイヤーでも「カヴェルナは情熱を再活性化させるだけの何かを持っている」と確信している

カヴェルナについて、アグリコラの
・続編
・正統進化
・完全な別ゲー
・むしろ劣化版?
・改良版?

と様々な声がある
これについて言えることは、単にアグリコラに追加要素を加えただけのゲームでは断じてないということ
また、アグリコラのシステム周りを洗練させただけでもない
たくさんの共通点を持った、同じジャンルの別個のゲーム


要約:
アグリコラとカヴェルナは微妙にアピールする層が違うと思う
だからこそ議論や対立が生まれ、BGGでも「どっちの方が優れているか」とかいうスレッドが乱立する事態になっていると考えられる

アグリコラの長所:
・セットアップのヴァリエーションが豊富
・ゲーム全体がハード
・挑戦しがいのある困難を与えてくれる

カヴェルナの長所:
・戦略のオプションが広い(探索という第3の要素)
・勝利への道筋がたくさんある
・どんなプレイヤーでも、個人ボードを埋めきることができる
・安定した満足感は得られる


―――以上原文―――
次回記事では主にオーディンとアグリコラの比較を行う
訳者の考察などは、後半記事の最後にまとめて行うこととする
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ケイラス マグナカルタ
中量級のバランスの良いワーカープレイスメントゲーム

ワープレ系ゲームの元祖『ケイラス』をカード化し軽くした

プレイして面白かったので、おおまかな雑感やプレイエイド、より好ましく感じたハウスルールなどについて記す

Caylus Magna Carta (2007)
Designer William Attia
Artist Arnaud Demaegd
Publisher Ystari Games + 6 more
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―――――

【プレイした経緯】
中量級のちょうどよいゲームを探していたため
個人的に以下のような需要を持っていた
「スプレンダーやカタンを一緒にプレイして、
ステップアップしてちょっと重いのをやってみたい』
と希望を持たれる方がちょこちょこいる
嬉しいのだが、そういうときに出せる手持ちのゲームがあまりない
・カヴェルナ
・クランズオブカレドニア
・電力会社
あたりはまだ難しいが、ちょっと重め、くらいの
そんなちょうど良いゲームはないかしら」
ケイラス マグナカルタはそういった自分の需要に合致したゲームであった
重すぎず、軽すぎず
ちょうど良い中量級の佳作である
筆者の主観としては、『ヌースフィヨルド』や『ナヴェガドール』と同じような位置づけにある

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ケイラスマグナカルタのプレイ風景
あまり場所を取らない
箱も中箱、新版の『ラー』サイズで、日本のプレイ状況に合っている


なお、ケイラスのディベロップについては
上記の拙記事もなんらかの参考になるかもしれない
ケイラス マグナカルタをディベロップしたウィリアム・アッティアイスタリゲームズ/Ystari Gamesの背景について詳しく触れている

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【おおまかな魅力】
ただのまとまりの良い中量級の佳作、というわけではなく、ケイラス マグナカルタは他の作品にはない個性を持っている

ケイラス マグナカルタの最大の魅力は、その独特なインタラクションと明確なジレンマ

後続の『アグリコラ』やその他のワーカープレイスメント(ワープレ)系ゲームでもよくあるのだが、初期のアクションスペースはけっこう弱っちい
アクションスペースには、アグリコラやカヴェルナのように、資源が累積することはない
また、毎ラウンド新しいアクションスペースが開設されることもない
ケイラス マグナカルタでは、各プレイヤーは資源を使って新しいアクションスペースを建設し、増やすことができる

訳注:累積資源について
ちょびっと話がそれるが、残余スペースに資源が累積する」というメカニクスの起源は『プエルトリコ/Puerto Rico(アンドレアス・ザイファルト,2002)』にあると筆者は理解している
(もっと古いものがあるかもしれないが)
資源の累積とワーカープレイスメントを組み合わせたのが『アグリコラ/Agricola(ウヴェ・ローゼンべルク,2007)』
残余スペースに資源が累積することによって、毎ラウンドの盤面が微妙に変化し、それがワーカープレイスメントメカニクスと非常によくマッチしている

新スペースは、建設したプレイヤー以外の全員も使える共有のアクションスペースとなる
ただし、「誰が建設したか」という情報は保存される
自分が建てたスペースに他プレイヤーがワーカーを置くと、建設したプレイヤーは少しリソースが降ってきて、利益が得られる
ワーカーを置いたプレイヤーが得る利益=一次効果
建設者が得る利益=二次効果
とこのゲームでは呼ぶ
フレーバー的には、土地を持っているプレイヤーが、土地を相手に使ってもらうことで得た不労所得=二次効果ことができる

プレイヤーは、獲得した資源を使って、以下のどちらかを建設することになる
・新しいアクションスペース (資源を稼ぐためのエンジンの強化)
・城やモニュメント (終了時の勝利点)

新アクションスペースを作るときは、単に自分にとって必要なものを作っても良いが、
他プレイヤーに使ってもらうことを前提に建設しても良い
「他人がどんなものを欲しているか」を考えて出店して、繁盛すると儲かる
このプレイ感は新鮮だった
半分協力ゲームのようなプレイ感であり、非常に面白かった
筆者は総じて協力ゲームはしっくりこず、NFMであることが多いのだが、ケイラス マグナカルタのゆるい協力感はかなりぐっと来た
「各プレイヤーが『とにかく自分の儲けを優先』した結果、協力関係が生まれる」という自由経済の縮図のような帰結に好奇心をくすぐられた


また、ゲームとしては、アクションスペースばかり増やしてもダメで、城・モニュメントを取らないと勝利点が稼げない
勝利点も早取りの要素があり、このバランスが良くできている

あとは、(特に序盤は)「あの資源がいま世界に足りていない」というのが必ず生じる
これもデザインとしてよくできている
資源は木、食料、石、資金の4種類と、ジョーカー資源の黄金
初期のアクションスペースは2~3種類しかないので、かならずなんらかの資源は得にくくなる

また、状況によっては、同じようなパワーのスペースが同時に2軒建つときもある
その際は、「あなた、私のスペース使ってくれません?自分もあなたのところ使うので」
と半ば談合のような会話が生じることもある
自分自身がスペースを使うよりも、相手に使ってもらう方が利益が大きく出る
こういう談合が成立すると、その二者は他プレイヤーよりも大きな利益を得ることができる

こういった協力的なインタラクションを生むゲームは、筆者はこれまでプレイしたことがなく、とても新鮮だった


【テーマと世界観】
リメイク元の『ケイラス』と同じ
1289年のフランスで、国境の村「ケイラス」にあなたたちはいる
あなたたちは職人ギルドの親方で、数人のお抱えの職人(ワーカー)を引き連れている
イメージ 2
実際のケイラスの街並み
山あいの城塞都市

時の国王は以下のような命令を下した
フランス王フィリップ4世
「ケイラスはフランス国境の田舎町だ
他国との戦で優位に立つために、ここに城を作りたい
職人である君らには城と城下町の設計・建設を任せる」

建設計画にもっとも寄与し、名誉を得たプレイヤーが勝利する
なおマグナカルタは、イギリス王国とおそらく関係はなく、グレートカードくらいの意味だと思われる
「偉大なカードゲームとなったケイラス」というイメージ


【人数、時間】
インスト込み2時間
2~4人だが、4人以外でのプレイは推奨しない
なかば協力ゲーム的なインタラクションなので、2人だとこのゲームの魅力を十分に味わうことができない
3人の場合でも、交渉から外れたプレイヤーが悲しい目をみる可能性がある


【どのようなプレイヤーに勧められるか】
4人卓で最大の魅力が引き出されるので、4人集められることが大前提となる
古めで、シンプルだが、相手と殺し合うような要素は大して無い
ワーカーが飢えて死ぬようなこともないので、厳密なリソース管理は求められない
1時間級のゲームができるプレイヤーであれば問題は無い

流通はあり、2019/4現在では4000円前後で購入できるはず
和訳ルールはインターネットでダウンロード・印刷が可能


【詳細なルールなど】
ウィリアム・アッティアによる元ゲー『ケイラス/Caylus(2005)』と比べるとおおざっぱに、以下のような変化がみられる

・カードデッキと手札の程良い運要素
・簡略化されたシステムとコンポーネント
・ゲームボードがなくなったことで物理的に軽く小さくなった
・プレイ時間の短縮

両ゲームの相違点をまとめた記事がBGG にあったので、自分の理解のためにも和訳し転載しておく

※筆者はケイラス未プレイであり、誤訳含む可能性あり
※以下、ケイラスマグナカルタをCMCと表記する
※訳文の茶字で示した感想の部分も、元の記事の著者が記したもの

―――以下訳文―――

「ケイラスのファンによる、ケイラスとケイラス マグナカルタ(CMC)の比較とレビュー」

(1)プレイ時間はCMCの方が明らかに短い
(2)CMCでは威信トラック/Favor trackがない
(3)CMCでは布(紫色)のキューブがない
(4)CMCは4ワーカーでプレイする(ケイラスは6ワーカー使う)
(5)アクションを打つコスト感はCMCの方がやや軽い
(6)スタプレアクションがCMCでは消えた(CMCでは単純にラウンドごとに時計回りで変わる)
(7)CMCではアクションフェイズで「建設アクション」を別個にできる(ケイラスでは大工のアクションスペースにワーカーを置くと建設できた)
→全プレイヤーが好きなタイミングで建設できる
これは個人的には良い改変だと感じている
「大工のスペースが延々空かず、やりたい建設ができない」という悲しみがケイラスではあった
逆にCMCでは自分の計画通りのタイミングで建設ができる

(8)ケイラスと違って、CMCでは大工、石工、建築家のアクションスペースはない(邸宅を建てるための法律家のスペースはある)
(9)CMCでは建物カードをデッキからドローしてそれを建設する
→デッキや手札のコントロールはケイラスではまったくなかった要素で、興味深い

(10)ケイラスでは、他プレイヤーがアクションを使ったときの二次効果は勝利点
CMCの二次効果は少なめの資源
これも良い改変だと感じる、好ましい

(11)土地管理人はCMCにはいない
(12)Royal Favorは廃止され、かわりに「そのラウンドでもっとも多く城トークンを得たプレイヤーは1金塊を得る」というルールに改変された
(13)もし同数タイのトークンを得た場合、ケイラスでは「城にワーカーを置く」というアクションで1位を決めていた
CMCでは単純にパス順で先のプレイヤーが1位扱いとなる
(14)CMCでは城のトークンを得るためのタイムリミットが存在しない
城トークンが場から完全になくなるとゲームが終わる
誰も城を取らないと、城トークンは2個ゲームから除外される
→このルールは正直いまいちだと感じている

(15)CMCでは
・カードをドローする
・手札を全て捨てて、同枚数引き直す
の2アクションが追加された
カード化のために生まれた新アクションである


―――以上訳文―――


【ハウスルールと問題点】
BGGのオーサーも書いていたが、城トークン周りのルールがちょっといまいちなように感じた
筆者らは何回かプレイし、以下のように改変するハウスルールを作った

・元のルール
城トークンは勝利点4点、3点、2点の順で買うことができる

・ハウスルール
城トークンは勝利点2点、3点、4点の順で買うことができる


城トークンは、木・食料・石を1個ずつ、3資源を消費して得ることができる
このゲームはテーマとしても城を造るゲームなので、重要な得点源として位置づけられている

以下、変更理由や変更によってもたらされたプレイ感の変化などについて記す
変更前は、ゲームの収束性が悪かった
最序盤で4点のトークンが取れると、その際にもらえる1金塊も合わせると実質3資源5点行動になる
(金塊はジョーカー資源であり、終了時1勝利点扱いとなる)
3資源5点というのは、このゲームにおいてバランスブレイカーレベルの効率の良さを誇る
これをもし、スタプレなどの巡りが良かったプレイヤーが出て、序盤に2,3回やってしまおうものなら、10点、15点行動になる
このゲームはざっくり40点くらい取れれば勝てるような点数感なので、最初の10点の差は冗談にならないくらい大きい

序盤差をつけられたプレイヤーが、もし終盤にがんばって城トークンを買い集めた場合、逆にゲームが早く閉じてしまう
エンドトリガーを早く引くことになるので
だから、序盤に走ったプレイヤーが勝ってしまう
むしろ、負けているプレイヤーほど、城トークンは逆に買わなくなる

城を買わずにモニュメントを建てに行くのだが、あまり差は縮まらず、ただただゲームが間延びしてしまい
最終的に収束性が悪く、徐々に「これ、いつ終わるの…」という空気が蔓延し始める
全員がやや不快な思いをする
こんな悲しい状況がたびたび生じた
以上がルール変更前の状況

ルール変更後では、終盤になるほど効率の良い4点の城トークンが残る
「効率の良い終盤の4点トークンが欲しい
でも、序盤に安い城トークン+金塊をもらっちゃうのもアリ」
とほどよいジレンマを味わうことができる
相手より金塊を多く持っていると、モニュメントを建てるときなどでゲームをリードしやすいからだ

・序盤に城トークンを取ってちびちび金塊を貯めて、バランス良く動く
・終盤まで資源を貯めて、効率の良い城トークンを一気に集める

の2択となり、終盤にも緊張感を持ってプレイすることができた


その他のハウスルールの案としては、
・青のモニュメントが建てきられた場合でもゲーム終了とする
などの、エンドトリガーを増やす改変を行っても良いかもしれない


変更によって生じた難点:
教会のアクション(現金を消費して城トークンを買う)が強化されてしまう
→この改変をやると絶対起きてしまうことで、ちょっと防ぎようがない
 もしプレイヤー全員の同意が取れれば、現金コストを1ずつ引き上げるのもアリかもしれない


【考察など】
いくらか私的な考えの掘り下げを最後に行う
城トークン周りがプレイ感を損なっているのは瑕疵だが、総じて非常に良くできているゲームであると感じた

特に、アクションスペース周りのプレイ感は非常に面白い
プレイヤーは、資源を使ってアクションスペースを建てることができる

他プレイヤーがほしがっていそうな強力なスペースを建てると、他プレイヤーのワーカーが働きに来てくれる
他プレイヤーはそのスペースで資源を生産するが、使用料としてプレイヤーにも資源を分けてくれる

このインタラクションによって、以下のように序盤/中盤/終盤で、起伏に富んだ展開が生じる


(1)序盤:建設ラッシュ
最初はワーカーを働かせるスペースそのものが足りないので、とにかく建設ラッシュが起こる
アクションスペースが少ないので、弱いアクションでもなんでも、建てればどんどん利用してもらえる

(2)中盤:アクションスペースの飽和
1プレイヤー4ワーカーしか持っておらず、増員ができるゲームではないので、最初の2,3ターンの建物ラッシュが終わると、今度は逆にアクションスペースが余り始める
みんなが建物を建てまくった結果、中盤は「この先しばらくは、建物を建てても利益がないぞ」とみなが気づく
そうあんると、建物はあまり建てられなくなる
資源は建物ではなく、城トークンやモニュメント建設のために用いられるようになる

(3)終盤:アクションスペースの閉鎖と、再度の需要の高まり
モニュメントを建てるためには、自分が作ったアクションスペースを一度潰す必要がある
・自分のアクションスペースを、「法律家」のアクションで裏返して邸宅にする
・邸宅の上に名誉ある建物(モニュメント)を建てる

という2段階のアクションを行うことでモニュメントを建設でき、大きく勝利点が稼げる
なお、邸宅にしておくと毎ターン1金収入をもたらしてくれるが、モニュメントにしてしまうと特殊効果を持たないただの勝利点建物になる
現金収入のために、終盤まで邸宅にしたままにするプレイヤーも多い

中盤は、モニュメントや邸宅を建てるために、あまり人気のないアクションスペースは次々と閉鎖されていく
そうすると、かつては飽和して余りまくっていたアクションスペースが今度は逆に数が減ってくる
「これ、逆にもう一度アクションスペースを作って儲けるのもアリなのでは?」と、建設フィーバーがもういちど生じることもある


こんな風に、ゲームの序盤・中盤・終盤でプレイヤーの欲望が丁寧にコントロールされている


【自由経済と計画経済】
プレイヤーたちは場の需要と供給量に敏感に反応して、経済行動を決定していく
需要があるようならプレイヤーたちはアクションスペースを勝手に増やす
逆にスペースが飽和して需要がなくなれば畳まれる
畳まれたスペースは現金収入のための邸宅や、勝利点のためのモニュメントに転用される
こんな風に、需要と供給に応答して、柔軟に生産量がコントロールされている
自由主義・資本主義経済の縮図といってもいい

これの反対となるのは、共産圏の計画経済
プレイヤー(市民)の需要に柔軟に対応するようなこてとはせず、政府(ゲームシステム)の決めた計画通りにゲームが展開していく
アグリコラなどはけっこうその要素が強い
毎ラウンド新しいスペースが開放され、増員のタイミングも厳密にコントロールされている
ラウンド数も14ラウンドと決められている
アクションの自由度が高いゲームではあるが、ケイラス マグナカルタのような『羊を欲しがっているプレイヤーが多いから、逆に俺が羊市場を開こう』というようなムーブはできない
あくまでゲームシステムが敷いたレールの上での自由度である

厳密にコントロールされたアグリコラなどとは真逆で、ケイラス マグナカルタには別種の自由さと雑さがある
わりとざっくりしている
アクションスペースはプレイヤーたちの意図で増減する
ラウンド数も規定されておらず、プレイヤーたちの意図によって伸縮する

この可変性と緩さは、筆者にとって大きな魅力を持っていた
すごく失礼なことを言うが、「こういう風にプレイヤー間で自由に経済活動をさせるゲームであれば、バランス調整もあまり難しくないのかも」とも感じた
アグリコラのディベロップ裏話で「最初の4ラウンドのゲームバランスを調整するのに丸半年かかった」という逸話がある
それだけ緻密なディベロップをしたからこそ、厳密にコントロールされた名作に仕上がったという
ボードゲームと政治を結び付けるべきではないが、ソ連の計画経済では衣服やボタン、文房具にいたるまで生産量が計算され、調整されていた
その厳密な計算のために膨大なリソースが消費されていた

ローゼンベルクがよく作るゲームは以下の特徴を持つ
・ラウンド数が固定
・アクションスペースも厳密に計算されている
・非常に丁寧に、バランス良くディベロップされている
上記の特徴を持つゲームは計画経済的、と形容できるかもしれない

それと真逆のケイラス マグナカルタのようなゲームは自由経済的/オープンワールド的と形容できる
自由経済的なゲームを他に挙げるとすると、競り系のメカニクス全般もそれに該当する
交渉や他プレイヤーとの意図の読み合いが特徴的と言える

自由経済的なゲーム、場合によって収束性やゲームバランスを悪くさせる可能性があり、やや危険だとも思われる
現にケイラス マグナカルタは収束性について、なかなか危うさを持っている
元ルールでプレイすると、逆転が難しい状況でゲームが無駄に長引く可能性を持っていた

反対に、2010年代の重ゲーは、収束性が良くギスギスしないことを重要視したものが多い
「細かい部分の詰めはあえて行わず、プレイヤーに投げる」というのは、ちょっと古いゲームならではのプレイ感で、筆者はかなり好ましく感じている


シンプルなルールだからこそ、ゲーム製作的な視点から見ても、面白い教材だと言える

・CMCを2,3人ゲームででも十分機能させるにはどうしたら良いか
・もし増員アクションなどを導入したらどうなるか

などをやはり考えてしまうし、考えさせるだけの余白があるゲームだ

またCMCの構造を抽象化すると、
①ワーカープレイスメントで、アクションスペースを協力ゲームのように利用し合える
②勝利点手段の早取りレース(城トークン、モニュメント)

この2メカニクスの融合と捉えることができる
②の勝利点手段の早取りの部分を、もし別なメカニクスに改変したらどうなるのか
などもつい考えてしまう

シンプルだからこそ想像の余地の多く、大変好ましく感じた


【次回記事など】
カヴェルナを先日初プレイし、ただならぬ魅力を感じた
アグリコラを初めてやったときの衝撃に近いものを受けた
それ以来熱中して繰り返しプレイしているが、プレイするごとに言語に落とし込めていない感情やあいまいな思考が蓄積しつつある
作者のローゼンベルクはグリコラ→カヴェルナ→オーディンと作品を重ねてきた
これら3作品は代表的な重量級の名作で、共通点と相違点とを持っている
彼は作品を重ねるなかで、何を保存し、何を変化させてきたのか
そのあたりを掘り下げる記事を遠くないうちに挙げる可能性がある
年度代わりで時間が取りにくいため、少し長くかかるかもしれないが

イメージ 6

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