2018年07月

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メガシヴィライゼーションという重ゲーを夜通し行う会に行ってきたので、このゲームについての雑感をざっくり記す

今回のオールナイト会は2018/07/21に大阪は谷町のボードゲームギルドで9人戦で行われました
主催者の方、参加者の方、取り仕切ってくれたお店の方には、この場を借りて感謝申し上げます
非常に楽しく、得がたい体験ができました



―――


非常に規模の大きいゲームであるので、いくつか焦点を絞って記載します
基本的には私的な備忘録です

ただ、このゲームで検索しても得られる情報があまりないため、本記事が「メガシヴィの情報ないかな」と検索される方にとって多少の利益となれれば、とも考えています
(2018/7時点ではググってパッとでるものは
があります 
興味ある方はそれらも参照のこと)

以下、メガシヴィライゼーション/Mega Civilization 大いなる文明の曙
を「メガシヴィ」と表記します


本記事では
・おおまかに言ってどういうゲームなのか
・どういう人物にお勧めできるか

・ゲームの構造やメカニクスで面白いと感じた部分
・自分にとって面白かった部分/イマイチと感じた部分

についてフォーカスして記載する



 ・おおまかに言ってどういうゲームか

5~18人用の超重量級ゲームです
今回は9人戦で、11時間半で決着しました

超古代文明を操って、繁栄させていくテーマなんですが、
ゲームは、下位構造から順に

(1)世界地図で自分のコマを増やしていく
(2)増やしたコマを使って都市をつくる
(3)都市から交易カードを引いて、交易カードのセットコレクションを狙う
(4)交易カードを消費して研究カードを取る
(5)ASTトラックを進めていく


という4~5個のレイヤーに分かれる
…まあ、これだけでは説明になっていません
非常にわかりにくいので、アグリコラに例えると、下図のような感じになります

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余計わかりにくくなるかもしれませんが、メガシヴィは進歩カードの重要性を超高くしたアグリコラって感じです
進歩カードを取らないと、基本は勝てない
進歩カードは小進歩、大進歩に加えて、大進歩よりコストが重い巨大進歩もある
合計3種類の進歩カード
そういうアグリコラを想定してほしい


そして毎ラウンド開始時に『あなたは優れた農家なのかどうか』のチェックが入る
・進歩カードを必要枚数出せているか?
・ワーカーが必要人数いるか?

でチェックされる
ここで『ダメです』と判定されると、「優れた農家トラック」で前に進むことができない
足止めを食らうことになる
この「優れた農家トラック」を一番最初に15マス進めたプレイヤーが基本的には勝利する
(例外もあり、進歩カードを多く出せている2~3位プレイヤーが逆転勝利することもある)
このチェックに受かることがこのゲームでは超大事で、極力足止めは食らいたくない


「優れた農家」トラックのチェック、最初はゆるゆるだが、だんだんハードになっていく

レベル1:小進歩カードを3枚持っている
レベル2:ワーカーが3人以上いて、かつ大進歩カードを2枚持っている
レベル3:ワーカーが4人以上いて、大進歩カードを3枚持っている
最終レベル:ワーカーが5人以上いて、巨大進歩カードを2枚持っている

上のように、条件がだんだん厳しくなっていって、息切れして足が止まるプレイヤーが出てくる
そして終盤突っ走るプレイヤーも出てくる

では、進歩カードをどうやって出すか

資源コストを払って出す

このゲームでは資源はカード
カードでランダムで引いていく
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資源カード
ワックス、セラミックス、ガラス、銅、銀など
とにかく豊富な種類の資源がある

その資源の種類がアグリコラの4~5倍ある感じ
ワーカーは資源をもたらしてくれるが、何をくれるかは選べない
そこはランダム

進歩カードを出すにはどんな種類の資源でもいいのだが、資源のパワーが足りているかが大事

同じ資源を何枚も集められると、進歩カードを買うパワーが超高まっていく

同じ資源を頑張ってかき集めるのが超大事なゲーム
セットコレクションのゲーム

たとえば5パワーのカードを1枚だけ持っていると5パワー
でも、同じ5パワーをもし4枚集められると80パワーになったりする

で、進歩カードは100パワーとか200パワー貯めないと買えない
しかし、持てるカードは毎ターン8枚まで減ってしまう

普通にやると永遠に手札のカードを揃えられない
ここで交易をおこなう

これがメガシヴィ最大の交渉要素で、正直にいうと、記事作成者にとってはちょっとしんどかった部分
(ここについては後半で掘り下げて記述する)

交易では、
・自分の揃えたいカードを相手からもらう
・そのかわり、相手が揃えたいと思っているカードをあげる

基本はこうやってウィンウィンの良い関係を作る
そうしてパワーを貯めて、進歩カードを取る
「優れた農家トラック」を前に進めていく
最も優れた農家になれれば勝ち

とまあ、こういうゲーム
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再掲
「ASTトラック」が「優れた農家トラック」にあたる


 ・どんな人に勧めるか?
重ゲーがやりたい人なら、1回はやってみると良いかも
戦略性はそれなりにあり、能力の差と経験の差が出てしまうゲームではある
ただ、それ以上に運要素・不確定要素も大きい
「運要素大きめのパーティゲーム」と割り切って遊べば、かなり楽しめると思う
超長時間のパーティゲームとしては「フンタ」が挙げられる


「フンタ/Junta」とメガシヴィの類似性について
「フンタ」はけっこう重く、長時間を要する交渉ゲームなのだが、やってみると「あ、これは真剣にやるもんじゃないわ、バカゲーだw」と気づく
バカゲーというのは蔑称ではなく、
「真剣にガチでやって、しんどい思いをして関係を損ねてしまうのはバカらしい
それよりは多少気を抜いて、一緒にプレイする7~8時間を楽しもう」
と思えるような、そういうゲーム
テーマとしてもバカげていて、プレイヤーは中南米のギャングの親分
カードテキストも
「アカの暗殺者に急に殺される」
「愛人宅でシケこんでたら寝こみを襲われる」
みたいな気の抜けたフレーバーテキストばかり
随所に遊び心がある
プレイヤーたちは
「僕大統領だけど君には1$も分配しませ~~ん」
「クソが、クーデターじゃ!!」
「あ~~暗殺された!クソが!!」
みたいな感じで、見知った者同士でやれば、まあ盛り上がる
「7,8時間を費やしてプレイしたゲームはどういうゲームでも面白い」という認知バイアスもかかって、なかなか楽しくプレイできる
さらに、それだけの時間を同じゲームに費やすので、プレイ後に妙な連帯感が生まれ、仲良くなる
「フンタ」はそういった魅力を持っている
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フンタ
ギスゲーの代表格とも呼ばれますが、酒でもやりながらプレイするべきパーティゲーだと自分は感じています

メガシヴィライゼーションも、基本は上記のような特長を持っている
ガチの交渉ゲーとして遊ぶよりも、バカゲー、パーティゲーとして遊ぶことが推奨されているように思われる
多人数で長時間かかる上に、かなりの運ゲーである

後述するが、「アグリコラ」でいうワーカーが資源を持ってきてくれるのだが、資源カードのなかにけっこうな割合でハズレ、ババがある
災害カードである
災害カードがこのゲームの運ゲー感を強くしている
最大の魅力でもあるが、好き嫌いが分かれるところでもある

・その災害カードを運悪くドローしてしまうかどうか
・他プレイヤーに災害カードを押し付けられてしまうかどうか

これは運要素と、他者の意図やヘイトに依る部分が大きい

ただし、「メガシヴィは運ゲー」というわけではなく、戦略要素も大きい
経験を積んだプレイヤーは巧みに不運をはねのけ、ヘイトをコントロールし優位状況を作っていく

・コントロールしきれない他者の意図
・乱数の波
それらを乗りこなす快感も味わえるのだと思う
(記事作成者はそれらの荒波におぼれ、道半ばで1位を諦めたが)

【9人戦のながれ】
今回の9人戦は、初回プレイのペルシアのお兄さんが飲み込みがはやく順調な立ち上がりで、しかも非常に幸運にめぐまれ、序盤は災害をほとんど受けず突っ走った
それを追うように手練れのパルティアのお兄さんが2位につけていった
というのが序盤~中盤の流れだった

幸運なペルシアとは真逆で、パルティアは序盤から終盤まで災害を頻繁に受けていた
運に恵まれる初心者と、知略を活かしてそれを追う経験者
記事作成者はそれを横からみる傍観者であった
ペルシアは次第に災害を食らい、他プレイヤーからの交渉も成立しづらくなり、孤立し、苦しい展開となっていった
最終的にはパルティアが資源カードを上手く運用し、要所要所で研究カードをしっかりと取り、ASTトラックを着実に進め、逆転1位となった

運要素もあるが、戦略性も十分にある良ゲーだと感じました

初見プレイヤーと経験者で楽しみ方がまったく別のゲームになる
そして、初見と経験者を同じ卓に混ぜても、きちんとゲームになる
「みんなちゃんと楽しめる」というのは素晴らしい長所だと感じる

今回の9人戦も、終盤は上位3名と下位5~6名がはっきり分かれてしまっていたが、どのプレイヤーもそれなりに楽しくゲームエンドまでプレイできた
下位層では
ドラヴィダ「まあ下位同士仲良くやりましょう」
マウリア「そうっすね、ウチらは下位同盟で行きましょうw」
みたいなやりとりがあり、わきあいあいと楽しそうにしていた
上位層も終盤のヨセは難しいらしく、自分の手持ちカードと研究カードコスト表(購入コストの一覧)を交互に見つめ、考え込んでいた



 ・ゲームの構造やメカニクスで面白いと感じた部分

育てている文明に対して強い愛着と興味がわく
のは得難い長所だと感じます
記事作成者はアラビア半島の「シバ王国(オレンジ)」でプレイしたんですが、ゲームの後半ではシバが土地を増やしたり、ASTトラックを進めるたびに「俺のシバ王国が発展している!」と強い喜びを覚えました
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アラビア半島周り
オレンジのシバ王国は、南方に青のヌビア、西方にグレーのバビロン、そして北方は紫のペルシアと接している
序盤は悠々と領土拡張できるが、中盤からは他国との国境争いに明け暮れることになる

そして徹夜明けで帰宅していちばん最初にしたのが、自分の担当した「シバ王国」という国がどういう文明だったかを調べることでした

フレーバー的には、1ターンで1000年が経っています
15ターンで15000年

その15000年のあいだに、民族が大移動したり、興亡したり
特殊技術を取った国が繁栄したり、逆に災害を受けて衰退したり
他民族と戦争したり、ときに共闘戦線を張ったり

そういったTARITARIをやりながら、12時間一緒にプレイしていく
ゲーム終了後には、「ともあれ、このゲームをみんなで完走しきった!」という強い連帯感、友愛の情、人類愛を他者に対して感じます
これは「フンタ」のプレイ後の連帯感に非常によく似ています
こうした連帯感を感じやすいのはアナログゲームの良い特徴であり、記事作成者は大変好ましく感じています

ガチになりすぎると非常にギスギスしますが、「基本は運ゲー、ロールプレイするパーティゲー」と割り切ってやれば、プレイ時間に見合った楽しさは得られると思います

ただ「パーティゲーと割り切って遊ぶのはなかなか難しい」と感じます
というのも、メガシヴィはバカゲー、パーティゲーとして遊ぶにはちょっとメカニクスやフレーバーが、しっかりとしすぎている

「フンタ」のテーマは中南米のマフィアになってグラサンかけて暗殺や横領をやること
まあバカバカしさが伝わってくる

メガシヴィは、ゲームの中~終盤までは、パーティゲー寄りの設計ということに気づけないです
パーティゲーではなく戦略級のゲームとして遊ぶとなると、ちょっと自分は精神がもたないな、と感じました


――
このあたりから記事作成者の個人的な感想が増えていきます
できるだけ客観的に記述することを心がけましたが、メガシヴィが好きな方は、読後不快になる可能性もあります
自己責任でお読みいただければ幸いです
――


 ・自分にとって面白かった部分/イマイチと感じた部分
世界地図の盤面で、プレイヤーたちの文明が発展・衰退していく様をみるのは楽しかったです
研究カード同士も相性やシナジー・コンボがあり、それについて深められそうな部分も良いなあと感じます


【個人的にしんどかった交渉】
イマイチと感じた部分は、交渉・交易要素

これが自分にとってストレスフルで、ひどく疲れてしまった
人付き合いを強制させられるうえに、自分の利得を求めると相手をだましてゴミを押し付けることになる
どうしたらいいのか指針を得られず、終始非常に辛かった

ドローした交易カードでセットコレクションをやるのだが、自分がドローしたものだけでは足りない
他プレイヤーとカードを交換し合って同じ資源を集めることになる

交換タイムは6分とか10分とか時間を決めて行う
(今回は10分までとした、だいたい8分程度で終わることが多かった)
完全自由の交換タイムなので、はじまるや、以下のような状況になる


クシャナ「シルバー、ハーブないですか!!」

バビロン「セラミック、パール~!!」

ペルシア「ブロンズ、セラミック!!」

という風に、各人が欲しいものを叫び始める
場が一気に魚河岸競り市場みたいになる

そのうえで
ヌビア「あ!自分シルバーあります」
と交渉が始まる
クシャナ「シルバー何枚ありますか」
ヌビア「1枚です」
クシャナ「何が欲しいですか」
ヌビア「パール、ハーブ、ブロンズが欲しいです」
クシャナ「ブロンズ出せます」

みたいな感じで進んでいく
カタンの交渉を、同時多人数でやる感じ

これだけでも、正直自分にはちょっと厳しい
いきなり魚河岸市場が始まると面食らってしまう

こういうたとえはよくないのだけれど、営業マンになって良く知らない相手と名刺交換か何かをさせられている気がしてしまう
ひどく気疲れがする

シバ(自分)「シルバーはないですか」
ペルシア「‥‥ないですね~、ブロンズはないですか」
シバ「ないです‥‥セラミックは」
ペルシア「ないです」
シバ「そうですか…そしたら、いったん交渉はナシにしましょうか」
というようなやりとりも頻発する

文字にすると別段大したことではないのだが、これが起こるたびにいささかの申し訳なさを感じ、人付き合いの際に消費する心のMPゲージ的なものがすり減る

※心のMPゲージ
以下では、メンタル面の体力のことをメンタルポイント:MPと便宜的に呼ぶ


自分は多くないMPをだましだまし運用して日々の生活や仕事をしているので、趣味のゲーム会でMPを急に削られると、面食らってしまう
おいおい勘弁してくれよ、生活で使うMPがなくなってしまうじゃないか、と

そして交渉の場がけっこううるさい
記事作成者の個人的な主観なのだが、「複数人が大声で叫んでいる場に存在する」というのも、精神衛生上良くないようで、MPを常時消費していく
毒の沼地みたいなもので、そこにいるだけでじわじわMPを削られていく
大規模な飲み会とかが得意でないタイプですね

まあそれはいいとして、さらに記事作成者は、自分は交渉ゲームが好きなんだと考えていたのだが、メガシヴィをプレイして、自分の考えている交渉の定義がかなり狭いものだと理解した

自分の考えていた交渉:
3~5人くらいで卓を囲んで、
「ここは自分の利をくれ、かわりにこれをあとであげるから」とゆっくり話す
ヤルタ会談で世界地図を広げてチャーチルとスターリンがバチバチやっているような感じ
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インペリアルおじさん3人衆 (ゲルツの『インペリアル』の箱絵)
このおじさんたちの土地の割譲案を考える姿は、見ていて良いなあと感じますね

メガシヴィの交渉も、定義上立派な交渉なのだとは思うが、記事作成者の想定した狭義の交渉とは違っていた
営業というか、交易というか、魚河岸というか
こういった場では、あまり込み入った話ができない

「ここであなたの欲しい資源カードは出せないですが、次の交渉では優先的にあなたと交渉の場を持ちます。欲しい資源カードが来たらすぐに回すようにします」
→未来を交渉材料にする
とか
「私のシバ王国とあなたのインダス文明は、暫定1位のペルシャを両サイドから挟み込める形にあります。ここは相互利益をはかって、お互い協力していきましょう」
→共闘と相互利益の提案

こういう複雑な話がほとんどできない
これについては手慣れた経験者卓や、十分時間が取れるオンラインメガシヴィライゼーションであれば、できるのだとは思う
ただ、初見プレイヤー中心の10分間交渉ではまず無理

時間以内にとにかく多くの相手と、効率よく手札の交換をする
このタスクをこなすだけでいっぱいいっぱいになってしまう

複雑な交渉が成立しない要因としては、9人も交渉相手がいたら、前ラウンド以前の交渉内容を記憶にとどめておくのが難しい、というのも挙げられると思われる


話はもう少し怨嗟めいた方向に進む

【災害カードの処理の難しさ】
さっき少し紹介したが、交易カードとして得られるのは資源だけではない
災害カードもゲットしてしまう

災害カードを持っていると、0.3~1.5ターン分の総手数分の何かしらを失う
5コマとか、1都市分とか
けっこうな痛手になる

この災害カードを食らいたくないなら、交渉フェイズ中にどうにかして相手に押し付ける必要がある
相手に渡すカードのうちの一部はウソをついてもいいルールなので、渡すことはできる
が、ヘイトは買う
ヘイトを買うと相手との交渉は成立しにくくなり、資源カードを揃えるのが難しくなる

このあたりのバランスが、自分にとっては難しい
・空気を読んで災害カードは渡さない方がいいのか
・逆に利己に走り、災害を押し付けてしまった方がいいのか

この両者のバランスがまったくわからない
なにか具体的な指針やセオリーがあれば楽にプレイできるのだが、そういうものがないまま交渉を強要させられるのは、かなり苦しい体験であった
たぶん一定のASD傾向があり、多くの「こういうことをすると相手はこう反応した」というトライ&エラーの経験蓄積を常に必要としているのだと感じます
そうした経験蓄積がない新規のタスク・状況に対してはなかなか脆弱で、何をしたらいいのかわからなくなってしまう

上記が、メガシヴィについて個人的にしんどいな、と感じた部分

非常に魅力的なゲームなのだが、強いて挙げるなら、もう一つだけ客観的な欠点も挙げられる
欠点をあげつらって記事化するのは良い趣味とは言えないが、いくらか個人的に有益な掘り下げができたと感じるので、私的なメモとして残しておく


【長いダウンタイム、乏しい思考材料】
メガシヴィの数少ない欠点として、

・ダウンタイム(手番待ちの時間)が長いこと
・長いダウンタイムで、考えることが特にないこと

が挙げられる
このゲームでは、特に移動フェイズでのダウンタイムが長い
何せ世界地図が広いのだが、他プレイヤーの動きによって移動先は変わるので、全員同時には解決できない
だから1プレイヤーずつ移動させることになる
それを待つ時間がなかなか長い
自分と国境を接している国は2~3個なので、それ以外の大半の国の移動については、見ていても「あ~遠くでなんかやっとるな~」以上の感想を抱きづらい
2人ゲームの囲碁や将棋は相手の移動が自分の生死に直結するので、こういった感覚は抱きづらい
超大人数ゲームでこそ生じる難点なんだと感じる

終盤の移動は一人5分かかることもざらにあり、同時解決はできないので、一人一人やることになる
難しい局面の移動だと、1フェイズで30分くらいかかることもある
(おたがい国境が接していない国の移動は、GMの判断で同時に処理することもあるが)

そして、長いダウンタイムを短く感じる工夫がされていない
ダウンタイムの間に交易カードを引いておけないから、考える材料が非常に乏しいのだ
「次の戦略…を立てようにも、災害カードを引くかどうかによって全然変わるし、現時点では何も考えられないな」という風になる
考えることが特にないから、ダウンタイムが余計長く感じてしまう

他プレイヤーと領地の交渉をしようにも、
「ここの土地に関して話し合いましょうか…?
ん~、現時点での話はできますが、どういう災害を誰が引くかわからない以上、今話合いをしてもあまり意味がないかな~って感じですかね…」
という風になってしまう

けっきょくヒマになってしまう

【ダウンタイムを短く感じさせるための工夫】


もしダウンタイムを削る方向で再調整をかけるなら、
・移動が終わったプレイヤーから順に交易カードを引いて、ちょっとした交渉を始めても良いことにする
とか、そういう風な修正を入れてもいいかもな~、と感じた
あるいは移動フェイズでの同時処理を増やす方向で変えてもいい
(まったくの別ゲーになってしまうし、作り手以外が勝手にあれこれ言うのは野暮だが)

ただ、メガシヴィに限らず、作り手の立場に寄せて考えると、ゲームの構造上ダウンタイムが多いゲームにせざるを得ないことはある
・コマを置くマップを共有する
・カードドラフトでカードを共有する
という風に、他プレイヤーとアクションの要素を共有すると、対人インタラクションは増える分ダウンタイムは長くなる
他プレイヤーの動かしたコマ、ピックしたカードによって自分の選択肢が変わるので、同時に解決することはできなくなる

他プレイヤーとの絡みを少し減らすと、ダウンタイムが多少長くても、プレイヤーは自分の頭のなかで「次はあれをああして、こうして」と考えやすくなる
退屈しにくくすることができる

この他プレイヤーとの絡みのバランスと、ダウンタイムの快適化については、1990年代から2010年代と、時を経るにつれて、だんだん変化してきたように感じる
「他プレイヤーに干渉される部分はあるものの、基本は自分のなかだけで完結する。完結するからこそ、ダウンタイムでプレイングについて考えやすい」とするのが2010年代の流行りだと思われる

たとえば
2000年代ゲームのアグリコラ(2005)、2010年代ゲームのローランド(2018)を比べてみよう
似たテイストのゲームだが、他プレイヤーのアクション中に考える内容はかなり別種

アグリコラは、アクションがかなり他プレイヤーの動きに影響される
・何が取れるか
・何を相手に取られるか
は自分の番が来るまで基本的にわからない
何ができるかは確定しないなかで、今後何をやっていくのかの計画を立てていく
なかなか高度な能力を要求されるゲーム
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ローランドでは、自分のしたいアクションは基本的にできる
自分の思うままにできるが「いつどのアクションをやるべきか」は相手に依存するときがある
「本来は柵引きを優先させたいが、今の状況だと、堤防を作っておかないとマズいな」
というような、そういうタイミングを巡ってのやり取りがある
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・やれるアクションが相手次第な部分があるアグリコラ
・やれるアクションは自分で選べるが、いつやるべきかは相手依存なローランド

アグリコラローランド と時代を経て、インタラクションの度合いはかなり弱くなっている


記事作成者の個人的な主観だが、アグリコラよりもローランドの方がプレイしやすく、ダウンタイム中に思考をまとめやすい
良い具合に考えることがあり、待ち時間が苦痛にならない
アグリコラの場合は、不慣れな者同士で打つと、
・自分の番が来るまで、どのアクションを打ったらいいか読めない
・自分の番が来たら考え始めるので、相手をかなり待たせることになる
・結果的にどんどんダウンタイムが延びる
という魔のループが生じることがある
初心者同士で打つ分にはお互い様で、これもご愛嬌だが、この卓に経験者が混じってしまうと、なかなかひどい状況になる

ローランドと似た例として、2010年代ゲーの「サイズ:大鎌戦役」が挙げられる
サイズもダウンタイムが短いゲームではないが、ダウンタイムを長く感じることはあまりない
基本的に「早く自分の番来ないかな」と退屈することは少ない
というのも、中盤まではほぼソロゲームで、相手のムーブに影響されず2,3手番先まで考えることができるので

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サイズ:大鎌戦役

とはいえ、楽しく得がたい体験ができる会でした
半日のゲームを通して、日常生活や普通のゲームでは生じ得ない感情の高まりを感じることができました
年に1回くらいはやりたいな~とは感じますね~

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2018年7月の新作『ローランド』のざっくりしたレビュー記事
先週末鶴橋のディスカバリーゲームズさんで試遊させていただいたので、おおまかなプレイ記とゲームの構造などについて記す


波があふれる、資源があふれる、羊があふれる
気をゆるめるといろんなものがあふれていく
あふれないようにうまくバランスを取って農場とワーカーを管理する
ややゆるめなリソース管理ゲーム
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【デザイナーとディベロッパー】
デザイナーはクローディア&ラルフ・パーテンハイマー/Claudia & Ralph Partenheimer
パーテンハイマー夫妻はウヴェ・ローゼンベルク門下の新人デザイナー

版元はフォイアーラントゲームズ/Feuerland Games
日本ではテンデイズゲームズから販売

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【名前とテーマ】
ローランドは低地という意味
原題はDas Tiefe Land =英語のThe Deep Land
英題はLowland
北ドイツの低地で羊を飼って暮らす村落の農場主になる
オランダみたいな感じの土地
基本は羊を増やしてお金を儲けていく
ただ、低地なのでそこには堤防が必要
堤防はプレイヤーみんなの共同出資で作らないといけない
サボる人が多くて堤防がちゃんと組み上げられないと、高潮が来て農場が水浸しになってしまう
農場がダメになってしまうと、最後には羊も逃げ出してしまう 一家離散
かと言って堤防ばっかり作ってると、自分の農場がおろそかになってしまう
そのあたりでバランスを取りながら駆け引きもやっていくゲーム


【大まかな雰囲気】
・基本ルールは縛りのゆるいワーカープレイスメント
・資源とアクションポイントを使って、建物を建て、柵を引き、堤防を作っていく
食料コストの概念がない(絶対に飢えない!)
・他プレイヤーと共同のアクションスペースを使うわけではないので、基本はやりたいことを悠々行える
・アクションポイントが余った時もムダにならず資源に変換できる
・羊も2匹につき1匹増えていくので、ゲーム終盤にはどどっと一気に8匹増えたりする(楽しい)

・対人インタラクションは強くない
・個人のアクションスペースと、個人の農場ボードが別個にあるので、箱庭感は強め
・各自のアクションが妨害されることはあまりない
・ただ、堤防を巡ってのインタラクションはかなりしっかりとあるので、ソリティアゲーではない
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共有ボードの中央部に堤防トラックがある
各プレイヤーは貢献度に応じて、自分の色の円柱コマを進めていく(ブルゴーニュの城に似た方式)
円柱コマの進行が遅いプレイヤーは毎ラウンドペナルティを食らったり、早いプレイヤーはスタートプレイヤーが取れたりする


【自由なアクション、厳しい手持ち上限】
やりたいことは自由にできる
しかし、
・ゲットした資源を持てる数
・増やした羊を置けるスペース
にけっこう厳しい制限がある

資源カードは『カタン』と同じく8枚しか持てないので、てきぱき使わないとバーストしてしまう
羊は1マスにつき1頭しか飼えないので、気を抜くと農場から逃げて行ってしまう

ここの制限の利かせ方はうまい、と感じる
工夫しないと手元からあふれていってしまう
それをあふれさせないように、
・資源は建物に変換する
建物で羊の受け皿を作る
・さらにアクションポイントを増やす建物を使って、アクション力を高める
・どうしても余った羊は売っちゃう

こういう風に、あふれないように、ムダにならないように終始工夫していく感じ
基本的には個々人の箱庭でアクションポイントと資源のコントロールをやっていく
そのなかで主に堤防をめぐって他プレイヤーとのインタラクションが生じる

「かなり今風のプレイ感の、完成度の高いゲームだな~」と感じました
パーテンハイマー夫妻にとってはデビュー作とのことですが、第1作目でこの完成度はすごいな~と感じます
ローゼンベルク監修とはいえ、非常に出来が良い

2010年代的と感じるのは、対人の絡みが強すぎなく、わきあいあいとやれる部分ですね
初対面同士でやっても十分楽しめるゲームです


今風と言えば、サイズ:大鎌戦役に似たメカニクスも登場しています
毎ラウンド引ける資源やお金を増やすためには、建物を出して柵を引く必要がある
最初は建物と柵は資材ボードに積んである

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資材ボード
上部に建物コマ、中央部に柵が置いてある

その資材ボードから個人ボードに建物・柵を移すことで、資材ボードがカラになる
カラになるとコインや資源のアイコンが書かれている
その資材ボードに書かれたアイコンの分だけ、毎ターン得られる資源が増やせる、という
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カラになった資材ボード
初期状態では1資源/ラウンドの収入しか得られなかったのが、全部開けきれると
3資源+3コイン/ラウンドの収入になる
およそ6倍

「コマをどかすことで効果が起動する」というのもすごく2010年代的なメカニクスだと感じます(元祖となるゲームってなんなんでしょうね)
サイズ:大鎌戦役でいう徴兵アクションみたいな感じ
視認性が高くて理解しやすい、良いメカニクスだと感じます
「はやく開けきってしまいたい」というプレイヤーの欲望も扇動することができます


【どんな人に勧めるか】
同じメンツで5~10回は回すタイプのプレイヤー
には購入を間違いなく勧めます

けっこうやりこみ要素の強いゲームだな~と感じました

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最終的な盤面
自分の農場経営に精一杯で、相手プレイヤーの箱庭にまで気を配る余裕を持てるようになるには、プレイを重ねる必要がありそう

建物・設備タイルも数十枚あります
タイル同士の相性やコンボもあります

また、堤防をめぐってのインタラクションは、感覚をつかむまでがなかなか難しい
これも4~5回はプレイしないと、つかみきれないだろうな~と感じました
さらに堤防に関しては、他プレイヤーの動きに影響される部分が大きいので、メンツを変えると状況が変わって楽しめそうだな~と感じました

堤防と羊の関係性を「一種の株券ゲームと言って良いのではないか」と表現しているレビューがあり、むちゃくちゃ面白かったです




【短いプレイ記】
記事作成者含めて4人戦
他3名の方とは初対面
ぼく(銀行屋)
羊屋さん
建物屋さん
堤防屋さん

と仮に名付け、色分けします

みなそれなりのゲーマーであったため、各自が
・現金特化
・羊農場特化
・建物の建設特化
・堤防の建設特化
を中心に戦略を立ててプレイしました
(ゲーム開始時はほぼ同じ条件で始まるゲームなので、各プレイヤーは意図して特化戦術を選択しました)



それぞれの思惑

羊屋さん
「羊はゲーム終了時3点扱いになる
しかも2匹に1匹増える
増やせば増やすほど爆アドなのでは?
最終的に8匹とか増えるし」
(レートによって2~4点と変動はある)
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羊屋さんの最終盤面
実に18匹の羊を養う、羊長者となった
1マスにしか羊は飼えないが、「羊を複数飼える」効果を持つ建物を建てることで、けっこうな数の羊を保有できるようになる

建物屋さん
「途中で建物の粘土工(レンガコストを下げれる)が取れた
さらに労務者を建物に設置したら、建物コストが軽減できる
うまくやれば3コストのものを無料で作れるようになる
つまり3アクションポイントが節約できる
設備カードをばんばん建てていけば勝てるのでは?」
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建物屋さんの最終盤面
9枚のタイルを出すことに成功している


堤防屋さん
「堤防建設で優位性を取っとくと、決壊を防げばコインが入るし、決壊したら他プレイヤーがペナルティを得る
しかも1番ならスタートプレイヤーも取れる
とりあえずアクション余ったら堤防作っとけばアドが大きいじゃろ
堤防トラックで常に1位を取り続けよう」
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堤防屋さんの最終盤面
農場はわりとスカスカだが、堤防トラックでアドが取れているので、堤防決壊トークンの被弾が少なく、安定した試合運びができていた

ぼく(序盤)
「柵・建物を早めに出せると、資源とコインの固定収入が入るなあ
毎ターン湧く不労所得は、抗しがたい魅力がある
イマイチな建物でもいいから、とにかく早めに4個出し切っちゃいますか
柵も建て切っちゃおう
不労所得で浮いたアクションポイントのアドを使って、ゲームをコントロールしていこう」

ぼく(中盤)
「コイン収入が結構あるな…
銀行(終了時所持している4コインごとに1点加点)を取ってさらにコインコンボを目指そう
なんなら羊も途中で売ってカネにしちまおう」
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ぼく(銀行屋)の最終盤面
羊と建物は安定して取れたが、最終的な伸びはやや欠いた
また堤防トラックを若干無視して内政に励んだせいで、決壊トークンを多くもらってしまっている


特化できるルートがいくつもあるゲームです

同じルートを選ばないかぎりぶつかり合うことはあまりないし、やっていて「自分のルートが強いかはわからないが、それなりにうまくやれているだろう」というゆるい安心感を持てます
やっていてなんとなく楽しい、というのは良いゲームです
この辺はプエルトリコとかにちょっと似ている

また、必ずやれないことがでてきますね
羊、建物、堤防のどれかを取れば、どこかがおろそかになる


【結果など】

最終結果は羊を効率よく増やせた羊屋さんが90点程度で大勝
自分堤防屋さんは70点程度
建物屋さんは60点程度
という結果に

最後の高潮では堤防が決壊し、各自1~4匹程度羊を逃がすことになった



プレイ後の感想戦は「自分が特化した戦術の強さはこの程度か~ プレイミスはあまりなかったし、負けたけど良かったかな~こんなもんか」
という感じ
中~重量級ゲームの初プレイあるあるだなあと感じます



【その他】
ルール自体はアグリコラよりはやさしく、一度やってしまえば大して複雑なゲームではありません
ただルールブックはなかなか読みにくいです
初プレイは誰かのインストを受けてやる方が無難かも

あとは、戦略として、羊を敢えて序盤に買うっていうのもアリな戦術なのかも、と感じました
羊はあふれるくらいなら途中で売っちゃう方が得なんですが、もし順調に飼えるスペースを増やせるなら「最初にタネ羊を買い入れてそれを元手に増やしていく」という戦略もありなのかもしれません


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ゲルツが好きで仕方がないので翻訳します
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こちらのルーマニアのボードゲームサイトのインタビュー記事「La taifas cu Mac Gerdts(マック・ゲルツとのおしゃべり)』の訳
2012年に行われた
時系列としては、インタビュー当時は『古代』『インペリアル』『ナヴェガドール』の3作はすでに出している
『古代:決戦』(2人向けにアレンジした『古代』)を出した直後でコンコルディア』シリーズを出す直前

わりと軽めのインタビューで、訳者としては「インペリアル」の草案について言及した箇所が特に面白かった


※当該サイトの後半の英語訳の部分を翻訳した
※意訳・改変行っています
インタビュアーの発言=黒字
ゲルツの発言=茶字
訳者の考え=青字
で統一しています

ゲルツのインタビューの拙ブログのその他和訳記事
非常に広範な話題について触れている
『ロンデル』というメカニクスについての制作者自身の考えが興味深い
『コンコルディア』について掘り下げた記述がなされていて、面白いです



――以下本文――

ハイ、マック
いや、ウォルターと呼ぶべきなのでしょうか?

ゲルツはウォルター・マック・ゲルツという名

今回は招待を受けてくださり、感謝しています
さっそく質問に移ります!

現在では、BGGのベスト100に
・インペリアル
・ナヴェガドール
・インペリアル2030
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ナヴェガドール
非常に美しい盤面

そして、ベスト500には
・古代
・ハンバーガム
・マチュピチュの王子

がランクインしています。
①これらのランキングについてどう思いますか?

よろしくお願いします
僕はマックと呼んでくれていいよ
ゲーム仲間はみんなそう呼んでいる
ん~、何を言ったらいいかな
評価されるのは嬉しいよね
良い評価をもらえるゲームと、そうでもないものがある
が、取り立てて言うべきことはないかなあ



②デザインはどうやって始めますか?
テーマからか、メカニクスからか


テーマからだね
あとでメカニクスをくっつける
歴史的な舞台設定に心惹かれるね
あと地政学的なマップも大好きだ

『どのメカニクスを選ぶか』はけっこう恣意的で可変的だと思う
状況に応じてさまざまだし、ディベロップのなかでメカニクスはどんどん変わっていく
逆にテーマの方はディベロップの段階で、ほとんど変わらない



③テーマとなる主題やメカニクスのインスピレーションはどこで得ていますか?
歴史がお好きなのは、作品を見ていても伝わってきます
が、歴史要素以外にも、あなたの作品にはたくさんの要素が含まれています
経済(インペリアル)
探検(ナヴェガドール)
文化
など


僕は歴史オタクだからね
旅行に行くのも好きだし、外国の文化を学んだり、ちょっと言語を学んだりするのも好きだ
ドイツの学校では第1外国語で英語を取ることが多いんだけど、僕はラテン語を取っていた
また、大学では経済学を学んでいた
そのあたりもテーマの選び方に影響していると思う




④デザインとテストプレイには、平均してどれくらいの時間をかけますか?

『最初にプランがあって、ロードマップ通りにやる』っていう感じじゃないからね
トータルで1年以上はいつもかけているなあ
この手のゲームを趣味してから、もう30年以上経つから、幸いゲームのアイディアはたくさん持っている
だから、まだ未完成の試作品がたくさん倉庫にあるんだよ




⑤いつも頼んでいるテストプレイヤーのグループなどはありますか?
もしくは、毎回違うグループに頼みますか?

違うグループからだけでは、十分なフィードバックはもらえないと思う
残念なことに、僕は週5で公務員をやっていて、さらに家族との時間もある
その合間にデザインをしているわけだから、限られた時間しか取れない
ただ、自発的に定期的に一緒にテストプレイしてくれる友達に恵まれていて、僕抜きにしてやったテストのフィードバックもくれる
あとは、外国でも手伝ってくれるグループがいくつかある
アメリカ、ポルトガル、イタリア、南アフリカ
こうした助けがなければ、ゲームは作れないんだよ




⑥デザインのなかで、特に誇りに思っている部分はありますか?

『インペリアル』のデザインは本当に難しかった
マーケットにある既存のゲームとあまりにかけ離れたゲームだったから
開発プロセスでもかなり危うい状況があった
だからこそ最終的なデザインはすごく誇りに思っているよ

80年代初頭に、いちばん最初の原案のインペリアルを作ったんだ
その当時の草案は、今売っているものとまるっきり違っている
完成版と今比べてみると、これだけエレガントなものにできたのか、と驚くよ



⑦ゲルツに影響を与えたデザイナーはいますか?

これ、という人はいないかな



⑧自分が作ってみたかったな、と思うくらい気に入っているゲームや、完璧な造りだと思うようなメカニクスはありますか?

トイバーの『カタンの開拓者』たちにはすごく感銘を受けたね
適度な複雑性があるが、大衆に広くアピールできる作品に仕上がっている
このバランスは見事だ
カタンはボードゲームを世界に向けて開いた記念碑的なゲームだった
それまでボードゲームをやるなんて夢にも思わなかったような人たちの心をつかんだんだ
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私の知っている情報によると、インペリアルのデザインは1984年に始まり、2006年にリリースされました
実に22年
最初は1ゲーム7~8時間かかったプレイ時間が、最終的に2~3時間に抑えられた、とも聞きます
⑨22年のディベロップ期間に何が起きたのでしょうか?
デザインプロセスでどこを削ったのでしょうか?
そうしたカット・削減は、妥協の産物だったのか、あるいは自然に起きたことだったのか?

今となっては、その間に何が起きたか伝えるのは難しい
最初から、いくつかのコアアイディアはそろっていた

・第1次大戦前夜の欧州の列強6か国
ロンデルのメカニクス(当時は8スペースじゃなくて16スペースだった)
戦闘を行うこと (戦艦によるコンボイ=輸送 1対1で対消滅するメカニクス)
プレイヤーが各ターンにアクションを行うのではなく、各がアクションを行うこと
・支配権を奪うために債権を購入し、投資を行うこと

この骨格は、手をつけ始めた1984年に全てあったんだ
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インペリアル

そして、試作段階では存在したが、ディベロップの途中で削っていった要素もあった

・別々の資源を生む5種類の産業
・プレイヤーたち個人的に行う資材の通商というアクション
国境の要素と、そこでかかる関税
・国家間の条約
・1つの資源のシェアの競争
・複数種の資源を得ることで得られるメリット
競りのプロセス
・プレイヤーたちがお金を借り入れられる銀行


これだけ要素があれば、丸一晩かかってしまう理由もわかるよね

※貿易、競り、資源管理もあったインペリアルβ版
絶対面白いに決まってるじゃないっすか‥‥
インペリアル好きとしては、可能ならば一度触ってみたいですね‥‥




最初に『インペリアル』を20年かけて構想していたのにも関わらず、デビュー作は『古代』です
⑩どうしてですか?

インペリアルについて、「これは世に問う作品としてはあまりに挑戦的だ」という確信があった
ちょっとウケることは難しいだろう、という確信があったんだ
だからまず『古代』を出したんだけど、これはありがたいことに成功した
『古代』の成功のあととなると、『インペリアル』を出さないわけにはいかなかった

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古代/Antike
後発のインペリアル、ナヴェガドールと比べると少し収束性が悪いものの、非常に魅力的なゲーム


現行の作品群では、ほぼ全てのゲームでロンデルが用いられています
『マチュピチュの王子』のみが例外です
(当時はコンコルディアやトランスアトランティックは未出版)
ただ、『マチュピチュの王子』におけるオークション選択のメカニズムは、ロンデルの変形だと私は捉えていますが

⑪『マチュピチュの王子』ではなぜロンデルを用いなかったのですか?

マチュピチュの王子は多くのレイヤー(層、要素)からなるゲームで、ロンデルを実装するのが難しかった
だから別なメカニズムとして、オークションセレクションを選んだ
プレイヤーの選択肢を絞れるという点で、ロンデルに似た利点を持っている


※マチュピチュの王子
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こちらのレビュー「海長とオビ湾のカジノロワイヤル 紹介:マチュピチュの王子」が非常にわかりやすいです
写真もこちらから流用させていただいています
中~重量級のゲーム
非常に面白そうです
ゲルツの他のゲームより運要素、不確定要素が大きめっぽい
本文の「オークションセレクション」の意味はちょっとわかりませんでした
どのマスに行くかでアクションが決まる、という性質から、マチュピチュのマップ自体が大きなロンデルと言って良い、と表現しているレビューもありました
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マチュピチュの王子
表紙絵でちょっと損してますかね・・・・


マチュピチュの王子のマップは、かなり精巧なレプリカです
実際にマチュピチュを訪れたときに見える景色にかなり似せて作られています
このゲームのインスピレーションをもらうために、実際にマチュピチュに行かれたことは?

あるよ
妻の出身がペルーなんだ
ペルー出身でハンブルク在住
だからペルーには行ったことがあるし、そのときにマチュピチュに行ったよ
ただ、一度の訪問では回りきれないほど、面白い考古学的スポットがたくさんあるね、ペルーは
クエラップ遺跡が良いよ、ペルーに行くなら
ペルー北部にあって、ちょっとアクセスは悪いけど
古代の遺跡の壁を伝って歩いたり、遺跡を探検して
本当の冒険家にでもなった気分になれるよ

※精巧なレプリカ
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写真と盤面は、たしかによく似ています






多くのゲームは2人戦対応ですが(3~4人ベストが多いとは思いますが)、古代:対決は2人戦専用のゲームです
⑬『古代:対決』という2人用ゲームをつくった経緯について教えていただけますか?

「古代は2人ではゲームにならないから」が一番の理由かな
2人戦ゲームのアイディアもいくつかあったから、それを使ってみたいという気持ちもあった
あとは、次の大作『OPPIDA(コンコルディアの原案)』の準備ができてなかったから、それを出す前のタイミングで出したかった、というのもある
僕の出させてもらってるPD-Verlagは小さい出版社だから、年に1作しか出せるキャパがないんだよ

訳注:
その後ゲルツは、2013年のコンコルディアの成功のあと数年は同作の拡張を出すことになります
完全新作については2017年の『トランスアトランティック』まで出しません
2018年現在にこのインタビューをみると、こういうロードマップを当時からある程度持っていたんだろうな、とうかがえます
だからこそ『古代:決戦』は「今のうちに出しておきたい」と思ったのでは、と推測できます

※以下では、OPPIDAをコンコルディアと記載します
このインタビュー当時の仮題は「OPPIDA」なので厳密な訳ではなくなりますが、読みやすさを取っています



「コンコルディア」は、ロンデルを使わないゲームの予定と伺っています
⑭何か事前情報をもらえますか?

コンコルディアでは、
・各プレイヤーがカードデッキを持ち、1枚ずつ出す
・それぞれのカードがローマ帝国の役職を持っていて、カードでアクションを行う
・アクションの表記以外に各カードの上部に勝利点の表記がある
・デッキ内のカードで最終的な勝利点が決まる
・全プレイヤーは共通のデッキでゲームを始めるが、追加のカードをゲーム中に購入できる
カスタマイズ要素があり、各プレイヤーが別々の戦略を取り、どのカードを買うか、を決めていくことになる

この辺は、『ナヴェガドール』でいう恩恵タイルのなかでどれを取っていくか、と対比する部分でもある

・各ターンは短く、選択肢も少ない(手札のどれかしかアクションは実行できない)
・運要素は少なめ
・ただ、ランダム性は多少ある(都市タイルはランダム配置で、どの資源がどこで湧くかはランダム)
・戦闘要素はない
・しかしインタラクションは多いし、葛藤も多い
・都市の取り合いと新しくめくられるカードの取り合いがあるから
・2~5人用で作っている
・オモテ面とウラ面の別々なボードを用意している
・プレイ時間は2時間以内

2013エッセンでリリースするよ!
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ゲルツの記事まとめてるといつも思うんですが、盤面がきれいすぎますよね
本当に美しい



⑮現在のボードゲーム市場と、これからの業界はどうなっていくと思いますか?
ドイツで、そしてヨーロッパで


2011年は多くの新興のパブリッシャーが急成長を遂げた
新作の数も増えている
参入障壁も高いわけではない、10~20年前と比べるとはるかに緩い

たくさんのデザイナーと出版社が、ボードゲームをお金稼ぎの道具としてではなく、個人的な趣味として捉えている。だからこそ最大の情熱を注いでいる。
僕はそれが、ボードゲーム業界の一番魅力的なところだと思う

たくさんのゲームフリークとギークがいる
ボードゲームはドイツでよく発展してきているけど、ヨーロッパや東部ヨーロッパでの急成長も感じているよ



ルールブックの巻末などに歴史的情報をたくさん入れるのが好みと見えます
しばしば歴史背景や時代の説明に数ページを費やしています
⑯歴史的整合性は、ゲームにおいてどれくらい重要だと考えますか?

メカニクスやゲームそのものに合うように、多少歴史を改変することはOKと考えるか?
あるいは、歴史的事実に合わせるために、メカニクスの部分の調整を行うくらい重視するか?

歴史設定を使ってゲームをデザインすると、けっこう調査が必要になる
・美術館/博物館にいく
・本を読む
・ネットを調べる
ただね、それが面白いんだよ
そこが楽しいんだ
そして、そういうゲームの背景にあるストーリーを、プレイヤーと分かち合いたいんだよ
だからルールブックに付属して、わざわざ数ページの資料を入れたりもしている
こうしたストーリーをシェアできれば、プレイヤーも『自分たちが今ゲームのなかで何をやっているのか』を良く理解できると思うんだ

「史実がゲームのために改変されてしまう」というのはいまいちだと思う
ただし「史実の解釈が異なる」ということは起こり得るとは思うけれど
あとは、省略してOKな些末な部分に変にこだわってしまうということも起こりうるし、それは避けた方がいい



インタビュアーの私個人は、重量級戦略ゲームが好きなんです
運要素がほとんどないか、まったくないか、くらいのゲーム
⑰あなたの作品でも運要素やランダム性が少ないものが多いですが、それについてどうお考えですか?

ゲームで遊ぶ人は、ゲームを通じて満足するべき
プレイヤーには満足を与えるべき、と僕は考えて居る
そして、僕の私見では、運要素が強すぎるゲームで勝利しても、十分な満足は得られないんだ

僕は、ゲームのなかでプレイヤーたちに、自分自身の計画を持って、それを実現させようとしてほしいんだ
自分自身で計画し、決定し、そして勝利をつかむ
それでこそ意味があるし、満足が得られる

僕は若いころチェスをしていて、チェスクラブに入っていた
これもまた、僕のゲームデザインに大きな影響を与えていると思う

※チェスは運要素も情報秘匿もないですからね
明らかにゲルツの(特に初期の)作品と同じ特徴を持っていますね



・家族生活
・新ゲームのテスト
・趣味でやる方のゲーム
・仕事
・インタビューに答えること
⑱これらのバランスはどうやって取っていますか?

その結果がこれだよ、今君が見ている僕だ



ありがとうマック、新作を楽しみにしています
⑲最後に、ルーマニアの若いデザイナーたちに何かアドバイスをいただけますか?

ルーマニアにはハンブルクから自転車で行ったことがある
もう10年も前になる

※ハンブルクからルーマニアの首都までだいたい2000キロありますね
あいだにオーストリア、スロバキア、ハンガリーを超える長旅になる
距離感でいうと、だいたい札幌から博多までと等距離
尋常じゃないですね

面白い人にたくさん出会えたし、ルーマニアの人のもてなしの精神に感動もしたよ
ただ、当時はボードゲーマーはひとりもいなかった
状況が当時から変化していることを祈っているよ
できるアドバイスはひとつかな
夢に向かって努力を続けることだ!


――



【訳者後記】
非常に面白いインタビューでした
「ボードゲームを作る前段階の時代考証こそが面白いんだ」
というゲルツの姿勢は、すごく好きですね
そういった題材への愛は、作品に透け出てくるものだと思うので

逆に、クニツィアくらい『テーマなんてどうでもいいんだよ笑』と思っているデザイナーも、それはそれで良いなあ、と感じます

それと、中盤で唐突に語られた
”たくさんのデザイナーと出版社が、ボードゲームをお金稼ぎの道具としてではなく、個人的な趣味として捉えている。だからこそ最大の情熱を注いでいる
僕はそれが、ボードゲーム業界の一番魅力的なところだと思う”
という発言
これも強い共感を覚えます

たとえば、原価率のお話が少し前に話題に挙がりましたが、もしゲルツがお金のことを優先して考えるとしたら、ボードゲームなんてたぶん作ってないですよね
22年もかけて1作を作るなんて、わりに合わなすぎる
いくら『インペリアル』が世界中で売れているとはいえ、22年コツコツバイトでもしてた方が絶対もうかっています
さらに他の作品でも、歴史設定やテーマも考え抜いて、時間もかけている
誰が気にしてるかもわからない歴史的整合性を大事にする
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なぜこういったことをやるかというと、言うまでもなく、楽しいからなんですよね

ゲルツはあまり多作でもない(多くて年に1作)
本業としてドイツテレコムの公務員をやっている兼業デザイナーというのが主な要因と思われます
が、僕には自分の「楽しい」と感じられるモチベーションを維持して守るために、あえて一定のペースを保っているのでは、とも想像できます(やや自己投影が入っていて、客観性を欠いていますが)
もしくは、ディベロップが自分の納得のいくラインに達するまでは妥協していない、という可能性があるかもしれません

お金に関する様々な問題について、訳者はあまり意見を持っていませんが、ゲルツのような静かな情熱をかける作り手に恵まれているこの業界は、非常に好きです

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